「話は聞いてるかも!さあ!みんなすぐに大艇さんに乗るかも!」
いやどっちよ。
話聞いてるの?それとも聞いてないの?って、8人全員がなってたわ。
ちなみに秋津洲は、小脇に抱えたミニチュアサイズの二式大艇を『大艇ちゃん』海上に浮いてた普通のサイズの方を『大艇さん』って呼んでたわ。まあ、どうでもいいけど。
「パイロットが居ないみたいだけど、もしかして貴女が操縦するの?」
「当たり前かも。あたし以外に大艇さんを操縦出来る人なんて居ないかも?」
だからどっちだ。
と、ツッコんだら負けな気がしたからツッコまずにいたけど、拳付きでツッコみたくて仕方なかったわ。私、ああいうハッキリしない喋り方って大嫌いなのよ。
まあ、今は部下の一人だから、多少は大目に見てるけどね。私って部下思いのいい上司だわぁ……。
「思ってたより中は広いんですね。まるで電車みたい……」
朝潮が驚くのも無理はないわ。
私達が乗り込んだ機体は、見た目も航空性能も二式大艇そのものだったんだけど、前方と尾部銃座以外の銃座を廃し、内部は兵員の輸送に特化した仕様に改造されてた。しかも、本来無いはずの後部ハッチが後付けされてたわ。後ろ三分の一くらいが下に開いて、海上から直接乗り込めるようになってたの。
操縦席もかなり改造されてたわね。
操縦桿はパワステが採用されてたしナビもついてた。パイロット一人で銃座以外のすべての機能が操作できるように改造されてたわ。
『あてんしょんぷりーずかも!本日は秋津洲航空をご利用くださり、まことに感謝かも!現在当機は、舞鶴上空かも!』
「スチュワーデスみたいな機内アナウンスだな。緊張感の欠片もないぞ」
「長門さん、今はスチュワーデスではなくキャビンアテンダントですよ?それにしても、秋津洲さんの喋り方を聞いてると鴨が食べたくなりますね。帰りに獲って帰りましょうか」
スチュワーデスとかキャビンアテンダントとか本気でどうでもいいわ鳳翔さん。
って言うか、鴨が食べたくなる気持ちはなんとなくわかるけど、獲るの?買って帰るの間違いじゃなくて?深海棲艦ボコった後に一狩りしちゃう気!?
とか思いながら、私は何処に着陸する気なのかが気になって仕方なかった。
だって、二式大艇は着水しかできないのに、舞鶴近海は敵に包囲されてると言ってもいいような状況だったんだもの。これで海上に降りようとか自殺行為でしかないわ。
『これより当機は、敵艦隊後方に着水するかも!全艦娘は抜錨用意!』
「ふっざけるな!アンタ正気!?」
私は思わずそう返した。敵艦隊後方に着水?
いやいや、すでに眼下には敵艦隊が見えている。それをするためには敵艦隊上空を突っ切らなきゃならないのよ?敵空母も艦載機をこちらに上げて来てるし、そんな中をこのデカブツで突っ切る?とても正気とは思えなかった。
『もちろん正気かも!心配しなくても、敵艦載機は大艇ちゃんが片づけてくれるかも!』
外を見てみると、ミニチュアの二式大艇が艦載機相手に獅子奮迅の活躍を見せていた。
さすがは『空飛ぶ戦艦』とまで言われた二式大艇、ミニチュアサイズとは言えそのバケモノっぷりは健在みたいね 。
って言うか艤装だったんだそれ。オモチャかと思ってたわ。
「全員『装甲』を展開しなさい!海上程の強度は無くても、無いよりはマシなはずよ!」
私は全員にそう指示を飛ばし、その後はひたすら、お父さんからもらった日本刀を握りしめて無事に着水できることを祈った。
それと同時に、そんな着水の仕方をすると教えなかったお父さんを恨んだわ。
「言うちょらんかったかいの?」
「言ってない!ホントに死ぬかと思ったんだからね!?」
結果的に上手くいったからよかったものの、一歩間違えたら撃墜されて海の藻屑だったわよ。
「私と天龍が先に出るわ!次に八駆!長門と鳳翔さんはその後よ!」
二式大艇が着水態勢に入り、開いた後部ハッチの縁を掴んで、私はそう指示を出した。
まったく、あんな抜錨の仕方は二度としたくないわ。
敵艦隊後方に、左に旋回しながら着水した二式大艇から、後ろ向きでジャイアントストライドエントリーしながら抜錨したのよ?私と天龍は初めての割に上手く出来たけど、運動神経が皆無と言っても過言じゃない朝潮は海面を転がってたわ。
「天龍!敵艦隊に砲雷撃開始!狙いなんてつけなくていい!撃って撃って撃ちまくれ!」
敵も艦隊上空を突っ切って強行着水するようなバカがいるとは思っていなかったのか、目に見えて浮足立ってたわ。狙いなんか付けなくても面白いくらい命中したもの。
「八駆はこっちに来ようとする敵艦隊右翼を牽制しなさい!長門は八駆が足止めした奴を片付けて行って!私と天龍で敵旗艦を討つ!鳳翔さん援護任せた!」
私は素早く指示を出し、鳳翔さんが飛ばした艦載機が頭の上を通り過ぎるのを見ながら、天龍を伴って敵旗艦に突撃を開始した。
敵艦隊の陣形は、旗艦とその護衛数隻を最後尾としたV字型、鶴翼の陣に近いかしら。その右翼側に、私達は降り立ったの。
敵は、籠城するくらいしか手段がなかった舞鶴鎮守府を包囲殲滅するつもりだったんでしょうね。
「天龍、護衛の処理は任せるわ。出来るわよね?」
「当ったり前だろ!天龍様を舐めんじゃねぇ!」
いやぁ、背中を任せられる仲間がいるって良いものね。
この頃には、天龍も並の艦娘なら束になっても敵わない程強くなってたから安心して背中を任せられたわ。
「魚雷の再装填は……ギリギリ間に合わないか。かと言って、単装砲じゃ少し心もとない……」
私は敵護衛艦隊の砲撃を躱しながら、旗艦との距離と自分の速度を照らし合わせてどう討ち取るか算段をつけた。
この時の敵旗艦は空母ヲ級だったかな?単装砲でも『刀』で威力を水増しすれば『装甲』を貫けないわけじゃなかったんだけど、周りに敵がウジャウジャいる状況で『装甲』を迂闊に減らしたくなかった。
『刀』を使うなら一瞬、それこそ一撃だけに留めたい。
だから私は、単装砲の射程の更に内側、日本刀の間合いまで『トビウオ』で急接近し、一撃で斬り伏せる事にした。さすがに旗艦のすぐ傍なら、敵の砲撃を受ける心配はほぼ無いと思ったからね。
「一騎駆けか?神風。粋だねぇ!」
「アンタが居るから一騎じゃないでしょ?けどまあ、そう言うノリは嫌いじゃないわ。なら、私はこう言おうかしら」
襲撃された舞鶴の奴らからしたら不謹慎そのものだったでしょうけど、包囲された味方を救うために敵背後から強襲、しかも旗艦を討ち取れば大逆転。その状況に、私のテンションは最高潮になっていた。
今思うと赤面ものだけど、あの時の私は構わずこう叫んだわ。
「これより我ら修羅に入る!! 仏と合えば仏を斬り!! 鬼と会えば鬼を斬る!! 情を捨てよ!! ただ一駆けに敵陣へ攻め入れ!!」
戦国時代の武将をモデルにした漫画のセリフだったかしら?
天龍が『一騎駆けか?』なんて言うもんだから、ついそのセリフを口走っちゃったのよね。
まあ、結果問題なく敵旗艦は討ち取れたから良いんだけど……。やっぱり、今思い出すと恥ずかしいな。若さ故の過ちってやつかしら……。
「もらったぁぁぁ!」
ギィンという金属を引き裂いたような音と共に、私は抜き放った日本刀でヲ級の首を刈り取り、そのまま天龍が相手をしていた護衛艦隊に背後から襲い掛かった。
超至近距離なら、爆風に自分も巻き込まれる恐れがある砲や魚雷より、刀を使った方が安全で確実だわ。なんて冷静に分析してた覚えがあるわ。
「確か、そん時よのぉ?お前が二度目の敗北を味わったんは」
「負けてない!引き分けよ引き分け!」
そりゃあ、戦闘が終わった後の私の有り様だけ見れば敗北だわ。
けどね、その時はアイツにも相応の被害を与えたのよ?あれ?与えてたよね?
「お、おい神風……。アイツは……」
旗艦を落として、統制が乱れた敵艦隊を端から沈めていってる最中に、私たちに向かって来る3隻ほどの深海棲艦を天龍が見つけた。
編成は戦艦ル級が2と駆逐古鬼、東南アジアで龍田を亡き者にした、あの駆逐古鬼だった。
「アンタがやる?その気があるなら譲るわよ?」
「冗談やめてくれ。悔しいけど、オレじゃ逆立ちしたって勝てねぇよ」
私は駆逐古鬼を見据えながら単装砲を投げ捨て、魚雷発射管をパージした。どうせ当たらないから意味がないしね。その分、身を軽くして速度を上げようと考えたの。
「最悪、私ごとで良いからね」
「おっと、今日はやけに冗談が多いじゃないか。どうせなら、アイツの首を手土産に一緒に墓参りに行こうぜ」
「そうね。じゃあそうするわ」
その会話を合図に、私と天龍は駆逐古鬼に突撃を開始した。
私が切り込み、駆逐古鬼に隙が生じれば、天龍がすかさず砲撃か雷撃。打ち合わせはしなかったけど、そういう算段で行くことは、口で言わなくてもアイコンタクトだけでお互い確認できた。
問題は駆逐古鬼の随伴艦をどうするか。近くに居た朝潮達に応援を頼もうかと思った時、通信を通して予想外の奴が名乗りを上げて来た。
『戦艦はあたしに任せるかも!』
「ちょ!秋津洲!?」
駆逐古鬼を先頭にして両脇にル級、その正面に私と天龍、その右方に第八駆逐隊って感じで展開してたんだけど。私と天龍の左方から、秋津洲が艤装の方の二式大艇を伴ってル級に突撃して行った。
正直不安しかなかったわ。
だって秋津洲は、水上機母艦とは名ばかりでその性能は工作艦に近く、一応は砲を備えていたけど私より武装が貧弱だった。
ハッキリ言って、艤装である二式大艇が本体って言ってもいいんじゃないかと思うほどに。
だけど、私たちは良い意味で期待を裏切られたわ。だってアイツ、たった一人でル級を仕留めちゃったんだから。
『今こそ、秋津洲流戦闘航海術実践の時!』
説明しよう!秋津洲流戦闘航海術とは。
海面下に垂らした錨に力場を通し、先端に『脚』に近い物を発生させて水の抵抗を受け、不規則な機動で敵を翻弄し、攻撃を回避する移動術の一種である。って、戦闘終了後に説明されたっけ。
見た目の動き的には時雨の『波乗り』に近かったかな?
とにかく秋津洲は、それを使ってル級に接近し、10メートルを切ったくらいで艤装に取り付けられたクレーンからフック付きのワイヤーを手に取りル級に投げつけた。
「あ、呆れる程有効な戦術だわ……」
私は秋津洲の戦いぶりを見て、思わずそう言ってしまった。
『弾』を纏わせてたと思われるワイヤーのフックが引っかかったル級を軸に、秋津洲は砲を連射しながらグルグルとル級を簀巻きにしながら周囲を回り、さらに接近したわ。
敵の動きを封じ、動きを封じた手段そのものを接近するための移動手段にしたその戦術は、タイマンでしか使い道がない戦術だけど、逆にタイマンなら効果的な戦術だった。
『これでトドメかも!』
決め技はル級の腹部に、艤装をアッパー気味に打ち付けてからのゼロ距離射撃。
いくら戦艦でも、『装甲』の内側からゼロ距離射撃されちゃ一溜りもないわ。たぶん秋津洲は、無意識にだろうけど『刀』の要領で艤装の先端に『弾』を集中してル級の『装甲』を貫いたんでしょうね。
「オレさ、ダイダロスアタックを生で拝める日が来るとは思ってなかったわ……」
とは天龍の感想ね。その時は天龍が何を言ってるかわからなかったけど、横須賀に戻ってからお父さんに教えてもらってなるほどって思ったわ。
ちなみに秋津洲は『どっちかって言うとリボルビングステークかも?』とか言ってたわね。
「私達も負けてられないわね」
もう一隻のル級は八駆が抑えてくれていた。
他の敵艦隊も、横須賀からの救援第二陣と呉、佐世保、大湊からの艦隊が駆けつけて相手をしていたから、私と天龍は他を気にすることなく駆逐古鬼と相対する事が出来た。
「行くわよ天龍!私について来なさい!」
「おうよ!」
状況は完全にこちらに有利、駆逐古鬼の実力を考えても負ける要素は少なかった。
実際、私と天龍の連携は完璧に近く、ジワジワとではあったけど確実に駆逐古鬼を追い詰めて行ったわ。
「理解できない……」
「あの時もそんな事を言ってたわね。アンタは何が理解できないのよ。言ってみなさいな!」
私は駆逐古鬼の『装甲』を削りながらそう返した。
アイツが何を理解できなかったのか、その時の私にはわからなかったから。
龍田と対峙した時の事を考えると、『自分を犠牲にして仲間を庇う』事が理解できなかったんだろうって当たりは付けてたけどね。
まあ、結局違ったけど。
「なぜ、お前たちは生きたがる?」
「はぁ!?」
なぜ生きたがる?それが理解できないの?生きてるんだから生きようとするのは当たり前じゃない。何言ってるの?って思った。
だけど、同時に合点もいった。アイツは生き延びようとする事が理解できなかったの。
己を犠牲にしてでも仲間を生き延びさせようとした龍田が理解できなかった。
敵わないとわかっていながら、それでも生き延びようと挑んで来る私が理解できなかった。
駆逐古鬼は人が、いえ、生き物が当たり前に思う『生きたい』という概念が理解できなかったんだって。
「『お前たちは生きていてはいけない。本来なら居ないはずの者達だ。なのになぜ、お前たちは生きようとする?』って言ってたわ」
「ふむ……」
その話を聞いたお父さんは、タバコを灰皿に当ててもみ消しながら何やら考え込み始めた。
駆逐古鬼の言葉に、何か心当たりでもあるのかしら。
「何か気になるの?」
「ん?ああ……少しな」
ふ~ん。何が気になるかはわからないけど、言わないって事は確信が持ててない。もしくは、今だ仮説の域を出ないから言いたくないってところかしら?
「深海棲艦が歴史の修正力かもしれんっちゅう話をしたかいの?」
「いや、聞いた覚えがないわ」
お父さんが言うには、元帥さんを含め、第二次大戦期に各国に現れた転生者たちが変えた歴史に私たちは生きてるらしい。
お父さんと元帥さんの仮説では、改変された事で生じた死者の数の帳尻を合わせるために現れたのが深海棲艦なのではないかって事らしいわ。
「じゃが、駆逐古鬼の言った言葉を考慮すると、帳尻を合わすだけじゃ収まらん可能性が出て来たのぉ」
「どういう事?」
「深海棲艦の抹殺対象には、本来死ぬはずだった人たちの子孫まで含まれちょるっちゅうことじゃ」
なるほど、だから駆逐古鬼は『本来なら居ないはずの者達』って言ったのか。死んだら子孫は残せないもんね。
って事はよ?深海棲艦は単純に人の数を減らしたいわけじゃないって事よね?本来なら生まれてるはずがない人全てが抹殺対象って事は……。
「それってさ……。戦争を終わらせるためには深海棲艦の根絶しかないって事よね?」
「そうなるのぉ……」
お、終わる気がしない……。
だって深海棲艦の総数は今だに不明なんだもの。仮説とは言え、民間人はもちろん、艦娘にも絶対に教えられないわ。私も知りたくなかったし……。
ただ戦ってればよかったあの頃が懐かしくなるわね……。
あの時だって、アイツの言葉を聞いても気にしなかった。ただアイツを斬り伏せる事だけ考えてたもの。
「天龍!魚雷は!?」
「装填完了まであと10秒!」
駆逐古鬼と戦闘を開始して20分くらい経った頃だったかな?目に見えて損傷が増し、もう少しで中破と言ったところで、私はトドメをどう刺すか考え始めた。
べつに、焦ってはいたけど慢心してたわけじゃないわよ?相手が相手だもの、慢心する余裕なんて私達にはなかったわ。
私達の燃料や体力の限界が近かったから、少しでも余裕がある内にトドメを刺したかったの。
「ウッッッッ!シャァァァァ!」
私は逆袈裟に駆逐古鬼の『装甲』を斬り裂いた。
本体に刃は届かなかったけど、仰け反らせて体勢を崩させるのには成功したわ。
「天龍!」
私は空かさず後方へ『トビウオ』で飛び、それを合図に天龍が魚雷を発射した。
駆逐古鬼の体勢は最悪。仰け反ったせいで体は伸びきってたから、龍田の時みたいにジャンプして魚雷を躱すのは無理。
例え、あの体勢からジャンプしても即座に追撃してやるつもりでいたわ。
私は勝ちを確信した。
だけど結果として、私達は負けた。油断はしてなかったし、念には念を入れた。
私達の敗因は、駆逐古鬼の実力を把握し切れてなかった事ね。
戦艦並みの『装甲』と重巡並みの火力を持った駆逐艦。そこは思ってた通りだったんだけど。
私は、『水切り』と似たような事が出来るのに、アイツがソレを使うなんて露程も思っていなかった。
「やったか!?」
駆逐古鬼が居た場所に立ち上がった水柱と爆炎を見て、天龍がそう口走った。
まあ、よくある話だけど、『やったか!?』と言ってやれてる試しはほとんど無い。やれてない時のフラグみたいな物よね。
私たちが仕留め損ねたのに気づいたのは、
「『花火』か」
「うん。ホントしてやられたわ」
上方への『トビウオ』。私は『トビウオ』とは別に『花火』って呼んでるんだけど、駆逐古鬼はソレを使って上空へ回避したの。『花火』なら、足が海面についてさえいれば使えるからね。
その衝撃で魚雷が誘爆して、ぱっと見は仕留めたように見えたわ。
そして無警戒の上方から、重巡並みの砲撃をまともに受けちゃったわけ。
天龍は兎も角、私の『装甲』でよく死なずに済んだなって思ったわ。
まあ、死ぬ一歩手前だったけど。
「被弾……。い、いったいどこから……」
私は気が狂いそうな痛みに襲われながらもなんとか身を起こし、駆逐古鬼の姿を探した。
いつの間に夜になったの?とか思いながら。
「あ、あれ?目が見え……」
私は、駆逐古鬼の砲撃で両目をやられていた。
後で長門たちに聞いたんだけど、私の鼻から上はスプラッター映画で出て来そうな程ズタズタだったらしいわ。高速修復材のおかげで、元の美少女に戻れたけどね。
「避けろ神風ぇ!」
天龍の忠告に「え?」と思うと同時に、私は何かに殴り飛ばされて海面を転がった。
鉄の塊で殴られた感じだったから、駆逐古鬼が艤装でなぎ払い気味に殴ったんでしょうね。
その一撃で左腕がポッキリいっちゃったし。
怖かったなぁ。
怪我をしたのは初めてじゃ無かったけど、何も見えない状態で一方的に痛めつけられたのは初めてだったから。
「クソッ!クソォォォ!何処に居るのよ!何で何も見ないのよぉぉぉ!」
私は海面にへたり込んだまま、我武者羅に刀を振り回した。いや、闇雲にって方が、状況的にも意味的にも正しいかしら。
後から聞いた話では、この時駆逐古鬼は私を不思議そうに見下ろしてたらしいわ。
無様に刀を振り回す私が滑稽だったのか、単に私が何をしてるのかわからなかったのか、駆逐古鬼は私にトドメを刺そうともせずに、ただ見下ろしてたんだって。
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!こんな所で死にたくない!私は先生の所に帰るんだから!」
キィン……。
振り回してた刀が『装甲』に触れ、微かな金属音を響かせた。
駆逐古鬼が目の前に居る。きっと、無様に泣き叫ぶ私を嘲笑ってる。
そう思った時、傷ついていた額や眼球に鋭い痛みが走った。まあ、文字通り血管が切れちゃってたからね。
それなのに激昂しちゃったもんだから、顔面から血が噴き出しちゃったみたい。
「え?何……これ……」
急激に血が減った事で、私は頭から前のめりに海面に倒れた。それでも『脚』は維持してたんだから大したものよね。さすが私!
「死にたく…ない……」
その時の私には、うわごとのようにそう呟く位しか出来なかった。周りで戦闘音や誰かが私に話しかける声も聞こえてたんだけど、脳が理解しようとしなかったわ。
「助け…て……。先…生……。助けて……」
意識を失いかけていた私は、いつの間にかお父さんに助けを求めていた。来るわけがないのに。来たとしても、艦娘でもないお父さんじゃ駆逐古鬼に勝てないのに。
それでも私は、あの日みたいに颯爽と現れて私を助けてくれるって思っちゃったんだ……。
「あ……。やっぱり来てくれた……」
暗闇の中、私の潰れた両目にはあの日とよく似た光景が映し出されていた。
頭が都合の良い妄想してただけって事はわかってる。だけどそのおかげで、私は安心して気を失う事が出来た。
あの日とは違う、真っ白い士官服に身を包んで駆逐古鬼に相対するお父さんの幻と、『ピー』っと言う艤装の緊急避難装置の警告音を最後に、私の意識は闇へと沈んでいった。
イベントは何とか完走!新艦も全隻ゲット!
でもスマホ一つじゃやっぱり不便だ……。タブレット買おうかな……。