姉さんが戦死してから、艦娘を辞めるまでに入渠した回数は何回だったかしら。治療施設に入院したのだけカウントしたら、20回行かないくらいかな?
調べればわかると思うけど、そこまでして入渠の回数を知る必要はないか。
「朝潮ちゃんの着任前で12回と、提督さんが言ってましたよ?」
「あ~……。そんなもんかしらね」
姉さんが戦死した時、私は呑気に治療施設のベッドの上にいた。外で何が起きてるかも知らずに……。
なんで、もっと早く高速修復材を使ってくれなかったの?とも思った。使ってくれたのは、敵艦隊が撤退し、他の鎮守府からの救援が駆けつけた後だったんだもの。
そりゃあ、当時、横須賀に残っていた鳳翔さんと祥鳳さんが中破以上になった時のために温存してたのは理解してるし、私でもきっとそうするわ。
けど、その結果。私は厄介なトラウマを抱える事になってしまった。
入渠するのが怖くなっちゃったの。
少し違うかしら。正確には、私が入渠している間に誰かが死んじゃうんじゃないかという、被害妄想に近い恐怖を覚えるようになった。
「ラバウルでも怒られたっけ……」
私は被弾しないようにしてただけのつもりだったんだけど、神風だった頃の桜子さんに『回避の練習なら一人でやれ!』って怒られちゃった。
ビビってるだけにしか見えない。とも言われたっけ。反論出来なくて黙り込む事しかできなかったなぁ。
だって、ビビってたのは確かなんだもの。
「私は参戦してなかったけど、激しい戦闘が続いたんでしょ?」
「そっか、由良さんは行ってなかったんだっけ」
正化27年に起きたソロモン海戦。
その海戦に、当時の私は大潮と荒潮と共に参戦した。桜子さんと同じ部隊に配属になるとは思ってなかったけどね。
「入渠した回数より、桜子さんに泣かされた回数の方が多かったかな」
別にイジメられた訳じゃないのよ?あの人はそんな事をする人じゃないもの。
たちの悪いイタズラはするけどね……。
「足を引っ張るな!的な事でですか?」
「それもあったけど、あの人の教え方って実戦形式なのよ。やり方を教えて、後は体で覚えろ的な?」
私と大潮、そして荒潮は、ラバウルに居る間に『水切り』それを使った『戦舞台』。更に、それらの上位版と言える『稲妻』のやり方を教えてもらった。
もっとも、さっきも言ったけど、やり方を教えてくれただけで、後は実践して覚えろとばかりに実戦に放り込まれたわ。
「ダメ出しはしてくれたけどね」
「アレらを実戦で練習……。一歩間違えれば、戦死しかねないですよね?」
「ホント、よく生きて帰れたと思うわ」
砲弾や魚雷が飛び交う戦場で、やり方しか知らない技を練習させるなんて正気じゃない。
『脚』の操作をミスって吹っ飛んだ事は数え切れず。そのせいで被弾した事もあるし、姉さんが戦死してからの12回の入渠の内半分はそのせいだったわ。
そういえば、荒潮はミスったフリして桜子さんに体当たりしたりして憂さ晴らししてたわね。
「今思うと、無理矢理入渠させて、私にトラウマを克服させようとしてたのかしら……」
「本当にそう思ってます?」
思ってるわよ?由良さんは知らないだろうけど、あの人は普段の行いとは裏腹に面倒見が凄く良い人なの。
考えても見て?私が艦列を乱した時は『私を巻き込むな!』って怒った人が、艦列を乱すどころか艦隊を危機に陥れかねない練習を実戦でさせたのよ?
しかも、辰見さんと二人で、私たち三人のフォローをしながらね。
そうじゃなければ、私は入渠どころか戦死してかもしれないわ。
「私はあの人の戦闘を直接見た事はありませんけど、戦闘中に指導が出来る程強かったんですか?」
「強かったわよ。今の朝潮でも勝てないんじゃないかしら」
「にわかには信じられません……。朝潮ちゃんは戦艦水鬼を一人で倒しちゃうほど強いんですよね?」
ええ、そうよ。
確かに朝潮は強い。艦娘としての性能は上だし、技術も同程度。それでも、朝潮が神風だった頃の桜子さんに勝てるとは思えない。
あの人が先生と敵対したなら話は別だけど、それがない限り、朝潮があの人相手に本気を出す事はないもの。
けど、あの人は違う。
あの人は、必要なら本気で朝潮を叩き潰す。命を奪うまではしなくても、足腰立たなくなるまで痛めつけるくらいは平気でやるわ。
「桜子さんはね。常に全力なの。余裕がないって言い換えてもいいかな」
「常に自信満々な気がしますけど?」
そうね、あの人は常に自信に満ちてるわ。
自分なら出来る。出来ない事はない。あの人は、自分にそう言い聞かせながら戦い続けて来た。どんなにピンチでも、死にかけてても、私達でさえ絶望するような状況でさえ、桜子さんは自分を疑わない。
けど、私はこう思うの。
自信満々な態度は、余裕が無いことを隠すため。
あの人は、そうしなきゃ戦い続ける事が出来なかったんじゃないかって。
駆逐艦の身で、全艦娘最低と言われた性能であの人は戦い抜いた。邪道と蔑まれる手段を使って性能をカバーし、正気とは思えないほどの超近距離戦を繰り返した。
上位艦種は絶対にそんな事しない。駆逐艦でさえそんな事はしない。だって、必要がないもの。刀より、砲や魚雷の方が威力があるのはバカでもわかる。接近すればするほど危険度が増すのだってわかる。
それなのに、あの人はそれを繰り返した。
そりゃあ、接近すれば駆逐艦の火力でも戦艦を打倒しうる事は理解してるわ。
けど、あの人の距離はその更に内側。砲や魚雷の爆風に、自分まで巻き込まれるほどの超至近距離。たぶん、その距離じゃないと倒せない奴を想定してたんでしょうね。
「お前、また変な事思いついたろ」
「変な事とは失礼ね。新技って言ってくれない?」
基地での一時の休息の時も、桜子さんは何かしらの特訓をしていたわ。
この時、天龍だった頃の辰見さんが言った『変な事』ってのは、手持ちの砲の砲身だけを動かして、見た目の射角と実際の射角を誤認させる『アマノジャク』の事ね。
私たちが使ってた連装砲じゃ、精々腕を振り上げるている最中に、砲身だけ先に上げて撃つ程度しか出来ないけど、神風型の単装砲は拳銃型で、先端についてる砲身は上方向プラス左右にも動くから、例えば真っ直ぐ向けながら真横に撃つなんて芸当も可能だった。
これが非常に厄介な技で、桜子さんが横須賀に帰って来るなり、帰投中の私達を襲った事があったじゃない?その時に、回避技術にある程度自信があった私ですらボコスカ当てられちゃったもの。
「何と言いますか。出来る事なら何でもやる人なんですね」
「そこまでしなきゃ生き残れなかったのよ。実際、あの人以外の神風型の初代たちは、戦場が海に移行する前に全員戦死したって話だし」
私だったら、あの人のように戦い続ける事が出来るだろうか。
あの人のように絶望せず。死を恐れず。自分に出来る全てを使って死と向かい合う事が私に出来るだろうか。
「ソロモン海戦が始まって3か月くらい経った頃だったかなぁ……。一度だけ、ラバウルが落とされかけた事があったの」
「それ、本当ですか?日本側の圧勝だったと聞いてますけど?」
「全体的に見れば圧勝と言っても良いわ。実際、ラバウルを陥落の危機に陥れた戦闘自体は小規模な物だったし……。ソロモン海側に防衛線を引かれた状態で、由良さんならどうやってラバウルを落とす?」
「日本側の艦隊がソロモン海に集中しているのなら、主力艦隊で注意を引き付けて小規模の艦隊で背後を奇襲。でしょうか」
「まあ、それが妥当かな。その戦闘まで、敵はバカみたいに正面からしか攻めて来なかったんだけど、ラバウルの基地司令はそれに油断するほど大馬鹿じゃなかったのが救いだったわ」
正化27年の4月だったかな。
それまで、多くても20隻くらいの艦隊で攻撃と撤退を繰り返していた敵が、一度だけ50を超える艦隊で攻勢をかけて来た事があったの。
敵がこちらを超える数の艦隊で攻めてきた事に、基地内は多少はざわめきた立ったけど、ラバウル基地司令の妙なカリスマ性のおかげで、艦娘たちはパニックを起こすことなく、むしろ積極的に迎撃するために出撃した。
「その時、ラバウルの司令はなんて言ったと思う?」
「さあ?がんばれ~!とか、生きて帰れ~!とか、そんな感じですか?」
それでも、艦娘たちの士気は上がったかもね。ラバウルの司令は、容姿端麗の美少年だったからファンも多かったし。
けど、ラバウルの基地司令は……。長いわね。ショタ提督でいいや。は、どうしてそのセリフで艦娘たちの士気が爆上げなると思ったの?ってツッコミたくなるようなセリフで艦娘たちに火を点けた。
「『一番戦果を上げた人は、僕を一日好きにして良いです!』って言ってたわ」
顔を羞恥で真っ赤にしながらね。
中には『何言ってんだコイツ』みたいな目で見てた人も居たけど、大半の艦娘はその一言に触発されて我先にと戦場へ飛び出して行った。ちなみに、桜子さんと辰見さん、それに私たちは前者ね。
あの時、一番戦果を上げたのはたしか……。当時の夕立だったかしら。その戦闘での戦いぶりと上げた戦果で『ソロモンの悪夢』なんて異名までつけられてたわね。次点で、当時の綾波だったかな?
「『ソロモンの悪夢』と『ソロモンの鬼神』の誕生の裏には、そんなアホみたいな理由があったんですね……」
「凄かったらしいわよ?その戦闘は二日二晩続いたんだけど、二人は夜戦で戦艦や空母も顔負けなくらいの戦果を叩き出したって聞いたわ」
「けど、その結果。背後からの奇襲を許したと?」
「許してないわ。だって、私たちが居たもの」
奇襲を許していたら、ラバウルは陥落していた。
その奇襲を防いだ艦隊は、私達三人を含んだ桜子さん旗下の特別遊撃部隊。そしてもう一つ、実戦投入されたばかりの陽炎型を旗下に加えた、軽巡 神通を旗艦とした第二水雷戦隊だったわ。今も呉に居る雪風が最初に名を上げた戦闘もこの時だったかしら。
「敵の奇襲ルートは二つ。マーカス岬の南からダンピール海峡を抜けるルートと、ニューアイルランド島とニューハノーバー島の間を抜けるルート。私たちが対応したのは後者だったわ」
前者は、ラバウル基地に試験的に導入された、妖精さん達による基地航空隊の支援のおかげで、対応した第二水雷戦隊は敵をほぼ一方的に叩くことが出来たと聞いている。
もし、深海棲艦に歴史を文字にして伝える習慣があったなら『ダンピールの悲劇』とでも書き記しそうなほど一方的な展開だったらしいわ。
「円満ちゃん達が対応した方も、そんな感じだったんですか?」
「そうだったら良かったんだけどね……」
私たちが対応した敵艦隊が発見されたのは、基地航空隊がダンピール海峡へ向けて発進した後。もう少し発見が遅れていたら、きっと私達もダンピール海峡へ向かっていたわ。
「敵戦力は空母ヲ級二隻と戦艦タ級を含む、12隻の艦隊だったかな」
対する私たちは軽巡1に駆逐艦4の水雷戦隊。戦力差は圧倒的で、しかも昼戦。編成と数だけ見れば、私たちが勝てる見込みは皆無に等しかった。
「でも、勝ったんですよね?」
「ええ、予想外の援軍のおかげでね」
今でも、どうしてアイツが私達に手を貸そうと思ったのかは謎のまま。桜子さんならわかるのかしら。
仇のはずなのに、アイツを追うために南方へ異動したのに。背中合わせに戦う二人は、まるでそう在るのが本来の在り方かのように自然だった。
「例えるなら、光と闇の
不覚にも、その光景を見て私は美しいと思ってしまった。
日の光と爆炎に彩られた
「中二病入ってません?血を流し過ぎましたか?」
「そうね、ちょっとクラクラするかも……」
今さらだけど、叢雲に追い詰められた由良さんが始めた猥談の内容があまりにも濃すぎたせいで、私は鼻にティッシュを詰めた状態で昔話をする羽目になった。叢雲を入居させるかどうかの話から、昔話に発展するとは思ってなかったけどね。
一応断っておくけど、私は由良さんと少佐さんの性活になんか興味なかったのよ?けど、叢雲がどうしても聞きたいって言うから仕方なく。本当に仕方なく、私も一緒に聞いたの。
ちなみに叢雲は、鼻血を出し過ぎて貧血を起こしちゃったから、鼻にティッシュを詰めてソファーで横になってるわ。寝息が聞こえるから、もしかしたら寝ちゃってるかもね。
「やっぱり入渠します?」
「鼻血くらいで?勘弁してよ、仕事も残ってるのに、そんな事してる暇なんてないわ」
鼻血を噴いて入渠したせいで仕事が終わらなかったなんて言ったら、また朝潮に怒られちゃうじゃない。
それとも、由良さんが代わりに終わらせてくれるの?由良さんだって鼻にティッシュ詰めてるじゃない。話してる内に、少佐さんとのプレイを思い出して興奮しちゃったのかな?
「少し休憩しましょう。もうすぐ15時ですし」
「そうね。このままじゃ仕事になんないし」
猥談中もほとんど手に着かなかったけど、まあ……今日中に終わらせられるかな?残業は確定だけど……。
「お茶菓子は何がいいですか?クッキーがあるみたいですけど」
「レバ刺し……」
「ある訳ないでしょ……。お茶菓子と言うより酒の摘みじゃないですか」
だって、血が足りないんだもん。
由良さんだってそうでしょ?顔が若干青ざめてるじゃない。自分が口にした猥談で興奮して貧血になるとか間抜けとしか思えないけど。
「あ、お酒と言えば……。今も提督さんと飲んだりしてるんですか?」
「してない……」
最後に一緒に飲んだのは艦娘を辞める前日、それ以降は一度もないわ。
聞いてもらいたい愚痴は溜まってるけど、愚痴を言う勢いで気持ちを伝えそうになりそうだから二人きりになる状況を避けてるの。まあ、朝潮が常に先生と一緒に居るから、二人きりになる事はないんだけどね。
それでも、本音を言うと一緒に居たいし、朝潮抜きで話をしたい。もっと言うなら、今日、由良さんに聞いた内容をしてあげたいし、してもらいたいとも思うわ。
「大丈夫?また鼻血が出てますよ?」
「大丈夫よ。すぐ止まるわ」
私とした事が、先生と自分の情事を妄想してまた興奮しちゃったわ。欲求不満なのかなぁ……。
「今晩当たり、誘ってみたらどうですか?」
「さ、誘う!?私から!?ふしだらな女とか思われない!?」
「え?女性からお酒に誘うのはふしだらなんですか?」
「あ……。あ~……そっちか……。そうよね、別にふしだらなんかじゃないわよね。お酒に誘うぐらい……」
誘っても大丈夫かな……。
だって、今日は桜子さんも居るし、朝潮も晩御飯を作りに行くわよね……。
もし誘うとしたら、朝潮が寝る21時以降。別に朝潮の目を盗む必要はないけど、変な誤解はされたくないから朝潮が居ない時間を狙うに越した事はない。
問題は桜子さんか。
桜子さんが一緒だと、騒がしいだけならともかく、先生は桜子さんとばかり話しそうだし……。
そう言えば、叢雲が『辰見さんたら、私に仕事を押し付けといて、今晩は飲みに行くんだって!』とか、執務室に来るなり愚痴ってたわね。
辰見さんが飲みに行くとしたらどこ?鎮守府の外?一人で?
いや、たぶん鳳翔さんの所だ。だとすると、一人ではなく桜子さんも一緒の可能性が高い。
チャンスだわ。先生は21時以降、高確率で一人で部屋に居る。
ならば、仕事をさっさと片づけて準備しないと。体はいつもより念入りに洗って、下着も
お化粧もして行った方がいいかしら……。普段は最低限の化粧しかしてないけど、って言うか必要ないし。けど、今日くらいは気合入れて顔を作った方が良いわよね!うん!そうしよう!
服はどうしよう。士官服は論外として……。寝巻?絶対無理。私の寝巻って猫の着ぐるみみたいなヤツだからセクシーさの欠片もないわ。
な、ならば、ネグリジェとかはどうだろう。荒潮に勧められるままに買った、ピンクでスケスケの公序良俗に真っ向からケンカを売る様なネグリジェだけど、男性はああいうのにグッと来るとか荒潮が言ってたし。
よし、決まり!
先生だって男だもの。いい感じにお酒が回ったところで、ほとんど下着姿の私に迫られたらムラムラっと来てガーっとなっちゃうかも知れないわ!
「ってそうじゃない!」
なに誘う気満々になってるの!?由良さんがした猥談のせいで完全に暴走、いや、発情してる!いやさ、発情して暴走してる!こんな状態で先生に会ったら確実に押し倒しちゃうわ。気持ちを伝える前に体が繋がっちゃう!って、襲う気満々か!
私がすでに、ムラムラしてガーっとしそうになっちゃってるじゃない!
「ティッシュ、要ります?」
「箱で頂戴……」
三人で、買い置きしておいたティッシュを全部使い切っちゃったわ。ゴミ箱なんか酷い有り様……。赤く染まったティッシュが山盛りになってるもの。また買って来とかなきゃ……。
「円満ちゃん……貴女もしかして……」
「言わないで!お願い」
まずい。由良さんに私の気持ちがバレた!
どうしよう……。由良さんが言いふらすとは思えないけど、ふとした事から少佐さんに伝わって、少佐さんが口を滑らせて先生に言っちゃう可能性も無くはない。口止めしとかなきゃ。
「あ、あの……。由良さん、この事は……」
「安心してください。誰にも言いませんから」
「ほ、ホント?」
「本当です。だから、叢雲ちゃんが寝てる内に部屋に戻って。トイレでいいならトイレで」
ん?私の妄想に察しがついてるのなら部屋に戻れは理解できる。時間はだいぶ早いけど。
じゃあトイレは?トイレに行って何をしろって言うの?なんだか『わかってるから』と言わんばかりの顔してるけど。
「ムラムラしちゃったんですよね。ね?気持ちはわかるわ。だから、お留守番は私がしておくから、満足するまでして来ていいのよ?イって来ていいと言った方が良いかな?」
「いや、何の話?」
「誤魔化さなくたっていいのよ?全部わかってるから。それとも、やり方を知らない?大丈夫、本能の赴くままに体を触ってたら自然とわかるから」
うん、だいたいわかった。つまりアレだ。
由良さんは、私が興奮しすぎて我慢できなくなったと思ったわけね?だから部屋、もしくはトイレに行って火照りを沈めて来いと言ってるんだ。ソロ的な事をして。
ええ、確かにムラムラしてるわ。
もし一人だったら、私の手は意思とは関係なく体を弄ってたでしょうし、正直、下着も換えたいと思ってる。
仕事が残ってなければ、私並にムラムラしてそうな由良さんと寝てる叢雲を置いて部屋に直行していたでしょうね。
けど、今の私は提督代理。
だから屈する訳にはいかない。
肉欲に、情欲に、この身を狂わさんばかりに駆け巡る性欲に!今、横須賀鎮守府の命運は私の双肩に懸かっているのだから!
「我慢しなくて、いいんですよ?」
「が、我慢なんてして……ない!」
「嘘はいけません。貴女の体は限界まで火照っている。自分で自分を慰めたくて仕方ないでしょう?もし相手が居たら、その人を押し倒してしまうほどに」
ええ、そうね。
本音を言えば、手に持っているペンと判子を投げ捨てて本能の赴くまま間に体を弄りたいわ。もし先生が居たら、後の事など考えずに押し倒すでしょう。
けど、そんな誘惑には負けない。
そう言う由良さんだって限界なんじゃないの?自分の体を抱きしめる腕には妙に力が籠ってるし、顔は火が噴き出そうな程真っ赤で、足は不自然なほどの内股になってるじゃない。
心なしか『もう女でもいいや』とか思ってるようにも見えるわ。
「ほら……。体が疼くでしょう?熱いでしょう?でも、怖がらなくていいの。貴女の様な、思春期真っただ中の子なら普通の事よ?だから……ね?」
何が『ね?』なの?由良さんと慰め合う気はないからね?私、ノーマルだから。そっちの気は皆無だから!だから机に乗ってこないで!『可愛い子ネコちゃんね』と言わんばかりに私の顎をクイッってしないで!
「さあ、力を抜いて?由良と一緒に気もち良くなろ?ね?ね?」
「い、嫌……」
顔が近い!キスする気?キスする気だよね!?その後は流れで最後まで?女同士で最後まで出来るのかしら……。
って、そんな事を考えてる場合じゃない!ファーストキスの相手が女なんて絶対に嫌よ!それに、このままじゃキスをするのは上の口だけじゃなくて下のってああああああ!
落ち着け私!落ち着きなさい!こういう時こそ平常心よ!
私は百戦錬磨の元艦娘。平常心を失った子が死んでいく光景を何度も見て来た。今の状況だって、平常心を失わずに冷静に対処すれば突破できるはず!いや、突破して見せる!主に、私の貞操のために!
「い、一旦落ち着こ?ね?由良さんは初めてじゃないかもしれないけど、私は初めてなの。初めての相手が女の人とか嫌なの!だから許して?」
「安心してください……。由良も初めてですから……」
んん?聞き間違いかな?今、初めてって言わなかった?
少し前まで、少佐さんとの性活をリアルに語ってたじゃない。ムッツリスケベの叢雲が鼻血拭いちゃうほど赤裸々に!
まさか今さら、アレが全部妄想だったとか言わないわよね?初めての時は痛いと聞いてたけどそんな事はなかったとか、少佐さんの主砲は外人顔負けの大口径だったとか、少佐さんの指はまるでタコの触手のようにウネウネ動くとか言ってたのも全て妄想?妄想を、さも本当の事のように話しただけなの!?
「もう我慢できないんです。もう少佐さんを待っていられないんです……」
「知るか!我慢できないんなら一人でしなさいよ!私は……ひゃん!」
いつの間にか由良さんの右手が私の胸を掴んでいた。
しかも何?この指の動きは、指の一本一本が意思でも持っているかのように、興奮しているせいでいつもより敏感になっている私の胸の弱い所を的確に攻めて来る。って、解説してる場合じゃない!
発情しきった今の状態で、こんな刺激を与えられ続けたら私まで変になっちゃう!私まで変なスイッチ入っちゃう!
けどどうする!?頭では手を振り払いたいと思っているのに、体はそうしようとしない。体は刺激を求めてる!
いや、頭も欲望に支配されかかってる。
このまま、由良さんに身を任せたいって思い始めてる。
このまま由良さんと、禁断の花園へ足を踏み入れたいと……。
「ふふふ♪見た目通り、在るのか無いのかわからない程小さい胸だけどぉぉぉぉ!?」
私は無言で、胸を揉みしだいていた由良さんの右手を捻り上げた。
見た目通り?在るのか無いのかわからないですって?
在るわよ!由良さんみたいに両手で持ち上げられるほどは無いけど、私の胸は確かに存在してるの!ブラだってしてるの!
そりゃあ、私だって大きさには不満があるわ。艦娘をやめれば歳相応に大きく、いや、歳の割に大きいサイズになると思ってた時期もありました!残念ながら平均以下だったけどね!
でもね、感度は良いのよ?自慢するほどの事かどうかはわからないけど、ちょっと触れられただけで体中がビクッてなっちゃうほど感度がいいの!教えてあげないけどね!
ぶっちゃけ、由良さんに揉まれてる間も電気が走りっぱなしだったわ。もう少しで果てちゃうかと思ったもの!
って、それはいい!
と・に・か・く!
そんな細やかなサイズながら感度はバッチリな私の胸をバカにした罪は大きいわ。
後悔させてやる……。
地獄を見せてやる……。泣いて謝ったって許してあげないんだから!
「バカね……。
私の中で欲情が激情に変わり、執務机に常備されている手錠を由良さん両手にかけた。自分でも驚くほどスムーズな動きだったわ。
「え、あの……。円満……ちゃん?」
困惑してるわね。
でも安心して。困惑していられるのも今だけ。これから貴女は、今まで経験した事がないほどの地獄を見るんだから。道具は揃ってるのよ?どうしてか教えてあげましょうか?
由良さんは知らないでしょうけど、この執務机には護身用と思われる武器の類が山ほど隠されているの。手錠もその一つよ。
その他にも、ロープ、サバイバルナイフ、拳銃等々、大袈裟な物になると手榴弾までこの執務室机には隠されてるの。
「やめて……来ないで……」
却下。
私の胸を鼻で笑った貴女に慈悲を与えるつもりはない。
引っ叩いてやる。そのたわわに実った貴女の胸を、大きさが倍になるまで引っ叩いてやる。それが終わったらお尻よ?悪い事した子にはお尻ペンペンは基本だからね。
貴女も、私と叢雲に語って聞かせたじゃない。スパンキングは最初は痛いけど、回数を重ねるごとに癖になるって。終わったら、胸もお尻もサイズアップ間違いなしよ。
「ホント、面白い事言ってくれたわね。倍返しよ!」
それから私は、ナイフを使って手錠をかけた由良さんの両手を上にして壁に固定し、何かに取り憑かれたかのように由良さんの胸を交互に引っ叩き続けた。
最初から強くせず、ペチン!ペチン!からベシン!ベシン!と段階を追って叩く力を強めて行ったわ。
ふふふ♪まるで水風船みたい。面白いくらい左右に振れるわ。憎らしい!
「お、お願い……。もうやめて……」
やめてと言う割に気持ちよさそうね。頬はさっき以上に赤くなり、頭から湯気が昇っていると錯覚してしまうほど興奮してるように見えるわ。
もしかして、こうされるのが好きなんじゃない?自由を奪われて、いいように痛めつけられるのが大好きなんじゃない?
「本当は気持ちいいんでしょ?ほら!ほら!気持ちいいって言いなさいよ!ほら!」
頭の中で、今まで入った事がないスイッチが入ったのがわかった。
もっと叩きたい。もっと悲鳴を上げさせたい。この、快楽と苦痛に歪んだ顔をもっと歪ませたい!
私は仕事の事を完全に忘れ、由良さんが果てるまで脂肪の塊を叩き続けた。
残業が確定した事にも、執務室のドアを叩くノックの音にも、目を覚ました叢雲が、私と由良さんの様子を動画で撮影している事にも気づかずに……。