符術少女とつぐもも   作:【時己之千龍】龍時

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第03話 土地神の試練

 アリスは菊理様は結構本気だとわかり、千里を連れて距離を取る。

 

「大丈夫なんですか?」

「殺しはしないはずですよ?だってこの土地のすそはらいになってほしいから呼んだんですからね。それにもし危険だと判断したら、私も桐葉側につくから問題ありません。あ、でもそれはできればしないようにしますよ?だってあの二人になってもらわないと私がその任を代行続行で続けなくてはいけませんから」

「は、はぁ……」

 

 そう話しながら二人は戦いを見る。ほとんど一方的な戦いで完全に菊理様が押している。しかも菊理様は水の玉や水の槍と、まともに当たれば結構威力のある技で、その場から全く動かずに攻撃している。完全に余裕のようだ。

 

 そして略式ではない完全詠唱を唱える菊理様。その詠唱に聞き覚えのあったアリスは懐から一枚のカードを取り出す。それは彼女が作り上げた『アリスカード』の一枚、『(ヨク)』のカードだ。翼のカードを発動し、背に翼が出来たのを確認して、千里を抱えて空へと上がる。直後に桐葉達二人を中心に巨大な水の塊が落ちた。

 

「な、何なんですかあれは!?」

「大瀑布。結構……いや、あれはかなりの威力がありますよ」

 

 アリスはその技を以前受けたことがあった。その時はどうにか堪えられたが、もう受けたくない技だ。またそれを受けきった時はさらにやっかいな攻撃もしてきた。もしかしたらこの戦いでも、この技を二人が防ぎきったら『それ』を菊理様が繰り出すかも知れない。そしたら、二人はどう動くのか。そうアリスは興味を引かれ空から見下ろし、戦いを見た。

 

 二撃目の大瀑布で一也が数秒の気絶。桐葉は霊力を使いすぎたための副作用か、体が幼く縮んでいた。

 

「これ以上は……難しいかな、ん?」

 

 アリスが止めに入ろうかと一瞬思った時、一也が桐葉を原形である帯に戻した。

 

「なんで、戻したんだ?」

 

 戦いは完全に一也と桐葉側が劣勢だ。その上一也は戦闘の経験が全くないと見ていて気づいた。しかし帯姿の桐葉を両手に抱え、菊理様に向かっている。

 

 一也参戦直後の帯の操作はめちゃくちゃだったが、二度目では桐葉のようにうまく操った。しかしそれでも戦いの素人であることには変わりはない。そして菊理様は詠唱を始めた。これは大瀑布ではなくもう一つのだ。

 

 菊理様の頭上から水の太く長い塊……大蛇が現れた。その迫ってくる水の大蛇を、一也は帯を編み盾を作った。さっきまではそれで防げたが、この技は強すぎ単純に考えても一枚の盾ではどうしようもない。が一也はさらに先に進んだ。

 

 盾を縦にくの字に折って、水の大蛇を裂いた。これには菊理様も驚きの声を上げている。しかも一也はまだ動いていた。それに気づいた菊理様は自分の前に氷の分厚い壁を作り出す。

 

 走り出し、宙に跳ねた一也は右手に帯をドリル状に編んでいた。

 

「八重刃っ!!」

 

 威力が予想以上に高かった。分厚い氷の壁は砕け散り、地面をえぐり、さらには菊理様の丁度後ろにあった社にまで攻撃は及び、社は正面右側にかなりの被害があった。

 

「どう…なった?」

 

 菊理様を中心に砂煙が上がり、菊理様と桐葉の姿が見えない。砂煙のギリギリ手前に着地していた一也の右手にもどこにも桐葉はいない。

 

「惜しかったですね、桐葉」

 

 砂煙が段々と収まっていくその中から菊理様の声が聞こえた。そして晴れた時……右手に桐葉を掴み上げ、左には氷の槍を持った菊理様がいた。

 

「守りを貫いたまではよかったものの、止めを刺すには至らなかった…さて」

 

 桐葉の首筋に氷の槍を近づける。

 

「や…やめろ!桐葉さんを離せっ!!」

「ほう?ではどうしますか?」

「加賀見一也は…すそはらいを引き受けます。これでいいでしょう、桐葉さんを放して下さい!」

「―――いいでしょう。その言葉、確かに聞きうけました」

 

 そう言って菊理様は桐葉を放した。

 

 戦いは終わったかとアリスは地面に降り、彼らに駆け寄る。抱えられていた千里は降りたと同時に放されたが驚き過ぎた為か、その場から動けずにいた。

 

「結構やられたね。今治癒しますよ」

 

 アリスは治癒符(チユフ)を桐葉の手に置き、発動させる。続いて菊理様に駆け寄る。

 

「菊理様もどうぞ」

「いえ、私はそれほどでもあり―――」

 

 ぷつり、という音が響き、お面が足元の水溜りにボチャっと落ちた。皆がえっと声を漏らすと同時に、菊理様が服はそのままに幼くなってしまった。

 

「く…菊理様?」

「いやあああぁぁっみんといてーーーっ」

 

 自分が幼くなったことで服が肌蹴け、ほぼ裸と気づいた菊理様が顔を赤面一色に染め上げ、声を上げながら両肩を抱いてその場にうずくまってしまった。

 

「ぎゃははははなんじゃその姿わーっ!なるほど、能面を取れんわけじゃ。依存しているというのはほんとうじゃったなーっ!」

 

 と回復した桐葉が腹を抱えて爆笑する。

 

「くううぅぅ……お前もおんなじやろうが~」

 

 菊理様の言うとおり、桐葉はアリスの治癒の符で傷は回復したがあくまで傷のみの回復なので身長は縮んだままだ。菊理様が落とした能面に手を伸ばす。しかしそれを許さない桐葉は菊理様を蹴り倒し、能面を拾い上げる。

 

「おっと、そうはさせんぞくくり~」

「ああっ!?何してくれてんねん?神様やで!わいは神様なんやでーっ」

 

 自分は神様なんだぞと強く主張する菊理様だが、桐葉は能面はこっちじゃあと高く上げ楽しそうだった。

 

「こう見ると菊理様は弱そうだなぁ。あ、一也さん。すそはらい、がんばってくださいね!」

「え?あ、はい…」

 

 アリスはやっと解放されるとものすごく喜んでいたが、まだ解放はされないということを彼女は後に知ることになる。

 

 

 

 

 

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