符術少女とつぐもも   作:【時己之千龍】龍時

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第06話 皇すなお

 

 今日、アリスは加賀見一也の通う学校へ急いで向かっていた。

 

 行くことになった理由は帰り道に受けた母からの電話だった。『すなおちゃんがちょっと前に帰ってきて、今日一也くんに何か仕掛けるらしい』と。

 

 皇すなおは、すそはらいの養成所つづら殿に行っていたアリスの従姉妹だ。それでアリスが一也のところに行くのは、仕掛けるが試合とかだったらマズいと思ったからだ。すなおが何故一也に仕掛けるのか?と気になるところはあるが、それで受けて怪我をしてしまったら指導の期間が延長し、同時に代行期間も長くなってしまう可能性もある。

 

「ええと…」

 

 とりあえずで下駄箱の方へ向かうと大きな音がした。

 

「いた!すなおお姉ちゃん、なにやってるの?!」

「アリス?なんであんたがここにいるの?いいえ、どきなさい!」

 

 一也の前に立つアリスにすなおが怒鳴る。

 

「どきません。一也さん、大丈夫ですか?」

 

 一言返したアリスは膝を着いて一也が怪我してないか確認する。

 

「う、うん…大丈夫だよ」

「おいアリス。こやつは何者なんじゃ?お姉ちゃんとか言っていたが、姉妹か?」

「…従姉妹ですよ」

「アリス。どきなさいって言ってるのよ。あなたには関係ないでしょ」

 

 立ち上がったアリスはすなおに向き直す。

 

「ありますよ。一也さんは私の弟子ですから」

「弟子?なんであんたがそいつを弟子にしてるのよ」

「ええと、まぁ色々とありましてね。ですからおとなしく帰ってください。これ以上一也さんに何かするなら許しません。私が相手をしますよ?」

「相手?紙っぺら使いのあんたが私の相手が出来るわけないでしょ。私はつづら殿で鍛えてきたの。以前のあたしに足元にも及ばなかったあなたがあたしを相手するとか言わないでくれる」

「……いま、なんて言った?」

 

 そのすなおの言葉にアリスはプツリとキレた。

 

「紙っぺら使いの私がなんだって?もう一度言ってくれる?」

 

 アリスの言葉から敬語が消えていた。

 

「聞こえなかったの?今じゃ時代遅れの紙っぺら使いじゃ勝てないって言ったのよ」

 

 数度深呼吸をして落ち着かせたアリスは口を開く。

 

「……わかりました。くくり様のところに行きましょう。くくり様の前ですぐに試合をしましょう。もし私が負けたら口を一切出しません。でも私が勝った時は陰陽術師を時代遅れの紙っぺら使いと言った事の謝罪と今後一也さんたちに害なすことはしないことを約束してください」

「ふん、そんなこと。わかったわ。すぐに行きましょう」

 

 四人はくくり様のいる加賀見宅へ向かった。

 

 

 

 

「菊理媛大神、降神!!」

 

 仮面をつけた子供くくり様が部屋に入ってくる。

 

「降神……じゃねーよっ!!」

 

 桐葉の関節技が見事に決まり、くくり様は仮面を落して涙目で悲鳴を上げる。

 

「ご、ご祭神になにをするっっ??!」

「はわわ」

 

 かなりの驚きを見せるすなおと刀の付喪神『虎鉄』が声を上げた。一也とアリスはいつもの光景とそんな変わらないため、またかくらいの反応だった。

 

 

 

 

「うん、話はわかった。準備もあるし……来週の日曜、四日後でええか?」

「はい」

「構いません」

 

 決まったことで今日は解散となった。

 

「ええと、なんかごめんね」

「なにを謝っているんですか?」

 

 突然の一也の謝りにアリスは首を傾げる。

 

「だってなんか…僕のせいでなっちゃった感じもするし……」

「まぁ最初はそうですね。でも私も符術師、陰陽術師をバカにされたので完全に頭にきてました」

「そうじゃったな。口調も全く違ってたしのう。で、思ったんじゃが……勝てるのか?」

「そうですね。すなおお姉ちゃんが養成所に行く前に手合わせをした時は勝てませんでした。全く歯が立ちませんでしたよ。でも今はこれもあります」

 

 アリスは腰の箱からカードを取り出す。

 

「アリスカード。それに私自身も鍛練を続けて、符術の方も色々と調べては作って、作っては試してを繰り返していました。絶対に勝ちますよ。それに一也さんを指導しているうちにすそはらいになってほしいなって思っても来ました。とても才能があると思いますし、桐葉さんとのコンビもすごくいいと思います」

「うん、ありがとう」

「いいえ。では遅くなってしまいますので、行きますね」

「またね」

 

 一也達と別れアリスは家へと帰った。

 

 

 

 

 

――皇アリス宅・道場

 

「ええ?!すなおちゃんと試合?」

「はい」

 

 アリスは従姉妹すなおと試合をすることになったことを母シズメに伝えると、驚きで声を上げた。

 

「アリスちゃんもあれからすごく強くなって、それに天才的な才能もあるけど……大丈夫?」

「大丈夫です母上。全力で行って来ます」

「うん……でもなんでそんなことになったの?流れから一也君とかなって思ってたのに」

「それは……すなおお姉ちゃんが陰陽術師をバカにしたからです。今じゃ時代遅れとか、紙っぺら使いって。私絶対に許せなくて!」

 

 まっすぐに、強く言うアリスにシズメは驚いた。

 

「そうか、全力で勝ってくるといい」

「父上、帰ってきていたのですか!」

 

 道場に入ってきたアリスの父サイキが頷きながら言った。

 

「さっき帰ってきてな。声が聞こえたよ。それで試合はいつやるんだい?」

「次の日曜日に、土地神菊理媛大神様の社のある神社で行います」

「そうか。見に行くよ。多分向こうの両親も来ると思うからね」

「本当ですか!がんばります」

 

 いつも時間が合わず、休みもそんなに取れない父が来てくれる見てくれると。アリスはすごく嬉しかった。

 

「父上、母上。試合の当日にお見せたい技があります。父上が以前話していたあの古文書に書かれていた事です」

「以前?つぐももやかみがかりなどが書いてある古い本のことか?」

「はい。まだ改良点はいくつかありますが、一歩目の完成はしました。それは私の『アリス・カード』と同等か、それ以上の技なのでお見せしたいんです」

 

 古文書の事とアリスの作った『アリス・カード』の言葉。それでそのカードと同等かそれ以上の技と聞いてまさかと一瞬驚くサイキだが頷いた。

 

 

 

 

 翌日。学校を終えたアリスは胴着に着替え、白山神社に向かった。

 

「手合わせ、お願いします」

「はい。いつでも良いですよ」

 

 仮面をつけ、大人姿のくくり様。その周囲には水の玉『みづまり』がいくつも浮かんでいた。

 

「アリスカード・『刀(トウ)』!」

 

 右腰の箱から引いた『刀』のカードを発動し、カードが刀に変わる。

 

 くくり様は右手を上げ、アリスに向けて振り下ろす。それに合わせてみづまりがアリスへと飛んでいく。

 

「はぁ!」

 

 飛んできたみづまりを近い方で、さらに自分に当たるものを見極め斬り落していくアリス。

 

「ほう、前にやった時よりも腕を上げましたね『みづやり』!」

 

 くくり様は矢状の槍をアリスへ飛ばす。アリスは刀を右手に持ち、みづまりを斬りながら左腰の箱から一枚の札を出して前に出す。

 

「火炎符『剛火壁(ゴウカヘキ)』!」

 

 飛んできたみづやりが剛火の壁に当たって一気に蒸発し、さらに遅れて飛んでいたみづまりも当たっては蒸発していく。さらにアリスは護符一枚とアリスカードを一枚取り出す。

 

「護符『火耐』!『双(ソウ)』!」

 

 二人となったアリスが剛炎の壁を突破して、くくり様の方へ駆ける。

 

「初めて見る符ですね。今回も防げますか?『すずろみづち』!」

 

 槍を飛ばした直後に詠唱して出した水大蛇を二人のアリスへ飛ばす。

 

「アリスカード『鏡(キョウ)』!」

 

 手にすでに持っていたカードを発動し、その目の前にアリスの身長よりも大きな鏡が出現する。そしてもう一体のアリス、本体が新たにカードを取り出す。

 

 水大蛇が鏡に映り、そこから水大蛇が出てくる。

 

「なんと?しかし出来たとしても打ち消し合うはず」

 

 そこで本体アリスが追加で手にしたカードを鏡から出た水大蛇に向ける。

 

「アリスカード『大(ダイ)』!」

「なっ…!」

 

 大の効果で水大蛇はさらに巨大化し、くくり様の水大蛇を飲み込んで進む。くくり様も抵抗とばかりに氷の壁を立てるが巨大水大蛇はそれを打ち砕いた。

 

 氷の壁の砕いた霧のように立ち込めた。

 

「『みづかげろう』ですか」

「そうです。そしてあなたを中心にみづまりを展開しました。この数は防げないでしょう」

「――すみません、私の勝ちです」

 

 直後、くくり様は背後からアリスの声が聞こえ、振り向こうとしたが動けなかった。

 

「体が?」

「忍法影踏み……に似せてみました、アリスカードの『影(エイ)』で動きを止めてます。あとそっちにいるのは『双(ソウ)』というカードで作った分身体です」

 

 そうアリスが説明すると、分身体のアリスが手を振り、煙となって消えた。

 

「声を掛けられるまで私が気づかなかったのは何故ですか?」

「アリスカード『消(ショウ)』の効果です」

「まさか、以前私に苦戦していたあなたに私が負けるとは思いませんでしたよ」

「いえ、くくり様は社が崩れたことで少し弱体化しているのですよね?」

「……はい。言い訳と聞こえるかもしれませんが、正直その通りです」

 

 

 

 

 この後もアリスは戦い方を変えながら、くくり様に付き合ってもらっていた。

 

 

 

 

 

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