符術少女とつぐもも   作:【時己之千龍】龍時

7 / 7
第07話 皇アリス VS 皇すなお

「父上、母上、行って来ます」

「おう、行ってこい」

「がんばってきてね」

 

 アリスは大きく頷き、試合場へ行く。

 

 親指先をかじり、アリスとすなおはそれぞれ血をみずにんぎょうにつける。

 

「あい、契約完了!これにより、それぞれのダメージはこのみずにんぎょうに肩代わりされる。ただし境内の中までやで!」

 

 そしてくくり様が決まりを話す。

 

「みずにんぎょうの効果範囲から出ること。みずにんぎょうが破壊されること。そして降参すること。いずれかで負けになる。心してや!」

 

 そこで間を開けて続ける。

 

「では皇アリスが勝った場合は加賀見一也が上岡の次期すそはらいに。皇すなおが勝った場合は上岡の皇すなおが次期すそはらいとなる。その任を懸けての大勝負。白山妙理大現権、菊理媛大神の名において見届けさせてもらうで!」

 

 両者は頷き、試合のする神社中央の円内に入って距離を取る。

 

 すなおは自分の付喪神を刀に戻し、腰に差して引き抜く。

 

「式神一号『イクス』、行くよ」

「(コクリ)」

 

 アリスは自分の式神『イクス』に一声かけると、無表情で頷き返す。イクスはアリスの式神の一号体で、他三体と違い試作品だ。見た目は初めて作ったために包帯で補強された箇所も多く、一見脆そうな見た目をしている。しかし他三体の試作品というだけあり、汎用性が高く、ほかにはない仕掛けも施されている。

 

 二号体『クリス』は近接格闘と符術支援の式神。三号体『アリア』は刀を使う式神。四号体『マリア』は符術支援の式神。それぞれの特化のみでは不利。アリアでは同じ刀で経験からすぐに技量負けしてしまう。それらがイクスを選んだ理由でもある。

 

 またイクスは他三体よりも活動時間が長いこともあり、よりすばやく動け、より経験がある。

 

「いざ尋常に……はじめ!」

 

 開始と同時にイクスが走り出し、アリスが『双(ソウ)』と『駆(ク)』のカードをイクスに向け発動する。

 

 『双(ソウ)』でイクスが二体になり、さらに片方は『駆』で早く駆ける。

 

「からだち!」

「っ!」

 

 すなおのからだちを避けたイクスはさらに近づき、左右からそれぞれ拳を突く。しかしすなおは二閃で斬りつける。それで分身は斬り付けられ煙になり、本体はギリギリで上体を低くして避け今度はすなおの顎に向け拳を突く。

 

「……ぐっ!」

 

 イクスの突き上げをすなおは柄頭で受け止める。

 

「『繋(ケイ)』!掌打っ!」

「なっ?が…はっ……」

 

 数m離れた距離を自身の前に出現させた丸い円で繋げ、すなおの顔面に掌打を放つアリス。そして戻す際にイクスを掴んで引き寄せた。『繋』のカードは空間を繋げるという特殊なカードなため再度使うには結構時間がかかる。

 

「っこの!」

 

 丸い円を一閃し当てようとするすなおだったが、刃が当たる前にそれは消えてしまった。

 

「イクス!」

「…大丈夫…」

 

 イクスの手を見ると柄頭に当てられた時の傷があったが、幸いそこまで酷くはなかった。

 

 一度使ったカードは種類によって変わってくるが、回復するまで同じカードは使えない。

 

「これを持って。こっちは使って」

 

 カードを2枚イクスに渡す。確認したイクスは頷く。

 

「今度は一緒に行くよ」

 

 アリスは『刀(トウ)』を手に、イクスは『剣(ケン)』を持って向かった。

 

「私にそれで挑むつもり?」

「はい、行きますよ!」

 

 アリスとイクスがすなおに斬りかかる。しかしこの間合いでは明らかにすなおが数段上だった。しかしそこはアリス・カードをフルに使って持たせる。

 

「『圧(アツ)』!はぁっ!!」

「くっ…?!」

 

 アリスの斬り付けに受け止めたすなおは圧倒されたためフッとばされる。同時に受けたダメージがみずにんぎょうに受け皹が入る。

 

「からだち!」

「『鏡(キョウ)』」

 

 アリスの前に立ったイクスが先程持たされていた『鏡(キョウ)』を発動する。出現した鏡から映されたからだちが飛び出て、すなおのからだちとぶつかって相殺し消える。

 

「なかなかやるようになったわね」

「毎日欠かさずに鍛練を続けてましたから。それに符術の技術もあの時に比べたら上がってますよ」

「そうね。その札は初めて見るわ」

「これは私オリジナルで二つとない物です。今日は私達が全力で行き、勝ちます」

「いいえ、勝つのはまた私よ!ちばしり!!」

 

 切っ先を地面に走らせ、砂混じりの斬撃がアリス達を捉える。

 

「『砂(サ)』!組合、『砂刃(サジン)』!」

 

 手にしていた『刀』に『砂』を纏わせ、『砂刃』を飛ばしてちばしりに当てる。しかしちばしりは砂刃を打ち勝ってさらに進む。

 

「(霊気量は同じなのにさっきより威力が?)『盾(ジュン)』!!ぐっ…」

 

 すなおの放ったちばしりは盾の一部を砕いて消えた。そのためアリスにも少しダメージを受けてしまう。

 

「(このままじゃみずにんぎょうが持たない。それ自体はすなおお姉ちゃんも変わらない。さっきのはきっと同じ量の霊気を操作して射程と威力の割合を変えていたんだ。それに…)」

 

 アリスは思考する。盾に当たった時にちばしりが消えたが、その消え方が妙だった。盾を砕き、アリスに当たる直前に消えたのだ。そのためみずにんぎょうは完全に砕けなかったが、射程がさっきほどで盾を砕いたのならアリスは直撃を受けて戦いは終わっていた。

 

「……もうそろそろ、切り札を使わないと危ういかな」

「切り札?」

 

 アリスの言葉にすなおが復唱する。

 

「私の切り札……」

 

 後ろ腰の箱から、巻物を取り出す。

 

「術式が大きい上に、かなり長すぎるから巻物になっちゃたけど…これが私の切り札。イクス!」

 

 封を解き、地に広げた巻物にイクスを座らせる。

 

「秘符術『霊神器化(レイジンキカ)』!!」

 

 イクスの体が光に包まれる。そして光が収まった時、イクスに変化があった。

 

 あちこちに包帯が巻かれているが露出していた関節部。球体人形を素体にしているためその特徴的な関節部を先ほどまでは見せていたのだが、今のイクスにはその関節がなかった。パッと見ただけでもイクスの体が人間のような姿に変わり、固かった体の表面も露出しているところを見ると白くて美しい綺麗な皮膚に変わっていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。