ライトノベル版で見た時から大好きなアリス絵だったのですが、この前の展示販売イベントで実物キャンパスアートを見て衝動的に書きました。
こういうスーパークリエイターに挿絵とか書かれたら幸せなんだろうなぁ。
※pixivにも同じ小説掲載中です
霞ヶ丘詩羽は澤村・スペンサー・英梨々に屋上で話をしていた。当然美術準備室のアリスの絵の話だった。
この時の話は英梨々と詩羽先輩が互いを認めあったキッカケとも言える話で、二人の間では特に重要だったのだろう。
今回はその話の後にあった密な物語――
「ところで澤村さん、私あなたのアトリエにあったあの絵」
「澄んだような清涼感だけじゃなく仄かなエロスを感じるのよね。枕を軽く掴んでる指先とか呆けて仄かに赤くなる頬とか――結局、あの構図ってどういうシチュエーションなのかしら」
「なっなによ、霞ヶ丘詩羽。もしかして人がエロ同人作家だからって、普通の健全絵でも何でもエロを持ち込もうとしてるって言いたいわけ?!」
「そういう訳じゃないわよ、さっき誉めたとおり素晴らしいと思ってるから私も何かあの絵から得たいと思って」
「えっ、そ、そうなの?でも私、何となく不思議な美少女が佇んでる姿をイメージしただけで細かい事何も考えてないのよね。アリス好きだし」
「そうなの……これだから天才肌は役に立たないわね。アレがぼんやりとしたイメージからできてしまうなんて、奇跡みたいな話だわ」
「……ほっ誉めるのか、貶すのか、どっちかにしなさいよ」
「あんまり誉め千切るのも勺だから、後は勝手に脳内変換しなさい。」
「……多分澤村さんの好みで具体化すれば、そうね」
「アリス、夜は冒険の約束だよ忘れちゃったの?」
たくさんのぬいぐるみのある白を基調としていた清楚な趣きの部屋の主はうとうと寝ていた。
昼は二人で遊んでると見せかけあまり出たことのない外の世界への冒険の計画をし、夜にこっそとり館を抜け出す予定だったのだ。
外に出たいと二人で家の者に何度も何度もアリスは訴えて居たが、外は危険の一点張りで聞く耳を持ってくれなかった。
だから行動に出るのだ。
でもアリスが二度寝をしてしまい、オーウェンは待ち惚けを食らってしまってアリスの寝室に忍び込んでいた。
アリスの幼なじみの少年が優しく揺すったり声を掛けてもかろうじて身じろぎするだけだ。
「んん、おはようオーウェン。いつもの、お願い」
アリスそう言って手をオーウェンに向けて引っ張るようにお願いする。
これはアリスのいつもの目覚めの儀式。
好意を寄せる男の子からの目覚めのキス――とは行かないけれど、女の子は誰だって白雪姫のように王子様にロマンチックに起こして欲しいのだ。
事情があってずっとアリスの家で居候しているオーウェンは今朝もやっていた儀式だ。美しい金色の髪と人形のような整った顔のお姫様のナイトであることは、彼にとっては密かな自慢だった。
女の子は男の子を困らせたくなるもの、何時もはされるがまま手を引かれ大人しく起こされるけど、でも今日は違った。
オーウェンがアリスの手を優しく握って引こうとするとき、逆にアリスがオーウェンをベッドの中へ引っ張り込んだのだ。
そしてオーウェンは言葉を失った。アリスもぼんやりとオーウェンと目を合わせたまま、気付かれないほどの弱さで枕をギュッと掴んだ。
それはアリスにとっても予想外の自体なのを表していた。
引っ張られた手はそのままアリスの身体へ飛び込んでしまう。
最近大きくなったかなと、自分で揉みながら聞いてきた胸が手に――
「ってあんなに褒めてたのに思いっきり、エロ同人みたいな導入じゃない!」
「その絵のシーンを切り取っただけだからね、この後も幼い二人が清い感じにチョメチョメ――」
「結局チョメチョメするんかい!」
「ただの商業でもない気晴らしだしね、この世には少しのエロスが必要なのよ。とりあえず二人で冒険の計画をしているとこからを始まりにすれば、そんなに露骨にはならないんじゃないかしら」
「まぁね……………折角だからその前のところと冒険の顛末も書きなさいよ、気になるじゃない」
「……澤村さん、提案なのだけど」
「なによ」
「私が書いてばっかりなのも不公平だから。他のシーンの絵を、ラフの漠然としたイメージ良いから――」
俺の知らない所でいつの間にかにあの二人仲良くなってたんだよなぁ。
英梨々が自分の好きなアリスを描いて、それを見て詩羽先輩が小説を考えた。
英梨々と詩羽先輩はこの日を境に、安芸倫也すら知らない交換小説を始めたとか無いとか――
………………えっお前は知らないんじゃなかったのかって?そんな細かいことは気にしちゃいけません!