CODE:HERO   作:TubuanBoy

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第七話

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

その日、1-Aではクラス委員を決めていた。

こういう学校らしい行事は普通の生徒たちは興味津々だが、大神達C:Bは全くと言って興味がない。

しかし、周りはそうではなかった。

 

「投票の結果……クラス委員は同率3票で緑谷と大神のどちらかという事になった。」

 

 

(どうしてこうなった!!)

 

自己推薦が基本だと思われていたが、短期間で信頼を勝ち取った二人が選ばれた。

緑谷は仲のいい真面目メガネと無限少女が票を入れ。

大神は八百万を推薦し厄介払いしようとしていたが、逆に八百万・渋谷・轟から票を貰った。

轟は尊敬から、八百万はクラスメイトとの関わりを増やす事で改心するのではと考え、渋谷は面白半分だった。

 

「さて、同じ3票が二人…どちらを委員長にしたものか…」

相澤先生の声をはじめに話はこんがらがってくる。

 

「でしたら僕は辞退します。」

「それは行けませんわ!」

 

早々に辞退しようとした大神を止める。

 

「誰が投票したかはわかりませんが、投票した人の思いを無下にするべきではありませんわ。」

 

 ここで引き下がればせっかくの投票が無駄になる。八百万は食らいつく。

「ソウダーソウダー!やれやれ委員長!」

八百万の意見とそれを煽る渋谷。

 

(渋谷ぁ!!)

 

そんな彼らのやりとりにしびれを切らした天才問題児が騒ぎ始める。

 

「大神ぃ!やりたくねぇならすっこんでろ!

あと、デク!テメェには荷が重い!

かわりに俺がやってやるからすぐにそこをドケェ!」

 

「自推1票のお前がやる意味がわからねぇよ。」

「黙れ、アホ面!!」

 

 

「俺がぁ」

「大神さんが!」

「八百万さんが」

 

言い争いがカオスになる頃。

堪忍袋の切れた相澤先生が静止をかける。

 

「お前らいい加減にしろ!!

全員、どうすべきか昼休み中に決めろ!

出来なければ俺が独断と偏見を持って勝手に決める!いいな!」

 

そして結論は昼開けとなった。

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

大神は『エデン』への定時連絡を入れてから食事に向かった。

 

時間がかかってしまったので大神が来た時には既に大半の生徒が食べ終わっていた。

 

大神が少し遅くなった昼食を取っていると食べ終わった緑谷が話しかけてきた。

 

「あれ、大神くんこれから?」

「…えぇ、ちょっと用事がありまして。」

 

お互いなんの因果か委員長になる権利を手に入れたもの同士何か思うところがあるのだろうか、緑谷が珍しく積極的に話しかけてきた。

 

「隣、いい?」

「いいですけど…何ですか?」

 

「えっと…ちょっと大神くんと話したくなってね!

ほ、ほら、僕らちゃんと話したことなかったじゃん。」

 

緑谷はぎこちない言葉遣いで話す。

 

「………何か聞きたいことがあるんですか?」

「あっ、うん。

大神くんはどんなヒーローになりたいのかなって。」

 

「……何ですか。藪から棒に」

「さっき、飯田くんの話を聞いたんだ。

お兄さんみたいなヒーローを目指してるだって。

大神くんは何でヒーローになりたいのかなとか気になったんだ。」

 

緑谷は兼ねてから疑問に思っていた。

何故彼はここに居るのを。

 

緑谷がそう思うのも当然だ。

大神は別にヒーローになりたいわけでは無い。

 

あくまでもワンフォーオールの継承者である緑谷出久の観察と接触する可能性が高いオールフォーワンの確保を目的としている。

 

これまで緑谷と接点が少なかったのは観察対象として近づき過ぎるのは不便だと感じたからだ。

 

しかし、相手が興味を抱きこうして接触してきたのなら強く拒絶することは逆に疑われる。

 

大神は答えた。

 

「そうですね。

僕は相沢先生みたいなヒーローを目指しています。

知名度なんて仕事の妨げにしかなりませんから…」

 

ヒーローになりたいわけでは無いなんて言ったら何故この学校のヒーロー科にいるのかという話になってしまう。

あらかじめそう聞かれた時の対策として用意していた答えを言った。

 

「…………。」

「………どうしたんですか?」

 

緑谷は大神の能面に気がついていた。

 

「なんか、用意された答えを言っただけ見たいだなって。」

 

緑谷は人の感情には鋭い。

それが緑谷の無個性故の才能と言っていいものであった。

 

今度は少し本音を織り交ぜて言い放つ。

 

「……俺には悪に裁きを受けさせられればそれでいい…」

 

大神の本性。

悪を裁く悪の本性が一瞬現れる。

 

緑谷は少し戸惑いながら答えた。

 

「ヴィランを捕まえたいのならヒーローより警察の方がいいんじゃ無いかなって思うけど、大神くんは才能を考えてヒーローの方が活躍できるからって考え方なのかな?」

 

ヒーローそのものが目標ではなく手段なのなら大神が普通のヒーロー志望の生徒と考えが合わないのも頷ける。

 

「たしかにそういう考えのヒーローも一定数いるけど………

あっ!だから炎の個性なのに模擬戦で見せた氷の技を磨いたんだね。

あの捕縛術はヴィランを無傷で無力化するものなのか。」

 

緑谷はいつのまにか趣味のヒーロー分析を開始していた。

 

「あっ、あれ?………」

 

ひとり熱中する緑谷を置いて大神は食べ終わりその場から去っていた。

 

この時、緑谷は勘違いをしていた。

大神の目的がヴィランを裁きを受ける場に立たせるため殲滅では無く制圧を心がけているのだと。

もちろんそう勘違いさせるため、あのような言い方をした。

いくらヒーローと言えど悪を殺せば犯罪だからだ。

しかし、大神の目的は制圧ではなく殲滅。

悪をこの手で裁く。

それがC:B大神零である。

 

(変なところ鋭かったり鈍かったり、やはり今回の継承者は輪をかけて変わった奴だな。)

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

そんな出来事があった後、オールマイト目当てのマスコミが学園に不法侵入した事件が発生。

学校中に響き渡る警報に混乱する。

それにより生徒達が大混乱していたが、飯田がこれを見事収めた。

 

昼開けの最初の授業で、緑谷が委員長に飯田を推薦。

それに便乗して権利の譲渡が可能ならばと大神は八百万を指名した。

 

八百万はそれを渋々了承したが、納得していなかった。

 

その日の帰り掛け八百万は愚痴った。

 

「残念ですわ。

大神さんに委員長を任せられなくて。」

 

大神としては良い迷惑だ。

この学校にいる目的は継承者の観察だけ、それ以外は邪魔でしかない。

 

「余計なことはしないことです。」

 

「私はただ…」

 

「気持ちだけいただいておきます。」

(でも、C:Bである以上俺はそちらには戻る事はない。)

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 大神達が帰っている間、先生方はマスコミが学園に侵入した現場に立ち会っていた。

 

 すると驚くべき惨状が広がっていた。

 

「おいおい、これはどうゆう事だ。

ただのマスコミがこんなことできるわけない。」

 

侵入者対策の隔壁が円形に消滅していたのだ。

 

ただ破壊されていただけでも十分異常なのに消滅していたとなれば尚更異常だ。

 

この事態に校長は先生達に警戒を促し、ある先生に声をかけた。

 

「平家先生はどう考えますか?」

 

白髪の異様な雰囲気を放つその教諭は答えた。

 

「トップシークレット案件ですね。

皆さん、この調査はくれぐれも慎重に…」

 

 

 時は再び動き出す。

 長き眠りから覚めた人の形をした天災は人の世に大きな影響を与えようとしていた。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

-次の日-

 

 大神・渋谷を含む1-Aクラスの皆は災害訓練施設にバスで向かっていた。

 

 その中で生徒達は自分たちの個性について話していた。

 

「それにしても大神と轟の個性って似てるよな?親戚だったりするのか?」

 

 異能も個性も血統で決まることが多い。

 故に親戚や親子が似た個性になる事は多々ある。

 

 大神の一族の異能から派生し轟の一族の個性が誕生したという可能性はあるにはあるが、大神は異能の中でも特殊な血縁でありそれを調べることさえ難しい。

 

 それにそうだったとしたら今の轟は無かったかもしれない。

 

 血筋に氷を扱える炎使いがいるのなら彼の父親も母の血をおっする必要はなかったかもしれないのだから。

 

 轟が嫌な顔をしているのに気がついた八百万は話を逸らした。

 

「そういえばオールマイトと緑谷さんも似てますよね。」

 

 事情の知らないはずの八百万が言い当てたことに大神も本人である緑谷も驚いたが、すぐに否定が入り、話は流れた。

 

 

「まてよ。オールマイトは怪我しないぜ?」

 

 そんな会話の中、大神をじっと見つめるクラスメイトがいた。

 

「…どうしたんですか?蛙吹さん」

「梅雨ちゃんとよんで…

私は大神ちゃんと渋谷ちゃんが近いと思うわ…」

 

「どうしてそう思うのですか?」

 

「上手くいえないけど二人とも命を燃やしてるからかしら」

 

 

「……面白い考え方ですね。」

 

八百万とは別の意味で厄介な存在がいると気づかされた大神であった。

 

 

そしてバスは目的地に到着する。

これから起こる大事件のことをまだ誰も知らずに……

 

 


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