大神達は雄英が保有する施設「
様々な災害現場を再現できるその施設はまるで本物のUSJのようだ。
そこには災害救助で目まぐるしい活躍を見せるスペースヒーロー『13号』が待っていた。
今日は彼と相澤先生とオールマイトの3人で授業を行うはずであったが、オールマイトは遅れてくるようだ。
差し詰め朝から無理をして活動時間が無くなっただけだろう。
授業の開始、13号は皆に忠告をした。
「皆さんご存知だとは思いますが
僕の個性は『ブラックホール』
どんなものでも吸い込んでチリに、してしまいます。
しかし、簡単に人を殺せる力です。
みんなの中にもそういう個性がいるでしょう。
超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。
しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる『行き過ぎた個性』をここが持っていることを忘れないでください。」
13号は自分の個性の可能性をしり、危うさを知った彼らに使い方を知って欲しいと最後に言っていた。
言われるまでもない。
大神の異能の炎は燃え移れば決して消える事はない。殺傷能力抜群の異能だ。
彼は
自分の異能が人を殺せる可能性を知っている。
自分の異能が危うい事を知っている。
故に彼はその力を人を殺す事に使う。
決して消えることのない悪を滅するために。
さぁ、これから授業が始まると思われた瞬間彼らの前に突如黒いモヤが現れた。
「一塊になって動くな!」
皆んなが困惑する中、大神と渋谷だけは状況を理解していた。
(始まったか…)
平和の象徴の世代交代ともなれば彼らの命を狙う輩が出てきても不思議じゃない。
モヤの中から現れたのは掌型のマスクの青年、脳みそ剥き出しの大柄の男、そしておそらくこのモヤを作り出したモヤでできた体の男。
相澤が彼らに睨みをきかせ、13号が生徒を守る布陣。
戦力的には心配のある構成、ここにC:B二人分の戦力があれば別だ…
しかし、大神の仕事は彼らの監視と観察であり、保護ではない。
寧ろワンフォーオールを敵に奪われるくらいなら継承者を殺す事を視野に入れていた。
今、出てきたものだけなら大神は継承者と引き離されないように立ち回り身を潜めるつもりであった。
「初めまして、我々は
僭越ながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは
平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして」
敵の目的も本来は来るはずだったオールマイトらしいので問題無い。
このまま生徒に紛れて退散したほうが良いだろう。
その考えが間違いであった。
モヤから次から次へと出てくるヴィランを相沢が相手する。
大神はその後に遅れてモヤから出てきたフードをかぶった2人に驚いた。
(アイツは………!!)
フードをかぶった2人はそれぞれ全く違うデザインだが、そのうちの一人はかつて戦った同族の陽炎が着ていた服の黒色。
もう一人は白い服だがこれも大神には見覚えがあった。
何処で見たかはここでは説明を省くが、大神が警戒するに十分な者であった。
「みんな!避難を!」
13号の呼び声も虚しく、敵側からの手が皆に降りかかる。
「散らして…殺す…」
黒いモヤ男から放たれたモヤは皆を囲い始める。
「渋谷ぁ!」
「あいよっ!!」
珍種パワー全開!!
渋谷は珍種パワーをあたり一面に幕状態で展開して皆を守る壁にした。
珍種パワーの結界まで見せるのは予定外だが、後でいくらでも言い訳するから今はこの場を抜け出すのが先決だ。
結界はモヤを無効化した。
しかし、その隙を突かれた。
「ネジレロ……」
バギィ!バギ!
黒服の者が手をかざした瞬間、渋谷の腕が捻れ、骨が折れ、肉が裂けた。
「喰ラウ…」
続いて、黒服の者は異様な光を発して渋谷の生命力を吸い始めた。
「ぐはぁ!」
先のは明らかに状態を司る異能
異能は自然界に現存するエネルギーもしくは状態を自在に発生・操る能力。
これは状態を操るタイプの異能だ。
渋谷は中の生徒が個性を使えるように珍種パワーを結界状にした為、敵の異能はその隙をついたのだ。
そして敵の珍種パワー渋谷の様に無効化するだけではなく敵から生命力を吸収できるほど強力なもの。
中途半端に珍種を受け継いだ渋谷が移植された右腕で触れないと行えない事を接触なしで行った。
(こいつ!いま、異能と珍種を使いやがった!…)
「
異能を打ち消す黒き炎。
それで奴の異能を打ち消した。
「何やったかはしらねぇけど!
その個性!俺には聞かないと思うぜ!」
物体をねじ曲げる異能を見た切島は自分の『硬化』なら防げると思い、更に学友がやられている事実を目にしてその正義感から黒服に特攻した。
「てめぇが一番やばい雰囲気を出してるのはわかっているだよぉ!」
爆豪がその天才的な勘で一番危険な存在を感じ取り白服に襲いかかる。
しかし、彼らには自分との力量さがわかっていなかった。
「『地友気』……」
突如、ドーム状の重力場が発生し、襲いかかった二人はもちろんその場の全員が動けなくなった。
「体が重い…」
「麗日さんと同系統逆性質の個性か!?…」
無限少女と継承者が言葉を漏らすが、それは個性とも異能ともそして珍種の力とも違った。
大神はベルフェゴールを身に纏い、重力場を無効化して二人を助けようとするが、その瞬間、敵の攻撃が襲う。
「『鶺鴒眼……』」
白服は一瞬で無数にも増えた。
全ては残像、大神の目にも捉えられない神速のなか、白服は大神にささやいた。
「
大神は身体中に無数の傷を作り倒れた。
C:B二人が動けなくなったところで敵連合は動き出した。
「御二方、ありがとうございます。」
モヤの男は再びモヤを展開して重力場による攻撃で動けなくなっている皆を包んだ。
「大神さん!」
「先輩…」
モヤに包まれる中、渋谷と八百万の声が最後に聞こえるのであった。
13号に直接守られていた数人と相沢を除き、全員が何処かに飛ばされた。
大神達が消えた事を確認すると白服は言った。
「さてと…私たちは帰ります。
ゲートを開いてもらえますか?」
モヤの男は言い返す。
「最後まで手伝ってもらえないのですか?」
「今回、僕らはゲスト扱いですから。」
「目的は達したと言う事ですね。
ではあの二人が噂の…
助かりました。いま、彼等とぶつかるのは得策ではありませんから。」
「ではここで…」
「はい、では先方に宜しくお願いします。」
二人はモヤの中に消えていった。
※※※※※※※※※※※※※※※
飛ばされた八百万は最後の瞬間、渋谷を掴むことができた。
本当は大神も捕まえたかったが立ち位置の関係で出来なかった。
それをしたかった理由は二人の治療だ。
腕がねじ曲がった渋谷に切り刻まれた大神の治療だ。
経験こそないが知識として治療の心得はあるし、八百万なら治療道具も創造できる。
渋谷を優先したのは明らかに重症なのは彼だった為だ。
「あ…ありがとう、八百万さん。」
八百万は渋谷に肩を貸して移動していた。
「早くここから移動しましょう。
偶然敵がいない場所で助かりました。」
あのモヤ男はゲートを任意の場所に開く誰もいない。
この事態を予測したある者が先回りしていたのであった。
八百万がいなくなった場の影には光の紐により無数のヴィランが拘束されていた。
「様子を見にきて正解でした。
丁度ヴィランを始末した場所に八百万さんが飛んでくるとは…
彼等帰りましたね…お互い顔見せといったところでしょうか。」
それはかつて八百万に助言した奇妙な教員であった。
「さて、後は他の先生方と大神くんに任せますか…
まだまだ敵はたくさんいますが、生徒達にはいい経験でしょう。」
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大神が飛ばされた先にはたくさんの敵がいた。
大神は身体中を切り刻まれたがその傷は浅く、少し休めば動ける状況であった。
「おいおい、にいちゃん。
既に傷だらけじゃねぇか。
人想いに殺してやるよ。」
「黙れ…………」
大神は悔やんでいた。
自分がいながらこの失態。
加勢するつもりはなかった。
他の生徒なんて庇う必要はなかった。
継承者も最悪自らの手で始末して仕舞えばよかった筈なのに。
だが、実際は他の生徒ごと庇い、隙を突かれた遅れをとった。
それを差し引いても対応できたとは限らないが…
目の前に現れた彼等は明らかにオールフォーワン以上にC:Bが対処すべき存在であった。
何が
ここまで自分の無力さを痛感したのは数百年ぶりだ。
大神は怒りに燃えていた。
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渋谷を治療し、安全な場所に渋谷を置いできた八百万は大神を探していた。
あれぐらいの傷で大神がどうにかなるとは思ってない。
しかし、相手がヴィランなら彼は容赦せずに彼等を殺すだろう。
大神にこれ以上殺しをして欲しくない八百万は一刻も早く彼を探さなければならなかった。
すると八百万は青い光を発見した。
「アレは大神さんの炎の光…」
八百万は走った。
しかし、時は遅かった。
無数の死体が青き炎に包まれていた。
その中で一人佇む青年は悪魔の様な瞳をしていた………