雄英体育祭第1種目障害物競走
参加する生徒たちはスタートの合図をゲートの前で待っている。その中でとある生徒がある策を実行するべく静かに移動していた。その生徒は背が低くどちらかというとやせていたため迷惑がる人もいたがゲートの前でひしめき合っている現状ではよくあることとして気にされなかった。
「スタート!」
ミットナイトの宣言と同時に3つ目のライトが灯った。その後すぐにとある一角にいた人が地面にめりこんだ。そのさまは上から何かに押さえつけられているかのようだ。そしてその中に爆豪の姿もあった。
「ぐがッ! くそが!」
「どうした? この程度の障害程度切り抜けて見せろよ?」
「てめえか!」
爆豪に声をかけたのはスタート前に移動していた少年だった。爆豪は少年が今の状況をつくりだしたのだと早々に気づき殺気をこめた眼で少年を睨みつけた。爆豪の凶悪な目つきにより普通の人間なら怯えるのだが少年は違った。怒りを込めた眼で爆豪を睨みつけかえしたのだ。
「そうだ。選手宣誓という場で俺たち1年生全員に喧嘩を売ったのだ。もちろん買われる覚悟はあったのだろう? 俺はただお前が売った喧嘩を買っただけだ。何か文句でもあるのか?」
「ぐっ!」
少年の問いに爆豪は言い返せなかった。爆豪が選手宣誓の場で自分を追いこむためとはいえその場にいた1年生全員に喧嘩を売ったのは確かな事実なのである。少年は売られた喧嘩を買っただけ。それに喧嘩を売った張本人である爆豪が文句をつけるわけにはいかない。
爆豪は地面に押さえつけられている現状をどうにか脱しようと地面に向けて掌を向け自分の個性である爆破を放った。だが数秒浮いただけですぐに地面に叩き落とされた。その時、押さえつける力がかかる向きが変わっていたのか爆破によって体勢が崩れたのか、爆豪は地面にうつぶせになるように落とされた。
「この感覚、丸顔の!」
爆豪は最初のヒーロー基礎学でたたかった麗日の個性に近いものだと少年の個性を推測した。確かに少年の個性は重力。麗日の個性の無重力の逆で少年は重力を上げることができる個性だ。
「丸顔? 自分のクラスの生徒の名前すら覚えていないのか?」
少年は爆豪の呟きに呆れの表情を浮かべた。もう入学してから1ヶ月はたっている。それにも関わらずクラスメイトの名前すら把握していないとはどんだけ周りの人間を眼中に入れていないのか。
「あぁ!? 文句があるのか、クソモブ!」
「はぁ。ヒーローになったらお前ではどうにもならない状況に陥ることもあるだろうに。もっとも協力を求めやすい同級生のクラスメイトを覚えていないのはどうなんだ?」
「そんなことにはならねえから問題ねえよ!」
「いや、火気厳禁の現場とかお前にはどうにもできないだろ? いや、何かしらできるかもしれないが誰かに協力してもらった方が素早く解決できるだろ」
少年の正論に爆豪は反論できない。爆豪も少年が言っていることが正しいのはわかっている。ただ感情が認められないだけなのだ。爆豪は誰かに助けを求めることを忌避している。ヘドロ事件の時に緑谷に助けられそうになったことを未だに引きづっているのだ。
「うるせえ!」
爆豪は手のひらから何度も爆破を起こして前進しようとし続ける。ただそれを少年は重力によって阻み続ける。ある種の我慢ゲームの様相を呈してきた。このままでは埒が明かないと感じたのか少年はある決意を固めた。
「ここまで抵抗するとは予想外だった。我が家の家訓に背いて手加減したのが間違いだったか。『犬畜生に喧嘩を売られた時でも全力で勝ちにいけ』。これが我が家の家訓だ」
そういった瞬間少年と爆豪を中心に地面にクレーターができた。どうやら個性であげた重力をさらに上げたようだ。少年と爆豪、どちらの顔も辛そうだ。かなりの負荷がかかっているのだろう。
「ん? 最初が帰ってきたか」
我慢比べすること数分どうやら先頭が帰ってきたようだ。先頭は轟で次は緑谷だった。その緑谷は爆豪の様子を見て驚いている。おそらく爆豪が同い年の人に完全に抑えこまれているなんて状況を初めて見たからだろう。
「かっちゃん!」
「黙れクソデクー!」
つい声をかけてしまった緑谷に爆豪はドスの聞いた声で怒鳴った。その様子に少年は眉をしかめる。どうしてこの2人がこんな会話をしているのか理解できなかったからだ。
「いじめっ子といじめられっ子にしか見えないがどうして親しそうなんだ?」
その疑問は解消されることなく第1種目は終了した。少年と爆豪は最下位を争うことになり第2関門のザ・フォールで爆豪を奈落の底につき落としたことが決定打となり爆号の最下位が決まった。
個性:重力
タイプ:発動系
自分を起点にして周囲の重力を上げる。最大は不明(自分にもかかるので体を鍛えて重力による加重に耐えきれるようになればなるほど上げていける)
自分を巻きこむため無茶苦茶な荷重はおこなえない。
方向は上から下で加重できる範囲は少年の足元を起点とした半径5mの半球である。