仮免試験
第1試験をクリアした緑谷たち受験生に告げられた次の試験はバイスタンダーとして被災現場での救助を行うというものだった。緑谷たちは会場内をある者はグループである者は単独で走り回り救助活動をおこなっていく。
「あれ? なんで?」
そんな中麗日に異変が起こった。なぜか悲しくもないのに涙が出てきたのだ。あくびをしたとかそういう訳でもない。困惑した麗日は原因を探るべく周りを見回すと自分と同様に涙を流して困惑している受験生が何人もいることにきづいた。
「どうなっているん?」
「もしかして涙を流させる個性かしら?」
「そうなん?」
近くにいた同じように涙を流している蛙吹の言葉に麗日は首をかしげる。確かに個性は千差万別である。そういう個性があってもおかしくない。ただどうしてこの場所で使われているのかが麗日はわからなかった。
「多分被災現場で混乱して個性を暴発させる人がいるからそれを表現してるんじゃないかしら?」
「なるほど」
蛙吹の説明に納得した麗日は個性を発動しているであろう要救助者がどこにいるか声を上げながら捜索しているとある瓦礫の下に涙を流している子供を発見した。この付近にはこの子しかいないのでこの子が原因であろうと判断して麗日は近づいていく。
「大丈夫? 助けに来たよ」
「ぐすっ。ひぐっ。・・・・・・助け?」
「そうだよ? どこか痛いところとかある?」
「ぐすっ。膝」
泣いている子供の膝を見ると怪我をしているとわかるように血糊がついている。多分転んで擦りむいたとかそんなところだろう。麗日は持ってきていた応急処置セットを取りだして丁寧に処置を施した。
「もう大丈夫だよ? すぐにパパとママの所に連れて行くからね?」
「うん」
子供が安心したように笑みを浮かべると麗日の涙が止まった。どうやらこの子の個性は自分も涙を流さないと発動しないようだ。現に近くに涙を流すために用意された道具が隠すように置いてあった。
「じゃあまずは救護所に行こうか。そこにあなたのパパとママもいるはずだから」
「わかった!」
元気よく子供が返事を返したことに笑顔を浮かべながら麗日は救護所に子供の歩くペースに合わせて危険なものが落ちていたりしないか注意しながら歩いていく。時々声をかけて子供の様子を確認することも忘れない。
「私はウラビティ。あなたの名前は?」
「私の名前は涙だよ?」
「涙ちゃんか。いい名前だね」
「そうかな?」
「かわいいかわいい」
「えへへっ!」
涙の笑みは演技だとわからないくらい自然だ。麗日も試験中だという意識がどこかになければ騙されていたかもしれない。
「あっ! 見えてきたよ?」
「本当だ! ありがとう、ウラビティ!」
「どういたしまして。さて、涙ちゃんのパパとママはいるかな?」
「あっ! ママ!」
歩いて数分、麗日たちは救護所に到着した。2人はさっそく涙のパパ役とママ役の人を探す。救護所にいた他の受験生にも声をかけながら捜索してすぐ涙がママ役の人を発見したようだ。とある女性を指さしている。
「あの人が涙ちゃんのママ?」
「うん、そうだよ!」
「よかったね涙ちゃん。ママに会えて」
「うん!」
涙は笑顔を浮かべながらママ役の人に向かって走っていく。その後を慌てて転んだりしないか心配しながら麗日がついていく。麗日の懸念は杞憂で涙は転ぶことなくママ役の人に抱きついた。
「ママ!」
「涙! よかった!」
「それじゃあ私は他の人を探しに行きますので」
親子の感動の対面である。ちょっと泣きそうになりながら麗日は声をかけて他の要救助者を探しに向かった。
個性:涙
タイプ:発動系
相手の涙腺を刺激して涙を流させる個性
発動のためには自分も泣く必要がある。(成長すれば克服できる可能性がある)
効果範囲は発動者を起点にして半径50mの球形である。地面に潜っている相手にも有効。