オリジナル個性   作:雨の日

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個性:継承

 とある病院の一室

 痩せぼそりまさに死ぬ間際という感じの老齢の男性がベットに寝そべっている。そばには男性の妻であろうか。同い年くらいの女性が手を握っている。その様子を少し離れた場所で白衣を着た医者であろう男性が邪魔しないように見守っていた。

 

「失礼します。私に依頼という事で参りました」

 

 そんな病室にノックの後男性が入ってきた。容姿は黒髪のオールバックにサングラス、黒いスーツに黒の革靴、黒のネクタイをつけた赤めの目つきの鋭いまさにヤクザかその関係者かと疑ってしまいそうになるような感じだった。ただ、その容貌とは裏腹に言葉は丁寧で何か人を安心させる雰囲気を醸し出している。外見と内面がかなりズレているように医者は感じた。

 

「よう来てくださいました」

 

「依頼主の雅子様ですね?」

 

「はい」

 

「なされるのは・・・・・・」

 

「主人です」

 

「お相手は?」

 

「息子の聡に」

 

 ベットのそばで寝そべっている男性を見ていた女性、雅子に男性は依頼内容を確認する。その目は虚偽を一切許さないと雄弁に語っていた。それを感じたのか嘘をつこうと思っていなかったのか雅子は男性の質問に簡潔に答えていく。

 

「わかりました」

 

 確認事項を終えたのか男性は寝そべっている男性に近づき手を握った。すると寝そべっている男性の手が光りだしその光が握っている男性に移っていった。完全に光が映ったのを確認した男性は手を離した。

 

「これにてここで出来ることは終わりました。聡さんは今どちらにおられますか?」

 

「下の受付におるはずです」

 

「そうですか。ここに呼んでいただくことはできるでしょうか?」

 

「わかりました」

 

 雅子は男性の問いかけにこたえて息子の聡を呼びに病室を出ていった。男性はそれを確認するとまだ病室にいる医者に近づいていく。その目には殺意のようなものがうかがえる。

 

「私は基本仕事中に部外者を入れません。何故だかわかりますか?」

 

「いっいえ。私には皆目見当もつきません」

 

 男性に見られて医者は顔色を悪くさせる。男性はただ見ているだけであるのに睨みつけているように見える。目の奥の殺意に気づいてしまった医者はより怖かったであろう。

 

「不確定要素を排除するためです。では何故貴方がここにいられたかわかりますか?」

 

「いえ」

 

 男性は説明をしながら医者に近づいていく。その距離は最初から近かったこともあってすぐだった。顔色が悪い医者の首根っこを男性は手で掴んだ。医者は掴まれて息が苦しいのか首を掴んでいる手を必死に外そうとする。だが、身体能力が違いすぎるのかぜんぜん外れそうになかった。

 

「貴方がこの男性に毒を盛ったからです」

 

「・・・・・・!?」

 

「証拠は? っとでも言いたそうですね? ちゃんとありますよ」

 

 男性は懐から何かの液体が入った注射を寝そべっている男性にうっている医者の写真を取りだして医者につきつけた。その写真を見て悪かった顔色がさらに悪くなった。

 

「調べたところこの注射器に入っていたのは遅効性の毒薬でした。もちろん看護士たちの証言も得ています。貴方に逃げ道はありませんよ?」

 

 男性は凶悪な笑みを浮かべながら殺気を医者にピンポイントで放つ。医者は殺気に当てられてからすぐに気絶した。そのことを確認した男性はさっき寝そべっている男性の手を握った方とは逆の手で気絶した医者の手を握った。すると先ほど同様に医者の手が光りだしその光が男性の手に移っていった。

 

「隠さないといけませんね」

 

 気絶している顔色の悪い医者。そんなものが病室に会ったら相手に不安を与えてしまうと考えた男性は素早く慣れた手つきで医者を隠した。まるでそういうことをするのに慣れているかのように。

 

「呼んできました」

 

 気絶した医者を男性が隠し終わってから数分後、雅子さんが目元がよく似ている男性を連れてきた。おそらくその男性が雅子さんの息子なのだろう。

 

「初めまして聡といいます」

 

「初めまして私は継承ヒーロー『ゲイン』といいます。間違ってもヤクザではありませんよ? もちろん敵でもありません」

 

 ゲインの冗談に聡は苦笑いを浮かべた。ゲインの容姿を見たら必ず連想されることだからであろう。

 

「それで・・・・・・」

 

「依頼の件ですね? ではさっそく始めさせていただきます。聡さん、私の手を握っていただけますか?」

 

「わかりました」

 

 緊張した面持ちで聡はゲインの医者の手を握ったほうの手を両手で握った。その上にゲインが寝そべっている男性の手を握ったほうの手をその上に重ねた。そしてゲインの両手が光りだしその光が聡の手に移っていった。

 

「終わりました。確認しますか? 今回は特別にここでおこなう許可をもらっていますので」

 

「はい」

 

 聡は緊張した面持ちで左手をゆっくりと顔を扇ぐように動かした。すると聡の動作では普通風は起きないはずなのに聡の顔に向かって風が吹いた。まるで風を操っているかのように。

 

「本当に夫の個性が!」

 

「本当に親父のが!」

 

 雅子さんは涙をこぼしながら聡の個性を発動している様子を見ていた。聡も本当に発動できるとは思っていなかったようで目を見開いた後涙を流した。涙が出るくらい嬉しかったのであろう。

 

「これで依頼の件は終わりました。私はこれで失礼させていただきます」

 

「もうですか! 何かお礼をさせてもらえませんか? ここまでしてもらってお礼の1つもしないのは・・・・・・」

 

「そうです。何かお礼をさせてください」

 

「困りましたね。私は依頼を受けてそれを遂行しただけです。お礼をされるようなことはしていません」

 

「それでも!」

 

 ゲインは困ったような顔を浮かべながら雅子さんたちを見る。そしてなにを言っても引かないであろうと察すると懐から名刺をおさめるケースを取りだして中から名刺をとりだした。

 

「そのお気持ちだけで十分です。もしそれ以上お望みなら困った時に呼んでください。ここに私の事務所の電話番号が書かれていますので」

 

 ゲインのこの行動は暗にこれを使ってお礼のために自分を呼んでほしいということと困った時にまた頼りやすいようにという2つの意味があった。それに雅子さんたちはすぐに気づいた。

 

「わかりました」

 

「ええ。また頼りにさせていただきます」

 

「それでは改めて失礼させていただきます。報告書などの書類作業をしなくてはなりませんので」

 

 雅子さんたちに別れを告げゲインは病室を後にした。聡に黙って追加したとあるもののことを伝えることはせずに。




個性:継承
タイプ:発動系
個性を継承させる個性。継承した人(渡す人)は無個性になり継承された人(渡された人)は元の個性を継承した人の個性に上書きされる。(複数の個性を継承することはできない。1人につき個性は1つだけである)
継承したい相手の手を握ってその手にその人の個性をストックしてその手で継承されたい相手に触れることによってストックした個性を渡すというプロセスが必ず必要になる。
ストックは片手につき1つで自分で使うことはできない。ただ、両手に1つずつストックした個性を融合させることはできる。(今回の場合は医者の特殊な毒生成の個性と寝ている男性の風の個性を融合させて毒風(毒のオンオフ可能)を起こす個性にしていた)
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