オリジナル個性   作:雨の日

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個性:注射器

 とある病院

 その病院にはたくさんの病気で入院している患者がいた。そういたのだ。過去形である。それは何故かというととあるヒーローのおかげであった。

 

「全員の快癒を確認しました」

 

「ご苦労」

 

 白衣を着て眼鏡をかけている一見医者のように見える男性。ただ、背中側から見るとおかしいものがあった。それは白衣の背中にある刺繍である。空から龍が地面にいる虎をにらみつけているというその刺繍は医者の白衣に刺繍されるには相応しくないと言わざるを得ない。

 

「ミスター病。此度は当方の病院に来ていただきありがとうございました」

 

「礼はいらない。これが私の仕事なのだから」

 

 病院の院長だろう人からのお礼に病は何でもないことだったとかえす。その様子に院長は尊敬の目を向ける。そんな医院長の様子に病は内心で照れながら表には出さない。

 

「それでもです」

 

「・・・・・・わかった。その礼を受け取っておく」

 

「ミスター病! 次の案件です」

 

「そうか・・・・・・急いだ方が良さそうだな。それでは院長、私はこれで」

 

「はい! お気をつけて」

 

 相棒が病を呼びに来た。どうやら緊急性の高い病気を持った患者が搬送されてきたらしい。事は一刻を争う。病はそう判断し院長に失礼する旨を伝えると病院を後にした。その様子を院長は見えなくなるまで見送った後仕事に取り組むべく院長室に戻った

 

「・・・・・・これは」

 

 院長室で院長が最初に見た書類はこの病院の改善点をまとめたレポートだった。今の経営状態でも維持できるようなるべくコストを抑えるようにしながらも設備を充実させる方法や常備しておいた方がいい薬のことなどがわかりやすく書かれている。これは病が病院を去る前に相棒に頼んで提出したものだ。

 

「ありがたい」

 

 院長も今のままではまずいと感じていたのかレポートにまとめられているもので即時に実行可能そうなものを実行するように部下に指示をだした。理由を聞きたそうなものにはレポートを見せることで納得させた。

 

「今のヒーローの中では治療に関する個性を持つ稀有な人だ。性格も容姿も悪くない。礼節もしっかりとわきまえているし必要最低限の料金の請求しかして来ない。私たち小さい地方病院にとってはありがたい人だ」

 

 そんな風に病は評価されていた。本人はそんなことつゆ知らず依頼された病院で治療をおこなってまわっていた。1日で全部の病院に行くことはできない。なので緊急性の高そうな案件を中心にしている。それでも朝から晩まで駆けまわることになる。

 

「治療系の個性持ちは貴重だ。そして私はいつ敵に殺されてもおかしくない。地方病院だろうと設備を充実させてもらえないと困る」

 

 これが病の本音であった。ただ病も全部の病院に最新式の設備を備えさせることができるなど思っていない。その病院の経営状態を把握してできそうなラインを割り出して助言しているだけだ。まぁその助言が的確であることによって病院関係者に尊敬される羽目になっているのだが。

 

「ん? この病院は?」

 

 病はとある病院に違和感を持った。経営状態は地方病院の中では平均的といったところだが設備が一部おかしい。この経営状態ならもっと良い設備を備えることができるはずなのだ。病院の設備が悪いことは院長の怠慢である。それが許せなかった病は院長に直訴すべくその病院に向かう。

 

 その病院は神野区にあった。ついたのは夜中。院長室だと思われる場所と宿直室に明かりがともっていることを確認して病は病院に踏み込んだ。そして違和感を感じた。報告書より患者の数が少ないことと地下に役所に届けられたものには記載のない階層があることに気づいたのだ。

 

「きな臭いな。だが進まないわけにはいかない。患者のためにも」

 

 病はヒーローでありヒーローは人命を守るものであると定義していた。目の前に人命を損なおうとしている輩がいるのなら即座になんとかする。そうするのが当然だと思っていた。見返りなど求めたことはない。ステインが知ったら喜びそうな男であった。

 

「入ってもよろしいでしょうか?」

 

「構わぬ」

 

 中にいた院長の返事に病は警戒しながら部屋の中に入った。院長の言葉を聞いてからすぐに病の頭で警鐘が鳴り始めたからだ。だからこそ院長を見た瞬間即座に動くことができた。

 

「貴方を拘束させていただく」

 

「うぐっ!」

 

「抜けられると思うな」

 

 院長が持っていた注射器を取り落とす。中には何か液体が入っていた。病はそれが何かすぐに分かった。敵とのたたかい中に何度か見たことがあったからだ。

 

「毒物か。なぜこんなものを携帯しているんだ?」

 

「ふっ! ぐっ!」

 

「あぁ喋れないんだったな。なら別にいい。正直に答えるとは思っていないからな」

 

 その淡々とした事務的な対応に院長は一瞬硬直する。普通ならもっと問いただそうとして拘束が緩んだりする。そこを狙えば脱出できると院長は目論んでいたのだ。そして病はそんな院長の目論見を読んでいた。

 

「さて署の方でいろいろと話してもらおうか。もうすぐ警察が来るはずだからな」




個性:注射器
タイプ:変形系
腕を注射器の形に変形して相手の体内にある病原菌などを抜き取る。逆に栄養剤などを注入することもできる。
普通なら治せないものでも治せる薬を体内で生成することができる。(脳卒中とか心筋梗塞とか認知症とか現在治療不可の病気などを治せる)
さしてもあまり痛くない。

ちなみに
この病院は敵連合とつながっていた。結果林間合宿前に敵連合の本拠地に襲撃をかけることに成功した。
病院の違和感に気づけたのは病の長年の経験によるもの。普通設備にどれだけお金をかけているかなど知るはずがない。
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