とある病院
生まれたばかりの赤ん坊がいる部屋に初老の女性がいた。その顔には慈愛の表情が浮かんでいた。その表情から彼女は赤ん坊が好きなのだろうと容易に推測できるくらいに。
「やりましょうか」
女性はそう言い歌いだす。それは子守歌のようで聖歌のような人を安心させつい聞いてしまうような歌だった。初老の女性だというのにその歌声は美しく歌手になれば歌姫と称されるくらいだった。
歌声が部屋に響く。歌が進むにつれて赤ん坊たちの体から光がでてくる。その突然の事態にも関わらず見ている医療関係者たちは取り乱したりしない。そういうものだと受け入れているみたいだった。
「ふふっ。これでいいかしら?」
歌が終わる。初老の女性は笑顔で近くの医者に聞く。その医者は初老の女性の言葉に頷く。その様子に満足そうに初老の女性は笑みを浮かべる。
「それでは私は他の病院に行かせてもらうわ。私を待っている人たちがいるもの」
「はい、ご苦労様です」
「ふふっ。このくらいのことなら別にかまわないわ。それにこれが私の仕事だから」
初老の女性は笑みを浮かべながら医者にこたえる。その笑みは慈愛に満ちていて作り笑いにはとても見えない。初老の女性は本当にこの仕事が好きなのだろう。
初老の女性は笑みを浮かべながら病院を後にする。そして他の病院でも同じことをしていった。行った先の病院で感謝されながらも初老の女性は体力が続く限り続けた。それが自分にできる唯一の仕事だからと言わんばかりに。
「私はオールマイトみたいにはなれないからね。このくらいのことはしないと」
「先生が責任を感じる必要はないのでは?」
「そうなのだけれどね。でもオールマイトはおそらくもうすぐ・・・・・・」
「もうすぐ?」
初老の女性は言いよどむ。それに初老の女性の足になっている運転手謙助手の男性が続きをうながす。それに答えていいか逡巡した後初老の女性は素直に話すことにした。彼が誰かに話すことはないと信頼して。
「オールマイトには活動限界があるの」
「そうなんですか?」
「ええ。とある敵とのたたかいの時に受けた怪我でね」
「そうなんですか。あれ? これ私が聞いていい話じゃないんじゃ・・・・・・」
「ふふっ。誰かに話したら大変なことになるわね」
「うわあ。訊かなきゃよかった」
「ふふっ。もう遅いわ」
「わかりました治安のためにも誰にも話しませんよ」
「ええ。その辺は信頼しているわ」
運転手は今更だが自分が聞いてはいけない秘密を聞いていることに気づいた。だが初老の女性は笑みを浮かべているだけだ。最終的には運転手は初老の女性の信頼にこたえて口をつむぐことを約束した。
「だからこそ、ですか」
「ええ。オールマイトの後を継ぐ者が必要になってくると思うのよ」
「なるほど、納得です。だからここ最近精力的に動いているんですね」
「ええ。それがなければもう少し仕事を抑えているわ」
「瑠衣様の個性はそういう方面に使うものですもんね」
「そういうこというもんじゃありませんよ」
「すっすいません。瑠衣様」
瑠衣と呼ばれた初老の女性は運転手をたしなめる。どんな個性だろうと使いようだ。瑠衣の個性は確かにそういう方面で使うものだがそれでも言い方というものがある。運転手の言い方ではその方面でしか使えないと言っているようなものだ。
個性だけで使える使えないと決めつけるのは愚かだ。どんな個性だろうと使う人間によってどうとでもなる。悪い方にも良い方にも個性は使える。そのことを運転手も理解しているのかすぐに瑠衣に謝った。
「どんな個性であろうとヒーローにはなれるわ。ただ無個性では厳しい」
「瑠衣様でもそういうこと言うんですね」
「ふふっ。でも無理ではないわ。厳しいだけで。最後はその人の意思次第よ」
「そういうものですか」
「そういうものよ」
無個性の人間は下に見られやすい。瑠衣もそのことは認める。ただそれだけでヒーローになれないと断言することはできない。無個性だろうと個性持ちだろうと最後はその者の意思次第だ。
ヒーローになりたいと思えなければどんな奴でもヒーローにはなれない。それは一種の真理だ。そして敵になりたいと思い行動すればその者は敵になる。瑠衣はそういう人を減らすために様々な活動をしていた。結果が出ているのかはよくわからないが。
個性:祝福
タイプ:発動系
歌を聞いた相手を祝福する。(どんな効果を発揮するかは瑠衣にしかわからない)
基本的に良い効果が付与される。
歌を聞かせたというプロセスが必要なだけなので耳が聞こえなくても言葉がわからなくても問題ない。