とある工場
廃棄品が集まる工場でとある男性は働いていた。廃棄品の前に移動するとこぶしを握り締めて廃棄品に向けて振り下ろす。すると廃棄品は木端微塵に粉砕された。
「いい調子だな」
男性はそのさまを見て満足そうにうなずくと次の廃棄品を取りだして拳を振り下ろす。すると次の廃棄品は一部を除いて粉砕された。その一部は金や銀が使われている部分だった。
「指定金属以外の粉砕もできた、と」
男性はその成果に満足そうな笑みを浮かべて金と銀を近くにあった容器に入れて廃棄品に向き直る。それから夕方になるまでひたすら廃棄品を殴って粉砕していった。
「今日はこれまでだな」
夕焼けを見ながら男性はそう言い金と銀が入った容器をもって移動を開始した。そして数分後男性はとある店に到着した。そこは金や銀などの貴金属を専門に買取をしている店だった。
「店主、今日もやってきたぞ」
「おう」
店の店主も男性の用向きがわかっているようで男性から容器を受け取ると重さをはかって買取価格を言う。それに文句を言わず男性は店主からお金をもらった。その様子はほぼ毎日おこなわれているかのようにスムーズだった。
「それにしてもこんだけの貴金属をどうやって集めているんだか」
「それは店主もわかっているだろう?」
「わかっているが理解したくないんだよ。不法投棄されたものから手に入れているなんてな」
「ふん。わかっているんじゃないか」
店主の言うように男性が粉砕している廃棄品はもともとは不法投棄されたものだった。それを政府が男性に個性が発現してからすぐに押しつけるようになったのだ。男性の個性なら廃棄品をすぐに処理できるからと。
男性は政府の命令に逆らうことができず最初は全て粉砕していたのだがやっていくうちに指定したものを粉砕しないようにできるようになっていき今回のように貴金属を売ってお金を得られるようにまでなった。
男性はそれにより政府から支払われる申し訳程度の給金と貴金属を売って得たお金で何とか人並みに生活できるようになったのだ。できるようになるまでは本当に大変だった。病気なんかにかかったら路頭に迷うことになっていただろう。
不当投棄されることがなくなれば男性は生きていけなくなるがこの国で不法投棄がなくなるなんてほぼあり得ない。故に男性の生活もほぼ安泰である。どこぞのヒーローが不法投棄をどうにかしようとしているらしいがその時まで廃棄品を処理するのは男性になるだろう。長年やってきた経験者なのだから
「あいつのほうはどうなんだ?」
「全然進んでいないみてえだな」
「やっぱりな」
「ああ。この国で不法投棄をなくすのはかなり難しいことだからな」
「国自体が進めようとしていないって聞いたが・・・・・・」
「お前さんがいるからな」
「俺が死んだらどうするんだか」
「そんなこと俺に言われてもな・・・・・・」
案の定ヒーローの方は全然進んでいないようだ。国としても規制したいのだが予算の都合でどうしようもなく最悪男性にすべてをまかせればいいと思っているのかヒーローや一部の国民からの嘆願に耳を傾けようとしていない。
男性が死んだらゴミ王国と化すのが目に見えている現状を理解している政府関係者はほとんどいない。なぜなら男性に不法投棄されているものを何とかするように依頼してから不法投棄されているものの量などを正確に把握することを政府が辞めてしまったからだ。
「不法投棄されている? ならあいつの所に持っていけ。そうすればしっかりと処理してくれるはずだ」
住人からの嘆願に政府高官はこう返したそうだ。こう政府の高官が言ってしまうくらい男性にゴミの処理の部分を依存してしまっている。この国は大丈夫なんだろうかと一部の国民は不安に思っているらしい。
「すまんな。あんたに言ってもどうしようもなかったな」
「気にすんな。そう言いたくなるのもわかるからな」
個性:粉砕
タイプ:変形系
握り拳をぶつけたものを粉砕する個性で個性発動時に握り拳がボクシンググローブのように変形する。
指定したものを粉砕しないようにすることも可能。(何度も繰り返しているうちに可能に)