ゴブリンスレイヤー ~シャドウ・ラン~   作:使途のモノ

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第三話 見上げる蒼い星

 空には蒼い星が浮かんでいた。

 

 人類は、アソコから来たらしい。

 

 だからどう、というわけでは無い。

 

 “月の廃棄物”とか呼ばれる孤児である自分たちには空の向こうの昔の話だ。

 

 老いて死にに来るこの緑の月も、その老人向きのサービスがあって、働く人間がいて、そうすれば子供も産まれて、だから捨て子も居る。

 

 ただ、それだけの話だ。

 

 月産まれ、というのはそれだけで良くは見られない、と自分が所属するストリートギャングの団長は言っていた。

 

 ここで代を重ねすぎると低重力に体がチューニングされていって虚弱化、つまりゴブリン化していってしまうということだ。

 

 だから、ここでの出産は“ナシ”にしたい。

 

 この国、この世界で、ゴブリンの悪名以上の存在はそういない。

 

 故に、そんな女達は、多いらしい。

 

 あの星に行ったこともないし、この月で自分たちが蔑まれるのはいつものことだ。

 

 団長の言うとおり、殺して、奪って金にする。

 

 この世の最果てで産み捨てられた俺達に他の道は無い。

 

 

 

 

 強化外骨格、パワードスーツと呼ばれるソレはピンキリだ。

 

 サイボーグ化と比較した利点は自分の肉体を削る必要が無いこと。

 

 達人や術者というものは、サイボーグ化を選ぶことが出来ない。

 

 己の持ち味を潰すことになるからだ。

 

 どちらでも無い自分が強化外骨格を使っているのは、ただより強さが欲しいときに手に入ったモノがサイボーグのパーツではなく、強化外骨格であった、ただそれだけの話である。

 

 神経接続型の旧式。

 

 そのための手術は、幼馴染みの少女がやってくれた。

 

 俺に埋め込まれた強化神経はどうやらオーバースペックだったらしいが、使う分には問題ないのでどうでもいい。

 

 堅く、俊敏に、確実に殺す。

 

 それだけでいい。

 

 俺が団長の使う武器であって、それでみんなが生きていけるなら、それ以上のことは無い。

 

 今日もそんな日だった。

 

 団長の作戦通り、動いて、殺して、奪って大もうけ。

 

 それで、仕事の前に飲んだ戦闘用のドラッグが抜けてきて、トレーラーハウスの寝床に戻って横になろうとして。

 

「……」

 

「……」

 

 家の前に、なんかいた。

 

 

 

 

 若い女。

 

 少女だ。

 

 縋るように持つ骨董品のような二振りの剣以外、何も持っていないような出で立ちだ。

 

「そこ、俺の家なんだけど」 

 

 ぐい、と強化外骨格のヘッドパーツを空けて淡々と少年は言う。

 

「あ、ご、ごめん……」

 

 びくり、と震えた様子で、少女は少年を見上げ、しかし動こうとはしない。

 

 きゅる、きゅる、ぐぅぅ。

 

「ぁぅ………」

 

 恥じらうも、立ち去る様子はない。

 

「なんだ、お前、腹減ってんの?」

 

 その音に察しがついた少年は直裁にそう言う。デリカシーなど無い生活だ。

 

「う、うん……」

 

「ふーん」

 

 ちろり、とこちらを見上げてくる少女の視線に無造作に銃口を向ける。

 

「ひっ、……ひゃんっ!?」

 

「うるさい」

 

「っ……はい……んっ……」

 

 そして、ボディチェック。

 

 無遠慮なまでに触れて回り、コムリンクと剣以外武装が無いことを確認する。

 

「剣にコムリンクだけ……」

 

「アデプト」

 

「へぇ、初めて見た、普通の体だったけど」

 

 弾を切り払い、避け、鉄板を易々と両断してのける魔術の如き武術の遣い手。

 

 それが、食うや食わずである。

 

「ぅぅ……」

 

 ガチャリ、とドアを開ける。

 

 中には、冷蔵庫とマットレス、シャワーとシンク、テレビと銃器、強化外骨格用のハンガーそれだけだ。

 

「先に入れよ」

 

「……え、い、良いの?」

 

「家の前で襲われたり斬った張ったされても面倒だし」

 

 淡々と事実だけを述べる口調に、そろそろ、とおびえた猫のように室内に向かう。

 

「……お邪魔します」

 

 剣を壁に立てかけさせ、チーズ味の固形食料を渡すとガツガツと食べ出した。

 

 自分も強化外骨格を脱いでハンガーに掛けてから食べ始める。

 

 “草創期財閥”の一つ、寄食飯店の商品で、自分からすれば高級品だ。

 

 ぽつり、と言った名前は、最初名前だと気づかなかった。

 

 喋り始めた事によると、この剣客少女はシャドウランナーの、見習いらしい。

 

 庇護してくれていた者が死んで、色々あって先祖伝来の剣だけ抱えてここに流れ着いたらしい。

 

 ままある話だ。

 

 この世界、落ちて流れ着いてく場所はそう多くない。

 

 この月か、蒼い星の犯罪都市か、そのほかの大都市の大きくて深い影の中。

 

「そっか、じゃぁ俺寝るから」

 

 飯も食い終えたし、団長に帰宅の連絡だけを入れれば、用は無い。

 

「えっ……」

 

 ドラッグの残りか、眠気はすぐに来て意識は闇へ落ちていった。

 

 

 

 まさか、居着くとは

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