ひぐらしのなく頃に 酔醒まし編   作:赤いUFO

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酔醒まし編其の参【調査】

 学校のお昼休み。昼食を食べ終えた梨花は魅音に相談があるから少し人のいない場所で話したいと持ちかけた。

 

 

 

 

 

「どうしたの、梨花ちゃん?梨花ちゃんが私に相談なんて珍しいね~。あ、もしかして恋の悩みとか?」

 

 やや茶化した言い方で梨花の相談を問う魅音。これは彼女が梨花の相談を軽んじている訳ではなく、魅音なりに相手をリラックスさせて話しやすい空気を作ろうとする気づかいだった。

 これは相談というものが、されるよりする方が気が重いということを知っているが故のもの。

 それを感じ取った梨花は安堵の笑みを一瞬だけ浮かべたが、すぐに意を決したように魅音に問う。

 

「魅ぃ……富竹と鷹野のことですが……」

 

 梨花の問いに魅音の顔が険しいモノに変わる。

 ニュースなどでは富竹は雛見沢周辺で死体が、鷹野は県外で発見された。しかし、それがまだ富竹と鷹野だとは断言されておらず、身元確認中と報じられていたが。

 魅音は僅かにどう答えるか悩んだが、この村にいる限りいつかは知られることだろうと正直に話すことにした。

 もちろん梨花の年齢を考慮してオブラートに包み。

 

「……うん。綿流しのお祭りの後に、ね。まだ身元は確認できてないらしいけど、間違いないだろうって警察は見てるみたい」

 

 まだ発表はされていないが、警察は別々に見つかった2人分の遺体が十中八九富竹と鷹野のモノだと当たりをつけていた。魅音がそうした情報を手に出来たのは警察署が置かれる興宮でも大きな影響力を持つ園崎家の次期当主故だった。

 

「そう、てすか……」

 

 目を閉じて空に顔を向ける梨花に魅音は痛ましい気持ちになる。

 カメラマンの富竹二郎とは祭りの夜に一緒に遊び回った仲だ。最後の別れ際に彼のシャツに部活メンバーでまた来て下さいとか写真を見せてほしいだのと書いて雛三沢から送り出した。

 そんな彼がそのすぐ後に亡くなったなどとショックを受けているのだろうと察する。

 鷹野三四にしてもこの小さな村の顔見知りだ。心に何も響かない訳がない。

 

「もう今年で5年目なのです。お魎は、今回の事件についてどう考えているのですか?」

 

「どうって……なにが?」

 

 僅かに目を細める魅音に梨花は続けて問う。

 

「今年で連続怪死事件も5年目なのです。お魎はこれに関してどう思っているのですか?」

 

「ん~。でも結局は警察の仕事だからねぇ。やっぱりこれまで通りなんじゃないかなぁ」

 

「でも!!」

 

「梨花ちゃん!」

 

 尚も言葉を募ろうとする梨花に魅音は強い口調で遮る。

 李かはその目に怖気が走った。

 こちらを射抜くような眼光。今まで見たことのない魅音の姿に梨花は竦んでしまった。

 

「梨花ちゃんがなにを言いたいのか口にしないけど。これは警察の仕事だって言ったでしょ?ならそれが全てだよ。あまり余計なことはしないでもらえるかな?」

 

 もしこれ以上調べるならこっちにも考えがある。魅音の強い口調はそれを暗に示唆していた。

 そしてこちらを睨む魅音に梨花は動けないでいる。

 

「みぃ。ごめんなさいです……」

 

「ううん。判ってくれたならいいよ。こっちも強く言い過ぎた、ゴメン」

 

「いいえ。ボクは気にしてないのですよ、にぱ~」

 

 そうして笑顔を取り繕う梨花に魅音はいつも通りの気持のいい笑顔を見せた。

 それじゃ、戻ろっかと梨花の手を引く魅音。

 先程一瞬に見せた魅音の姿に小さな棘が打ち込まれたのを気付かぬまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の放課後。梨花は図書館で過去に起きた連続怪死事件の記事を広げていた。

 もしかしたら過去の事件に自分が殺される理由が無いか縋るような思いで。

 しかし過去の事件。特に自身の両親の死因をどう調べてもなぜ自分が殺されるのか皆目見当もつかない。

 梨花がこの村での自身の価値を知っているだけに余計。

 そんな梨花に聞き覚えのある声が鼓膜に届く。

 

「んっふっふっ。珍しいところで会いますねぇ。古手梨花さん」

 

 現れたのは興宮警察署に勤務する大石という刑事だった。

 

「大石?」

 

「子供が新聞を広げているから誰かと思って声をかけてしまいましたよ」

 

 彼は梨花が辿った過去の世界で前原圭一と接触して彼が暴走するきっかけとなった原因であることからあまり良い印象を抱いていなかった。

 もちろん、本人が意図したことではないだろうが。

 

「それにしても梨花さんがその記事をお読みになるとは意外ですねぇ」

 

「……べつに。ちょっと気になって調べているだけなのですよ」

 

 警戒を解かずに最低限の対応をする梨花。しかし大石はそれを気にした様子もなく踏み込んでくる。

 

「そうですか。梨花さんのご両親も2年前に被害に遭われた訳ですしね。気になるのは仕方ありません」

 

 んっふっふ、と笑いながら針でつつくように話す大石に梨花はこの場を離れることに決めた。

 

「ごめんなさい、大石。ボクはそろそろ帰らないと……」

 

「おんやぁ。それは残念ですねぇ」

 

 そこで思い出したかのように大石は梨花に問う。

 

「そういえば、つい最近雛三沢に引っ越してきた前原圭一さん……でしたか。その子とは仲良くできてますか?」

 

「……それをお答えする必要がありますですか?」

 

「いえいえ。ただ前原さんに関してちょっと善くない噂を耳にしましてねぇ」

 

 言いながら大石は梨花の耳元に顔を寄せるそれは周りに聴かれたくないということだろう。

 

 そうして大石の口から聞かされた事実に梨花は大きく目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、収穫無しだったのです……」

 

 トボトボと落ち込んで歩いている梨花。

 園崎家が何を考えているのか結局解らず仕舞い。

 過去の事件を調べてもなにか新しい事実に気付くわけでなく。

 そんな風に落ち込んでいると羽入が現れる。

 

「梨花……」

 

「羽入……本家の方はどうだったですか?」

 

「あうあう。特にコレといったことは言っていなかったのです。いつも通りの定期会議でした」

 

「そう、ですか」

 

 園崎家がなにかを企んでいる、もしくは富竹たちの死についてなにか情報があればと思ったが。

 申し訳なさそうにしている羽入に梨花は笑みを浮かべる。羽入のせいではないと伝えるように。

 これまでからすると後、2・3日で自分は殺されてしまう。

 そうしてまた時間を遡る。

 歯痒い思いをしているとふと、気になることがあった。

 梨花が死ぬ前に覚えているのは誰かに口元を塞がれ、意識を失う瞬間。悔しいことにそれが誰であるかは思い出せないが。

 しかし、それが夜だったのは覚えている。

 その時に羽入は何をしていたのか。

 

「羽入……前回、ボクが殺されてしまった時は何処に居ましたですか?」

 

「あう?えっと……梨花の傍に居た筈ですが、

 梨花が死ぬ直前ということもあってそこらへんの記憶が曖昧なのです。どうしてそんなことを訊きますですか?」

 

 梨花の傍に居たのにどうして羽入がその時に見たモノを覚えていないのか。

 時間を巻き戻すというスゴい力が有るのにどうして梨花の死についての情報だけが都合よく切り取られてしまうのか。

 

 もしかして羽入は――――。

 

「いえ、ちょっと気になっただけなのです」

 

 そこまで考えて頭の中でその考えを振り払う。一体自分は今何を考えていたのか。

 羽入は家族で殺されてしまった自分を助けてくれた恩人だ。

 それを疑うなんてどうかしている。

 帰路に着きながら梨花は家族を疑う自分を恥じた。

 しかし、1度抱いた疑念の棘は、胸から抜けることがなかった。

 

 

 

 

 

【TIPS】自室で。

 

 

「ちょっと強く言い過ぎちゃったかなぁ」

 

 自室の床でゴロゴロしながら園崎魅音は今日、昼休みに梨花に取ってしまった態度に僅かな後悔を抱いていた。

 富竹と鷹野の死について疑念をぶつけてくる梨花。

 まるで園崎家が富竹と鷹野を殺したのではないかという感じの問いについ強く押さえ付けるような物言いになってしまったことに僅かばかりの後悔を抱く。

 だが魅音とて自分の実家が直接でなくとも人殺し呼ばわりされて何にも思わない訳はなく、つい強い口調になってしまったのだ。

 特に祖母である園崎お魎は梨花のことを実の孫より可愛がっているわけだし。そういった疑いに不愉快さを感じるのは致し方無いだろう。

 

「う~ん。しかし梨花ちゃんが連続怪死事件を、か」

 

 思えば梨花の両親も2年前の綿流しで被害に遭っているのだ。怪死事件に人一倍過敏になっていても不思議ではない。

 

「あんまり、危ないことはしてほしくないんだけどなぁ」

 

 今年の事件が愉快犯による犯行だろうと、2人を狙った犯行だろうと子供の梨花がどうこうできることではない。

 しかもそれで梨花に危険が及べば目も当てられない。

 

「ちょっとしばらくは様子を見ておこうかな」

 

 

 

 

 




見つけないで、怯える私を。

追いかけないで、逃げる私を。

侵さないで、私の心を。

ひぐらしのなく頃に。酔醒まし編其の肆【亀裂】

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