ひぐらしのなく頃に 酔醒まし編   作:赤いUFO

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ぶっちゃけてエタッてました。

千文字超えてから一向に筆が進まずに時間がかかってしまいました。
完結出来ないなら消そうかとも思いましたがやっぱり完結させたくてなんとか書き上げました。

次回で最終回です。


酔醒まし編其の肆【亀裂】

 ―――――あぁ、この日が来てしまった。

 前回殺された日。

 きっと今日、自分は殺されるのだろうと梨花は布団の中で震えていた。

 

「梨花……」

 

 そんな梨花に羽入は沈痛な表情で寄り添ってくれている。ただ、その体温が感じられないことが残念だった。

 結局今日この日まで何もわからないまま迎えてしまった。

 羽入が時計を見て梨花に問う。

 

「そろそろ準備をしないと学校に遅刻してしまいますよ、梨花」

 

「今日は、学校に行きたくないのです」

 

「……そうですか」

 

 梨花の言葉に特に反論せずにいる。

 この後で迎えるであろう結末を思えば梨花の心情は理解できたから。

 

 どうか、今回こそは何も起きませんようにと願いながら羽入は梨花の傍に居続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古手さんは今日、風邪でお休みだそうです」

 

 

 雛見沢分校の教師である知恵留美子から今日学校を欠席していた古手梨花について話していた。

 朝学校に来ていなかった梨花に知恵が家に連絡したところ、今日は熱っぽいのでお休みしたいと言う旨が知らされた。

 学校への連絡が遅れて申し訳ないと謝罪を受け、もし体調が悪化するようなら病院に連絡するので心配しないでほしいとも。

 

 一時限目の授業を終えて梨花の仲間である部活メンバーはそれぞれに話し合いを行っていた。

 

 

「梨花ちゃん、心配だよね、よね?」

 

「う~ん。最近ちょっと元気がなかったし。もしかしたら風邪の前兆だったのかもねぇ」

 

「梨花ちゃんて確か独り暮らしだろ?ちょっと心配だよな」

 

「梨花は圭一さんよりずっとしっかりしてましてよ?でも確かにひとりだと心細いかもしれませんわね」

 

 皆が梨花を心配していていると魅音が提案する。

 

「なら帰りにちょっとお見舞いでもいく?たぶん年寄り連中が気を回してると思うけどアタシらが会いに行った方が梨花ちゃんも気が楽だろうし」

 

「なら帰りに何か買っていった方がいいかな?もしかしたら何も食べてないかもしれないし」

 

「だな。熱があると、普段やってることも億劫になるだろうから、その可能性もあるな」

 

「なら食べやすい桃やリンゴなどでしょうか?」

 

 話がまとまっていくと魅音が話を締める。

 

「それじゃ!放課後は梨花ちゃんのお見舞いにしゅっぱーつっ!」

 

『おーっ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 布団の中で震えていた梨花は3時頃に呼び鈴が鳴って身体をビクッと跳ね上がらせた。

 

 ―――――あぁ、この時間なのか。

 

 ガタガタと歯が鳴る。

 今までは死んだ記憶などなかったが、今回もそうとは限らない。

 自分はどんな風に殺されるのか。それを想像するだけで動けなくなった。

 

『り~かーちゃ~ん!起きてる~っ』

 

「え?」

 

 聞こえてきたのは魅音の声だった。

 

『魅ぃちゃん声大きいよ』

 

『でもこれだけ呼んでも来ないって寝てんのか?』

 

『ん~。でもこれだけ呼び鈴をおせば気付くと思いますわよ?』

 

『もしかして倒れて動けないのかなぁ。ちょっと予備の鍵借りて入っちゃうか』

 

 次々と聞こえる仲間の声に梨花はハッとなった。

 

「起きてますです!!いま開けますです!?」

 

 そう言って梨花が入り口の鍵を開けるとそこにはやはりいつもの4人が居た。

 

「みんな、どうして……」

 

「梨花が風邪を引いたと聞いてお見舞いに来たのですわ」

 

「それにしても顔が真っ青だよ。よっぽど体調が悪かったんだね」

 

「みぃ。お熱はもう下がったのですよ」

 

 元々熱など出てなかったのだがとりあえずそう言っておく。

 顔色が悪いのは精神的なモノで今日殺されるかもしれないという恐怖による緊張からだ。

 

「梨花ちゃん。アタシら、病人でも食べられそうなもの買ってきたんだけど、食欲ある?」

 

 魅音の質問に梨花は自分のお腹を押さえた。

 

「実は、朝から全然食べてないのです」

 

 それは事実だった。今日殺されるという恐怖と諦めから食事のことなどすっかり忘れていた。

 

「ダメだぜ梨花ちゃん。食べなきゃ治るもんも治らないだろ?」

 

「なら、お台所借りていいかな、かな?おかゆと軟らかく煮たおうどんなら胃にも優しいと思うし」

 

「あ、はい……ならお願いしますです……」

 

 みんなの顔を見て安心したのか急激に空腹を感じる。

 

「ならわたくしは梨花の体を拭きますわ。その様子では寝汗とかも拭いてないのでしょう?」

 

 そこで圭一は魅音に肩を掴まれる。

 

「ほら圭ちゃん。梨花ちゃん体拭くから外に出る。それとも堂々と梨花ちゃんの裸を見る気?」

 

 最後の方は茶化した言い方に圭一は顔を赤くして建物を出た。

 こういう時に男ひとりだとアウェイだな~と感じながら。

 

 

 

 

 

 

 身体を拭き終わり、レナが用意したおかゆとうどんを食べている。

 

「どう梨花ちゃん?」

 

「みぃ。とっても美味しいのです」

 

「はうー。うどんを食べる梨花ちゃんかぁいいよー!」

 

「はいはい。病人を相手にはしゃがない」

 

 ちゅるちゅるとうどんを食べる梨花にレナがかぁいいモードを発動させようとするが魅音が嗜める。本人も本気だったわけではないようで、すぐに落ち着いた。

 

「それで梨花ちゃん。体調の方はどうなんだ?」

 

「はいです。朝はちょっと気分が優れませんでしたが、今はだいぶ良くなったのです」

 

「そっかー。良かった良かった!梨花ちゃんが元気ないと村のお年寄りが大騒ぎだからね!」

 

 部活メンバーが梨花の体調が持ち直したと思い、喜ぶ。

 

 梨花が食べ終わった食器を片付けてそろそろお暇するとした。

 これはレナと沙都子が自分の家の家事をしなければいけないという理由もある。

 

「それじゃあ梨花ちゃん。残ったおかゆとおうどんも後で食べてね」

 

「体調が持ち直したからって夜更かししちゃダメだよ。治りかけが1番危ないんだから」

 

「そうですわね。今晩はゆっくり休んでくださいまし」

 

「はいなのです。みんな、ありがとうございましたなのです」

 

 そう言って頭を下げた梨花に圭一が話を締める。

 

「それじゃ、梨花ちゃん。また明日な!」

 

 圭一のその言葉に梨花は目を丸くした。

 

「明日体調が良くなったら学校でまた部活しようぜ!今度こそ俺の華麗な勝利を目に焼き付けさせてやるぜ!」

 

「オーホッホッホッ!圭一さんには無様な敗北がお似合いでしてよ!」

 

「なんだと沙都子!」

 

 そう言ってじゃれ始める沙都子と圭一。

 

 それを眺めながら梨花にある思いが過ぎる。

 ここで全てをぶちまけてしまえば、仲間は力を貸してくれるだろうか?

 今晩自分は殺される。だから助けてくれと。そう言えば傍に居てくれるだろうか。

 

 そう思って一歩踏み出そうとした。そこで――――。

 

『も~。そう言う冗談はちょっと質が悪いよ?』

 

 前の世界で言われたことを思い出した。

 前の世界で意を決して仲間に相談して信じてもらえなかった過去を。

 それにもしかしたらこれを言うことでみんなを危険に曝してしまうのなら。

 

「どうしたの、梨花ちゃん?」

 

 心配そうにこちらをのぞき込むレナ。

 

「なんでも、ないのですよ。また明日なのです」

 

 結局梨花は踏み出すことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が深く、もうすぐ9時を回ろうとする時刻。梨花は自室で動かずに居た。

 

 レナが作ってくれたおかゆとうどんも、みんなが居ない家でひとりで食べると吐いてしまった。

 もうすぐ、もしかしたら死の影が迫っているのだと思うとどうしても胃が受け付けなくなってしまうのだ。

 

 レナに悪いことをしたと思いながら梨花は再び自室に戻った。

 

 今日は生き延びられる?なら明日は?明々後日は?

 それともこの世界では自分は生きていけるのだろうか?

 

 そんな考えがぐるぐると回り続けているとチャイムが鳴った。

 

 こんな時間に誰?と思っていると高めの少年の声が聞こえた。

 

「梨花ちゃん!俺だ!圭一だ!こんな夜遅くにごめん!でもちょっといいかな」

 

 意外な来客に驚きながらも扉を開けようとすると数日前に大石から聞かされた内容を思い出した。

 

 

『実はですね。前原さん。彼は以前都会でとんでもない事件を起こしていたんですよ』

 

 大石の耳障りな声が聞きたくもなかった情報を梨花に告げる。

 

『いえね。なんでも彼はモデルガンで多くの小さな子供。特に女の子に向かって発砲していたらしいんですよ。それで地元じゃ連続児童襲撃事件、なんて騒がれていたようです。多くの子供は大した怪我はなかったようですが最後のひとりだけ、眼球に弾が当たっちゃったらしくて、大事になっちゃったみたいですねぇ』

 

 んっふっふっ。と笑う大石。

 

 

 あんな話は出鱈目だと思う自分と。もし本当だったらという自分がせめぎ合う。

 

 それにもし本当だったとしても都会で起こったことなんてこの雛見沢では関係ない。彼の人となりは自分もよく知っているじゃないかと考える。

 でもならなんでこんな時間に訪問してきた?

 

 

 もしかして、前回梨花を殺していたのは―――――。

 確証のない不安。

 こんな不安などドアを開けて本人に訊けばいい。こんな時間にどうしたのかと。

 そう訊けばきっと彼は梨花が心配だったからだとかそんな答えが返ってくるのだ。

 

 そう思ってドアを開けようとした。

 開けようとして。

 

 

「――――――っ!!」

 

 ドアとは反対の窓から建物を出た。

 そのまま考えなしに林の中を突っ切る。

 

 

 やけに首が痒い。

 爪で首を掻きながら走った。

 すると。

 

「梨花!?」

 

 聞こえてきたのは唯一の家族の声だった。

 

 羽入は現れると梨花の静止を促す。

 

「羽入!今までどこにいたのですか!」

 

「僕はちょっと祭具殿のほうに。帰ってきたら梨花が飛び出していて、それで――――」

 

「羽入!もしかしたら圭一がボクを殺した……っ」

 

 梨花は身振り羽振り説明を始める。

 大石から聞かされた情報。

 こんな時間に圭一が訪ねてきたこと。

 それらを話していると羽入は慌てながらも梨花をなだめる。

 

「落ち着いてください梨花!もし圭一が梨花を殺した犯人なら最初の世界での辻褄が合わないのです!一度戻って話してみればきっと!」

 

 羽入とて圭一の性格はある程度把握していた。

 明るくややお調子者の少年。

 だが優しく気配りができることも知っている。

 確かにこんな時間に訪れたのは不自然だが一方的に逃げるのは。

 それに羽入が気にしているのは梨花の首だ。

 その引っ掻いたような痕に、ある可能性が浮かぶ。

 

「とにかく戻って入江に連絡を入れましょうです、梨花」

 

 羽入としては精一杯梨花を説得しているつもりだったが梨花はそうは受け取らなかった。

 

 どうして自分を信じてくれないのか。

 自分は圭一に殺されるというのに。

 どうして。

 

 そう考えているとある可能性が思い浮かんだ。

 

 そもそも時間を巻き戻すなどというすごい力が在るのにどうして自分を殺した相手がわからないのか。

 おかしい。何かがおかしい。

 どうして、こう自分たちが一番知りたいことに限って揃って記憶が受け継がれない?

 

 もしこれが意図的に行われているのだとすれば?

 

 羽入は今まで自分を助けられなかったのではなく、助けていないだけだとすれば?

 

 自分がもっとも信頼していた家族が一番警戒すべき相手だったとしたら。

 

「梨花?」

 

 名を呼び、近づいてくる羽入。

 

 梨花は大声を上げてその彼女から離れた。

 

 

 首の痒さが異常に増していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




繋がっていたのは、脆い絆。

手繰り寄せたのは、不信の過ち。

学んだのは、殺意の終着。

ひぐらしのなく頃に。酔醒まし編その伍【カケラ】

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