「第六駆逐隊のネームシップ、暁よ! 子供扱いしないでよね!」
藤丸はちんまりとした少女が胸を張るのを見た。
黒い帽子を被ったその子が今回「出撃」する艦隊のリーダーを務めるのだという。
「子供だけで戦場にほっぽりだすとか叢雲さん鬼畜すぎない?」
「そろそろ殴るわよあんた」
隣に控えていた叢雲がにっこりしながら拳を握って見せた。
金星の女神がブチ切れた時も似たような顔をしてた気がする。
「ちょっと司令官! わたしは子供じゃないったら!」
「落ち着くんだ暁、レディはそんなに怒鳴るものじゃないよ」
「君は、暁ちゃ、さんの妹だったね? 名前は、響さんだったかな」
「ダー、暁型二番艦の響だよ。
不死鳥の異名を持つ船だったんだよ」
暁とは異なり落ち着いた雰囲気の娘が一歩踏み出し帽子を胸に当ててお辞儀をした。
「あー! 響のそれずるいわ、なんかレディっぽい!」
「ふふん、暁にはまだ早いんじゃないかい?」
「ムキー! 妹のくせにー!」
きゃいきゃいと食ってかかる暁と澄ました顔の響、まだ紹介をしていない子が苦笑いをしている。
「あたしは
「雷さん、お姉さん達は止めなくていいのかな?」
「放っておけば暁の方が疲れて終わるわよ。
でも! どーしても困ってるって言うなら、あたしがなんとかしてあげるわ! どうする? どうする!?」
「えっ、うんお願いしよう、かな?」
叢雲が「あっ」と声をあげた気がしたがもう遅かった。
雷の目がキュピーンとかキラーンとか聞こえそうな光り方がしたと思うと姉達の言い争いに突貫した。
「あーあ、あぁなるとめんどくさくなるわよ」
「申し訳ないのです司令官、姉たちが失礼をしてしまって」
「そういう君は
「うう、本当に申し訳ないのです」
「はーい、そろそろ本気で話進めるわよー」
秘書艦が手を鳴らすと言い争っていた艦娘たちはすぐに大人しくなった、この切り替えが出来るのは流石と言うべきか。
「作戦海域は『製油所地帯沿岸』よ。
これからはこの提督の元で本格的に海域の攻略を始めるわ」
「鎮守府正面海域? そんな近くに敵がいて大丈夫かな」
「司令官知らないの? 深海棲艦たちは何度か陸地に斥候を送ってからじゃないと上陸しようとしないのよ」
「ダー、海災の黎明期は積極的に狙っていたようだけどね」
「何度も返り討ちにあって諦めたんじゃないかって噂があるのよ」
「でも、戦いが少なくなるならそれはいいことなのです」
確かに手元の資料によれば、季節に数度ほどの小規模な襲撃を退けていればそれ以上の攻撃は無いようだった。
(本当にあいつらが様子見なんてのを覚えたなら良いんだけどな)
「提督? 問題ないなら進めるけれど?」
「ああ、構わない」
「これからの海域は今までよりも広くなるわ、その分だけ会敵する可能性もある。
艤装は昨日から提督に徹夜で造らせたものを使って作戦に当たって貰うわ」
「これがブラック鎮守府です本当にありがとうございます」
ピースサインを向けると第六駆逐隊の面々がドン引きした。
雷だけはなぜか嬉しそうだ。
「さぁ準備はこっちでやっといたから、最後の締めはあんたに任せるわ」
「うん、ありがとう叢雲さん」
椅子から立ち上がり、息を吸う。
「第1艦隊、しゅちゅげき!」
(噛んだわ)
(噛んだね)
(噛んだの)
(痛そうなのです)
(カッコつけようとしてた分だけダサさ割り増しね)
次回は引き続き第六駆逐隊が活躍します。