・鋼の
「うぐぐぐぐ、もう疲れたーーーー」
「はいはいお疲れ様、あとはこの書類の確認だけして貰えば上がっていいわよ」
叢雲は机に突っ伏す提督に茶封筒を差し出す。
謎の艦娘との戦闘、そして提督の持っていた令呪と呼ばれる刺青について昨晩はほとんど眠ることが出来なかったらしい。
謎の艦娘については大本営に報告しなければならないものであったが、令呪とやらについて自分を含めた数名の艦娘と相談をしている。
その結果、とりあえずは保留という事になった。
一応、事情を知っている一部の艦娘たちが監視をしておくと提督に伝えると
『もっと怒られたり脅されると思ってた、監視くらいなら全然オッケー。
慣れてるし』
との事だった。
監視に慣れてるって何事だ。
「この書類は?」
「今回の新型戦艦級の艤装を暁がひっぺがしたでしょ? その映像と急ぎの霊基配列分析の結果よ」
「そりゃ見とかないとね」
「あっコラ手で破かないの、ペーパーナイフ使いなさい」
同封されていたものは1枚のコピー紙のみだが、結果だけが書かれているならそんなものか。
「うん、はい、はーいおっけーでーす。
叢雲さんそれ処分しといて」
「そんな典型的なお役所仕事みたいな確認でいいの?」
「いやだって、『結局よく分かんないことが分かりました、気をつけてね』くらいの事しか書いてないんだもん。
見てみ?」
「えぇ、いいのかしら」
質の良い紙を受け取り目を通す、確かに提督の言う通りの内容だが『貴府の活躍を喜ばしく思う』と書かれているのは大本営からの評価と見ていいのだろうか?
「この最後にある、『海に獣の兆しなし、されど原初の母に留意せよ』ってどう言う意味かしら?」
「ん? んー、それは暗号というか説明しづらいんだよね。
とりあえず、深海棲艦はとんでもないけど手に負えない化け物じゃないって意味かなぁ」
「あれ以上の化け物がいたらたまったもんじゃないわ」
「あはははは、デッスヨネー」
ぎこちなく笑う提督をおかしく思いながら資料を片付ける。
「じゃ、私はこれを片付けたらもう休ませて貰うわ。
あんたも昨日は遅かったんだから早く休みなさい?」
「あれ、例の見張りはもういいの?」
「執行猶予よ、特に六駆の子たちが反対したの。
暁本人にも精神汚染の影響は確認されなかったから、それとも寝るときも美女美少女が側にいた方が良かったかしら?」
「いや、そう言う訳では、ない、ですよぉ? ヒィッ!?」
突如鐘の音が響く、時計を見てみれば現在は17:58。
いつも18時にぴったり鳴っていた事を考えれば僅かだがフライング気味だ、大した問題ではないのだが。
「なんで机の下に隠れてるのよ」
「キニシナイデクダサイ」
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「そろそろ一度寺に行かないとまずいよなぁ、らいこーさんにも手紙書いておかないと暴れそうだし、あぁ胃が痛い」
【マスター、治療が必要ですか?】
【大丈夫ですよー、ちゃんと胃薬飲んどくよー】
藤丸は机の下で蹲ったまま考えた。
艦娘の力は確かに強力だ、それは艤装をつけた明石が一人で執務机を運んで来た時から分かっている。
(艦娘は訓練と実戦を経る事で強くなる、らしい)
だが、それで足りるのか?
今回はなんとかなった、だが令呪を使ってしまった上に被害も大きい。
この調子ではすぐに限界を迎えてしまう。
戦力の強化が必要だ、単純に艤装を開発するだけでは足りない。
強くなるためにはあらゆるものが不足し過ぎている。
(戦力にもなれず、戦場についていく事しか出来ない。
ドクターもこんな気持ちだったのかな)
ならば、自分もやらねばならない。
彼と同じ『只の人間』に出来る事などたかが知れている、それでも無力なわけではない。
考えろ、自分になにが出来るのか。
自分がどうやって戦って来たのかなを。
すでに陽は落ち寒さを感じる季節となっている、それでも立ち止まる訳には行かない。
死ぬ気で勝ち取ったこの時間には1秒でも一瞬でも無駄に出来るものなどないのだから。
表現したいシーンは数あれど、表現するための技量が足りず。
次回から鎮守府の戦力強化を行います!