バサリと資料の束をみかん箱に置かれる。
大淀が纏めてくれたものに加えて叢雲が今まで目を通していたものだ。
「あの、叢雲さん? これは・・・・・・?」
「見ての通り資料よ、ここの施設と在籍してる艦娘の情報。あとは経費と物資の収支もわかるわ」
(やばい、どれから手を出せばいいかわかんないぞ)
とりあえず艦娘の情報が載っているものに目を通す。
それぞれに艦名と写真、その艦種や身長体重まで記入されていた。
スリーサイズは載っていなかった。
「まずは艦娘個々人の顔と名前よりどの艦種がどれくらいいて燃費と火力がどう違うのかだけ分かれば問題ないわ」
「なんか物足りないというか、健康診断みたいな情報だね」
「何よ、他に必要なものなんてあるの?」
「だってほら、これじゃあみんなの趣味とか好き嫌いとかがわからないじゃないか」
「あのねぇ」
額に手を当てため息をつく叢雲。
彼女の背に、そして手元に無骨な金属の塊が出現する。
どこか船を連想させる背部ユニットと備えつけられた連装砲。
それこそが妖精の作り出す『対深海棲艦』兵器、艤装だ。
「私達は艦娘、かつての軍艦の魂を持つ戦う為の存在なのよ。
趣味だ好みだの言う為に造られたわけじゃない」
「生まれた時はそうかもしれない。けど、生きてるならやってみたい事だってあるんじゃないか? 戦う為に生まれたからってなにも楽しみまで禁止されてるわけじゃないんだろう? やってみたい事とか・・・・ッ⁉︎」
「あまり、知った様な口をきかないでちょうだい」
叢雲の白い手が藤丸の襟を掴み引き寄せる、至近距離となった少女は怒りの様なそれでいて無機質な瞳をしていた。
「私達の中には船だった頃の魂と一緒に記憶を引き継いでる奴らもいるのよ。
人間の姿になって船の記憶を待たされてそれでも折り合いつけてんの、もしくだらない気遣いや気まぐれであいつらのトラウマつつく様なら私はいつだってあんたを殺してやるわ」
「・・・・・・わかった、気をつける。それでも、やりたい事があるならいつでも言ってくれ」
「ふん、今日はもういいわ。
奥の扉があんたの私室になってるから、届いた荷物を確認しときなさい」
「ああ、わかった。ありがとう叢雲さん」
叢雲は怒ったまま、それでも一礼は忘れずに退室した。
能力が無い藤丸にも立場上は上官として接してくれるらしい。
(あいつらのトラウマ、か)
「私の」とは言わないあたり、叢雲がどの様な艦娘なのかわかる様な気がする。
カルデアでも英霊達のタブーに触れない様に勉強したのだ、ここでもやる事は変わらない。
(差し当たっては名前と艦種を覚えるところから始めるかなぁ)
手探りで調べるしか無い上に頼れる後輩もここには居ない。
1人で過ごす鎮守府の夜は、少々長くなりそうだった。
「上官の胸ぐら掴んでメンチ切るとか、何やってんのよ私いいいぃぃぃぃぃぃ!!!!」
頼れる後輩もそうですが英霊達も直接でてくる事はあんまし無いです。
*鎮守府に居ないとは行ってない。