どうか安らかに。
願わくばフルルと一緒に入られます様に。
「とりあえずはあんたのことを信じさせてもらうわ」
「うん、信頼ではなく信用をしていてほしい。この鎮守府では誰も失わせないし蔑ろにもしない、そうなるように努力する」
ペンを走らせる藤丸は気負う様子もなく当然のようにそう言った。
叢雲はその書類に不備がないかを確認して纏める。
「あんたは私たちがどう言う存在か分かってる?」
「一通りは勉強したよ、居眠りして追い出されたくないしね」
「なんの話をしてるのよ」
「昔の話。
なんにせよ君達がどんな存在でも、たとえクローン技術と降霊術による科学と魔術の合いの子だとしても。
後輩の後輩なら守ってやりたいと、俺は思うよ」
「あんたの後輩になんてなったつもりはないわよ」
この男は時折よくわからない事を言う。
態度も掴み所が無いしかつて自らに乗り舵を取った者の様に頼れる気配もない。
それでも、ただ真っ直ぐに向けられる眼差しは何故か懐かしく思えた。
「1つだけ聞かせて、あんた、提督はとても戦場で活躍できる様なヤツには見えないわ。
正直今の時代の一般的な日本人なんて平和ボケの象徴みたいなものなのに」
「…………」
「艦娘を誰も失わせないと言ったけれど、それでも死ぬのが戦争よ。
そしてなによりあんた自身にも命の危険が発生するのに、『もしもの』覚悟があんたにあるの?」
自分の問い掛けに、藤丸は目を丸くしすぐにいつもの顔に戻った。
そしてアルカイックスマイル、困った顔で微笑むといった器用な顔をする。
「俺には、覚悟なんて大層なものはないよ。
ヒトの命を背負うなんて大きすぎる責任だ。
でも、それが誰かがやらないといけないことなら俺がやる。
誰かに任せて文句を言ったり、『俺の方が上手くやる』なんて言うつもりはないよ」
そして、ひと息つくと。
「叢雲さんはさ、実は無茶苦茶優しい人だよね」
「はぁ!? なんでいきなりそんな評価になるのよ」
「状況は違うけど、前に同じ質問をしてくれた人がいて。その人のことを思い出して」
「なら、よっぽど素晴らしい人だったんでしょうね?」
「いや、ヘタレで悲観主義なネットアイドルオタクだったよ」
「良いとこ何1つないじゃ無い!!」
抗議しようとした所で正午を告げる鐘の音がなる。
つい最近、近くに
以前挨拶に来た尼が『これからわたくしが鐘を鳴らします、安珍様のために毎日。ええ毎日毎日』と言っていた通り、艦娘にとっては昼の合図となっている。
「どうしたの? 顔が真っ青よ」
「いや、なんでも無い。まさか、まさかな」
「昼にするわよ、間宮さんにあんたの分のお弁当も貰ってるからここで食べたら気分転換に散歩でもして来なさい」
【安珍寺】
住職:脛が弱い方の武蔵
尼:愛情深すぎる火精
剣客:八艘ぽんぽこ