………前回の投稿からかなり時間が経ちました。本当に申し訳ありません。謝罪する事しかできません。これから少しずつでも投稿していけたらなと思います。本当に申し訳ありませんでした。
「………」
ある日の夕暮れ、鎮守府の病室に二つの人影があった。沈んでいく太陽がその二人を照らしている。
二人の内の一人は、この鎮守府を指揮している提督。だが、その提督は今はベッドの上で静かに寝息を立てている。
その隣では、提督の事を気にかけるように椅子に座っているもう一人がいた。
「提督…」
彼女は正規空母の大鳳。黒髪のショートボブでもみあげが長く、頭には艦尾を意識したヘッドギアをつけている。体格だけならば、駆逐艦の子達ともあまり変わらない位だ。
そんな彼女が何故、提督と一緒に病室に居るのか
それは数時間前まで
その日、大鳳はランニングをしていた。ちなみに彼女にとって毎日の走り込みと筋トレは欠かせないものになっている。
「ふぅ…」
日課のランニングを終え、自室へ戻ろうとする。先程走っていた為、額には少し汗をかき、顔も僅かに紅潮している。その姿はまさにスポーツ女子を彷彿させるようだった。
「少し汗かいちゃったわね、シャワー浴びてこないと」
汗を流すため、彼女は浴場へと歩を進める。彼女もれっきとした女性だ、汗をかいたままの体をそのままなどにはしない。
「今度は提督と一緒に走ったりしたいなぁ…けど、提督は体調が優れないし…」
歩いている最中、そんな事を口ずさむ。だが、提督の体の事を考えるとそれは少し難しいだろう。
「あ、なら散歩なんてどうだろう!走る必要もないし、歩く位なら提督も大丈夫だろうし!一緒におしゃべりしながら散歩できたら楽しいだろうなぁ♪」
提督と二人でゆったりと過ごしている状況を頭に思い浮かべながら、彼女は嬉しそうに微笑む。彼女だけが例外ではなく、ここにいる艦娘達もまた、彼といるだけで嬉しいと感じるのは皆一緒なのだろう。
「今度誘ってみようかしら『ドン』…え?」
突然大きな物音がし、足を止めてその方向を向く大鳳。今彼女がいる場所は、浴場まではまだ離れている所であり、人通りも少ない場所である。そんな普段人気も無い所で、突然の物音に不自然さを感じはじめる大鳳。
「何か物が落ちた音、にしては大きいわね。この部屋から聞こえたみたいだけど…」ガチャ
疑問を抱きながらも原因を探るため、音がしたであろう部屋の前までやってきた彼女は、恐る恐るドアノブに手をかけ、静かにドアを開けた。
「………えっ…?」
呆気にとられた彼女の目の前に映し出されたもの、それは…
「提督…?初…月…?」
力なく横たわっている提督と、それを抱き抱えている初月の姿だった。
「………大鳳?」
大鳳の存在に気づいた初月はゆっくりと視線を向けた。だがその瞳は、光を失い、酷く淀んだ目をしており、いつもの初月ではないことを物語っていた。
「……こんな所に来て、どうしたんだ?」
「どうしたんだって……あなたこそ…ここで何をしているの?それに…提督はどうしたの…?」
衝撃的な現状に頭がついていかず、声を震わせながら初月に質問をする。
提督へ視線を向けると、服は
「……別に、どうもしてないよ」
「じゃあ、どうして提督はそんな乱れた格好で気を失っているの…!何も無いわけないじゃない…!」
「………」
素っ気ない初月の返答に、大鳳は苛立ちを募らせ強めの口調になる。
そんな彼女に対し、初月は何か反応を見せる様子もなく、視線を提督へ戻し、彼の頬に手を添えてこう言った。
「…これは躾だ」
「躾って…!ふざけないで!!貴女は何を言っているの!?提督はペットじゃないのよ!?」
予想外な初月の発言に、大鳳は怒りを露にする。
普段から落ち着いている彼女が、ここまで口調を荒らげるのは滅多に無いことだ。
だが、それだけ彼女にとっては余程の事だったのだろう。
「身体中のその痣は何なの!提督が生まれつき体が良くないのは貴女だって知っているでしょう!?それを躾だなんて…一体何を考えているの!!」
部屋中に響き渡る大鳳の叫びは、容赦なく初月を責め立てる。それでも初月は動じる事はなく、先程から同じ体勢でじっとしていた。
しばらくして、騒動を知り駆けつけた者達によって、初月は別な場所に連れていかれ、提督は医務室へと運ばれた。
提督はすぐに診察されたが、体に異常は無くそのままベッドへ寝かされた。
そして今に至る。
「提督……」スッ
提督の頬を優しく手で触れ、様子を伺う大鳳。
やはり先程の事があったせいか、彼女からはいつもの明るい雰囲気がなかった。
目の前で自分の信頼している人があんな状態になっていた事に、彼女は精神的にきているものがあった。
「…様子はどうだ?」ガチャ
「武蔵……」
そんな所にドアを開けてやってきたのは武蔵だった。
「そっちの方は終わったの…?」
「ああ、粗方な。まだ提督は眠っているようだな」
「えぇ…目が覚めるまで、もう少しかかると思うけど」
そうか…と言い、壁に背をもたれかける武蔵。彼女もまた、提督の身を案じていた。
ちなみに、提督の付き添いに大鳳を指名したのも彼女であり、現状で一番の適任者だからという理由だった。
そして、先程まで初月の尋問を担当していたのも彼女だった。
何故、初月が提督にあのような行為をしたのか?初月
「………」
「初月も、奴なりに心配しての行為だったんだ…少しやり過ぎたがな…」
「…そうだとしても……けど…!」
「お前の気持ちも分からんでもない…だが、奴の本心も私達と同じだ。今回はやり方を間違えただけなんだ。だから、あまり奴を責めないでやってくれないか?」
頼む…と、武蔵からの頼みに納得しきれないといった表情をする大鳳。
隣ではまだ提督は眠ったままだが、心なしか先程よりも安らかに眠っているように見える。
そんな提督の表情を見て少し落ち着いたのか、分かったわ…と呟く大鳳。彼女の一言に、武蔵も表情を和らげた。
「…少し休んだらどうだ?私が変わるぞ?」
「いえ、大丈夫よ」
武蔵の付き添いの交代をやんわりと断る大鳳。その声からは、いつものような明るさが戻ってきているようだった。
「先程から付きっきりなのだろう?それこそ、無理は禁物というものだろう?」
「それを言うならあなたもでしょう?初月の尋問が終わったら、そのまま真っ直ぐこっちに来たんでしょう?貴女こそ休むべきではないかしら」
「それには及ばんよ、あの位休む内にも入ら「それに…」…ん?」
「これの一番の適任は私なんでしょう?」ニコッ
「…むぅ」
大鳳の一言に、先程自分が言った事を後悔しはじめた武蔵。本音を言えば武蔵もまた、提督の付き添いをやりたかったようだが、自分で墓穴を掘ってしまったようだ。
「大丈夫よ、ちゃんと見ておくから」
「…分かった、では後は頼んだぞ」ガチャ
渋々納得しながら部屋を退出する武蔵。そんな彼女を見送りながらも、大鳳は彼女の心が読めていたようで、その事に思わず笑みをこぼしていた。
「…う、うぅん…」
「!…て、提督っ!」
「あ、アレ…?大、鳳…?ここって…」
ようやく目を覚ました提督は、ここはどこか辺りを見回しているようで、大鳳から医務室だと告げられると、先程自分の身に起きた事を思いだしはじめた。
「…あぁ、そういえば、初月に…」
「覚えていますか?それよりも、具合の方はどうですか?」
「う、ん…大、丈夫…!」ググッ
「だ、駄目です!!無理に動いては!今は安静にしていて下さい!」
体を起こそうとすると、大鳳がすかさず止めに入りまた寝かされる。正直、さっきまで眠ったままだったので、体にはまだだるさが残っていた。
大鳳も提督がようやく目を覚ました事によって、ほっと胸を撫で下ろした。
そして提督は、大鳳から今までの事を説明されるとすべて理解し、皆に感謝しながら大鳳にありがとうと礼を言った。
「…初月は今どこに?」
「今は自室に居ると思われます。武蔵からは反省しているようだった…と」
「そうか……なぁ、大鳳」
「はい…?」
「今度初月に会ったら、あまり責めないでやってくれないか?悪気があった訳じゃないと思うんだ」
「はい、それも武蔵から言われているので大丈夫ですよ。それに私自身も、少し興奮していたものでしたから…」
「ごめんな…?いつも迷惑ばっかかけて…」
そんな事ありません…と、顔を紅潮させながら言う大鳳はどことなく照れているようだった。
「…それに、普段から良くしてもらっているのは私達の方ですから。迷惑をかけているのは、むしろこっちで…」
「そんな事ないよ…俺が元々病弱じゃなければ、こんな事にだって「それこそ違います…!」…大鳳?」
提督の言葉を遮って、震える声でそう言い放った大鳳。
その顔を見ると、今にも泣きそうな悲しい表情をしていた。
その表情を見た提督はハッとしていた。
「……提督が元々お体が良くないのは勿論知っています…!それをずっと気にしている事も…!でも、それは仕方ない事なんです…!生まれつきのものなんですから…」
「だ、だから、俺がこんな持病さえ無ければ…」
「ですが!私達はそのせいで迷惑していると思った事は一度もありません!」
「っ……」
大鳳の言葉に胸を打たれる提督。
気がつくと、提督の手が大鳳の手によってしっかりと握られていた。その手はとても温かく感じられる。
「私達がいつも頑張っていられるのは、貴方がいてこそなんです!貴方のその優しさのおかげなんです!」
「………」
「確かに、提督は体が良くありません…けど!だからこそ私達は貴方のお役に立ちたいんです…!いつも、笑っていてもらいたいんです…!」
「大鳳……」
「だって…!私達の…私の……大切な人なんだから…」ポロッ
彼女の瞳から、一滴の涙が落ちる。
その様子を見た提督は、またしてもやってしまったと後悔する。
彼女達が自分の事を心から慕ってくれているのは前から知っていた筈なのに。なのにどうして、いつも同じ事を繰り返して彼女達を悲しい思いにさせてしまうのか。
(どうして、俺はいつもいつも…!)
自分の不甲斐なさに腹が立ち、唇を噛み締める提督。
大鳳は顔を俯かせたままなので、どんな顔をしているのかは分からないが、泣いているのはなんとなく察することができた。
そして提督は、自分の手を握っている大鳳の手に、自分のもう片方の手を重ねた。それに気づいた大鳳はゆっくりと顔上げ提督を見つめた。
「ありがとう、大鳳。すごく嬉しいよ、そんなに俺を想ってくれていて…俺は本当に幸せだ…」
「提、督っ…」グスッ
「俺はもう大丈夫だから…この持病もしっかりと受け止めて、頑張るから…!だから…!これからも俺に協力してくれないか?」
「っ…!はいっ、勿論です提督!私も貴方の為にこれからも頑張ります!」
お互いに重ねてる手を強く握り締める。
その瞳には、新たな決意を決めた思いが宿っており、より一層二人の絆が強まった証拠でもあった。
「あっ、それと、もし良ければなんですけど…」
「うん、何?」
「今度、天気が良い日があったら、そのぅ…一緒に外で散歩なんてどうでしょうか…?」モジモジ
思い出したように提督に散歩の誘いをする大鳳は、顔を赤くしながら、人差し指同士をツンツンとさせ、あどけない様子になっていた。
そんな彼女を微笑みながら提督は、そうだな、今度一緒にな…?と言うと、満面の笑みを浮かべてとても嬉しそうにしていた。
「あぁ…でも、近々に別な艦隊と演習があったっけ?」
「あっ…!そういえばそうでしたね」
「散歩はその演習が終わってから、かな?」
「そうですね…うぅ、嬉しくて忘れかけてました///」
更に顔を赤くする大鳳。それを笑顔で見つめる提督。微笑ましいその光景はいつもの日常が戻ったようだ。
「じゃあ、次の演習は頼むよ、大鳳」
「はい、任せて下さい!貴方とこの艦隊に勝利を!」スッ
凛とした雰囲気になった大鳳は、夕陽をバックに敬礼をした。
ご閲覧ありがとうございます。
一年以上投稿できなかったのは、多忙という理由なのですが、言い訳もいいところなのは承知しております。
お気に入りしてもらえてる方々には、迷惑や不満を与えてしまったかと思います。
改めて申し訳ありませんでした。これからは少しずつでも投稿できるよう精進して参ります。