夕凪の士魂の雨風の方のストーリー

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これはとある十五夜の物語、ここに記されるは二人のお話。


十五夜の夜に

本日は十五夜。鎮守府でも秋祭ムードに包まれ大量に確保した秋刀魚料理や鳳翔や間宮の用意した月見団子が振る舞われ、他にも露店を出したりして一週間。夜の間だけ行われている。

 

「おおー中日だってのには賑わってるなー!」

 

「でも人多すぎてはぐれそうね……」

 

「じゃ手でも繋ぐか?」

 

「繋がないわよばか。まあはぐれないように近くには居てあげるわ」

 

司令官とその秘書艦の<叢雲>二人も秋祭の会場に来ていた。

 

「ねえ司令官、扶桑さんと山城さんは?」

 

「姉さんと山城は露店だして秋刀魚焼いてる。時雨もその手伝い。それと加賀は霧衛と回るそうだ。で、言われてないけど由良は?」

 

「由良さんなら確か……」

 

言っていたその言葉を遮るように左手前から

 

「提督さーん!由良はここですよ♪」

 

由良も五十鈴と一緒に「射的」の露店を開いていた。回りは射的の順番待ちと見られる行列で続いていた。

 

「今回は自信作よ!提督に落とせるかしら!」

 

「おっ?言ってくれるねぇ?よっしゃ見てろ~五発分しっかりもらってくぜ!」

 

「なら私もやるわ。楽しそう♪」

 

ーー十五分後(ヒトキューサンマル)ーー

 

「うぅぅ……ありがとうございました……」

 

「はっはっは~!まだまだ甘いなぁ!」

 

「目玉景品いくつか持ってかれちゃったわね……」

 

「なかなか楽しかったわよ♪」

 

司令官と叢雲。二人は祭の射的、輪投げ、金魚すくいでは鎮守府一の腕前でそれをみるためのギャラリーもいるほどだった。

 

「しかしくしゃみで的間違うとはな……」

 

「今回は私の勝ちね!」

 

「ちぇ。ほらなんか食おうぜ負けたんだから奢るよ」

 

「そうね……せっかくだし扶桑さんたちのところで食べましょ?」

 

そう言ったあとに移動し扶桑たちのところへ着いた。

 

「あら、いらっしゃい二人とも♪」

 

「あ、兄様!叢雲も!いらっしゃいませ~!」

 

「あ、二人ともいらっしゃい」

 

着いてすぐに三人にに迎えられる。

 

「秋刀魚を2尾お願いします。それと烏龍茶を……叢雲も同じでいいか?」

 

「ええ、構わないわよ」

 

「じゃあそれで」

 

「はいはい♪合計500円よ~」

 

「姉様ーちょうど焼けましたよー」

 

「じゃあ焼きたてよ。席に持っていくから待っててくれる?」

 

「分かりました」

 

扶桑にそう言われ席に向かうと呉の光藤悠雅と大鳳が秋刀魚を食べていた。

 

「ん~これ美味いね~♪」

 

「提督、口元に米粒付いてますよ?」

 

「え?どこ?」

 

「ここです」

 

大鳳がひょいと光藤の頬に付いた米粒をとる。

相変わらず仲のいい二人だと思う。と、光藤が雨風達に気付き声をかけてきた。

 

「あ、雨風くん、お邪魔してるよー♪」

 

「ご無沙汰してます」

 

大鳳もペコリと頭を下げる。

 

「いえ、わざわざお越しいただいてありがとうございます」

 

「あーいいよお礼なんて。久々に大鳳二人っきりになりたかっただけだから」

 

「え?提督そ、それって……」

 

そう言われた直後に大鳳は顔を赤く染めた。とても嬉しそうで少し恥ずかしそうな表情に回りの提督たちもニコニコしながら見ている。

 

「二人ともお待たせ。西村艦隊特製の<秋刀魚の西村焼き>だよ。ゆっくりしていってね♪」

 

時雨がテーブルに秋刀魚の塩焼きを置いていった。

その後食べ終わり、光藤たちと別れてまた露店を回る。

途中で露天の雰囲気が変わり海外艦たちのところとなった。普段なら高級な海外艦の食事をここでなら安価で食べることが出来るのでかなりの人気である。

 

「admiral!」

 

後ろから呼ばれて振り替える。

 

「おーWarspite。そっちはどうだ紅茶とかだして賑わってるか?」

 

「yes。勿論よadmiral。英国の紅茶が人気ではないわけないもの。admiralも……oh……紅茶飲めないんだったわね……残念……」

 

「いや、飲めるけど苦手なだけで。後で頂くよ」

 

「じゃあWarspiteさんまた後で」

 

「ええ。まっているわね♪」

 

Warspiteは最近着任したばかりで慣れているか心配だったがちゃんと馴染めているようで安心を覚えた。

少し歩いてドイツ艦の二人に出会う。

 

「あ、提督こんばんは!」

 

「あら、いらっしゃい。できたてのヴルストはどう?」

 

「ビールもあるよ?」

 

「ビールか……まだ飲める歳では……まぁヴルストは頂くよ」

 

「ビールは私も無理だから。ソーセージだけでいいわ」

 

「ダンケシェーン♪」

 

「2本で200円になります。支払いは後でもいいわよ?」

 

「んじゃあ後で払うよ。またな」

 

「バイバーイ♪」

 

「バーイ……」

 

二人に手を振りまた少し歩いて今度はイタリア艦のLibeccioとAquila、Romaの三人のパスタ&ピッツァの本格的なイタリアンの露店に来た。

 

「あー!提督さーん!ボーンジョールノー!」

 

「あら提督ボンジョルノ♪」

 

「ボンジョールノ……」

 

「いいなぁ、うまそうなチーズとトマトソースの匂いだ……ピッツァ1枚。小さめで頼む」

 

「はーい!ピッツァ1枚!小さめはいりましたー!」

 

とても元気なLibaccio、しずかではあるもののしっかり仕事をしているRomaそして料理も手際よくこなしていくAquila。バランスのとれたいい三人組だと思う。

 

「はい、お待たせ。マルゲリータで良かったかしら?何も聞かれてないからこれにしたのだけれど?」

 

「いや、大丈夫だ。ありがとうRoma頂くよ」

 

ーー10分後ーー

Roma達に食事の礼を言いRichelieuと速吸、山風や狭霧たちの露店であるフランス料理「Riche」にやって来た。

 

「あらadmiral、いらっしゃい」

 

「こんばんは提督♪準備は出来てますよ?」

 

「あ……提督……い、いらっしゃい……」

 

「いらっしゃいませ!提督さん♪」

 

「おう♪というかみんなメイド服か……」

 

「衣装が思い付かなかったのよ。別にいいでしょ」

 

「まあそれぞれだよな……で、どうだ?売れてる?」

 

「見た感じ結構売れてるわね……フルコースが500円てのは安すぎないかしら……?」

 

「そこはアレよ、Japaneseオマツリカカクよ♪」

 

完全に色々と間違ってはいるだろうが楽しそうだったので言わないでおいた。それに作り甲斐あるようで満足そうだったし、山風たちもしっかり接客をこなしていたので安心した。

 

「じゃあまた」

 

「ええ、A tout à l'heure.」

 

一通り見て回り、花火を見れる席を取った。すると丁度隣に

 

「あ、雨風さんこんばんはー雨風さんも花火を見に来たんですね」

 

「瑞樹さん。来てたんですね。それと……」

 

「あ、こんばんは。私ははじめましてね<天津風>よ。司令官共々よろしくね」

 

「こちらこそ、ご丁寧に」

 

「この場所はよく見えそうですねー♪」

 

「ここは何故か他の場所に比べて空気が澄んでいるんです。神聖な場所なのか元々なのか」

 

「どうりで……あっ……いい風ね♪」

 

「それ私も分かるかも知れないわ」

 

「あら貴女とは気が合いそうね」

 

「そうね♪悪くないわ」

 

天津風と叢雲はどうやら意気投合したようで、司令官と瑞樹もそれをみて少し笑みをこぼす。そのとき鎮守府全体にアナウンスが響く。

 

『これより花火の打ち上げを始めます。皆さまは出来る限り海岸から離れてください』

 

そのアナウンス終了とともに花火が一斉に打ち上げられる。形や色も様々で青や赤、白から緑などそれぞれこの基地の艦娘をイメージしているとのことでもある。

 

「お、あの色は叢雲のイメージだな」

 

そう言ったあとに叢雲が

 

「あっちの小さいのはあんたのね」

 

と言って遠くの方の小さな白い花火を指差す。

 

「いや小さいわ!」

 

「ふふっ♪あんたも面白いところあるわね」

 

風切瑞樹と天津風も

 

「あれは天津風のかな?」

 

「よさそうね……じゃああれは貴方のかしら」

 

「綺麗な色だねー」

 

その後15分にわたる打ち上げも終わり観客はまた露店の方に戻っていく。

 

「じゃあまた後で~♪」

 

「お先に失礼するわね」

 

「はい、また」

 

「また後でね」

 

風切たちとも別れて再び二人になる。

雲が晴れて満月が顔を見せた。

 

「ほら行くわよ」

 

「…………」

 

「何してるのよ」

 

「なぁ……ちょっと着いてきてくれるか?」

 

「?ええ……いいけど……」

 

そう言われて人の居ない浜辺を、月明かりのしたを二人で歩いてて行く。二人、ただ二人。海辺の道を歩く。

司令官の示した場所をめざして。

 

「ねえ、まだなの?」

 

「もう少しだ。ほらあそこ」

 

そう言って司令官の指差したその先。海に面した洞窟があった。その中には桟橋があった。そして中は広く、戦艦や空母が入れる程の大きさだった。そしてその奥の方。上に空いた穴から差し込む月明かりのしたには朽ち果ててもう動かないであろう「艦」があった。

 

「これは……なに?戦艦……いや巡洋艦……?」

 

「これは……これは<俺>だ」

 

「え?」

 

驚いてしまった。それもそのはず。司令官はその「艦」を自身であると、そう言った。

 

「この艦は俺の部隊の技術班が作っていたものだ。しかし深海棲艦に見つかり破壊された。戦うこともなく、海に出ることもなく……な」

 

「こんなものを作ってどうするつもりだったの?」

 

「何かを守るために、俺たち自身の拠点にするためにだが……」

 

この男は元々特殊部隊の隊長をしていた。しかしその部隊はたった一体の深海棲艦「レ級」により壊滅。隊長である雨風を一人残して。

 

「負けてしまった、雨風を一人残して……ということ?」

 

「あぁ、そうだ。俺が一人だけ生き延びた。それこそ本当に不幸だ……」

 

しかし、叢雲は疑問を隠せない。本来なら女にしかないはずの艦娘の適正を持ち、どうして艦の記憶まであったのか。

 

「司令官……あんたは……」

 

「俺は守れなかった、そうだった何をるすこともなくただ孤独なまま最期を迎えたんだ。<僕>が守るときめたのに。国を皆を守れずに終わってしまった」

 

悔しそうな声で、今にも泣いてしまいそうな顔で、覚悟を決めた目で。その男は話を続ける。

 

「だから今度こそ。守りたい。そして今は守るべき存在が出来た」

 

その一言に思わずドキッとしてしまう。

 

「叢雲…君を…俺に、この<雨風>に…」

 

「あ、ちょっと……」

 

叢雲の肩を掴む。

そうされたのではこちらも覚悟を決めるしかない。

そして心のなかで思った。

(私も、この司令官に…自身の思いを…伝えないとダメね…)

 

「だから君を…誰よりも何よりも!君だけを守りたい!だから俺に君を守らせてくれ!」

 

そうか。そうだった。司令官はこういう男だった。

誰よりも心配してくれて、誰よりも心配させて、そして誰よりも…私のことを…

 

「ふふ、いいわよ。そうしなさい。貴方が守りたいのだったら。私は守られてあげるわ」

 

胸の高鳴りを感じている、そして言葉にして、声に出して。私は伝える。

 

「貴方がそうなのだったら私は『誰よりも何よりも、貴方だけに守られたい』。だから私を守りなさい、ずっとずっと」

 

「あぁ、ありがとう叢雲…」

 

ーー30分後ーー

 

お互い疲れてしまったようで、名も無き艦の艦橋の上に登り二人で寄り添い月を眺めていた。

 

「なあ叢雲…一度しか言わないからよく聞いててくれ」

 

「ええ…」

 

「月に叢雲、花に風。案外そうでもないものだ…しかし月がなくとも<叢雲>は魅力的で、どこか儚げで、それでいて勇敢に見えて」

 

「…ええ」

 

また胸の高鳴りを感じている。鼓動が早くなる。ドキドキと隣に聞こえてしまいそうなくらいに。そしてその言葉を聞き逃さないよう耳を傾ける。

 

「こういうのもいいものだ…な」

 

司令官は一呼吸おいてまた続ける。

 

「なあ叢雲…[今日は月が綺麗だな…]。吸い込まれそうなくらいに…」

 

「……!」

 

そう言われ、安心したのか、もしくはただただ嬉しかったのか。大粒の涙か頬を伝う。ポロポロと止まらない程に。

 

「あ、おい、だ、大丈夫か?何か嫌だったか…?それとも…」

 

「ううん、違うわ。嬉しかったのよ…そうね綺麗な月ね…」

 

当然、返事は決まっていた。

 

「私…[私、死んでもいいわ…]」

 

「叢雲…」

 

「だから司令官。絶対に…私から手を離さないで…」

 

司令官の手を握る。離れないように強く。

そして私は終わりにその名を告げる。

 

「<雨風>貴方とともにいてあげるわ。感謝しなさい」

 

差し込む優しい光の下、そこで微笑んだ雨風はいままでで一番安らかな表情だった。

 

十五夜の夜、月明かりの下、朽ちた大きな鉄の上、この日この時この場所で。二人で共に居ることを誓ったのであった。

 

 

ーー後日ーー

 

「雨風お茶よ、ここに置いておくわね」

 

書類を整理しながらお茶を受けとる

 

「あぁありがとう。お、茶柱」

 

「あら。縁起が良いわね…今日はいいことがありそう♪」

 

「あるといいですねー」

 

三人で執務室に集まって仕事をしている。

 

「あ、叢雲その棚のファイル取ってくれ」

 

「あの、青いやつ?」

 

「そうそう」

 

次の書類に移るとき丁度誰かが来た。

 

「提督さん……」

 

由良だ。何故かしょんぼりしている。

 

「どした?」

 

お茶を飲もうとして湯飲みに口を付ける。

叢雲はファイルを取ろうと背伸びする。

扶桑がソファで横になる。

 

「叢雲ちゃんに告白したってほんとですか!?」

 

「「「!?!?!?!?」」」

 

雨風がお茶を噴く。叢雲が棚に頭をぶつける扶桑がソファから落ちる。

そりゃそうだ。そうなるだろう。だがその前に。何故知ってる。誰もいなかったはずなのに。

 

「本当なんですね!?どうして言ってくれなかったんですか!?色々用意出来なくなっちゃったですし、それに金剛さんやRichelieuさんが…」

 

由良か慌てながらそう言った。嫌な予感。

そう。走る音と似たような声の「テートクーー!」という叫び。更には「アオバキイチャイマス!」とまで聞こえてきた。逃げよう。今すぐ。

 

「叢雲行くぞ!」

 

「わ、わかったわ!」

 

そして二人で走り出す。捕まらないように。

 

「私というものがありながらーー!!なんでですカーー!」

 

「admiral!どいういこと!説明しなさい!」

 

「司令官!叢雲さん!詳しく!お話を!」

 

この日は丸1日逃げ回ってました。これがいつもの日常、たのしいものだ。

 

ーーfin


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