スーパーロボット大戦OG 人理の守護者   作:MATTE!

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戦争の始まり

明日香結里の日記

△月μ日

大変なことになってしまった。

ビアン博士が地球連邦政府に対して宣戦布告をした。

お姉ちゃんが昔所属していたEOTI機関はディバイン・クルセイダーズとなって、私たちの敵になった。

正直まだ信じられない。

私にとってビアン博士は全く知らない人じゃない。

時代劇が好きなおじさんで、後で偉い人なんだよってお姉ちゃんやローちゃんに言われてもその……えー本当に?って思ったんだけど。

とても悪い人には思えなかった。

これからどうなるんだろう。

 

△月<日

お姉ちゃんが軍の上層部に連れてかれた。

なぜかヒュッケバインを勝ち取ってきた

 

 

 

 

 

 

いや何で。自分で書いてて意味不明なんだけど。

違う、違うんだよ。最初はものすごく深刻そうに連れてかれたんだよ、それは間違ってないんだよ。

 

 お姉ちゃんが連れてかれて、私はリュウセイさんと一緒に訓練になって。

 しばらくしたらお姉ちゃんがヒュッケバインと一緒に現れて「これは、しばらくの間DCパクられた私の機体の代わりになります。久しぶりにパーソナルトルーパーに乗るのでちょっと肩慣らしに手伝って」といきなり言ってきた。

 その後、私とリュウセイさんは良いようにやられてしまった。

 情報整理しても訳が分からないよお姉ちゃん!

 というかお姉ちゃん特機乗ってるときより当たらなかったんだけど!正直、前より強いんだけどお姉ちゃん!

 

 

△月!日

今日はカイ少佐に訓練をしてもらった。

第一印象はちょっと怖い人だったけど、話してみると案外ダンディで優しいおじさんだった。第一印象で物事を決めちゃ駄目だね。

お姉ちゃんが言うにはカイ少佐は特殊戦技教導隊?ってところでゲシュペンストの色々なモーションパターンを作成した人みたい。

色々なモーションパターンを教えてもらったけど、その中でも一つだけ私の心を貫いた技があった。

私の目標は決まったよ。叫ぶんだ。私も。

かっこよく叫んで、かっこよく決めるんだ。

だから今から技名を考えないと!

 

 

△月@日

DCは侵攻範囲を拡大していて、地球連邦政府はジリジリと押されていった。

観察対象だった私と私の機体……ゲシュペンスト・ミラージュも引っ張り出されることになった。

この機体が誰が何の目的で作られて、どうして私だけにしか使えないのかまだ分からないけど、今あるPTを腐らせておくのは惜しいって連邦は判断したらしい。ってローちゃんが言っていた。

私の初陣は佐世保基地だった。

佐世保基地ではラトちゃん達が頑張っていて、私も基地を守るために頑張ったんだけど、MAPWを使われて、佐世保基地を守ることができなかった。

 

 

△月%日

佐世保基地を守れなかった日から、リュウセイさんが落ち込んでる。

ちょっと私も落ち込んでいる。

お姉ちゃんに戦わなくて良いって言われたけど、ソレは全力で断った。戦うのは……本当は嫌だし、怖いけど。

でも、家族と友達が戦っているのに、私だけ安全な場所に逃げたくはない。

お姉ちゃんは中々認めてくれなかったけど、ローちゃんがお姉ちゃんの説得を手伝ってくれた。

渋ったけど……無茶はしないって約束でお姉ちゃんは私が戦うことを許してくれた。

だから……私が出来ることを精一杯やらなきゃ!まずシミュレーターで撃墜されないように頑張ろう!いつまでもローちゃんにおんぶにだっこじゃかっこ悪いもんね。

 

 

△月#日

なんかリュウセイさんの機体が新しくなるみたいだった。

けど、中々動かせないみたいで、リュウセイさんは大変そうだった。

お姉ちゃんも機体の調整に引っ張り出されてその間私はものすごく暇になった。

だから今日はローちゃんとラトに訓練を手伝って貰った。

 

 

見事にぼろ負けしました。

 

 

当たらない、当たらないよ。

実践の時はいくらか当たるのに……なんでシミュレーターになったとたんに当たらないの!?

ローちゃんにどうすれば良いのか聞いたら、もっと集中しなさいって言われた。

しゅ、集中はしてるもん……当たらないだけだもん。

 

 

△月●日

伊豆基地にDCが襲ってきた。

敵の指揮官がライさんのお兄さんだったり、ハガネにミサイルが撃ち込まれたりと大変だったけど。

リュウセイさんがミサイルを打ち抜いて無事ハガネを守り抜くことが出来た。

でも、リュウセイさんがミサイルを狙ってたときのあの感覚は何だったんだろう。

嫌な予感はしなかったけど、ピリピリというか、ビリビリというか……どう表現すれば良いのか分からないな。

お姉ちゃんに相談したら、他の皆にはその事は内緒にしておいてって言うし……

まあ、そんなこんなで今日付でハガネに配属になった。

目指すはDCの本拠地のアイドネウス島!!

 

 

△月◎日

今日はリュウセイさんの幼なじみのクスハさんと知り合った。

ただ、バタバタしててまだちゃんとリュウセイさんと話せてないみたい。

ちょっと薄情すぎないリュウセイさん。

これは後で怒っとかないと駄目な気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

油断した……まさか、アレを作れる人間がお姉ちゃん以外いるとは思わなかった。

あの衝撃で訓練の疲れは見事吹き飛んだけど、もう正直二度とあの衝撃は体験したくない。

 

 

 

*************************

 

 

 ヒュッケバインのコックピットの中で機体の最終チェックをする。OSに不具合はない。動力に関しても──問題はない。

 急に呼びつけられて、ヒュッケバインの調整をしてくれって言われたから驚いたけれども、少し肩すかしを食らった気分だ。

 この程度わざわざ私を呼ぶ必要はない、これくらい外で待機しているイルムでも出来る。

 

 

「シオン、ヒュッケバインの調子はどうだ?」

「チェックは全て完了したわ。後の細調整はイルムが使いやすいようにお願い」

「このパーソナルトルーパー……シオンのヒュッケバインに似てるな」

 

 

 ヒュッケバインのコックピットから外に出て、データをロブに渡す。

 ビルトラプターの調整の為、格納庫にいたリュウセイがヒュッケバインを見上げながらつぶやく。

 

 

「逆ですよリュウセイ。私のヒュッケバインがイルムのヒュッケバインに似ているんです。あの子の正式名称はヒュッケバインMkーⅡ型式番号RTXー010、このヒュッケバインの改良・量産試作機なんです。これがね」

 

 

 リュウセイの言葉に訂正をいれる。

 先にヒュッケバインMkーⅡを見てしまったからそう思うのは無理もないけれど。大本はこっちだ。

 

 

「これは俺がPTXチームにいた頃、乗っていた機体さ」

「PTXチーム……確か、SRXチームの前にあったPTの特殊部隊だっけ」

「ええ、今は解散しているけど、私もメンバーの一人でした」

 

 

 PTXチームは解散して、私は軍の広告塔と科学者の二足のわらじ状態に、隊長だったイングラムはSRXチームに、リンはマオ・インダストリーの社長に、イルムは軍を転々と……軍を転々とってかっこ悪いわね。

 広告塔を押しつけられている私が言えた義理ではないでしょうけども……もうちょっと世渡りうまくならないかしら、でも今まで五体満足って事はある意味世渡り上手なのだろうけど。

 

 

「で、わざわざ私に機体の調整を押しつけたのは一体どんな魂胆です?確かにPTXチームにいた頃はヒュッケバインのメンテナンスは私の仕事でしたが、これくらい自分でも出来るでしょう。返答によってはリンに後でイルムが自分の機体の整備を怠りましたってメールを送りますよ」

「うっ……」

 

 

 ロブはリュウセイのビルドラプターの調整で忙しい。ハガネにいる中でロブの次にヒュッケバインに詳しいのは私だと自負はしている。だから私にお鉢が回ってきたのも分かる。

 だけど、この程度のメンテナンス、イルムなら自分で一通り出来る。それをわざわざ私にやらせたのなら他に理由があるはず。

 

 

「ヒュッケバイン009について、お前の目線から評価を聞きたい」

「……パーソナルトルーパーとしては問題はないでしょう。ヒュッケバインとしては……ヒュッケバインMkーⅡを使っている私が言える立場ではありませんが、008Rと008Lを知っている身としては若干物足りなさを感じます」

 

 

 正直もっと他に聞き方があったんじゃないかと思うけど、割と素直に聞いてきたので、私も正直に自分の評価を口にした。

 調整はうまく出来ている。初期の頃よりも機体性能は良くはなっている。

 けれども、あのエンジンにはかなわない。

 

 

「ヒュッケバイン008?」

「……私が今乗っているヒュッケバインMkーⅡが改良機ってことはさっき話しましたね。最初のヒュッケバインは全部で三機作られていたんですよ」

「内、一機が目の前にある009。残りが008Lと008Rこの二機だけ、エンジンが違うんだ」

「ヒュッケバイン008Lと008Rは初のEOT搭載型パーソナルトルーパーでな……その二機にはブラックホール・エンジンが組み込まれていた」

「ブラックホール・エンジン?何か、名前を聞いただけでやばそうな感じが……」

 

 

 エンジンの名前を聞いて、リュウセイは正直に思ったことを口にした。

 あの事件を思い出した私達はそれぞれ顔をゆがめる。

 

 

「率直に言わせていただきますと、研究者としてブラックホール・エンジンはとても魅力的なエンジンでした。あの事故が起こるまでは」

「あの事故?」

「ヒュッケバイン008Rのブラックホール・エンジンは実験中に突如暴走して基地一つを壊しました」

「き、基地を!?」

「その時に居合わせた奴の中で生き残ったのはたった数人。俺とハミル博士……それにライだ」

「あいつが!?」

「ああ、奴はヒュッケバイン008Rのテストパイロットだったのさ。ブラックホール・エンジン暴走事故のせいでライは左手を失い……ヒュッケバインには“バニシング・トルーパー”っていう不名誉なあだ名が付けられた」

「………………」

 

 

 私達から告げられたライの過去に、リュウセイは言葉が出なかった。

 無理もない、どんなに訓練を受けても、どんなに才能があっても少し前までリュウセイ・ダテは一般市民だった。軍人である私たちよりは人の生き死にから少し離れた位置で暮らしてたことでしょう。

 それに、これまで何度も接してきた中で、とても優しい心を持っていることはわかってる。とってもお母さん想いだし。

 何度か言い合いしている場面に鉢合わせることはあるけど、仲が悪いわけでぱないもの。

 

 

「お前、あいつから何も聞いていなかったのか?」

「あ、ああ……」

「イルム、ライはそういうことを言うタイプではないわ」

 

 

 自分の問題は自分のもの。例え相手が上司だろうが、チームメイトだろうが素直に相談するとは思えない。

 天才も考えものね。ある程度のことはトントンとこなしちゃう能力を持っているから余計に一人で抱え込んじゃうし。

 

 

「……まあ、そうだな。あいつらしい」

「ライの事はこれ以上私たちが言うことではないです。どうしても聞きたいのであればリュウセイが直接ライに直接聞いてください。あなたたちはチームなんですから」

「…………………」

 

 

 知らないとは思わなかったから言ってしまったけど、ライが言っていなかったのならこれ以上私たちの口からは言えない。

 これ以上はリュウセイとライ……チームの問題。そしてその責任はイングラムにある。

 あいつがどんな風にあの三人を導くかは分からないけど、あいつなら、悪いようにはしないはず。

 ──私が知っているあいつなら。

 




明日香紫苑のレポート
機体名 ゲシュペンスト・ミラージュ
量産型ゲシュペンストMkーⅡ・タイプTTを改修して、作られたと思われる。
基本OSはTCーOS、補助MMIはTーLINKシステム。
超高性能の光化学迷彩の他、ディバインクルセイダーズが研究開発していたASRSが搭載されており、ひとたび姿を消せばこちらが攻撃しない限り、視覚、レーダー共に探知が不可能になる。
搭載されていた武器が全て殺傷能力が低く、遠距離系統の装備だったことを考えると、ミラージュは“偵察”と“奇襲”をコンセプトに改修した機体と考えられる。

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