ありふれた生成(機械)魔法士を   作:禍津伊邪那岐大神

18 / 20

やっぱ今年のゲームは神作ばっかですねー(*´ω`*)


第18話

 

 

 

始まりはその虚無を瞳を見た時からだった、何事にも無関心で人と話すことさえ億劫だと言わんばかりのこの世に何の感情も抱いていないかのような瞳………

 

 

 

はっきり言って嫌いだった・・・・なのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見てしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

南雲ハジメと話している時、ノートに何かの設計図らしきものを書いている彼の顔が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしようも無く、愛おしくて、カッコよかったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光輝達勇者一行は、再び【オルクス大迷宮】にやって来ていた。但し、訪れているのは光輝達勇者パーティーと、小悪党組、それに永山重吾という大柄な柔道部の男子生徒が率いる男女五人のパーティーだけだった。

 

 

 

 

 理由は簡単だ。話題には出さなくとも、あの二人の死が、多くの生徒達の心に深く重い影を落としてしまったのである。“戦いの果ての死”というものを強く実感させられてしまい、まともに戦闘などできなくなったのだ。一種のトラウマというやつである。

 

 

 

 

 当然、聖教教会関係者はいい顔をしなかった。実戦を繰り返し、時が経てばまた戦えるだろうと、毎日のようにやんわり復帰を促してくる。

 

 

 

 

 しかし、それに猛然と抗議した者がいた。愛子先生だ。

 

 

 

 

 愛子は、当時、遠征には参加していなかった。作農師という特殊かつ激レアな天職のため、実戦訓練するよりも、教会側としては農地開拓の方に力を入れて欲しかったのである。愛子がいれば、糧食問題は解決してしまう可能性が限りなく高いからだ。

 

 

 

 

 そんな愛子は二人の死亡を知るとショックのあまり寝込んでしまった。自分が安全圏でのんびりしている間に、生徒が死んでしまったという事実に、全員を日本に連れ帰ることができなくなったということに、責任感の強い愛子は強いショックを受けたのだ。

 

 

 

 

 だからこそ、戦えないという生徒をこれ以上戦場に送り出すことなど断じて許せなかった。

 

 

 

 

 愛子の天職は、この世界の食料関係を一変させる可能性がある激レアである。その愛子先生が、不退転の意志で生徒達への戦闘訓練の強制に抗議しているのだ。関係の悪化を避けたい教会側は、愛子の抗議を受け入れた。

 

 

 

 

 結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティーと小悪党組、永山重吾のパーティーのみが訓練を継続することになった。そんな彼等は、再び訓練を兼ねて【オルクス大迷宮】に挑むことになったのだ。今回もメルド団長と数人の騎士団員が付き添っている。

 

 

 

 今日で迷宮攻略六日目。

 

 

 

 

 現在の階層は六十層だ。確認されている最高到達階数まで後五層である。

 

 

 

 

 しかし、光輝達は現在、立ち往生していた。正確には先へ行けないのではなく、何時かの悪夢を思い出して思わず立ち止まってしまったのだ。

 

 

 

 

 そう、彼等の目の前には何時かのものとは異なるが同じような断崖絶壁が広がっていたのである。次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。それ自体は問題ないが、やはり思い出してしまうのだろう。特に、香織と雫は、奈落へと続いているかのような崖下の闇をジッと見つめたまま動かなかった。

 

 

 

 あの二人の死はほぼ確定事項だ。その生存は絶望的と言うのも生温い。それでも、逃避でも否定でもなく、自らの納得のため香織と雫は崖を見下ろしていた。

 

 

 

 だが、そんな空気は読まないのが勇者クオリティー。光輝の目には、眼下を見つめる二人の姿が、ハジメとライキの死を思い出し嘆いているように映った。クラスメイトの死に、優しい香織は今も苦しんでいるのだと結論づけた。故に、思い込みというフィルターがかかり、微笑む香織の姿も無理しているようにしか見えない。

 

 そして、香織がハジメを特別に想っていて、まだ生存の可能性を信じているなどと露ほどにも思っていない光輝は、度々、香織にズレた慰めの言葉をかけてしまうのだ。

 

「香織……君の優しいところ俺は好きだ。でも、クラスメイトの死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、南雲も風間もそれを望んでる」

 

「ちょっと、光輝……」

 

「雫もだ! 例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ。……香織、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。香織を悲しませたりしないと約束するよ」

 

「はぁ~、何時もの暴走ね……香織……」

 

「あはは、大丈夫だよ、雫ちゃん。……えっと、光輝くんも言いたいことは分かったから大丈夫だよ」

 

「そうか、わかってくれたか!」

 

 

 

 光輝の見当違い全開の言葉に、香織は苦笑いするしかない。おそらく、今の香織の気持ちを素直に話しても、光輝には伝わらないだろう。

 

 

 

 光輝の中で二人は既に死んだことになっている。故に、香織の訓練への熱意や迷宮攻略の目的がハジメの生存を信じてのものとは考えられない。自分の信じたことを疑わず貫き通す性分は、そんな香織の気持ちも、現実逃避をしているか心を病んでしまっていると解釈するだろう。

 

 

 

 長い付き合い故に、光輝の思考パターンを何となく分かってしまう香織は、だからこそ何も言わず合わせるのだった。

 

 

 

 ちなみに、完全に口説いているようにしか思えないセリフだが、本人は至って真面目に下心なく語っている。光輝の言動に慣れてしまっている雫と香織は普通にスルーしているが、他の女子生徒なら甘いマスクや雰囲気と相まって一発で落ちているだろう。

 

 

 

 普通、イケメンで性格もよく文武両道とくれば、その幼馴染の女の子は惚れていそうなものだが、雫は小さい頃から実家の道場で大人の門下生と接していたこと、厳格な父親の影響、そして天性の洞察力で光輝の欠点とも言うべき正義感に気がついていたことから、それに振り回される事も多く幼馴染として以上の感情は抱いていなかった。もっとも、他の人よりは大切であることに変わりはないが。

 

 

 

 香織は生来の恋愛鈍感スキルと雫から色々聞かされているので、光輝の言動にときめく事ができない。いい人だと思っているし、幼馴染として大切にも思っているが恋愛感情には結びつかなかった。

 

 

 

「香織ちゃん、私、応援しているから、出来ることがあったら言ってね」

 

「そうだよ~、鈴は何時でもカオリンの味方だからね!」

 

 

 

 光輝との会話を傍で聞いていて、会話に参加したのは中村恵里と谷口鈴だ。 二人共、高校に入ってからではあるが香織達の親友と言っていい程仲の良い関係で、光輝率いる勇者パーティーにも加わっている実力者だ。

 

 

 

 中村恵里はメガネを掛け、ナチュラルボブにした黒髪の美人である。性格は温和で大人しく基本的に一歩引いて全体を見ているポジションだ。本が好きで、まさに典型的な図書委員といった感じの女の子である。実際、図書委員である。

 

 

 

 谷口鈴は、身長百四十二センチのちみっ子である。もっとも、その小さな体には、何処に隠しているのかと思うほど無尽蔵の元気が詰まっており、常に楽しげでチョロリンと垂れたおさげと共にぴょんぴょんと跳ねている。その姿は微笑ましく、クラスのマスコット的な存在だ。

 

 

 

 そんな二人も、ハジメとライキが奈落に落ちた日の香織の取り乱し様に、その気持ちを悟り、香織の目的にも賛同してくれている。

 

 

 

「うん、恵里ちゃん、鈴ちゃん、ありがとう」

 

 

 

高校で出来た親友二人に、嬉しげに微笑む香織。

 

 

 

「うぅ~、カオリンは健気だねぇ~、南雲君と風間君め! 二人をこんなに悲しませて! 生きてなかったら鈴が殺っちゃうんだからね!」

 

「す、鈴? 生きてなかったら、その、こ、殺せないと思うよ?」

 

「細かいことはいいの! そうだ、死んでたらエリリンの降霊術でカオリンに侍せちゃえばいいんだよ!」

 

「す、鈴、デリカシーないよ! 香織ちゃんは、南雲君は生きてるって信じてるんだから! それに、私、降霊術は……」

 

 鈴が暴走し恵里が諌める。それがデフォだ。

 

 

 

 何時も通りの光景を見せる姦しい二人に、楽しげな表情を見せる香織と雫。ちなみに、光輝達は少し離れているので聞こえていない。肝心な話やセリフに限って聞こえなくなる難聴スキルは、当然の如く光輝にも備わっている。

 

「恵里ちゃん、私は気にしてないから平気だよ?」

 

「私も大丈夫だからそれくらいにしなさい。恵里が困ってるわよ?」

 

 

 香織と雫の苦笑い混じりの言葉に「むぅ~」と頬を膨らませる鈴。恵里は、香織が鈴の言葉を本気で気にしていない様子にホッとしながら、降霊術という言葉に顔を青褪めさせる。

 

「エリリン、やっぱり降霊術苦手? せっかくの天職なのに……」

 

「……うん、ごめんね。ちゃんと使えれば、もっと役に立てるのに……」

 

「恵里。誰にだって得手不得手はあるわ。魔法の適性だって高いんだから気にすることないわよ?」

 

「そうだよ、恵里ちゃん。天職って言っても、その分野の才能があるというだけで好き嫌いとは別なんだから。恵里ちゃんの魔法は的確で正確だから皆助かってるよ?」

 

「うん、でもやっぱり頑張って克服する。もっと、皆の役に立ちたいから」

 

 

 

 恵里が小さく拳を握って決意を表す。鈴はそんな様子に「その意気だよ、エリリン!」とぴょんぴょん飛び跳ね、香織と雫は友人の頑張りに頬を緩める。

 

 

 

 恵里の天職は、“降霊術師”である。

 

 

 

 闇系魔法は精神や意識に作用する系統の魔法で、実戦などでは基本的に対象にバッドステータスを与える魔法と認識されている。

 

 

 

 降霊術は、その闇系魔法の中でも超高難度魔法で、死者の残留思念に作用する魔法だ。聖教教会の司祭の中にも幾人かの使い手がおり、死者の残留思念を汲み取り遺族等に伝えるという何とも聖職者らしい使用方法がなされている。

 

 

 

 もっとも、この魔法の真髄は其処ではない。この魔法の本当の使い方は、遺体の残留思念を魔法で包み実体化の能力を与えて使役したり、遺体に憑依させて傀儡化するというものだ。つまり、生前の技能や実力を劣化してはいるが発揮できる死人、それを使役できるのである。また、生身の人間に憑依させることでその技術や能力をある程度トレースすることもできる。

 

 

 

 しかし、ある程度の受け答えは出来るものの、その見た目は青白い顔をした生気のない、まさに幽霊という感じであり、また死者を使役するということに倫理的な嫌悪感を覚えてしまうので、恵里はこの術の才能があってもまるで使えていなかった。

 

 そんな女子四人の姿を、正確には香織を、後方から暗い瞳で見つめる者がいた。檜山大介である。あの日、王都に戻ってしばらく経ち、生徒達にも落ち着きが戻ってきた頃、案の定、あの窮地を招いた檜山には厳しい批難が待っていた。

 

 

 

 檜山は当然予想していたので、唯ひたすら土下座で謝罪するに徹した。こういう時、反論することが下策以外のなにものでもないと知っていたからだ。特に、謝罪するタイミングと場所は重要だ。

 

 

 

 檜山の狙いは光輝の目の前での土下座である。光輝なら確実に謝罪する自分を許しクラスメイトを執り成してくれると予想していたのである。

 

 

 

 その予想は功を奏し、光輝の許しの言葉で檜山に対する批難は収まった。香織も元来の優しさから、涙ながらに謝罪する檜山を特段責めるようなことはしなかった。檜山の計算通りである。

 

 

 

 もっとも、雫は薄々檜山の魂胆に気がついており、幼馴染を利用したことに嫌悪感を抱いたようだが。

 

 

 

 また、例の人物からの命令も黙々とこなした。とても恐ろしい命令だった。戦慄すべき命令だった。強烈な忌避感を感じたが、一線を越えてしまった檜山は、もう止まることができなかった。

 

 

 

 しかし、クラスにごく自然と溶け込みながら裏では恐ろしい計画を練っているその人物に、檜山は畏怖と同時に歓喜の念も抱いていた。

 

 

 

(あいつは狂ってやがる。……だが、付いて行けば香織は俺の……)

 

 

 

 言うことを聞けば香織が手に入る、その言葉に暗い喜びを感じ思わず口元に笑みが浮かぶ檜山。

 

 

 

「おい、大介? どうかしたのか?」

 

 

 

 檜山のおかしな様子に、近藤や中野、斎藤が怪訝そうな表情をしている。この三人は今でも檜山とつるんでいる。元々、類は友を呼ぶと言うように似た者同士の四人。一時期はギクシャクしたものの、檜山の殊勝な態度に友情を取り戻していた。

 

 

 

 もっとも、それが本当の意味での友情と言えるかは甚だ微妙ではあるが……

 

 

 

「い、いや、何でもない。もう六十層を越えたんだと思うと嬉しくてな」

 

「あ~、確かにな。あと五層で歴代最高だもんな~」

 

「俺等、相当強くなってるよな。全く、居残り組は根性なさすぎだろ」

 

「まぁ、そう言うなって。俺らみたいな方が特別なんだからよ」

 

 

 

 檜山の誤魔化しに、特に何の疑問も抱かず同調する三人。

 

 

 

 戦い続ける自分達を特別と思って調子づいているのは小悪党が小悪党たる所以だろう。王宮でも居残り組に対して実に態度がでかい。横柄な態度に苦情が出ているくらいだ。しかし、六十層を突破できるだけの確かな実力があるので、強く文句を言えないところである。

 

 

 

 もっとも、勇者パーティーには及ばないので、彼らも光輝達の傍では実に大人しい。小物らしい行動原理である。一行は特に問題もなく、遂に歴代最高到達階層である六十五層にたどり着いた。

 

 

 

「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

 

 

 付き添いのメルド団長の声が響く。光輝達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。 しばらく進んでいると、大きな広間に出た。何となく嫌な予感がする一同。

 

 

 

 その予感は的中した。広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がったのだ。赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。それは、とても見覚えのある魔法陣だった。

 

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

 

 

 光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

 

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

 

 

 龍太郎も驚愕をあらわにして叫ぶ。それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷静な声音のメルド団長だ。

 

 

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな!」

 

 

 

 いざと言う時、確実に逃げられるように、まず退路の確保を優先する指示を出すメルド団長。それに部下が即座に従う。だが、光輝がそれに不満そうに言葉を返した。

 

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

 

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

 

 龍太郎も不敵な笑みを浮かべて呼応する。メルド団長はやれやれと肩を竦め、確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が再び光輝達の前に現れた。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが光輝達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回もお楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。