我等が女王に、跪け。 作:白蛆
次回からいよいよ本編開幕っ!!
原作者からキラーパス(自意識過剰)を貰った事だし、これは頑張らなくては!!
やたらとプロローグが長かったけど、お読みいただけると幸いです!!
……白昼夢を見ているような気分だった。
暗黒の世界に、一つ、まるで夜空に浮かぶ一番星のように、小さな光が灯った。
それは果てしない世界と比べればさながら塵のような、本当に小さな小さなものではあったが、光の無い空間におけるその存在というのは、この時点ではこれ以上ない程の自己主張を放っていた。
それに追従するかのように、また一つ、暗黒に光が灯る。
今度は一番星とは少し趣の違った、赤色に輝く星だった。
また一つ。また一つ。
小さな光達は暗黒の世界を埋め尽くし、色付けていく。
海辺に散りばめられた砂のように無数に、しかしその一つ一つが、世界に二つとしてない妙なる宝石のように美しく……。
俺はその美しさのあまり、暫時は自分がどうしてこの空間にいるのかさえ忘れて、呆然とそれを眺めていた。
その時、暗黒に浮かぶ星の一つが、爆ぜた。
その輝きはまるで白昼の青空に輝く太陽のようで、周りの星の光をも飲み込み、その空間における
…だが、そんな状態も長くは続かない。
やがてその爆ぜた星の塵は暗黒の闇に溶けていき、世界は再び調和のとれた光のキャンパスとしての姿を取り戻す。
……やがて、億千万の星々は、ゆっくりと渦巻き始める。
気付けば、無数とも思える星の数々が、これまた数え切れないほどの銀河系を形作っていた。
この時の俺は、この様子を見守る以外の一切の思考や感情は要らないとばかりに、ほぼ何も考えていなかった。
究極の思考停止状態。
ある意味では解脱にも近い状態だったと思う。
だが、そんな俺の体は、突如として"落下"を始めたのだ。
宇宙空間……なのかはよくわかっていないが、上や下という定義すら定まっていないような空間に、突然に"上下"という概念が生まれる。
……それはとても不思議な感覚であった。
そしてその感覚は、俺に思考停止状態でいることを辞めさせるには、十分すぎる"インパクト"があった。
俺の心がどんなに停滞を望めども、俺の体はただ真っ直ぐに何処かへ向けて落ちていく。
物凄い速度で落ちているはずなのに、世界はほとんど動かない。その事実が、この世界の大きさと、自分という存在のちっぽけさを、嫌という程に感じさせてくれた。
時間感覚をも失っているので、具体的にどのくらいの年月かは分かりかねるが、落ち始めて長い長い時間が経った頃、動かぬ風景に、ふと変化が生まれた。
俺の真横を、エアーズロックよりもさらに大きな「小石」が掠めたのだ。
そう、それは俺から見れば紛れも無い巨岩だったが、しかしこの世界から見れば、このちっぽけな俺とすら大して違わないような、取るに足らない程の大きさしかない、ただの「小石」であったのだ。
何故、俺がそう感じたのか。
それは、その小石が通り過ぎた向こう側から、それさえも塵の一つに感じてしまうような、超巨大な球が現れたからだ。
謂わば惑星とでも名付けるべきそれは、常に表面を猛烈な嵐が吹き荒れ、それによって真っ黄色な砂のような物質が巻き起こり、生命の気配など欠片も感じることができなかった。
その巨大さは凄まじく、俺の横を掠めた「小石」に匹敵かやや上回るほどの大きさを持つ物体が絶えず衝突し続けてなお、まるでその形を変えようとはしない。
だが、その惑星という存在すらも、この空間においてはちっぽけだ。…あまりにもちっぽけ。
俺の目に映ったのは、膨大な熱と光を放出しながら座す巨大な太陽のような星と、その周りをそれぞれに全く違った軌道で回転する、大小様々な惑星の数々。
水色の星、白い星、黄色い星、赤茶けた星……。
一つ一つの星が、全く違う顔を見せていた。
その中でも俺の目に付いたのは、黒く焦げた星。
ボロボロで、今にも崩壊しそうで、一部は分厚く黒い雲に覆われていて……今も何かが焼けている。そんな星。
その星には、俺の知る地球と同じように、陸があり、海があったが、しかし陸は全てを焼き尽くされ、海は黒く澱み、やっぱりこれまで見た他の星と同じように、生命の気配は感じることができなかった。
"もっとこの星を見ていたい。"
俺の心は突如としてそんな欲求に襲われたが、しかし残念なことに、如何なる意思にも応じることなく、ただひたすらに真っ直ぐに、俺の体は何処かへと向かって"落下"を続けていた。
俺は何処へと落ちているのだろうか?
ここに来て漸く、俺はそんな疑問を抱いた。
本来ならならば落下を始めてすぐに疑問に感じるべきところである。しかし、なぜか俺はそれを考えることができなかった。
いや…
……違う。
わかっていたのだ。
落下を始めたその瞬間から、もしかしたら、この空間に来たその瞬間から……俺は"ここが見えていた"。
俺の正面から接近する、命溢れる雄大な星。
色とりどりに輝き、刹那の間に幾千もの姿を見せる、素晴らしい星。
アァ、
…俺ハ何時モ、御前ヲ身近ニ感ジテゐタヨ。
青ク、小サク、優シクテ
―――ウツクシイホシ
・・・
彼の者の来訪は、とても穏やかで、静かであった……。
星を分厚く覆う大気の壁を突き破り、雲を割き、空を割ってなお、"静かであった"。
彼の者の来訪は、誰をも知り得なかった……。
光を放ち、音を轟かせ、大地を穿ち、木々を震わせてなお、"誰をも知り得なかった"。
だが、星は確かに知っていた。
彼の者の到来を。
星は、彼の者の到来を告げる術を、持っていなかった。
……そして、そのつもりも、また無いのだろう。
事の全てを成り行きに、運命という運河の流れに任せるのが、「星」という存在の生き方なのだから……。
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