我等が女王に、跪け。 作:白蛆
高専は文化祭をやる時期が遅いのです!!
ついでにテスト期間までズレてやがる。
今回から戦闘開始!主人公の無双(二つとして有らずの意)ぶりをご覧あれ?
取り敢えず、目下の目標はこの女王領域とかいう島からの脱出と、各能力の成長だ。
まずこの『星焔の蠱毒の壺』とも呼ばれるとんでもない場所から脱出しない限りは、転生してこの世界にいるはずの二人の少女に謝ることもできやしない。
それどころか、せっかく得た、本来あるべきでない「第二の人生」とでも言うべきものを、ドブに捨てるようなものである。あそこに書いてあることが全て本当とは思えないが、何であれ危険があるということだけは確かなのだ。
そして、能力の成長はおそらく脱出の手助けになるはずだ。成長させない理由はない。
……というか、何故俺はこんな状況に置かれても、冷静に自分のすべき事を判断出来るのだろうか?
明らかにおかしい。前の俺には逆立ちしたって出来なかった事だ。そもそも逆立ちなんか出来なかったが。
……もし前の俺がこんな状況に陥っていたら、それこそどうだろう。普通に混乱して現実逃避を始めるか、絶望のあまり自殺行為に走る可能性だってあったかもしれない。それだけ弱い人間だった。
もしかして、これも『私が用意できる最高の肉体』という物なのだろうか?つまり、『脳』及びそれによって支配されている『思考』が、根底から覆されたのかもしれない。
それは、前の俺の感性で言うのならば、なんとも恐ろしく、気味の悪いことではあるが、こと今の俺にとっては、さほど気にするようなものでも無かった。
思考が変えられれば、それを忌避する心も変えられる……か。
いや、ここまで言ったことは、あくまでも全て俺の勝手な推測に過ぎず、そこに根拠や証拠といったものは存在していない。
正直なところそうでない可能性の方が高いだろう。
どちらにせよ、今の俺には到底わからぬ事だし、考えても意味の無い問題であると同時に、興味もない。その思考はすぐに棄て去った。
それはひとまずさておいて、まずはこの島から脱出するために、詳細な地形データを得なくてはならない。都合の良いことに、そのための能力もあることだし。
『禁書』が知識を得るための能力だとするならば……、このくらいは当然できるであろう。
『禁書』、世界の地図を表示して俺の現在地を示してくれ。
《告、第三禁忌に抵触する恐れがあります。よろしいですか?YES/NO》
しかし、今までに比べてもかなり強い頭痛と共に帰って来たのは、そんな返答だ。
『第三禁忌』?何のことかはわからない。
わかるはずもないだろう、何故って今初めて聞いたのだから。
しかし、たった今初めて聞いた、そのたった四文字のワードに対して、何故だか、俺の本能の遥か奥底から沸々と、まるで小さな泉のように、濃く重たい恐怖心と不安、そして嫌悪感が湧き上がってくる。
つまりは直感で悟ったのだ、これについて触れてはいけないと……。
だから当然、俺の答えはNOだ。
別の肉体になって多少度胸はついたようだが、それは結局はあくまで"多少"でしかない。大蛇が潜んでいるとわかっている藪を突くようなマネは出来ない。
すると、その瞬間に身を包んでいた恐怖と不安は霧散した。
まるで、冷たく重い霧が晴れるように。
ふぅ、と溜息を吐きながら、次なる質問をする。
じゃあ今度は、『黒の法衣』と『深淵』の使い方について教えてくれないか?
……今度の頭痛は、大したことが無かった。
《解。『黒の法衣』は使用者の意思の力によって様々な形状、性質へと変化します。『深淵』は使用者の体の任意の部位が『口』となり、あらゆるものを呑み喰らうことができます。》
……つまり、質問するほど難しい能力ではないと。
俺はすぐに黒い服をイメージした。
やはり文明人の端くれとしては服は着たいものだし、いつまでも祟り神さえ戦慄するようなドロドロの塊でいるのは流石に憚られたからだ。
しかし、どれだけ強くイメージしようとも、『黒の法衣』は相変わらず禍々しい粘液体のままでいっこうにその形を変えようとしない。これはどういうことだ?
《解。細かく変化するためには『黒の法衣』がまだ未熟です。また、『黒の法衣』を変化させる使用者の「意思の力」も未熟です。》
ああ、この能力自体にも成長が必要なわけだ。
神を復活させるのには直接必要ないというだけで、この能力も成長するものらしい。
じゃあ次は『深淵』を……
………ガサッ!!
!?
その時、棒立ちで考え込んでいた俺の近くの茂みが、小さく音を立てる。本当に大したことのない音量だったが、俺の高性能な耳は敏感にそれを察知した。
嫌な予感を感じた俺は、慌てて後ろを振り返るも、そこには既に何もいない。ただ静かなる森が広がっているだけだ。
だが、かすかに気配を感じる。
それも一匹や二匹ではない。
ザッ!
来るっ!?
俺が素早い反射によって振り向いたその瞬間、茂みから二つの青い影が飛び出した。
10メートルを軽く超える体長。体高だけで考えても人間よりも遥かに巨大な生物。その姿は恐竜然としており、いわゆるディノニクスやドロマエオサウルスのように獣脚類と称される骨格をしていた。
しかしその姿は、地球で見つかっていたいかなる恐竜とも一致しない。
まず目を引くのが、その特徴的な体色だ。腹部や首を除く全身を青と黒の縞模様の鱗で覆われており、頭部には赤いトサカのようなものがある。
人の顔よりも大きな手には、かのディノニクスをも遥かに凌駕する攻撃性を秘めた、真紅の鋭い爪が左右七本。
足にはそれよりも長く太い鉤爪がさらに左右四本、鳥によく似た嘴のような形状の口にはナイフを思わせる鋭い牙が生えており、一見した印象はまさに「全身凶器」。
そんな生物が今まさに明確な敵意を持って自分に襲いかかって来たのである。
《※群鳥ランポス=ケプトス
修羅鳥竜種・竜盤目・鳥脚亜目・走竜下目・ランポス科
女王領域にて進化した、ランポス=ケプトスの修羅種。群れで生活し、その一頭一頭が村を滅ぼす程の力を持つ。さらにボスである蒼群主ドスランポス=ケプトスに率いられている場合その群れの規模は200を越えると言われている。知能が高く狡猾で慎重。群れで草食モンスターに襲いかかる。》
瞬間、俺の頭の中に差し入れられる情報。
一頭で村を滅ぼす?200頭以上の群れ?意味がわからない。ただわかるのは、最大限に危険だということだけ。
10メートルオーバーの巨体であるにも関わらず、自分の体高を上回る高さで飛びかかって来たランポス=ケプトスを、俺は後ろへ飛びのくことで躱すと、何とか状況を脱するための筋道を探った。
何せ今俺はこんな化け物達に包囲されているのである。自分よりも強い相手に集団で、相手の有利な土地で、相手の有利な条件で、逃げられぬように囲まれている。まさに最悪といえる状況だけは脱さなければならない。
今俺に使える能力は三つ。まともに使ったこともないが最大限に活用して戦わなければいけない。
まずは……『禁書』!攻撃されそうになったら教えろ!
《解。承知しました。
告、後方七時の方向から攻撃しようとしている個体を確認。》
俺が『禁書』の警告に従って後方七時の方向を振り向くと、丁度そこには今まさに俺に襲いかからんと牙を剥いたランポス=ケプトスの姿があった。
俺はそれを迎撃するように『黒の法衣』を操作し、禍々しい粘液をランポス=ケプトスに纏わりつかせ、そしてある賭けをする。
成功するかどうかはわからないが、これが可能だと判れば生存できる確率がグンと上がるのだ。
「成功するかどうかはわからない」とは言ったものの、俺は何故かこれが成功することに、かけらも疑いを抱いていなかった。
それは慢心ですらない、もっと奥深い深淵に由来する"確信"だったのだ。
それは、つまり……
「呑メっ!!『深淵』。」
『黒の法衣』を『深淵』によって"口"とすることはできるか、という賭けである。
そして、その賭けに俺は勝利した。
『黒の法衣』が突如として"裂けた"。
それも、ただ裂けたのではない。まるで歯を思わせるようなギザギザとした形状に"分かれた"……いや、状況を鑑みるに"口を開けた"と言うのが正しいのかも知れない。
すると、当然の結果として『黒の法衣』によって包まれていたランポス=ケプトスは、自由と空気を求めて叫びを上げる。
「ギャァッ!!」
そしてそれは同時に、彼の最期の声となった。
『深淵』が、"口を閉じた"。
……次の瞬間、一頭のランポス=ケプトスが、この世界から完全に姿を消した。
まるで、もともとこの世に、いなかったかのように。
"消えた"
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