我等が女王に、跪け。   作:白蛆

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ランポス=ケプトス
ランポスの『禁書』の上での本当の名前。
走脚竜の始祖であるケプトスから進化した鳥竜種には共通してこの名前が付いている。(イーオス=ケプトス、ジャギィ=ケプトスなど。)

この小説ではそういう名前をよく使います。




第3話〜奮えよ、我が血を沸かせ。〜

仲間が一頭消えた。

その事実に、しかしランポス=ケプトスの群れはまるで臆した様子はなく、むしろ警戒心と憎悪の感情を一段階引き上げたようだ。

 

その瞬間、これまでは様子見のように少数ずつしか襲ってこなかったランポス=ケプトス達の動きが、完全に変容した。

即ち、この場にいる十数頭全員が、攻撃体制に入ったのである。

 

 

《告、八時の方向から…六時の方向から…十時の方向から…二時の方向からランポス=ケプトスが攻撃しようとしています。》

 

一気に攻撃が四方向へ増えた。つまりは俺を確実に狩る方向へと作戦を変えたのである。

どうする?先程のように捕まえて『深淵』で呑むか?いやしかし、さっきは空中で無防備な姿勢だったから捉えることが出来たが、今度はランポス=ケプトスは空中に飛び上がっていない。あれでは奴等の機動力を持ってすれば、簡単に躱されてしまうだろう。

それに四方向が相手だと集中力も粘液の量も持たない。

 

なら……硬質化!!

 

刹那、俺の身動きが完全に封じられると同時に、ガキキキキィィイン!!と硬質物同士が幾度と無く激突し合う音が頭蓋骨にけたたましく響いた。

 

咄嗟の目論見であり、成功するかは定かでは無かったが、『黒の法衣』を固体化させることで、ランポス=ケプトスの鋭い鉤爪を防ぐことには成功したらしい。思ったより自由度の高い能力らしい。

だがしかし、自分の身動きが全く取れなくなった上に、現時点での限界まで硬質化させたはずの『黒の法衣』の表面には、深々とした爪痕が刻まれている。これでは破壊されるまで十数秒と持たない。

 

ならば、槍になれ!!

 

そう考えた瞬間、『黒の法衣』はそんな俺の意思に従うように形を変え、四本の禍々しい結晶の棘となってランポス=ケプトス達に襲いかかった。

しかし、完全に不意をついたつもりにも関わらずランポス=ケプトス達は即座に飛び退いてそれらを躱し、ある者は蹴りつけることで先端を破壊して防いでみせた。

 

ラプトル系獣脚類という時点で察してはいたが、やはり知能は高そうだ。某恐竜パニック映画でも凄く頭が良かったらしいからな。見てはいないが。

 

 

だが、それでも一瞬の隙を作ることには成功したらしい。

 

その隙を突いて、俺は『黒の法衣』の硬質化を解き、超高速で細い触手のように伸ばして木に絡めると、同じように高速で縮めることでその場を離脱しようとした。

だが、硬質化を解いたその瞬間、待ってましたと言わんばかりに、俺を取り囲んでいたランポス=ケプトス達が襲いかかる。

 

《告、斜め下、全方位から八頭のランポス=ケプトスが攻撃してきます。》

 

俺が離脱するのが早いか、ランポス=ケプトス達が襲いかかるのが早いか……

…どうやらその答えは後者だったようだ。

 

俺の足が地面から数メートル浮き上がったところで、何頭ものランポス=ケプトス達が驚くべきことに2メートル近く飛び上がり、『黒の法衣』の禍々しい粘液層を突破して俺の足先に食らいつく。

その瞬間、俺の足に、肉を食い千切られるような激しい痛みが走り、天地が逆転したかのような感覚と共に、俺は激しく地面に叩きつけられた。

 

木に絡めた粘液の触手が強制的に引き千切られ、地面に叩きつけられた影響で湿っぽい土が口の中に入る。

 

身に纏う粘液がクッションとなったことにより、その衝撃自体はさほどでも無かったが、次の瞬間には地面に倒れ臥す俺の背中に、ランポス=ケプトスの巨大な足の鉤爪が突き立てられた。

少しずつ自分の体に埋まっていく鋭利な爪。ドクン、ドクンと血が溢れ出す感覚がリアルに伝わり、痛みは最早熱となって襲い掛かってくる。死への恐怖が沸き起こり、目の前が真っ赤に染まった。

 

そう、恐怖以上に湧き上がるこの感情の名は……怒り。

憤慨、激情、破壊衝動。

 

 

――俺に……触るな。

 

 

喰らい尽くせ、『深淵』……。

 

元の自分では考えられないほど物騒な思考と共に、『黒の法衣』が自らの上に乗るランポス=ケプトスを覆い尽くし、一瞬のうちに深淵の底へと葬り去った。

自分の体の一部である『黒の法衣』そのものが、『深淵』の力で全てを喰らう"口"と化すこのコンボは、中々に強力な能力だ。変幻自在に動き回り、喰われれば防御を無視して強制消失。間違っても敵に回したくない厄介な力である。

 

上に乗るランポス=ケプトスを消失させた俺は、傷を無視して立ち上がると、身に纏う『黒の法衣』から無数の触手を作り出し、それらの先端を全てを『深淵』の力で口にした。

 

禍々しい触手の先が、口の様に裂け、まるで無数の大蛇のように牙を剥く。

 

直後、超高速で暴れ回る何十本もの禍々しい触手。

その悍ましさは、かの祟り神さえも可愛く見える程のものである。現代風に表現するならば、SAN値直葬とでと言ったところか。

 

そんな攻撃を危険と見たランポス=ケプトス達は、獣脚恐竜型の生き物とはとても思えない華麗なステップでそれらを回避していく。

せめて防御でもしてくれれば、『深淵』によってそこを喰らうことが出来るのだが、どうやらこれまでに二頭の仲間達が包み込まれて消されたのを見て、直接触れるのは危険と判断したようだ。

『深淵』の触手の全てを躱しながら、俺からの距離を離していく。

 

……撤退か?

 

徐々に後退していくランポス=ケプトス達を見て、俺がそう思ったのも不思議ではない。だが、この女王領域においてその認識は甘かったと言えよう。

 

やがてこの触手の射程限界を迎え、奴等が撤退に入ったと見て俺が触手の動きを停止したその瞬間、ランポス=ケプトス達が一斉に吠え、両腕をクロスさせて天に掲げ、真紅の鉤爪に赤いオーラを纏わせた。

 

ランポス=ケプトスの黄色い瞳が、動脈を流れる鮮血のように真っ赤に血走り、全身からは淡い赤色のオーラが立ち上る。

 

俺は知らなかったが、その動きは、モンスターハンターというゲームをプレイした事がある者ならば、当然知っているであろう動きであるそうな。

 

 

スタミナを犠牲に、一時的に驚異的な身体能力を得る技。

たった今得た『禁書』の知識によると、ジォ・ワンドレオという土地で編み出されたらしいその武技の名は……

 

 

 

––––––––『鬼人化』。




戦闘パートは暫く続きます。
何故ってここは女王領域ですから。
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