我等が女王に、跪け。   作:白蛆

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《修羅種の正しい使い方》マニュアルが欲しい今日この頃。

それから、「修羅種を咬ませ犬にさせない会」を結成したいですね。あの子達こんなに強いのに……グスッ。
それもこれもインフレが悪い。
だからどうするべき?そんな時に行うのがパワーデノミだ!!
全部強くする!!

……あれ?何かがおかしい。



第6話〜吠えよ、我に恐れ慄きて。〜

《告、3時の方向300メートル先より、タイガー=レックスの攻撃が来ます。》

 

 

ランポス=ケプトス達が動きを止め、逃走を始めたその直後、『禁書』は唐突にそう告げた。

これはただの俺の気のせいかも知れないが、その時の声はまるで、焦っているかのように早く、そして大きく感じたのがなんとも印象的だった。

 

 

その音声を聞いた瞬間、俺は咄嗟に『黒の法衣』を全身に纏わせ、極限まで硬質化させることで身を守る。その一連の動きは、『禁書』の警告を聞いてから僅か1秒にも満たない短い間に行われた。今までの俺からは考えられないほどの早さと、速さで。

今思えば、それは本能が直感的に危機を感じ取った故に行われた、「最も効率的な動き」とでも言うべきものなのかも知れない。

 

そして、"ただ予告されただけでそれだけの危機感を抱いた"ということは、同時に"これから起こる事が想像の範疇を超えた程恐ろしいものである"ということを、いっそ非常なまでに如実に示していた。

 

 

取り敢えず一つだけ言えることといえば、その動きこそが、直後の俺の命を紙一重で救う結果となったということだけだ。

 

 

―――ドッ!!!

 

 

爆発とも、波紋とも、形容し難い、純粋な衝撃波。

理不尽なほどに圧倒的で、絶対的な破壊の奔流が、俺の体を周囲諸共吹き飛ばす。

もしも、身を守るのがあとほんの一瞬でも遅ければ、俺の体はこの瞬間に粉々にされていただろう。

 

 

ガアアアアアァァァァァァァァアアアアンンンッッッ!!!!

 

 

刹那に駆け抜ける、崩壊。

もはや形容する言語さえ見当たらないほどの、それは絶対的な暴力だった。あれほどまでに頑丈だった木々を薙ぎ、岩は瞬く間に粉末状にされ、地面は消し飛んで、深い森の中に一筋の道が形作られていく。

 

衝撃波は俺の「黒の法衣」による防御をも易々と粉砕し、肉を刮ぎ、骨を砕き、内臓を抉り、魂さえも吹き飛ばさんばかりの勢いでこの身に襲いかかる。

瞬きさえも出来ない一瞬の間に、俺は幾千と気絶と覚醒を繰り返した。衝撃に気絶しては、痛みのあまりに覚醒し、また衝撃に気絶させられる。そんなループが、コンマ1秒の間に無数に繰り返されたのだ。

 

今まで身に纏っていた『黒の法衣』が全て消し飛ばされたことで、この世界に来て初めて、直接大気に晒されることとなった俺の体は、全身から血を吹き出し、関節は怪奇な方向に曲がり、極め付けには変な湯気を吹き出しながら、最早賞賛したくなるほど完璧な水平方向へと吹き飛んでいく。

 

無期の後、漸く地面に接触したかと思うと、しかし再びバウンドして空中へとカチ上げられ、まるで水切りの小石のように、地面の上を二転三転と、無様に滑稽に飛び跳ねる。

やがてそのバウンドを終えた頃、俺は津波と見紛うほどの巨大な土煙を上げながら、大地の上をゴロゴロと転がっていった。

 

 

ズズズズズズゥゥゥゥンン……

 

 

その重苦しい地響きのような音が、地面が震えていることによるものなのか、それとも俺が転がっている音なのか、或いは完全な幻聴なのか、それすらも最早判別できない。

 

 

俺の体が完全に動きを止めたのは、衝撃波が襲いかかってから10秒以上経ってからのことであった。

体感的にはコンマ1秒にも千秋の年月(としつき)にも感じたが、何故か直感的な感情が、ここまでに掛かった時間が凡そ10秒であることを、俺に教えてくれたのだ。

 

 

全身が焼けるように熱く、ドクン、ドクンと鼓動が鳴ると共に意識が掻き消えていく感覚を覚える。全身の骨という骨は粉砕され、全身の筋肉という筋肉は引き裂かれ、内臓は飛び出し、頭は割れそうだ。

悲鳴や呻き声を上げようにも、その為の酸素を取り込むことが出来ず、声帯が機能しているかすら怪しい。

 

 

何故そんな状態になっても思考が可能なのかとか、何故自分がそんな状態であることを知る事が出来たのだとか、そんな余計な疑問が湧き出る暇さえも無く、俺は延々と迫り来る苦痛に悶え続けた。

 

 

だが、数秒としないうちに、そんな俺の体をフワリと、まるで母が子を慈しむかのように優しく、春のそよ風のように穏やかに、"何か"が包み込んだ。

瞬間、全身を襲っていた苦痛の数々がさながら嘘のように消えていき、喪われていた視覚や聴覚も突如としてその機能を取り戻していく。

 

俺はそのことに驚きながらも、顔を上げて自分をたったの一撃でここまで破壊した相手(てき)の姿を目に焼き付けるべく、顔を上げた。

 

 

――森が、裂けていた。

 

あれほどまでに頑丈で、あれほどまでに深く、あれほどまでに神秘的で、あれほどまでに勇壮な森が、屈していた。

つい先程まで巨大な木々に覆われていたその場所は、真っ直ぐに消し飛ばされ、まるで人間の操作する重機によって無理やり整備されたかのように、いっそ見事なまでに真っ平らに均され、まるで道のようにもなっていた。

 

いや、『ようにも』……ではない。これは、"道"なのだ。

 

 

王者が通る為の、ただそれだけのために造られた、王道なのだ。

 

500メートルの道の先に座す、竜。

この道を作り出した張本人にして、破壊の権化。

 

その姿を見た瞬間、そう思った。

 

 

《爪哭竜タイガー=レックス

修羅飛竜種・竜盤目・竜脚亜目・レックス科

女王領域にて変異した轟竜タイガー=レックスの修羅種。原種に輪をかけて凶暴になっており、動くモノならば何でも圧倒的な暴力を以って破壊する。咆哮は範囲や指向性を決める事ができ、前方にのみ向けた場合最高で5キロメートル先まで消し飛ばすほどの力がある。走行速度も速く、初速から時速100km、最高速度は音速に匹敵するという。『絶対強者』の名は捨て、『相剋の弱者』の名を手に入れた。》

 

 

タイガー=レックス………。

 

俺の眼前に突如として現れた暴力の権化たるその生物は、遠目に見てもなかなかに特徴的な姿をしていた。

 

まず目立つのが、全身を覆う青と黄色の縞模様だ。どう言う意図があってあのような目立つ色合いなのかはわからないが、その姿はなかなかに本能的な恐怖を揺さぶる何かがあった。

血走った赤い双眸は真っ直ぐに俺の事を捉えており、今にも食らいつかんばかりにその巨大な口に生え揃った鋭い牙を打ち鳴らす。

その様子は、かの月咬家の当主が可愛く見えるほどの迫力を秘めていた。いや、もはや比べるのすら烏滸がましい……全く次元の違う生き物なのだ。

 

その生物は、四肢を地面に付いて所謂「伏せ」の姿勢をしており、四本の筋肉の塊と見紛うほどの強靭な脚は、その圧倒的な巨体をしっかりと大地に支えている。

 

そして何より特徴的なのが、前脚の構造だ。三本の湾曲した鉤爪によって大地をガッチリと捉えているその前脚は、小指と見られる部位がまるでプテラノドンを筆頭とする翼竜のように後方に伸び、翼のような形状を取っているのだ。

 

それは、地球にいる既存の生物のどの分類にも当てはまらない形質。

 

だが、その生物の持つ爬虫類っぽさと、強大な力、そして何よりもその前脚の翼のような構造が、否が応にも彼の種族を教えてくれる。

 

 

それは即ち、ファンタジー御用達モンスター。

 

 

 

 

–––––––飛竜(ワイバーン)

 

 




タイガー=(ワイバーン)レックス
『禁書』内における轟竜ティガレックスの意。

英語表記だとこんな感じ?
『Tiger=(Wyvern)REX』
因みにティガレックスの英語表記はこちら。
『Tigrex』

こういう名前考えるの意外と楽しいですね。
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