我等が女王に、跪け。   作:白蛆

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テスト直前に更新するという狂気の沙汰。
勉強しようぜ……。

でわどうぞ。

※突如挿入される三人称視点。恐怖を演出するために仕方なかったんや…。


第8話〜惑えよ、我に呑まれた日常に。〜

見上げるほどの巨木が、圧倒的な力によって薙ぎ倒された……否、いとも容易く吹き飛ばされたことにより森の中に突如として生まれた広大な空間に、黄色い甲殻に青い縞模様が特徴的な巨体が、その体重を感じさせないほど軽やかに、大きな音を立てることもせずに降り立つ。

 

その竜……ティガレックス修羅種は、倒された木々の僅かな隙間にも気を配り、先程まで自分が攻撃していた対象が完全に死滅……いや、状況を鑑みるに「消滅」という表現が正しいかもしれない……したことを確認する。

 

黒地に僅かに輝く赤や紫の模様が入った悍ましい粘液体を全身纏う小型の脆弱で矮小な生物である。

それこそ、ランポスやアプトノスにも劣るような芥だ。

 

いくら小型とは言えども、この森に棲む他の連中のような並桁外れた隠密能力を持つわけでもない上に、そんな目立つ物質を纏っているのだ。もしその一部分でも残っているのならば、見逃さないだけの自信がティガレックス修羅種にはあった。

 

何故ならば、このティガレックス修羅種は10ヶ月もの長期間(・・・)を、この女王領域において辛うじて(・・・・)でこそあれど生き延びてきたのである。

突然奇襲を仕掛けられたり、相手の隠密能力によって手こずったことなど、ランポスの両手両足をもってしても数え切れないほどだ。

 

相手を認識してしていれば勝てる。認識出来なければ死ぬ。それがこの女王領域「森林」における絶対的なルール……。

もちろん、中にはそんなルールすらも消し飛ばすような化け物もいるのだが、生憎そのような相手には、類稀なる運の良さによって、このティガレックス修羅種は未だ会ったことがない。

 

 

ティガレックス修羅種は、あの生命体が消滅したことを確認すると、その場を去ろうと背を向ける。

本来隠密性を重視すべきこの森で、これだけの破壊を齎すほど暴れたのだ、他の修羅種が寄ってくる危険性がある。そんな場所に長居をする理由は無い。

 

 

ティガレックス修羅種は、そんな危険性を冒しつつも自分があのちっぽけで脆弱な存在を攻撃した理由を、上手く言い表すことが出来ないでいた。

 

それは単純に一般論として轟竜の頭が悪いからとか、まして言語の壁があるからとかそういう話ではなく、本当に自身でもハッキリとわかっていないのだ。

 

排他性というか使命感というか、とにかくそんなものが突如として彼の心の中に湧いて生まれたのだ。

 

それは、最も近い感情を言うならば、恐怖や焦り、不安のようなものである。

だが、このティガレックス修羅種はその事実を認めようとはしない。確かに自分は"弱者"ではあると言うのは紛れも無い事実(・・・・・・・)ではあるものの、そんな自分の攻撃に為す術なく滅された矮小で脆弱な生命体に、端くれとはいえ修羅飛竜種であるこの自分が恐怖を抱いたなど、あってはならないと考えたからだ。

 

 

この時、このティガレックス修羅種が、自らがその存在を食べる為でもなく明確に殺害するために攻撃したその理由を、理解することが出来ていたのであれば、彼の運命は変わっていたことだろう。

 

しかし、運命というのは得てしてそういうものである。ちょっとしたキッカケで変動し、捉えどころが無く、そして、変わることも決して無い。

 

彼の過ちを一つ挙げるとするならば、目視だけではなく、もっと詳細な、確実な情報をもってその生命体の消失を確認すべきであった。

ティガレックス修羅種ならば、自らの声を使ったエコーロケーションなどお手の物なのだから。

 

 

ティガレックス修羅種はその場で突如立ち止まり、素早く身を捻って振り向いた。

その行為は、決して明確な理由があってのことではない、ただ「嫌な予感」がしたのである。

「嫌な予感」といってしまうと、酷く抽象的で非科学的で非論理的なものに感じてしまうが、それは紛れも無い一瞬の油断が命取りとなる女王領域で彼が……ひいては彼の先祖たちが培った「野生の勘」であった。

 

"何かいる"

 

ティガレックス修羅種はそう確信していた。

が、実際、彼の目の前にあるのは消し飛ばされた大地と、爆ぜ散った僅かな肉片だけだ。

 

だが、確かにその場所に、"それ"は存在した。

 

そう、

 

 

"肉片"が。

 

"肉片だけで"。

 

"動き出したのだ"。

 

 

それは、生き物としては有り得ないにも程がある光景。

当然、こんな環境であるからには、無限再生に近い能力を持つモンスターも女王領域を探せばいないわけではない。しかし、いくらなんでも肉片だけになってもまだ生存可能というのは、それこそこの女王領域頂点の一角を担う"数十年級災害"や、あるいは"女王"自身でも不可能なことである。

 

ティガレックス修羅種は、そのあまりの光景に、「己の目を疑った」。

 

今まで、10ヶ月という長い間(・・・)、一度として自分を裏切ることのなかった自らの目を、ほんの一瞬とはいえ、「疑ってしまった」。

それこそが、他でもない彼の、最大の失敗だったのだ。

 

 

ティガレックス修羅種は、状況を正確に把握するために、後ろへと跳躍した。

 

ティガレックス修羅種にとってそれはただの移動に過ぎず、それも全力でもない、軽いステップのようなものだった。

 

だが、ただそれだけで、彼の目の前の地面は巻き起こり、爆ぜ、衝撃波によって津波のように波打つ。

修羅種というのはそういう存在だ。

生きているだけで災いを振りまく、最悪の化け物達。

 

そんな最悪の化け物の一匹であるティガレックス修羅種が、「着地に失敗した」。

 

なんだ、その程度のことかと思う方もいるかも知れないが、ほんの一瞬の油断が命取りになるこの女王領域において、例え臨戦状態で無かったとしてもそんな失敗は許されない。

事実、このティガレックス修羅種はこれまで一度も転んだことがない。

 

それが、今、ただのステップで転んでしまった。

 

何故?

 

ティガレックス修羅種は猛烈な違和感を覚える。

 

だが、考えてみれば当然の話だ。もともと前脚二本と(・・・・・・・・・)後脚一本の計3本(・・・・・・・・)しか脚がない自分が(・・・・・・・・・)、バックステップなんてものを使ったら、バランスを崩すのは当然の理。

疑問にさえもなり得ない。

 

 

 

だが、何かがおかしい。

何かが間違っていると思えてならない。

 

 

 

 

この違和感は、一体……

 

 

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