我等が女王に、跪け。 作:白蛆
でっち上げ設定100%っ!!
転生まではもう暫くお待ちください。
ぶっちゃけ主人公が死んだ次の話から読んでも全然大丈夫なようにはしてありますので……してあるつもりですので。
どうかもう暫くお付き合いを…っ!
「まさか、再会がこんな形になるとはな…大己貴。」
式場を出てすぐのところの壁に寄りかかって、タバコを蒸かしている男が、俺にそう声をかけてきた。
数秒の間、俺は目の前の人間が誰なのかを分かりかね、すぐに記憶の中を検索する。だが、そもそも人の顔を覚えるのはあまり得意ではない俺は、目の前の人物が誰なのかを中々思い出せずにいた。
そんな俺のこと様子に気付いてか、彼は助言でもするかのようにもうひとこと付け足した。
「ほら、高校の時の。」
その言葉で俺の記憶は合致する。彼は確か高校の時、比較的仲の良かった同級生である。仲が良かったと言っても、それはあくまで比較的の話であり、そもそも人付き合いの苦手な俺は、今でも名前を覚えているほどに親しかったような友人は誰一人としていないので、彼の名前が何だったかまではは忘れたが。
「参列者の名前の中にお前の名前があったからな。こんな珍しい名前お前以外に滅多にいるはずがないと思ったら、やっぱりお前だったか……。」
大己貴 命。確かに、見れば一発でわかるだろう。しかし、月咬家とはおおよそ縁のなさそうなこの男が、何故ここにいるのだろうか?
それを聞いたら、煙を吹きながら彼はこう答えた。
「部活だよ。月咬の所属してた弓道部の顧問。といっても…穴埋め的に顧問にさせられただけだから指導なんかは出来なかったけどな。」
どうやら彼は、教職に就いていたらしい。まさかコイツが公務員になっているとは夢にも思わなかった。
彼はタバコを地面に放り捨て、足で踏んで火を消す。すると、胸ポケットからタバコの箱を取り出し、ライターで火を付けてまた吸い始めた。
「……随分吸うんだな。」
「ん?……ああ、教師ってのもなかなかストレスが多くてな……まあ、お陰で生徒からの評判は良くなかったがな。……っと、俺がお前に話しかけたのは別に昔を語らうとか現状を説明し合うとか、そんなことの為じゃねぇよ。……お前の目の前でアイツ死んだんだろ?」
彼のその言葉に、僅かに心拍数が上がる。逆に言えばそれだけだった。俺は静かに目を閉じ、彼の次の言葉を待った。
「アイツ、死ぬ前どんな顔してた?」
「……え?」
その質問は、俺にとってあまりにも意外なものであった。いや、そもそも何か質問されるなんて思ってすらいなかったのだ。
どんな顔?そんなの見ているわけがない。刹那のことだ覚えているはずが……あ、
いや、見ている。ぶつかるより少し前に、彼女の顔がふと目に付いた気がする。まあ、あれだけの美人だからな、俺だけじゃない、ほかの何人かも目がいっていた。
その時の顔は……、
確か…。
「…とても、楽しそうだった。ゲームのパッケージを見て笑っていた気がする。」
そうだ。確かにそうだった。
でも、だから何なのだ?その顔を潰した俺を責めに来たのか?
そんな問いを持ちながらも、しかし口にはせずに彼の方に向き直った。
「……そうかよ。」
彼は、それだけ言うと、暫時口を閉ざした。
…その不気味な沈黙は、俺が殺してしまった少女の親友と思わしき、あの虚ろ目の少女が出てきた頃に、他ならぬ目の前の彼によって破られた。
「…アイツな、滅多に笑わない奴だったんだ。」
彼は唐突に、少女のことについて語り始めた。
「いつも何かつまらなそうな奴でな……特に姉貴が死んでからは、それこそロボットか!て言いたくなるようなレベルでろくに表情を動かさなくなったんだよ。」
彼はそこまで言うと、あの虚ろ目の親友の少女の方へと視線を向けた。俺もそれを追ってあの少女に目を向ける。
「その沈黙を破ったのがあの娘でな……、何をしたのかは詳しくは知らねぇが…アイツ等がしょっちゅう話してた内容から考えて、多分モンハンとかいうゲームだったかな?それが切っ掛けであっという間に唯一無二の親友みたいになってよ、アイツに表情が戻って来たわけ。……でも、その後ちょっとした事件があってな、まあ、立場上……と、口止めされてるから詳しくは言えないが、巻き込まないようにってアイツ学校ではあの娘と距離を置くようになってな。こりゃダメか……て思ってたんだけどな。」
彼は小さく笑った。
「そうかよ…、あの二人の絆はまだ切れてなかったかよ。」
俺のこの時の感情を、上手く言葉に表すことは出来ない。
ただ、一つだけ、彼の横顔を見て……ああ、コイツは教師になったんだなと、不思議な実感を抱いた。
そして俺は、そんな二人の絆を絶ってしまったのだと、改めて罪悪感に苛まれ、顔を伏せる。
「……すまん。こんな話をして、ただ確認したくてな。……まあ、あんまり自分を責めるなよ。忘れろとは言わねえし、言えねえよ、でもお前の状況で自分を責めたって思考のループに陥るのがオチだ。そんなことしてる暇があるなら自分に出来ること、したいことを探せ。」
そんな俺の様子に気付いたのか、彼は声を掛けてくる。そして、彼の言葉を聞いて、やっぱり自分って小さくて弱い人間なんだなと実感した。
「……で、ここからが本題なんだがよ。」
彼は声を伏せ、顔を俺に近付けて耳打つように囁いた。
「見ての通り、唯一無二の親友を失ってさ、あの娘今にも壊れちまいそうなんだわ。別に弓道部って訳でもないし関わりなんてほぼほぼ無いんだけどさ、だからって知らんぷり放置っていうのは違うだろ?なんとかしてやりたいんだよ。あの目を見る限りじゃあのままだとそう遠くないうちに自殺しかねん。だから…」
その言葉を聞いて、俺は改めて虚ろ目の少女を見た。
ろくに食事も摂っていないのか頬は痩せこけ、不健康な青白い肌を晒し、目には光が無く、何処を見ているのかもハッキリとしない。
あの表情に見覚えがある。昔「事故死」した同僚が、丁度あんな顔をしていた。
あの娘が死ねば、俺は結果的には二人の未来ある命を奪ったことになってしまうのだろう。
……また「俺は」だ。
でも、今はそんなことはどうでもいい。
どんな理由だって構わない。俺がそうしたいから….
今度こそ、……"助けなければ"。
「俺達ゃ非力さ…でも無力じゃ無えはずなんだ。なんとかアイツの親友だけは、救ってやりたい。」
まさかのあの人その二は、姫星の弓道部の顧問。
え?レイアちゃんが言ってた印象と違いすぎる?
………キャハ♪(殴