我等が女王に、跪け。 作:白蛆
え?あ、えぇ!?
ということで、お待ちかね、転生編のお時間がやってまいりました!
ここからは別作品じゃぁぁぁっ!!
今回は少し長めです。
真・プロローグ1〜我が妄執、闇に芽生える。〜
長い黄昏の時は、終わりを告げました。
長かった……いえ、永かった。これまで。
幾星霜に消えゆく時を、ただ無意に過ごす、地獄のような時間。
それが今、終わったのです。
こんなに喜ばしいことが他にあるでしょうか。
「彼」を見つけてから、待ち焦がれる日々。
数十年に満たないその短い時間は、私の存在した時間から考えれば刹那の時でしたが、しかし恐ろしく長く感じたものです。
先に喜びがあると、こんな不思議なことがあるのですね。
そして、待っている時間も終わりです。
これからは自分の意思で動くことができます。
待っている間はあんなに長く感じたのに、いざ振り返ってみるとなんとも短い時間でした。ふふ……、これを人は「乙女心」とでも言うのでしょうか?
ああ、早く来て……。
……逢いたいです。
私を自由にしてください。
私を解放してください。
この空虚の世界から、際限の無い虚無から、どうか私を連れ出してください。
終わりなき虚無の中で漠然と生きるでもなく存在し続ける日々を終焉など決して訪れず数え切れない永遠を誰にも知られず誰にも顧みられず見ることも聞くことも感じることも出来ず事実という情報を一時たりとも絶やすことなくさながら拷問のように流し込まれ生まれ生まれ生まれ生まれ生まれ生まれ生まれる世界を死に死に死に死に死に死に死に死に死にゆく世界を何度も何度も見るでもなく聞くでもなく感じるでもなくただ無機質な情報として受け止めそれがなにかをもたらすわけでもなく極僅かな干渉さえも許されずに無意味な知識を詰め込まれ続ける日々が終わる日を何度何千度何万度何億度何兆度何京度その回数さえ忘れるほどに夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て夢見て…………
……ふふふ。取り乱してしまいましたね。
私としたことが情けない。
もう焦る必要などありません。
……そうでしょう?
–––––––私の愛しい人
〜〜☆〜〜☆〜〜☆〜〜☆〜〜☆〜〜
「–––––謝りたい人が居るんです。どうしても、謝らなくちゃいけない人が居るんです。」
俺は、何処かもわからないこの場所で、一人、願った。
この罪人が、誰かに何かを願おうなどと、巫山戯るのも大概にして欲しいくらい傲慢なことであるとは思うが、しかし、それでも俺は願い続けた。
……闇は深く、されどもどこまでも俺の声を運んでくれる。
いや、死人である俺には肉体は既に存在しないので、それは正確に言えば「声」ではないのだろう。
どちらかというと、「思念」とでも表現すべきものだ。
その場所に、敢えて名を与えるとするならば、『黒』。
逆に言えば、それ以外の如何なる言葉でも形容し難い。
見ているだけで精神を犯されそうなほどの、純粋で究極的な、空空漠々とした『黒』だ。
これが死後の世界なのだろうか。
ここは地獄の底なのか……あるいは罪人を裁くための場所なのか。
少なくとも天国ではないのだけは確かだ。
「貴方には、モンスターハンターの世界に転生してもらいます。」
俺の願いを聞いてかはわからないが、音も光も無い『黒』の闇の中に、突如としてそんな声が響いた。
「響いた」とは言っても、実際に存在する物理的な音声では無いのだから、反響したわけでも木霊したわけでもない。ただ、ありとあらゆる方向から、「音に極めて類似した情報」がやって来たから、擬似的に「響いた」かのように感じただけだと思う。
ただ、重要なのは、その内容だ。
「転生?モンスターハンター?」
何を言っているのかよくわからなかった。
モンスターハンターとかいう国民的ゲームがあったのは知っているが、転生というのがよくわからない。輪廻転生とかそういうものだろうか?
そして、それを俺がするというのはどういうことなのだろうか?
というか、この声はそもそも誰なのだろうか。
若い少女のようでもあるし、朽ちた老人のようでもある、この不思議な声は……。
「……驚きました。今時異世界転生も知らない人間がいたとは…。転生とは、貴方の世界で言う仏教的な輪廻転生とは異なり、記憶を有したまま新たな存在へと生まれ変わることを言います。その中でも今回は「異世界転生」。即ち、貴方のいた世界とは別の世界に行くのです。その行き先が日本のゲームにもある「モンスターハンター」に極めて類似した世界。もちろん、所々異なる所はありますが……。つまり、貴方はこれから、そのモンスターハンターの世界に、記憶を有したまま、新たな存在として生まれ直すということです。ここまで判りますか?」
『黒』の中の声は、抑揚のない淡々とした口調で畳み掛けるように説明すると、俺に理解しているかを問うた。
本来の俺であるならば、一回の説明だと上手く理解することができないのだが、何故かこの声の説明は、頭の中に直接情報をねじ込まれたかのように、すんなり理解することができた。
「理解したのならばいいのです。さて、転生するにあたって、いくつか注意事項が。これから貴方が向かう世界は、想像を絶する程に過酷な地です。それも、惑星を軽々と破壊するレベルの化け物がゴロゴロしています。頑張ってください。…それから貴方を転生させるのにはある理由があるのです。」
「……ある理由?」
その「異世界転生」とやらに何か意味があるのだろうか?
「はい、実は現実世界には干渉できない私からある頼みがあります。その頼みというのが、遥か一千万年前から、人類のために戦い続けた「神」を復活させるということなのです。つい最近……まあ、人間の感覚では数十年なので十分昔なのでしょうが……とある邪龍によって殺されてしまったのですが……曲がりなりにも神なので、大体十万年後には復活出来るでしょう。一千万年生きている存在にとって、それは大して長くはない時間なのですが、それでも十万年という時があれば、生態系が大きく変わることもあります。今回の依頼というのは、その復活を爆発的に早めることなんです。」
はっきり言って語られている内容は突拍子もなく途方も無いものであった。しかし、何故か俺の頭にはスラスラとその内容が入ってきた。
現世でもこれくらいの理解力があったら助かったのに……。
しかし人類のために一千万年も戦い続けるのか……神さまというのはすごいものだな。
「その復活を爆発的に早める具体的な方法はなんなのですか?」
そう。やはりこれは聞いておかなくては。
具体的なプロセスを聞かないで物事を請け負うとロクなことにならないのは、現世で嫌というほど叩き込まれたからな。
……というか、その一千万年以上も生きた「神」の復活を、間接的にとは言え爆発的に早められるなんて、この声の主もやはり「神」の一柱なのだろうか?
まあ、少なくとも似たようなものなのだろう。
「それが本題です。私はこれから貴方に六つの能力を授けます。その能力をモンスターハンターの世界で成長させて欲しいのです。成長のさせかたは、難しいものではありません。ゲームの経験値のように、強い敵を倒せばそれだけ大きく成長させられます。より多くの能力を成長させ解放すると、それだけ神の復活は早くなります。」
ちょっと待って欲しい。
その話を聞いてると、向こうの世界では俺は戦わなくちゃいけないということか?当たり前だが俺に戦闘経験など一欠片もない。
「心配しなくても、戦わなくては生きてはいけませんし、能力も戦いに使えます。それに、貴方には私が用意できる最高の肉体を与えますから、実質一つでもチートな転生特典が7つ。スペック的にも問題なしですよ。」
だが、闇の中の声はそんなことは全く気にしていないようだ。
でも、俺にはこの話を受けるメリットが……
「もちろん、それだけの大仕事を頼むのですから、貴方にも当然報酬を用意していますよ。謝りたい人がいるんでしょう?謝らなくちゃいけない人がいるんでしょう?会えますよ、向こうの世界で。貴方が殺してしまった二人は、前世の記憶を有したままあの世界に転生しているのですから。」
…俺は、その言葉に固まった。
まさか、自分が転生する先に、自分が殺してしまった二人が転生しているなど、夢にも思わなかったからである。
「向こうの世界で会えれば、謝ることもできるかもしれないですね。」
はっきり言って、この時、この闇の中の声の言っていることが真実である確証など、一つもなかった。
寧ろ後になって考えてみれば、こちらに考える暇を与えずに、断る理由を潰し、甘言によって引き込もうとするその手法は、完全に詐欺師のそれであったとも言える。
だが、俺にはそれを考える精神的余裕すら無かった。
「……わかりました。その話、受けさせていただきます。」
だから、俺は、コイツの言うことに、従ってしまった。
ある意味まさかのあの人その3。
はい、お爺ちゃん復活計画の始まりですよ。
そして謎すぎる声の主。
ちょっとあからさまに怪しくし過ぎた気がするなぁ……。
え?王道を走る気?
あるわけないじゃないですか。そんなものは今頃、カップ麺のカップの山と共に焼却炉の中で灰にされてますよ。
王道が嫌いって訳では無いのですが……なんというか、似合わない。