我等が女王に、跪け。 作:白蛆
原作に出てきた「神の定義」が私にとって非常に都合がいい(想像に近い)ものでした。
ですが、「天地神明の真祖龍」の時代に何匹か琥珀姐様によって殺されているみたいですから、ちょっと設定弄りましょう。(もちろんこちらの方を。)
何匹もいた方が都合もいいですしねぇ……。
「…ふふふ。貴方なら受けると信じていましたよ。」
闇の中の声は、一切抑揚を付けることなく、しかし小さく笑った。
どうやら俺がこの話を断らないことをどこかで確信していたようだ。流石は神といったところか。
俺が感心していると、『黒』の中の声は相変わらず言葉に抑揚は付けずに、淡々と続けた。
「それでは、貴方に授ける六つの能力に関するお話をさせていただきましょう。貴方に授けるのは、『咎人』、『六道輪廻』、『人権』、『禁書』、『黒の法衣』、『深淵』の六つです。このうち、神の復活のために成長させて欲しいのは主に『咎人』、『六道輪廻』、『人権』、『禁書』の四つになります。一つだけ注意していただきたいのは、成長させて頂く四つの能力の内、上三つはそれのみでは意味がない能力であるということです。成長させないと使えません。そして『黒の法衣』と『深淵』は成長させるために必要な能力になります。」
相変わらずのマシンガントークである。
言葉に抑揚がないからまさに機械的なガトリングといった喋り方であり、聞き取りづらいったらありゃしないのだが、しかし俺の脳はその情報をスムーズに処理してくれた。
ひよっとしてこれが「私に用意できる最高の肉体」というものだろうか?
しかし、名前では分かりづらいが、一体どういう能力なのだろうか?
「どういう能力なのか……いえ、どういう能力に成長するのかは、全て貴方次第です。ただ、神を復活させる能力ですから、当然それぞれ神と関わりがあります。『咎人』は神の裁き。『六道輪廻』は神の理。『人権』は神の権力。『禁書』は神の知識。『黒の法衣』は神を祀る者の装い。『深淵』は神への奉納といった感じでしょうか。他に質問はありますか?」
どうもそれぞれ大層な曰くが付いているらしい。
どうやら神を復活させるのに必要な能力は「神の○○」。その能力を成長させるために必要な能力はその神を祀る者の行いなどのようだ。
……まあ、それはさておき、俺がこの状況で質問すべき事柄など一つである。
「あの二人は……俺が殺してしまった二人は、どこにいるのでしょうか?」
そう、世界は広いのだ。二人に会えなければ転生する意味が無いのだから、二人が何処に居るのかの情報は絶対に必要である。
だが、その質問に対する『黒』の中の声の答えは、ひどく抽象的で曖昧なものであった。
「ああ、そうでしたね。……あの二人は強いていうならば、世界の頂点にいますよ。貴方が適切に成長したのならば、運命は必ず紡がれるでしょう。」
それは、具体性に欠けた抽象的なもの。
故に、闇の中の声が言っていることはよくわからなかったが、しかしそこには確信的な何かがあるように感じた。
なればこの声の言うように、運命は紡がれるということなのだろう。
「……わかりました。ありがとうございます。俺に再びチャンスをくれて。」
俺は、無い頭を下げることはできないが、しかし心の内で頭を下げながら、その声に礼を言った。
「いえ、礼には及びません。私は貴方が神を復活させてくれると信じていますからね。それでは、良きモンハンライフをお楽しみください。」
「あ、最後に!あなたの名前を教えていただけませんでしょうか?」
俺は慌ててそれを聞いた。
一応は恩人であり、依頼主でもあるのだ。名前は聞いておいた方がいいだろう。
だが、これは言葉では表しにくい感覚なのだが、俺がそれを聞いた途端、見えよう筈も無い声の主の顔が、僅かに翳りを見せたかのように感じた。まあ、実際見えるものではないので、ただの気のせいであるとは思うが。
「……私に名前はありません。私に名を与える者など誰一人としていませんでしたから。あぁ、こちらも最後に、貴方の向こうの世界での名前は、סמאלとなりますので、覚えておいてください。」
しかし、それに対する返答は少々意外なものであった。
……名前が無く、ずっと独りぼっちか…。
何年生きているのかはわからないけれど、少なくとも寂しいという感情を持たなくなるぐらいの長い間、この存在はそうであったのではないだろうか?
まあ、どうであろうとそれは俺の想像の及ぶ範囲ではないし、俺が何かを言っていいものでも無いのだろう。
それより、言葉の最後に気になることを言った。
向こうの世界での名前……と。
「……え?俺の名前は元々סמאלですが?」
そうだ。両親から受け継いだ名前のままである。
結局向こうの世界でも同じ名前なのか……特徴的な名前だから嫌いではないけど、どうせ別の存在になるのならばそこまで変えたかったものだ。
……いや、違うな。
例え別世界に行って別の存在となっても、俺の過ちを忘れることなく戒めとするために、元の俺の名は必要か。
二度とあんな愚行は繰り返したくないからな。
それを考えれば、סמאלの名のままでもいいと思う。
「……そうですか。それでは、貴方が神を早急に復活させることをこの場所から願っていますよ。」
俺の答えを聞いた後の『黒』の中の声は、何故かとても満足げであった。
だが、俺にはその理由を問う時間は残されていなかった。
意識が溶けていく。
まるで何処かに連れ去られるかのような感覚。
かといって不快感は無く、まるで緩やかな川を下る落ち葉にでもなったかのような……
つまりは、もう『転生』とやらが始まったということなのだろう。
そして、俺の意識は再び深い深い闇の底へと呑まれていった。
「―――また、お会いしましょう。」
最後に聞いた声は、異質な執念を孕んでいるようにも感じられた。
・・・
新たなる世界へと消えていくその存在を、私は何をするでも無く呆然と眺めます。
それがどういう存在なのか、何故あの存在のみ私が干渉することができるのか、正直なところ私であってもわかりませんが、彼だけが私が直接干渉できる唯一にして無二の存在でした。
私は、ここで生まれてより幾星霜もの永き間、何もすることが出来ずただ世界を眺めていることしか出来ませんでした。
で、あるから。私の存在は他の誰をも知りえなかったのです。
事実、「対話」という行為をしたのは、ついさっきが私にとって初めてのことなのですから。
私には「寂しさ」や「孤独」を感じる機能は備わっていませんでした。しかし、ただ一つ、「退屈」という感情は、常にその機能を果たし続けます。
一つの文明の繁栄と衰退や星系の誕生と崩壊を見守るのは、確かに退屈しのぎにはなりますが、所詮は「しのぎ」にしかなりません。本当の意味では、私の心が満たされることは無かったのです。
その退屈凌ぎでさえも、何にも干渉することのできない私は、直接目にすることも音を聞くこともできませんから、ただ「○○が○○した。」というような、事実としての情報だけが届くばかりです。
世界というのは飽きることなく同じ道を歩み続けますから、それは全く同じ映像をループ再生で見せられているのと大して変わりません。少しすれば飽き、今では最早苦行にしか感じなくなってしまいました。もっとも、苦行など経験したことはありませんが。
それが、今はどうでしょうか。
古今東西異多次元において唯一私が直接干渉することができる存在が現れたことにより、私の世界は色づきました。
彼を介すれば世界に干渉することも可能かも知れません。
果たして彼は向こうの世界でどんな運命を辿るのでしょう。
私にかかれば未来から情報を持ち出すくらいは造作もありませんが、それは敢えて用いません。
自分の行動が、結果を及ぼす。
それが、こんなに愉快な事とは知りませんでした。
で、あるから、私はここで、その結末を見届けるとしましょう。
あの、
……その存在は最後に私に名を問いました。
戸惑いましたよ。知的生命体はその存在を呼称する記号を一番に聞いてくると知識では知っていましたが、実際に体験するのは初めてですから。
「名前……ですか。強いて名乗るのならば、"形容し難きモノ"といったところでしょうかね?」
※「形容し難きモノ」ちゃんの言葉をくれぐれも真に受けないように。(もちろん読者も要注意)
果たしてどのくらい本当のことを言ったのやら……。