てんせいぐらし! ~キチガイ二人は地獄を往く~   作:青の細道

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メルトリリスの宝具上げてぇなぁ俺もなぁ~。


しゅうげき

 

 

 

 

 

どうしてこうなった。

 

 

 

 

 

何を間違えた?

 

 

 

 

 

 

どこで間違えた?

 

 

 

 

 

 

オレは……いや、オレ達はどうしてこんな──。

 

 

 

 

 

駆け巡る思考の中で、オレは目の前の光景がスローモーションであるような錯覚と共に眼球へ焼き付けている。

頭の奥で響く耳鳴り……叫び渡る悲鳴……飛び出そうとする若狭の妹や丈槍を直樹と恵飛須沢が押し止める。

 

 

「りーねぇ! りーねぇー!」

 

 

「やだ! りーさん! やだぁあああ!!!」

 

 

バラバラと周囲の音をかき消すほどの騒音を発てるは現況である一機のヘリコプター、ゆっくりとホバリングし屋上周辺を旋回する機影をオレは射殺すほど睨み付ける。

 

 

「なんだってんだよ……これはァ──!」

 

 

「あ……あぁ……」

力なく膝を付き、目前の光景に弱々しい声を漏らす佐倉センセー。

 

 

「ちっくしょぉ……!!!」

歯を食いしばり、ありったけの声で叫ぶ。

 

 

「秀ぇええええええええ!!!!!」

 

 

屋上で静かに、若狭に倒れ混む形で全身から鮮血を撒き散らす……親友の名を──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠足の日から更に時間が過ぎ、この地獄の中で一ヶ月という短いようで長い時が過ぎた。相変わらずオレ達はいつも通り学院でのサバイバル生活に勤しんでいた。

変化があったとすれば──。

 

 

「ワン! ワンワン!」

まず一つはパタパタとちっさい体で世話しなく走り回る一匹の犬が新しく増えた事だろうか。まだ未成熟な柴犬、ある日外で巡回をしていた恵飛須沢と直樹が連れてきたそれは原作やアニメ版に置いて役割が違う存在でもあった犬『太郎丸』だった。原作の漫画版では学院に迷い込んだ所を保護されるも既に感染者によって噛まれた後があり発症。転換した後は学園生活部のメンバーによって介錯される。アニメ版では尺の都合なのか、物語が開始した時点で直樹と共に初期メンバーの一員になっていた。

 

 

「今日も元気だなぁ……ご、五郎丸……」

 

 

「ゴローマルじゃなくて太郎丸だよ、たっくん」

 

 

どういうわけかこの世界では原作準拠……のようで少し違う部分が度々見られる。秀は「やっぱり俺達っていうイレギュラーが干渉した事であり程度のズレが起きてるのかもな」と判断していた。

 

 

柴犬こと太郎丸には噛み痕などはなく健康体。

保護された時点で大分人懐っこい性格で、学園生活部のマスコットとして一気にのし上がった。

 

 

それから数日は雨が続き、外への遠征などは断念。太陽光発電で賄っていた電力も二三日雨続きで残量が無くなり、薄暗い中での生活を強いられる。台風という程ではないにしろどしゃ降りの雨で屋上農園が台無しになる可能性なんかもあったためオレ達が早急に雨避け用の簡易ビニールハウスを組み立てたりなんかもした。

 

 

唐突に丈槍がキャンプしようなどと言い出したり、学院内で肝試し(既にホラーの世界)なんかではしゃいだりして、普段の生活とはかけ離れた。本来歩むべき日常を久々に噛み締めた気がした。

 

 

雨は5日ほどで収まり、6日の朝には快晴。テンション爆上がりになった丈槍がまたしても体育祭という催しを企画する。こいつの奇行にも全員が慣れ始め、どこか心の平穏を丈槍を介しているような感じになってきていた。

 

 

「お手紙、誰かに届いたかなー」

玉入れ用に赤と白のテープを巻いたテニスボールを箱に纏めている丈槍が不意に呟いた。

 

 

「手紙?」

側に居たオレが訪ねると「少し前に皆で出したお手紙だよぉ~」とにこやかに返してくる。どうやらこいつが言っているのは以前遠足と称してリバーシティへ資材の補充に向かった後日に行った生存報告……まぁちょっとしたSOSみたいなものか。

 

 

丈槍が勝手に持ってきていた風船に学院設備にあったヘリウムガスを使用して浮力を持たせたり、野生の鳩を捕まえたりなどして学院の座標を示した紙をくくりつけ、空に放った事があった。

オレと秀はほぼ眺めているだけだった。……そう、眺めている『だけ』だった。

 

 

この時のオレ達は原作の流れを丈槍の行動基準で考えていた。言わばイベントシナリオとして受け取っていた。……止めるべきだったと……後になって後悔する羽目になるなど考えてもいなかった。

 

 

「誰かお返事くれるかなぁ~」

ウキウキ気分で楽しそうにする丈槍、オレが「ほぼ一方通行な上に確実に誰かに届くわけじゃないんだから期待するだけ無駄じゃねぇか?」と溜め息混じりに答えると頬を膨らませて「これだからたっくんが夢が無いんだよ」と起こり始める。そう言われてしまっては折りたたみ携帯片手に某特撮ヒーローの名台詞を言うしかないじゃないか。まぁ今時折りたたみ携帯なんて持ってないし、いきなり意味わからんこと言い出すとまた恵飛須沢あたりに蹴りを入れられそうなので黙っておく。

 

 

「もしかしたら誰かが拾って遊びに来てくれるかもしれないよ?」

 

 

「遊びにって……」

心が壊れかけ、自己防衛本能からか現実を直視せず未だにこの世界が平和そのものであると錯覚している丈槍。治る手だては無きにしも有らずだが荒療治が過ぎれば逆効果となり完全に精神を崩壊させてしまう恐れがあるので現在でも状況維持に止めている。

 

 

自発的に何かの切っ掛けで直ってくれりゃ御の字ってところだ。

残念ながらオレ達はカウンセラーじゃない。戦う技能ばかり追求した結果、それ以外の事が疎かになっている……と言われてしまってはぐうの音も出ない。

 

 

「もし誰かが来たら歓迎会しなきゃね!」

既視感のある丈槍の笑顔は、オレの深い部分に僅かな傷を残していくが……別に不快なわけではない。そして駄洒落を言っているわけではない。

 

 

「……ああ、そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい田所!! 起きろ!!」

翌日、暇をもて余したオレは校長室椅子に座り、居眠りを決め込んでいたら突然ガクガクと椅子を揺らされた。ひっくり返る勢いで揺らされながら目を開けると慌てた様子で、それでいてどこか晴れやかな顔の恵飛須沢の顔。危機的状況ではないと察し「んだよ、また丈槍がなんかやらかしたのか?」と瞼を擦る。

 

 

「違う! ヘリだヘリ! ヘリコプター!」

 

 

「はぁ?」

恵飛須沢に引っ張られる形で屋上まで連行され、既にオレ達以外の全員が集まっており皆が皆ある一点に視線を向けていた。

 

 

「拓三」

秀から投げ渡された双眼鏡を覗き込む。倍率を調整しながら見るとそれは確かに一機のヘリコプターだった。逐次迷彩塗装が施されたその機影は自衛隊でも採用されているUH-1 イロコイス。ヒューイと読んだ方が認知度は高いだろう。そのバリエーション機であるUH-1J。

 

 

スペックに関しては……今はどうでもいいか。

 

 

「間違いねぇ、自衛隊のヒューイだ」

 

 

自衛隊、という単語を聞いた瞬間にワッと歓喜の声が上がる。

救助が来た。これで助かる。何ともテンプレートとなリアクションをする原作キャラの面々に対して、オレと秀は顔を見合わせる。原作『がっこうぐらし!』に置いて登場した自衛隊らしきヘリは一機だけ存在している。明確な時期は判明していないが、少なくともこの場所に向かってきたのは風船で飛ばした手紙という名の座標表記した紙が元である。

 

 

最終的な目的は分かっていない、何故ならそのヘリを操縦するパイロットが学院に到着して直ぐに空気感染によって転化してしまい、そのまま学院の校庭に墜落してしまうからだ。

 

 

そしてその墜落によって漏れた燃料と、側にあった車の燃料に誘爆し、爆発炎上。広範囲に渡って炎と煙を撒き散らし学院の施設に大規模な損害を与えた。

 

 

それが切っ掛けとなってメンバーは学院を『卒業式』という体で脱出し、物語は新たな局面へと移る……というのが原作の流れ。

 

 

「おーい!」

両手を振りながら叫ぶ恵飛須沢。ヒューイは真っ直ぐ此方に向かってきている。感極まった祠堂が校庭に行こうと直樹の手を引き、負けじと恵飛須沢も「行こうぜ!」とオレの背中を押し走り出す。

 

 

そんな彼女達を追いかける佐倉センセー。若狭姉妹も途中まで歩を進めていたが、屋上から未だに動こうとしない秀の姿を見て妹をオレ達に任せると、若狭は秀の隣に向かい声を掛けていた。

 

 

「あれぇ~、りーさん達は?」

塔屋の中で振り返った丈槍に、佐倉センセーが「あとから来るって、先に降りましょう?」と促す。

やれやれと若狭の心境に口元が緩みそうになるのを押さえながら階段を降り──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伏せろォ!!!」

 

 

 

 

──タァン……タァン──

 

 

 

 

何が起きたのか分からなかった。突然背後から秀の叫びと、そのすぐ後に聞こえた破裂音。何事かと視線を向けたオレの目に映ったのはうつ伏せで倒れる秀と、その秀に覆い被さられる形で倒れる若狭の姿。そこだけ見れば歓喜のあまりに抱き合う男女に見えるだろう。

 

 

 

……その体から溢れる深紅の液体さえなければ。

 

 

 

 

「っ──! 木村くん!!」

 

 

「りーねぇ!」

 

 

「っ出るな!」

咄嗟に二人へ駆け寄ろうとした佐倉センセーと若狭妹を押し止める。僅かに扉からはみ出た二人の居た地面にバヅンと一発の『弾痕』が出来上がる。

 

 

サッと血の気が引くのを感じた。今確実に二人を止めていなければ少なくともどちらか片方が撃たれていた。

 

 

撃たれていた。……撃たれた?

 

 

 

何に?

 

 

 

自衛隊のヘリから?

 

 

 

 

何故?

 

 

 

 

どうしてだ?

 

 

 

倒れる二人の名前を叫ぶ声すら聞こえないほどの思考の混濁。嫌になく溢れる汗、乱れる呼吸。ダメだ焦るな、混乱するな。今この場でオレまでテンパっちまったらどうなる!?

 

 

考えろ!

 

 

今すべき事を!

 

 

ちくしょう。何だってんだクソッタレが!!!

 

 

何で自衛隊のヘリから攻撃された?

 

 

感染者と誤認された?

 

 

そんなはずはない。目的地がハッキリした場所に向かいながら飛んで来たんだ。ヒューイには赤外線装置や暗視装置も搭載されてるはずなんだ。感染者と生存者の違いくらい分かるはずだ。

 

 

……生存者だから撃った?

 

 

馬鹿かそんな事を自衛隊がするか普通。

そもそも発泡されたって事はパイロット以外に人が乗ってるって事か?

 

 

原作と違う、自衛隊じゃない?

 

 

誰だ。あのヒューイは確かに自衛隊のUH-1Jのはずだ。

 

 

考えれば考えるほど疑問が増えてくる。やがて銃声と悲鳴を聞き付けた恵飛須沢や祠堂、直樹たちが戻ってくる。屋上に出るなと怒鳴り、抱えていた二人を他の連中に押し付ける。

 

 

ゆっくりと塔屋の窓から外の様子を伺う。空には未だに学院全体を見渡すように旋回するヒューイ。銃撃は行われていないところを見るとオレ達の行動を監視しているのか?

 

 

「何がどうなってんだよ!?」

 

 

「救助に来てくれたんじゃないんですか!?」

 

 

「早く二人を助けないと!」

 

 

「うるせぇ!!! 今考えてンだ黙ってろ──!!」

混乱する恵飛須沢たちを怒鳴り、黙らせる。

 

 

双眼鏡を使い、撃たれた二人の容態を観察する。若狭は気を失っただけなのか、僅かに動きがあり呼吸もしている。顔や衣服に血液が付着しているがそれは恐らく秀のものだ。

 

 

そして秀は……頭部や手足。至るところから血を流している。

 

 

何発撃たれた? 貫通弾は? 急所はどうなった?

 

 

まだ息があるのか?

 

 

ここからではわからない。とにかく何とかして二人を助け出さなければならない。

 

 

どうする。どうやって助け出す──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ん……ぁ……?」

目を開くと、私は空を見上げていた。体が思い、どうして私は倒れているんだろう……さっきまで私は屋上で木村くんに……。

 

 

朦朧とする意識の中、僅かに動く右手にヌルリとした感触を覚え、ゆっくりと視線をずらす。赤い、紅い血だった。

 

 

目を見開き、自分に覆い被さる存在へ向き直る。

 

 

「木村……くん……?」

普段一本に縛っていた髪がほどけ顔のほとんどが隠れているが、僅かに覗く肌には夥しいほどの血液が流れ落ち赤黒かった髪も鮮血によって染まっている。

 

 

動きはない。力なく倒れ、指先ひとつ微動だにしない彼の姿に私は悲鳴をあげそうになるが、彼の体重によって圧迫された肺と混乱によって声が出ない。

 

 

どうしてこんな状況に……。

 

 

屋上からヘリコプターを眺めていた彼に、私は「これで助かるわね」と語りかけるもどこか神妙な面持ちで双眼鏡を覗いている様子に不信を抱く。どうかしたのかと問うよりも先に体が衝撃に教われる。

 

 

咄嗟に「伏せろ」と叫んだ木村くんによって抱き寄せられた私は倒れたときの衝撃で意識を失ってしまったため状況の理解が追い付かないままだった。

 

 

「若狭ァ!」

田所くんの声と同時に何かが破裂する音と同時に塔屋のドアが一部砕ける。

今のは銃声? 銃……発砲を受けている?

 

 

ヘリからか。どうして?

 

 

とにかく、何とかしなきゃ。

 

 

「若狭ァ! 生きてるな! そこを動くな! 生きてるってバレりゃ撃たれンぞ!」

田所くん。でもどうすればいいのかしら。このままじゃ私達だけじゃなくて皆にも危険が及ぶ。

 

 

どうして……どうして私達がこんな目に合わなくちゃいけないの?

 

 

こんな世界で、私達は──。

 

 

「……ゎ……ぁ……ぅ」

 

 

掠れるような声、すぐ側でなければ絶対に聞き逃していたであろう小さな声を確かに耳にした。

ぐったりとする木村くんの口元が僅かに動いている。

 

 

生きてる……生きてる!

 

 

溢れそうになる涙を噛み締めて、彼が必死になって伝えようとする言葉を聞き取るために聴覚へ神経を集中させる。

 

 

「体……ぁ……ぅ…か……ぃ。……左…ぉ……ケ…ォ」

僅かに聞こえる単語。体、左、ポケット。体が動かない、左のポケットと介錯した私は右手を動かし、彼の左ポケットへと手を伸ばす。指先にプラスチック特有の感触を受け、それをゆっくり引き抜く。

 

 

それは彼がよく目印として炊く発煙筒の一本だった。

 

 

これをどうしろと?

片手では扱えないし、そもそも一本だけでは視界を奪うこともできない。

 

 

「ぐっ……ぅ。ぅ…ぃぁ……右…ね……ぉ…ケット」

次は右胸のポケット?

 

 

重なる体に押し込めるように彼の胸元へ手を差し込む。こういう時に自分の胸が邪魔だなんて思うはめになるなんて……と考えてながら胸元のポーチを開く。中にはトランシーバーに繋がったイヤホンマイク。

 

 

それを彼の耳へ着けようとしたら首を僅かにずらされ拒まれる。どうやら違うらしい、彼でないのなら……私?

 

 

イヤホンを耳に差し、トランシーバーの電源を入れる。ザザっとノイズが走り、回線が開いた音に気付いた田所くんが声を張り上げる。

 

 

『秀、生きてるか!? 返事しろ!』

今まで聞いたことがないほどの焦った田所くんの声、彼もまたこの状況に対象する術を見いだせていない様子だった。

 

 

「田所くんっ! ……大丈夫、私も木村くんもまだ生きてるわ。彼に代わって私が通信してるのだけれど……」

 

 

『……そうか。状況は?』

 

 

「私は大丈夫……でも木村くんは頭から血が……声も掠れてて聞き取り辛いけど息はあるの。それで……指示を受けてこの通信を繋いだり、発煙筒とかもあるんだけど」

 

 

『発煙筒?』

 

 

「ええ……でもこれ『一つ』じゃどうしようも──」

 

 

『っ──おい恵飛須沢、直樹! ありったけの発煙筒と花火用の煙玉全部持ってこい! ちょっと待ってろ! すぐ助けるかンな!』

どうやら私の言葉に、木村くんの意図に勘づいた田所くんがくるみや美紀ちゃんに指示を飛ばしている。これが彼の答えなのだろうか。

 

 

頭に傷を受けて意識もはっきりしていない筈なのに、ここまでの事を考えてるなんて……どれだけ貴方という人は……。

 

 

バラバラと音を発てているヘリへ視線を向ける。学院をグルグル回り続け何かを吟味するように徘徊している。一体彼らの目的はなんなのだろうか、生存者の救助だとは到底思えない。私と木村くんを撃った理由もわからない。

 

 

何とかしなくちゃ……!

 

 

『待たせたな!』

イヤホンから再び田所くんの声が聞こえ、塔屋に目を向けると何本もの発煙筒を全員で持つ学園生活部の皆がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生存者の救出が目的じゃなかったのか!?」

操縦桿を握る自分はありったけの怒気を含ませた声で抗議をする。

 

 

後部ハッチを開き、一人の銃を構える黒ずくめの男と同じ格好をする5人の男達。彼らが何者であるかは自分は知らない。だが上層部から生存者の救助へ向かおうとした自分と同乗するよう命令された彼らが何なのか問うても「貴官には教えられない」の一点張り。本人達に英語で問いかけても鼻で嗤われるのみだった。

 

 

明らかに怪しすぎる。救助目的なのにも関わらず彼らは全員銃を携帯している。世界中で起こっていると言われているこの騒動で暴動を起こしている人間への発砲が許可されているとはいえ、あまりにも彼らの姿は異様だった。所属する部隊のワッペンどころかドッグタグすら身に付けている様子はない。

 

 

こんな連中と向かうなんて出来ないと上官である司令に抗議するも却下されてしまい、挙げ句の果てには自分に重罰が下るとまで脅された。

 

 

黙り混んでしまった自分は従うことしかできず出発する。後ろに乗せた連中の様子は機械的で静か、だが基地との通信が途切れた途端に全員がいきなりふざけだす。何なんだこいつらは。

 

 

酒を飲んだり煙草を吸ったりとやりたい放題、仕舞いには何かを賭けてトランプまでおっ始める始末だ。

 

 

あまりにも緊迫感に欠ける。赦されるのなら全員機体から放り出したいほどに。

 

 

自分は取り出した生存者の住むであろう座標が書き示された一枚の紙を取り出す。描いたのは女の子だろうか……可愛らしい絵の裏には座標が記入されている。

 

 

描かれた5人の服装の統一性から数名は学生であることが推測され、9人の人物の内ほとんどが子供である事が分かる、が。二人ほどよくわからない人物……『ひーくん』『たっくん』と書かれた人物は一体……。

 

 

まぁそれはさておき「わたしたちは元気です」と書かれていた。何としてでも助け出したい。

 

 

最初にこの絵を見た自分は同僚達に賛同してもらい、ようやくこの救助活動に漕ぎ着けたというのに……こんな訳のわからない連中の同行を強いられるなんて。

 

 

ヘリを飛ばしてから1時間。目的地付近まで来た頃には後ろの連中が遊ぶのを辞め、周囲を見渡している。何かを探しているのだろうか……。それとも本当に彼らも生存者の救助が目的なのか?

 

 

だがそんな自分の期待は放たれた銃弾によって書き消された。

 

 

座標地点は平凡的な外観の学園。唯一違う部分と言えば屋上にソーラーパネルが設置されている点だろう。

 

 

学院周辺を徘徊し、生存者の有無を確認する。屋上には二人ほど確認でき、後部の連中へ振り返った瞬間。あろうことか奴等の一人が屋上へ向かって発砲した。

 

 

突然の事に慌てて操縦桿を傾ける。

 

 

ふざけるのも大概にしろ。危険性もない生存者への発砲なんて許されるはずがない。

 

 

「お前ら気は確かか!? いきなり何を──」

 

 

カチリ。

抗議の声と共に後ろへ振り返った自分の額に銃口が突きつけられる。ガスマスクをした一人が拳銃を構えていた。

 

 

「Keep silent and steer」

 

 

「ぐっ……」

言われるがまま、操縦桿を元の角度に維持する。

 

 

下がっていく一人「キャプテン(隊長)」と呼ばれた男が狙撃を行った一人と聞き取れない程度の声で何かを話すと全員に降下準備を指示する。

 

 

こいつら……まさか学園の生存者を皆殺しにするつもりなのか!?

 

 

何てことだ。自分はとんでもない連中を連れてきてしまった……!

 

 

「っ……あれは?」

怒りと後悔に拳を固く握りしめる。すると不意に屋上から煙が上がっているのが見えた。火事……ではない。僅かに赤みがかった煙や真っ白な煙を上げる物体が屋上に向かって放り投げられて瞬く間に敷地の半分を覆い隠していった。すると狙撃に徹していた一人が「Fuck!」と声を荒げる。

 

 

突然慌ただしくなる黒づくめの連中。つまりこの自体は奴等にとっても想定外ということか。だが隊長格の男の一括によって統率が纏まる。

 

 

所詮は子供の足掻き。彼らに取っては取るに足らないのか。

 

 

「Stop it in the school yard」

再び銃口を突きつけられ、自分は指示通りに校庭へと着陸する。学園周辺は転化した人間が溢れ変えるが校庭は驚く程に綺麗だった。

 

 

この事に何の疑念も抱かなかった事が彼らの敗因だったのかも知れないと、この時の自分は考えもしなかった。

 

 

そして彼らもまた、兎狩りに出向いた積もりが……狼の狩り場へと自ら飛び込んだのだと思い知る事になるとは思っても居なかったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「傷は大丈夫か?」

治療を受ける俺を他所に着々と準備を整える拓三。屋上で若狭経由で指示をし、発煙筒などで視界を遮り救出された俺達は学園生活部の部室に立て込もっていた。だが閉めたカーテンから外を伺っていた恵飛須沢の「何人か降りてきたぞ!」という声に原作メンバーの顔色が青ざめる。

 

 

今までの感染者たちとは違う。武力を持った人間……それも助けてくれるかもしれなかった存在に襲われているんだ、無理もない。

 

 

もし奴等の目的が俺達の抹殺なら、答えは一つ。

何としてでも生き残る、そして可能であるなら奴等の目的を暴かなければならない。

場合によっては国そのものが完全に機能していない可能性もある。

 

 

「人数は」

頭部や手足を掠める程度で済んだ銃創を縫い付け、ガーゼと包帯で応急処置を受けた俺の問いに、恵飛須沢は指折りで数えていく。人数は6人、全員が真っ黒な装備をしているという報告。

 

 

奴等は自衛隊じゃない? 日本の特殊部隊『SAT』という線もあるが……しかし分からない、奴等の目的……そもそもの存在も原作には一切なかった。

 

 

俺達というイレギュラーが介入したからといってここまで変化を及ぼすほどの事か?

 

 

だが少なくとも連中の現在目標ははっきりしている。

 

 

「木村くん……これからどうするの……?」

不安げな妹を抱き寄せる若狭。彼女だけじゃない……丈槍も、佐倉先生も、直樹も祠堂も。全員が人間による攻撃に参ってしまっている。

 

 

このままでは殺されるかもしれない。そんな恐怖が今の彼女たちを脅かしている。

 

 

「相手はどっかの特殊部隊……」

 

 

「数は6」

 

 

「武装は全て銃火器」

 

 

「向こうは既に交戦の意思あり」

 

 

「こっちは被害が出てる」

 

 

そして何より『原作キャラの障害になる』と判断された。

 

 

だったら──。

 

 

「木村……くん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ぶっ殺す」」

 

 




狩りぐらしRTAは~じまーるよ~。

お気に入り登録1000人突破記念に、がっこうぐらし世界が始まる前のまだ平和だった時期の一幕を番外編として書こうとして、特に何も思い付かなかった雑魚がいるらしい……。

初の本格的な戦闘描写が、まさかの対人戦になるかもしれないゾンビものの作品があるらしい……。

さぁ特殊部隊VS主人公野郎二人。勝つのはどっちだ!?

次回。

隊長「6人に勝てるわけないだろ!」

KMR&TDKR「馬鹿野郎お前オレら勝つぞお前」
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