てんせいぐらし! ~キチガイ二人は地獄を往く~   作:青の細道

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ごうりゅう

目が覚めて、最初に感じたのは肌寒さだった。暖かい毛布も無ければふかふかのベッドの感触もなく、薄いカーテンと硬い床に敷いた布団という質素なものの中で私はゆっくりと目を開き、少しして涙が溢れそうになるのを必死に圧し殺した。

 

 

やっぱり夢じゃなかった。

 

 

寝る間際、何度も何度も……これは悪い夢なのだと言い聞かせるように眠った。が……夢ではないのだという現実を突きつけられ心が欠けそうになる。

 

周囲を見れば同じように布団にくるまる同級生と女性教員の三人が寝息を立てている。全員が全員不安そうな表情で顔を曇らせ、桃色の髪に年齢よりも幼く見える同い年の『丈槍 由紀(たけや ゆき)』ことゆきちゃんは、担任でもあり愛称で呼ぶほど懐いている女性『佐倉 慈(さくら めぐみ)』先生に抱き寄せられる形で眠っている。彼女はこの惨事が起こってから精神が不安定になってしまったようで昨日も一日中怯え続けていた。

 

 

二人の姿を見て、私は小さく愛する妹の名を呟く。

 

 

「るーちゃん……」

惨劇が起きて、安全が確保できた屋上で時間がすぎるまで、私は血を分けたはずの……まだ小学生で幼い妹の事を忘れてしまっていた。なんて薄情な姉なのだろうと今でも悔やんでも悔やみきれない。

 

 

姉として、助けに行かなければという使命感を抱きながらも恐怖で足がすくみ、結局日を跨いでしまった。

 

 

「るーちゃん……」

膝を抱え、唇を噛み締める。無事であることを願わざる終えない、絶対に大丈夫だと自分に言い聞かせながら私は布団を畳み、一足先に顔を洗い制服に着替えた。

 

 

「あっ……」

 

 

「ん……起きたか」

まだ朝日も昇らない時間。暗くとも微かに空が色づいてきた頃。ふと太陽光発電装置側の手摺に人影を見つけ、声を漏らすとその人影が振り返る。陸上部に所属している友人の『恵飛須沢 胡桃(えびすざわ くるみ)』と一緒に屋上へ避難した男子生徒の一人。同世代の中でもかなり体格が大きく高校生とは到底思えない風貌の生徒。

 

 

「えっと……おはよう、田所くん」

挨拶をするも、彼は素っ気なく「ああ」と答えるだけで視線を校庭へ戻した。私は彼と接した記憶がほとんどない。だが彼といつも一緒にいる男子生徒とはそれなりの接点があった。『彼』とは妹を介して知り合ったのが始まりだった。

 

 

「…………」

 

 

「…………」

会話は続かず、気まずさを誤魔化すように私は田所くんと同じように校庭に視線を向ける。はっきりとは見えないが、人影『らしき』ものが何人も徘徊しているのが見て取れた。

 

 

「……あの」

静寂を打ち破り位を決して田所くんに話しかけて見る。決して嫌いな訳ではないがどうしてもその見た目と纏う雰囲気で萎縮してしまいそうになる。実際学院でも田所くんと彼は一目置かれる生徒として有名だった。

外見的な第一印象や同世代とは一回り大人びた雰囲気。文武両道で多芸、先生たちからの評判も良く、逆にそれが彼らを周囲から遠ざける結果となってしまったのかもしれない。クラスだけでなく学院の至るところで二人への悪態が目についた。三年生に進級するまで、私も彼らとは関わりを持っていなかった事もあってどちらかと言えば自分には関係のないと見てみぬふりをしていた。

 

 

「なんだ?」

相変わらず視線は校庭に向いたまま返事を返す。

 

 

三年に上がってすぐ、私は彼──『木村 秀樹』くんと初めてまともな会話をした。始まりは妹のるーちゃんと公園で彼が楽しげに会話をしているところを目撃したことだった。

会話の内容は聞き取れなかったが人見知りの激しいはずだったるーちゃんがあそこまで他人、しかも自分よりも歳上である男性に打ち解けているなんて信じられなかった。そのうえその相手が学院で浮いている人なのだから余計だった。

 

 

だが彼と接し、言葉を交わし人柄を知った私はいつしか彼と親しくなりたいと思い学院などでも頻繁に会話掏るようなった。最初彼は困ったような雰囲気でいたが、やがて諦めたように私と委員会や雑務などで頼るようになった。

 

 

「彼──木村くんから連絡は?」

田所くんは「いや、まだ来てねぇ」と答え欠伸をかいた。

 

 

「心配じゃないの?」

田所くんの様子に少しモヤっとした感情が滲む。少なくとも二人は互いを理解し会う唯一と言っていいほどの理解者であり親友であるという印象が強かった。そんな彼が遠くで窮地に立たされ、もしかしたら帰らぬ人になってしまうんじゃないかという不安が感じ取れない田所くんに、私は思わず言葉が強くなる。

 

 

「アイツはそう簡単にくたばるほど柔じゃねぇのさ」

こんな状況になっても、彼は木村くんは大丈夫だという確信があるような言い方をする。

 

 

たしかに彼は身体能力が高く、体育などでも部活で鍛練しているスポーツ部員を軽く凌駕する素質があり、何度もスカウトされていると聞くが。だからといってこんな状況下で彼が無事である保証なんてどこにもない。文字通り命懸けの中に彼は立たされている。……なのに。

 

 

「どーして分かるのかって面だな」

 

 

「っ……だって、こんな状況だもの……外はもっと酷いことになってるなんて想像に難くないもの」

大勢の大人たちが団結するならまだしも、木村くんはまだ私と同じ歳の少年なのだ、多少鍛えていたところで映画の中の怪物に渡り合うことなんて……。

 

 

「たしかに、オレもアイツも超人じゃァねぇ。怪我だってするし死ぬときは死ぬ。特にアイツは『こっち』に来てからどうにも冷徹であるように振る舞おうとしてるが元のお人好しが抜けきってねぇせいでたまに馬鹿をやらかす時がある」

だが……と続ける彼の口角がつり上がり笑みを浮かべてた。

 

 

「アイツが本気出しゃぁこんなの、窮地でも何でもねぇのさ」

まぁそうそうアイツが本気になる時なんて無ぇけどな。と笑いながら屋上から立ち去る、どこへいくのかと尋ねれば「小便」と答え、私は思わずその背中を睨んでしまった。

 

 

彼が立ち去った後、再び静寂が訪れどこからか鳥の囀りが聞こえてくる。こんな状況で無ければ気持ちのいい朝を迎えたのだと思いたいが、私は朝の到来を地獄の続きが来たような気分だった。

 

 

「るーちゃん……」

愛する妹の名を呟き、私は祈るように手を合わせ目を瞑る。

 

 

無事でいて……必ず迎えに行くから。

 

 

 

 

 

 

 

 

日が登り、携帯の時刻は6時を指し示していた。

運動部のくるみは早起きなのか、起き上がって少しボーッとした後。何度か目元を拭い制服に着替え顔を洗った。

 

 

「おはよう、くるみ」

 

 

「……ん、おはよ」

表情は曇ったままだが、少しは落ち着いた様子が見て取れた。私は朝御飯の用意してるからめぐねえとゆきちゃんを起こして来て貰えるかとお願いし、くるみは頷いて二人を起こしに行ってくれた。

 

 

少しして戻ってきた田所くんの手にはカセットコンロとフライパン。業務用の食材が抱えられていた。丁度食事関連の事でどうしようかと相談するつもりだった私は彼の行動力と機転に驚かされるが、わざわざ道具を取りに一人で黙って下まで降りた事について問いただすと「別に何事もなきゃいいだろ」と溜め息を吐かれた。

 

 

そういうことじゃないと続けようとするが、彼は道具一式を置くと、好きにしろと言い残し一人屋上端で黄昏始めた。

 

 

感謝はしているが、どうにも田所くんも木村くん同様に危なっかしい性格なのだと認識する。

頭を切り替え、朝食の用意をする。

 

 

材料は食パンや卵。牛乳などで質素なものと暖かいお味噌汁を作った。暖かいものはそれだけで心にゆとりを持たせてくれるのかと普段当たり前のように身近な存在がいとおしく感じる。

そして同時に、目頭が熱くなる。嫌だな、いつから私は泣き虫になっちゃったのかしらと苦笑しながら人数分の朝食を用意し、お行儀がいいとは言えないが机がないので床にカーテンを敷物代わりに広げ食器を並べていく。

食器やコップなども田所くんが集めてくれていたのだろう。

 

 

用意を終え、くるみが眠たそうにする二人を起こすのに苦戦したのか疲れた表情で戻ってきた。

 

 

朝御飯が出来た報告を田所くんに伝えるついでに、道具などの確保に感謝すると「別に」と素っ気ない態度で自分の分を持つと離れたところで食べ始めた。一緒に食べればいいのに……とは思うがやはりくるみとの事もあって二人とも未だ険悪なムードが続いている。

 

 

「おはよぉ……」

ゴシゴシと目元を拭い、ボサボサになっている髪のまま身嗜みをめぐねえに整えられながら現れるゆきちゃん。そんなゆきちゃんの世話を甲斐甲斐しくするめぐねえも眠たそうに目を細めてうつらうつらとしている。

 

 

なんだか年の離れた姉妹みたい。と小さく笑い、私は風に靡いた髪を撫でながら空を見上げた。

 

 

きっと、るーちゃんもどこかでこの空を見ているのだと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ごちそうさまでした」」」」

食事を終え、食器を片付けていると田所くんがトランシーバーで誰か……といっても一人しか居ないが恐らく木村くんと会話しているのだろう。屋上から体を乗り上げ、何かを探すように慌ただしく動く彼を目で追うと、私と目があった田所くんが何かを伝えると、私に向かってトランシーバーを投げ渡してきた。

 

「わっ──」

慌てて取り落とさないようにキャッチし、急に投げないでと苦情をぶつけるも田所くんはトランシーバーを耳に当てろと言ってきた。何なのかと溜め息混じりに言われるがまま耳元へ傾けると──。

 

 

『もしもし、りーねぇ?』

 

 

「あっ──」

もう聞けないんじゃないかと心の何処かで諦めてしまっていた幼い愛する存在の声が聞こえ、私は感情を抑えられずその場に崩れ落ちてしまった。

 

 

こんな世界でも、奇跡はあるんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし、りーねぇ?」

不安そうにトランシーバーに呼び掛ける若狭妹。通話越しに泣き出し『るーちゃん』と何度も妹を呼ぶ若狭の声が俺の耳にも聞こえてくる。

 

 

「りーねぇ! りーねぇ!」

ボロボロと泣き出す若狭妹は、直樹と祠堂に慰められるようにし、落ち着きを取り戻すと会話を続けている。

俺は周囲を警戒しながら一時避難している無人の民家の二階から、すぐ近くまで来ている学院の姿を捉えながら様子を伺っている。

 

 

時間帯と感染者の習性からなのだろうか、制服やスーツ姿の感染者が徐々に増えてきているように思える。

安全かつ迅速に学院へ入るルートを検討しながら二人の会話が終わるのを待っていると、若狭妹が俺の裾を引き、トランシーバーを手渡してくる。

 

 

「俺だ」

 

 

短く呟くと、掠れた声と嗚咽が聞こえてくる。

 

 

『木村くん……ありがとう……本当に……本当に!』

 

 

「ああ、今からそっちに向かう。拓三に変わってくれるか?」

 

 

『ええ、待ってるわ』

僅かに途切れ、再び通話が繋がる。

 

 

『よう、ヒーロー。調子はどうだ?』

茶化すような口振りに「うっせぇ」と返し、俺は拓三と段取りを組むための指針を検討する。

学院に入り、拓三達のいる屋上へ行く。言葉だけなら簡単だがそうは問屋が下ろさないのが現実。

 

 

「正門は近いが数が多い、裏門はどうだ?」

 

 

『あー……数はそれほど多くはないがそっからじゃ距離があるな、おまえ一人ならまだしもその人数で走って移動すんなら奴らとの接触は避けらんねぇな』

 

 

「どっちみち上に上がるには感染者を始末しなきゃならないんだ。裏門から回る」

 

 

『オーケーだ、オレも下に降りて援護する』

 

 

「助かる」

通話を切り、よしと三人に段取りを説明する。民家を物色し、庭の掃除用の竹箒を解体しキッチンで見つけた包丁を取り付けた物を直樹と祠堂の二人に渡す。直樹は頷いて受け取るが、祠堂は思い詰めた表情で受け取ろうとしない。

 

 

「無理にやれとは言わない。自衛のために持っておけ、使う時はできるだけ頭を狙え」

いいな? と確認しても俯きながら簡易竹槍を抱き締める祠堂。直樹に目配せすると首を縦に振る。

 

 

「……いくぞ」

投げナイフをある分だけケースごとベルトに取り付け俺も自分の竹槍を持ち、先頭に立って外に出る。手で指示を出しながら誘導し学院の裏門へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「田所くん!」

シャベルを担ぎ、下へ向かうために屋上を出ようとするオレを佐倉センセーが呼び止める。

 

 

「生き残りがこっちに向かってくるそうなんで迎えに行ってくるっスわ」

 

 

「一人で行くつもりなの?」

振り返ると、全員が顔を曇らせてオレの顔を見ていた。一人で、言ったものの誰かを連れていくわけにもいかないため適当に流す。

 

 

「行くしかないっしょ。戸締まりしといてくださいね」

 

 

「待っ「待てよ」っ──くるみ?」

若狭の言葉を遮り、ツインテが前に出る。

 

 

「あたしも行く」

名乗りを上げたツインテに佐倉センセーと若狭から驚愕の声が上がる。ツインテはオレの顔をジッと見上げているが今までの憎しみめいた感情の色は見えない。真っ直ぐとした目に何を写しているのかは知らないが、オレは軽くシャベルを回し柄をツインテへ差し出す。

 

 

「やれんのか?」

少しの間シャベルの柄を見つめ、オレの問いに「助けに行くんだろ」とぶっきらぼうに答えながら受け取る。生半可な覚悟で付いてこられてもいざとなって足が竦んで動けなくなるようなのは御免だ。

 

 

「足だけは引っ張んなよ」

ポケットからタクティカルグローブを取り出し、手に填めた上から布テープを数周ほど肘から指先まで巻き付ける。

 

 

「言っておくが変な気は起こすなよ」

 

 

「しねーよ。でも勘違いすんなよ、おまえを許したわけじゃないからな」

横に並ぶツインテ。扉を開き、オレたちは秀との合流を目指す。既に制圧し、バリケードを建てた三階部分を一気に駆け降り、最短ルートで一階の裏門がある場所近くまで到着する。

周囲には徘徊するゾンビが数多く蔓延り、足音を立てて降りてきたオレたちに向かって襲いかかってくる。

 

 

「へっ!」

握り締めた拳を顎下で構え、脇を締める。所謂ファイティングポーズの姿勢に入り一番近くまで来ていたゾンビの顔面に軽いジャブを放ち、怯んだ瞬間に右腕で力を込めたストレートをお見舞いする。

普通のボクシング選手なら歯が折れて吹っ飛ぶ程度の威力で終わるが、オレの放ったストレートは文字通り頭を吹き飛ばした。

 

 

ゴシャリと音を立て下顎から上が吹き飛んだゾンビはよろよろと地面に倒れる。後ろから「うわっ」という声が上がるが気にしない。とりあえずオレの打撃が有効打になるとわかったのでそのまま次々にゾンビどもの顔面を殴り飛ばし、蹴りで姿勢を崩した奴を皮切りに複数まとめて突き飛ばして割れたガラスの残る窓枠に串刺しにする。

 

 

「おい何してる!」

不意にツインテが一匹を相手に後退りしているのが見え声を荒げる。

 

 

「く、来んな! あたし一人で十分だ!」

強がるツインテだが危なっかしくて仕方ない。だから足手まといになるくらいなら一人で行こうと思ったんだクソッタレ。

 

 

「あたしが……あたしがやるんだ、うぁああああああああ!!!」

意を決して振り落としたシャベルがゾンビのドタマに叩き付けられるが女の腕力じゃ一撃で仕留められず、頭の形が歪んだだけで殺すまでには至らなかった。

 

 

「アホ! もっと思いっきりやれや!」

 

 

「うるさい!」

もう一度顔面にシャベルを叩き付け、仰向けに倒れたゾンビに何度も何度も刃部分で滅多刺しにするツインテ。半狂乱で「死ね、死ね!」と叫びながら振り下ろし飛び散った血で手足や制服が汚れていく。

既に動かなくなったゾンビへ未だに追加攻撃を仕掛けるアホを引き剥がす。

 

 

「おい!」

 

 

「あっ──っ……っ!」

 

 

「しっかりしろアホ!」

見開いた目はギョロギョロと焦点が合わず、明らかに混乱しているツインテの頬をペシペシと叩く。ようやく我に帰ったアホはオレ、シャベル、ゾンビの順に視線を向けると襟を掴んでいたオレの手を払いのけた。

 

 

「もう……いい。ごめん……」

半泣きになりながら頬に着いた血を拭うと、裏門へと歩いていくツインテ。溜め息を一つ吐き、オレはその後ろを付いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっ──!」

手短な感染者にナイフを突き立て、その体を盾にしながら前へ押し出し側面から来る一体の頭を竹槍で穿ち盾にしていた感染者を蹴り飛ばすと数匹の感染者が巻き込まれる形で倒れ込む。引き抜かれ血でベチャベチャに汚れたナイフを別の感染者目掛けて投げつけ、綺麗に額に突き刺さるのを見て新しいナイフを引き抜く。ナイフの残りは3本。

 

 

「いいぞ、来い!」

下敷きになった感染者の頭を踏み砕き、離れた位置で若狭妹を守るように挟んでいた二人への合図を送る。

 

 

「秀!」

通話越しではない、一日ぶりに聞く悪友の声。裏門に視線を向けると両腕をテープでグルグル巻きにした拓三と、シャベルで一緒に感染者を蹴散らす原作キャラの一人『恵飛須沢 胡桃』の姿が見えた。まさか来るとは思っていなかった存在に目を疑ったが、すぐに頭を切り替え三人を拓三達の方へ誘導する。

 

 

時間が思ったより掛かりすぎたためか騒ぎを聞きつけ、多方面から感染者が集まってくる。

 

 

「オレたちが降りてきた南側が一番手薄だ、行くぞ!」

 

 

「先に行け恵飛須沢、直樹。祠堂! 若狭妹を連れて屋上に上がれ!」

 

 

「先輩は!?」

振り返った直樹の背後から感染者が現れ、三人が気づく前にナイフを投げる。突然のことに目を白黒させる直樹。俺は拓三と背中合わせになりながら「すぐに追い付く、先に行け!」と叫ぶと恵飛須沢は二人を誘導し、手を引かれた若狭妹が「ひーにぃ!」と声を上げる。

 

 

「さぁて、やっちまおうぜ」

 

 

「やっちゃいますか」

 

 

「やっちゃいましょうよ!」

俺たちにしかわからないネタを挨拶がわりに交わし、俺たちは襲い来る感染者へと突っ込む──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急げ!」

あたしは避難してきた生徒二人と小学生くらいの女の子を連れて階段を登っていく。前者はおそらく下級生だと思うし、後者がきっとりーさんが泣きながら名前を呼んでいたるーちゃんっていう妹さんなんだろう。

 

 

あたしはアイツらみたいに強くないから、きっとこれが一番正しい選択なのかもしれない。

三人を連れてきた私服姿の奴は知らないが、少なくともアイツが下の名前で呼ぶくらいには親しい奴なんだろう。あんな奴と仲いいなんてどうかしてると思うが今はそんなことを考えてる暇はない。

 

 

ようやく屋上にたどり着き、鍵を開ける。急いで中に入り扉を閉める。

息を荒げながら地面にへたり込み、息を整えているとりーさんが駆け寄ってくる。

 

 

「るーちゃん!」

 

 

「りーねぇ!」

名前を呼ばれた女の子が両手を広げながらりーさんに駆け寄り、二人はお互いの存在を確かめ会うように強く抱き締めあい、何度もお互いを呼びあっている。

 

 

「はぁ……っ、はぁ……っ」

そんな二人の姿を微笑ましく思い、眺めていると慌てて血塗れになっているあたしにめぐねえが顔色を伺ってくる。

 

 

「恵飛須沢さん! 大丈夫!? どこか怪我してない!?」

あたしは大丈夫、ただの返り血と答えながら受け取った濡れタオルで肌に着いた血を拭いていく。いつまでもこんな格好じゃ不快だからすぐに着替えたい旨を伝える。

 

 

「まっ、待ってください、まだ先輩たちが!」

 

 

下級生の一人、クリーム色の髪をした。……なぜか制服にガーターベルトっていう格好の女子が息を荒げながら入り口を指差す。

 

 

「っ、恵飛須沢さん。二人は……?」

めぐねえの疑問にあたしは二人が殿を勤めて『奴ら』と戦ってると答えると、りーさんが手で口元を押さえる。

 

 

「すぐに助けにいかないと!」

りーさんは慌てて飛び出そうとするが、あたしはそれを引き留める。行ったところでどうにかできるとは思えないし丸腰で行ったって無駄だと。

 

 

「放っておけるわけ無いでしょう!?」

 

 

「落ち着いて二人とも!」

言い合うあたし達の間に割って入るめぐねえ。あたしだって別に見殺しにしていいなんて思ってない。でも奴らと対峙して理解した。あれはまともな精神で戦える相手じゃない。人間だった頃の外見をそのままに獣のような唸り声をあげながら映画の中に出てくるゾンビみたいに襲ってくる化け物が実在し、それと立ち向かうのがどれだけ怖いか。そんな中であの二人は最後まで残ってあたし達を逃がすために奮闘している。

 

 

認めたくはないがあの二人の勇気には感服するし感謝もしている。だからといってここでまたあの地獄に立ち入れるほど、あたしは強くない。

 

 

弱い自分がこんなに腹が立つものなのかと唇を噛み締める。きっとりーさんやめぐねえ達も同じ気持ちなはずだ。

 

 

「っ──それでも!」

りーさんは下級生が持っていた槍のようなものを奪うように手に取って、あたし達の制止を振り切り入り口の扉を開け──。

 

 

「すまん、遅くなった」

 

 

──た瞬間。二人の男子生徒が全身を血塗れにした状態で立っていた。

あたしなんかよりも惨いほど酷く汚れた二人の姿。まるで全身から血の池にでも飛び込んだのかというほど真っ赤に染まった二人。はっきり言って下手なホラー映画よりも怖かった。

 

 

現に一番間近で見てしまったりーさんなんて棒立ち──あれ?

 

 

「りーさん?」

 

 

「──きゅぅ……」

そんな可愛い声と共に卒倒するりーさん。

 

 

 

「「「りー(若狭)さーん!!?」」」

 

 

こうしてあたし達は、長い付き合いになる事になるメンバー全員と合流を果たした。




ようやくメンバーの合流まで託つけました。頻繁にキャラ別の描写に切り替わるパターンが多過ぎて、誰の描写になっているか解りづらいかもしれません。少なく、というか主人公二人の目線ばかりだとどうしても表現できないものがあるので読みづらいかと思いますがご了承ください。

SIDE○○みたいな区切りを着けたりした方がいいんでしょうけど、個人的に一人称や個人の呼び方などで語り部が誰かを表現したいという拘りがあってですね(言い訳

ところで読者の皆様的には主人公二人の姿ってどんなイメージなんですかね。名前のせいできたない顔が真っ先に浮かびそうなんだよなぁ(ギャグ要素を入れるために安易なネタを差し込む投稿者の屑
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