てんせいぐらし! ~キチガイ二人は地獄を往く~   作:青の細道

8 / 20
大変長らくお待たせして申し訳ありません(ヽ´ω`)
仕事の環境が変わり、日々の疲労が蓄積されちょっとばかし無気力障みたいなことになってました……。
と言いつつソシャゲだけはちゃっかりやってたりしてました。

申し訳ございませぇん!(焼き土下座

がっこうぐらし第11巻を買いました。まぁた一人救わなきゃいけない人が出来ました(英雄並感


ぎもん

最近、学校が好きだ。

そう言うと変だって言われそう、でも考えてみてほしい。学校ってすごいよ。

 

 

物理実験室は変な機械がいっぱい。音楽室、綺麗な楽器と怖い肖像画。放送室、学校中がステージ!

 

 

何でもあってまるで一つの国みたい。こんなへんな建物、ほかにない。中でも私が好きなのは……。

 

 

ガラッとスライド式の扉を開ければ、大好きなお友達が出迎えてくれるここ。『学園生活部』!

 

 

「よう、ゆき」

ツインテールに制服と、何故か両肘両膝についてる──えっと、ぷろてくたー? っていうものをつけてる女の子、名前は『くるみ』ちゃん!

 

 

とっても元気で足が早くてシャベルが大好きな娘!

 

 

「やっほーくるみちゃん!」

 

 

「遅いですよ、ゆき先輩」

椅子に座って読書をしていたクリーム色の髪に、ちょっと大人な雰囲気の『みー』くん!

 

 

「今日のおやつはカンパンですよー」

みーくんの隣で音楽を聴きながらニコニコ笑顔が優しい、みーくんの親友『けー』ちゃん!

 

 

「わーいカンパン! なんかカンパンってさばいばるって味だよねぇ」

私はカンパンを頬張りながらそんな事を呟くと、くるみちゃんは頷きながら「わくわくするよな」って同意してくれるけど、みーくんは何故か溜め息を吐いてる。溜め息を吐くと幸せが逃げちゃうんだよ? と言うとまた溜め息しちゃった。

 

 

そういえば……。

 

 

「りーさん達はぁ?」

 

 

「部長はるーちゃんと屋上、副部長共は下」

 

 

「そっかぁ、わたしたちも屋上にいってみよっか」

そう言うとくるみちゃんは「いいぜ」と言いながらシャベルを手に取る。肌身離さず持ち歩く、やっぱり好きなんだねぇ~。

 

 

「おい、なんか変なこと考えてたろ」

 

 

「そ、そんなことないよぉ~」

ジトッとした目でみてくるくるみちゃんに、音がならない口笛で誤魔化す。

 

 

「『気をつけて』くださいね」

 

 

「いってらっしゃーい」

みーくんとけーちゃんに見送られ、私とくるみちゃんは屋上へと向かうのであった。

部室を出て階段を上れば屋上。園芸部が耕す畑があって、たくさんのお野菜が育つ素敵な場所! お日様に照らされてスクスク育つ姿はせいめーのしんぴって感じ!

 

 

「おーい、りーさぁーん。るーちゃーん!」

『他の園芸部の人達』にあいさつをして、畑に水を巻いている同級生の女の子と、その妹さんに声を掛ければ笑顔で二人が手を振ってくれる。

 

 

長くて綺麗な髪にしっかりものの『りー』さん。学園生活部の部長でみんなの頼れるおねーさんって感じの人!

 

 

そしてそんなりーさんの妹でとっても可愛いけどちょびっと人見知りな『るー』ちゃん。私も最初は全然お話しできなかったけど今ではすっかりお友達!

 

 

「あら、ゆきちゃん」

 

 

「やふぅ!」

駆け寄ると同時にるーちゃんを思いっきり抱き締める。ちっちゃくってぷにぷにでかわいい!

 

「くるしい……」

 

 

「こーら、私の妹は抱き枕じゃないのよー」

 

 

「んへへへぇ、ごみぃん」

るーちゃんから離れ、あれこれ話しながら私はくるみちゃんと一緒にりーさん達の作業を手伝うことに。野菜のお世話なんて農家の人みたいで面白いよね! 種から目が出て、どんどん育っていくと胸が温かくなるよね。

 

 

あっ!

 

 

「野球部が練習してるー! おーい!」

校庭で練習してる野球部に手を振ると、気づいてくれた部員の人達が振り返してくれた。

 

 

「見て見てくるみちゃん!」

 

 

「サボってんじゃ──ねぇ!」

突如として襲いかかるくるみちゃんのシャベル!

 

 

「ちょ、シャベルは反則反則!」

後退りする私に、目を光らせ「峰打ちじゃ」と笑みを浮かべるくるみちゃん。シャベルに峰打ちって。というか十分あぶないよ!

 

 

「っ~こうなったらー!」

足元にあった水の入ったバケツと柄杓を手に取り、水攻めによる抵抗を行うのだ!

 

 

「うわっ! っ──やったなぁ?」

同じくバケツを手に取ったくるみちゃん。両者がにらみ合い、一瞬の静寂が訪れる…………それはさながらお侍さん同士の真剣勝負のような──。

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ~、ぬれちゃった……」

結果はくるみちゃんの大勝利。制服をぐっしょりにした私はりーさんの持ってきてくれたタオルで頭を拭かれながら言いつける。

 

 

「りーさん聞いてよー、くるみちゃんがひどいんだよぉ?」

 

 

「ちょっ、先にやって来たのお前だろ!?」

 

 

「あらあら、風邪引く前に着替えてらっしゃい」

 

 

「はーい」

りーさん、くるみちゃん、るーちゃんに手を振り三階に降りる。たしか教室に体育用のジャージがあったはずだからそれに着替えよう!

 

 

「あらゆきちゃん、どうしたの?」

階段を下りていくと、丁度屋上へと上がっていこうとする『めぐねえ』と鉢合わせした。私たちせ学園生活部の顧問で私のクラスの担任の先生でもあり、りーさんと同じく大人びててとっても綺麗な人。私も大人になったらめぐねえみたいな素敵な人になりたいなー。

 

 

「あ、めぐねえ! うんちょっと屋上で水遊びしてたから濡れちゃって。教室に体育着置いてあるから着替えようと思って」

そういうとめぐねえは苦笑いしながら転ばないようにねと注意を促してくる。むー、私そこまで子供じゃないもん。

 

 

「あっ、お着替えついでにそろそろ今日のミーティングするから部室に集まるよう図書室にいる木村くん達を呼んできて貰えるかしら?」

 

 

「はーい」

 

 

めぐねえと別れて教室に入り『教室の皆』と少しお話しした後は二階へ降りる。たしかめぐねえの話だと今は図書室にいるって聞いたけど……。

 

 

「しつれいしま~す……」

図書室では静かに、がマナーです。図書委員の生徒に声をかけると二人がいる方向を指差しで教えてくれた。

二人のいる場所に近づくに連れボソボソと話し声が聞こえてくる。チラリと除き見れば、全身真っ黒な下地に灰色の斑点模様の服……たしかめいさい?だかそんな名前の服。肘や膝には何で学校でそんな格好を……。

 

 

「んぉ、丈槍じゃねェか」

最初に気付いたのはアクション映画俳優のようなムキムキの体に、18歳とは思えない強面の男子生徒。短い髪を逆立てて金髪に染めている風貌は、もう完全に映画の住人。名前は『田所 拓三』くん。私は『たっ』くんと呼んでるけど、初めてそう読んだときは唐突に「オルフェノクになっちゃう」なんて言い出した。どういう意味なんだろう……?

 

 

「ん、どうかしたか?」

たっくんの反応に、背を向けていたもう一人の男子生徒が振り替える。たっくんと比べると平凡的に見える身長と体格、切れ長の目に赤みがかった黒髪を一本縛りにした髪型。表情が固くてよく間違われるけど、実はとっても優しい人なんだって私は知ってる。名前は『木村 秀樹』くん。愛称は『ひー』くん。

 

 

二人はとっても仲良しでいつも一緒にいる。学園生活部の『じつどーぶいん』っていう役職だけどよく意味がわかんない。皆が言うには男の子として力仕事をたくさんしてもらってるんだって、昔からいっぱい鍛えてるって聞いたしすごいよね。

 

 

「めぐねえがそろそろ部室に集まってーだってぇ」

私がそう言うと腕に着けていた時計を確認しながら「もうそんな時間か」ってひーくん。二人は読んでいた『極限状態から脱出するための知恵』ってタイトルと、数多くのサバイバルに必要なことが乗ってる本を纏める。途中で私をチラッと見ると図書委員の生徒に本の貸し出し申請を受けにいった。

 

 

「それじゃいこっか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに原作第一巻をほのめかす描写に入った。

 

 

パンデミックが発生してから一週間が経過し、学園生活部が佐倉先生観衆のもと発足され俺たちを含めた総勢9名のメンバーが集まる。原作では主人公『丈槍』『恵飛須沢』『若狭』と、丈槍の妄想の中でのみ登場する故人となった佐倉先生の三人+αから始まる物語。それが俺達の介入によって三倍の人員が初期生存者として学院に存在する。

早い段階で二階までの制圧は終わり、一階はあえて感染者を徘徊させている。地下室への探索はまだだが、他生存者がここを拠点にする可能性も含め『門番』として利用している。外へ探索しにいく場合は二階から下ろした消火栓のホースをロープ代わりにしたものを使う。

探索は基本的に俺か拓三一人と他のメンバー数人を同行させ、残りのメンバーは学院の安全を確保しておく。俺と拓三が探索に出てしまうといざという時に戦える人員がいないのは危険だからな。

 

 

とはいえ今のところ他生存者からのバンディット行為は受けていない。原作でも学院が襲撃されるような描写はなかったが、警戒に越したことはない。

 

 

さてさて原作開始と言っても、完全にかけ離れた世界観のここではこの先どうなるかは俺達でもわからない。原作沿いに進むのか、完全に別ルートになるか……。

 

 

まぁそれはさておき生徒会室……もとい学園生活部の部室に集まった俺達。朝礼と評した早朝のミーティングがある。その日の予定と役割分担。

 

 

「おっまたせー!」

 

 

「ちわー」「遅くなった」

丈槍を先頭に、部室に入れば俺達以外の全員が揃っている。

 

 

「それじゃぁ、会議を始めます」

パンと手を叩き、ホワイトボードの前に立つ若狭を筆頭に俺たちは席に座る。午前と午後に二度、俺たちはこうしてミーティングを挟みその日の予定と進捗状況の確認。こと細かく情報を共有し少しでも危険を減らすようにしている。

 

 

「んじゃあまずアタシから、一階の状況は普段と変わらず。言われた通り一定の『数』は残存中」

 

 

門番役の感染者を観察していた恵飛須沢の提示報告を筆頭に、直樹と祀堂が担当する食料の在庫確認。佐倉先生と若狭が担当する屋上農園の状況。俺と拓三の、学院各フロアの補強、周辺地域の観測、利用可能な機材やバリケードなどに使えそうな道具の確保とその補修作業。

 

 

「こんなところかしらね」

ボードに纏めた概要に、若狭は顎に手を当てながら頷く。

 

 

「居住性や安全の面では学院設備ってこともあって申し分ないけれど……やっぱり食料問題は無視できないわよねぇ」

佐倉先生は直樹と祀堂が用意してくれていた食料の在庫一覧を記載したノートを眺め溜め息を漏らす。

たしかに生活していく上で食料の問題は後を経たない。無くては困る物であり毎日消費するものだ。ある程度節約したところでこの人数ではどう足掻いても長期的な生存は『現状』維持することは出来ないだろう。

 

 

「そろそろ行くべきかしら」

僅かに視線を俺へ向けてきた若狭、席を立ちコピーした緊急避難マニュアルのページをボードに張り付ける。学院の見取り図である一階のページには地下施設への経路とその概要が示されている。

 

 

「マニュアルの通り、地下には避難区域と備蓄倉庫と記載されたエリアがある。言葉通りならある程度──15人以内での約一ヶ月分推定した食糧が備蓄されているはずだ」

 

 

内容は事前に皆で共有していたが、やはり朗報と呼べるものは何度聞いても活気を蘇らせるようで全員の表情に明るさが垣間見える。俺達のグループは総勢9人。内7人が女子供で野郎が二人、上手く節制すれば二ヶ月には間延びできるだろう。

 

 

「メンバーは俺と拓三、佐倉先生と直樹の四人。残りは待機だ」

俺の人選に疑問を抱いたのか、直樹が挙手をする。

 

 

「四人だけですか?」

 

 

「あくまで最初は偵察だ。地下は学院と違って一方通行で逃げ道が一つしかない。感染者が居ないとも限らん……感染者の対応を俺と拓三が、佐倉先生と直樹には備蓄の記録を取って貰う。その後安全を期して全員で改めてって流れだ」

 

 

ミーティングを終え荷物を整える。最低限の装備を揃え、念のために二人にも学院にあった刺又を持たせる。

 

 

「んじゃ、何かあればこれを使え。周波数は合わせてある」

トランシーバーの一つを若狭に投げ渡す。慌ててキャッチした彼女は頬を膨らませて「貴重な物資を投げないで」と怒り、苦笑する。

 

 

「行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし……いいぞ」

北階段を経由し、一階まで降りてきた。周囲を確認し感染者の有無を確認する。バリケードなどで一階の北階段周辺は確保してあるがどこから抜けてくるか油断はできない。

 

 

足音を発てず、足早に移動し地下施設までのシャッターへ移動する。

 

 

「あれ、シャッター空いてますよ?」

直樹が指摘した通り、シャッターは僅かに開いており机の一つを挟まれた状態になっている。無論俺達の誰かが事前にそうしたわけではなく『他の』何者かがそうしたようだ。

原作通りなら恐らく開けたのは──。

 

 

「気を付けろよ」

シャッターを潜ると、地下までの廊下は暗闇に包まれていた。ペンライトとナイフを構え、周囲を見渡すと壁際にスイッチを見つける。カチリと入力を押せば電灯が点灯し暗がりだった地下に光が刺す。

 

 

「よし、行こう」

更に奥深くまで足を進め、階段を降りると地下は僅かに床が浸水していた。恐らく貯水槽までの水道管が破損でもしているのだろう。

少し進めば備蓄倉庫に到着する。収納された棚にはそれぞれ内容物が示されたラベルが貼られ、食糧や医療品。生活必需品などといったものが数多く見られた。

 

 

「すごい……」

 

 

「これだけの量……一体どうして、これじゃまるで──」

 

 

「最初から『こういった状況』を想定してたみたいだ、てか?」

佐倉先生の顔が曇る。用意周到すぎるほどの物質、パンデミックの発生を事前に考慮していたとしか思えない。学院はそれを認知しておきながら避難活動などもせず黙認し、結果多くの死傷者を出した。

学院の教師としての立場的に穏やかではないのだろう。

 

 

「とにかく、今は備蓄の記録を」

 

 

「ええ」

 

 

取り出したメモ帳とボールペンを全員に配り、いざ記録に移ろうとしたその時だった。

 

 

 

ガタン

 

 

 

「「「「っ──!」」」」

四人の居る場所とは違う方向から物音が響き渡る。そこまで大きな音ではなかった筈だったが、全員の注意を向けるには十分な程の音だった。

 

 

顔を見合せ、冷や汗を流す佐倉先生と直樹を下がらせ拓三と目配せをする。それぞれナイフとハンドアックスを構え、音の鳴った方へと進む。外から侵入した野生生物か、それとも感染者か……。

 

 

機械室と扉に記された部屋の入り口。恐らく音の発生源はここだろう……たしかここは──。

 

 

無言のまま拓三と目を会わせ、ゆっくりドアノブに手を掛ける──が、鍵がかかっているようで扉が開く事はなかった。代わりに中から男性と思われる怯えきった声が聞こえる。

 

 

「だっ──誰だ!?」

声色的に学生ではなさそうだ。やはりこいつは……。

 

 

「学院の生徒です、もしかして校長先生ですか?」

俺がそう尋ねると、後ろにいた佐倉先生が驚いたような声を上げる。

 

 

「校長先生……!? 校長先生! 私です、佐倉です! ご無事だったんですね!」

扉まで駆け寄り、笑みを浮かべる彼女を他所に、俺は静かに拓三と向き合う。

 

 

そう、原作では佐倉先生は丈槍たち3人の生徒を守るために犠牲となり、感染が進んでなお意識を保ち地下へと自ら足を運び一人静かに転化して地下を徘徊する亡者となってしまっていた。やがて地下施設の存在を知った彼女たちは、恵飛須沢を偵察に行かせるも、そこで遭遇した佐倉先生だった者に感染させられ命の危機に貧する。

何とか直樹の懸命な行動に一命を取り止めた丈槍たちが地下へ向かい、今の俺達と同じように備蓄倉庫を発見したところまでは俺達の知る『原作』の流れ、だが俺達の介入により大分時系列に乱れが生じた為かはたまた別の要因か、本体地下施設で自殺の道を選んだ一人の生存者の亡骸を恵飛須沢が発見するのだが……。

 

 

「さ、佐倉先生……? まさか、無事だったのか……?」

信じられない、といった様子で扉の向こうの男性の声。やがてガチャリと鍵が空く音と共に扉が開かれ、目の下に深い隈を作り大分窶れた校長の姿が現れた。

 

 

「本当に無事だったんですね、よかった……校長先生。今外h「知らんッ!!」っ──!」

 

 

「私は何も知らん! こっこんな……こんなことになるなんて聞いてない! 私のせいではない!」

外、というフレーズを聞いた瞬間顔を強張らせ怒鳴りように後退る校長。

 

 

「校長先生、お気持ちは解りますが数名だけですけれど生徒たちが上にも居るんです。せめて──」

 

 

「知ったことか! 私には関係ない、勝手にしろ!」

 

 

まるで聞く耳を持たない校長の様子にたじろぐ佐倉先生と、嫌悪感が露骨に出ている直樹。溜め息を吐いた拓三が歩を進め、校長の顔面をぶん殴る。筋肉馬鹿の拳は盛大に痩せこけた校長の頬を捕らえ、勢いよく吹っ飛ぶ。ちょっとやり過ぎじゃないっすかねぇと思いつつ、まぁ意識が飛んでいない様子を見ると本気では無かったようだ。

 

 

「落ち着けよオッサン」

 

 

「田所くん! いきなり何を!?」

慌てて校長に駆け寄る佐倉先生。

 

 

「き、貴様ッ──」

 

 

「なぁ、校長。何個か聞きたい事があるんだが」

倒れた校長の前にしゃがみ込み、威圧するように睨む。備蓄倉庫からこの部屋に来るまでに抱いた疑問の根元を確かめるべく校長の様子を観察する。特にこれといった外傷は見られず、痩せこけたのも単純にストレスと栄養失調が原因と見られる。

 

 

「見たところ怪我も無さそうだし、感染はしてなそうだな。まぁせっかくの備蓄倉庫に感染源が居たんじゃこっちが困るからな」

 

 

「な、何を──」

 

 

「ところでさぁ……アンタ『何時から』ここに居たんだ?」

 

 

「っ──!」

はい目が泳いで明らかに態度が豹変した。これは十中八九ダウトかね。

 

 

「先輩、それってどういう意味ですか?」

直樹の疑問に、ゆっくりと立ち上がりながら答える。

 

 

「簡単なことさ、事の発生……このパンデミックが発生してすぐ地下施設の存在を知っていた誰かさんは他の職員生徒を見捨てて、一人むざむざ逃げ仰せたんじゃねーかって話さ」

 

 

「っ、それって──!」

顔を歪め、校長を睨み付ける直樹をまぁまぁと抑える。

 

 

「アンタ、さっき自分は『何も知らない』って言ったよな、でもアンタは緊急避難マニュアルが開封されていないにも関わらず地下施設の存在を知っていた。まぁ校長なんて役職なら知ってて当然かもしれないが、だがそれじゃ矛盾になる。存在を知っていたなら最低限の情報はあった筈だ、この備蓄が何を目的に用意されたのか……何処がそれを指示したのか……そしてそれは『何処』なのか」

 

 

「ッ……し、知らない! こんなこと『奴』は……っ──!」

誘導尋問成功。意外とすぐ墜ちたな……。

 

 

「やっぱり知ってるじゃないか……(呆れ)」

大きく溜め息を吐く拓三がやれやれと首を振る。

 

 

「『奴』とは誰の事だ? アンタやっぱり──」

 

 

「煩い!」

 

 

「きゃっ──」

突如懐からハサミを取り出した校長が側に居た佐倉先生の首に腕を回す。盾にするように佐倉先生を前にしハサミを彼女の頬に向ける。

 

 

「動くな!」

 

 

「おいおい……」

 

 

「先生っ!」

 

 

「…………」

 

 

佐倉先生を人質に取り、ゆっくりと後ろに下がっていく校長。青白くなった顔からは汗が溢れ、ハサミを持つ手は目に見えて震えていた。

 

 

「私に近寄るな!」

 

 

「こ、校長先生……! どうして!」

苦しげに目を細めながらも校長の身を案じているのだろうか。特に抵抗らしい抵抗をしない佐倉先生。

 

 

「計画なんて知ったことか! 私は金さえ貰えればよかったんだ。餓鬼が何人死のうが私には関係ない!」

かなり興奮気味に叫ぶ。計画……パンデミックは計画的に練られた物であり、感染源のウィルス、正確には細菌も意図的にばら蒔かれたと見ていいだろう。てっきりクライアントはランダル・コーポレーションだと思っていたが……『奴』とは誰だ? スポンサー的な存在でもいるのか?

 

 

「落ち着け、何も危害を加えようって訳じゃない。ただ知ってることを教えてほしいだけだ」

ほら、と手に持っていたナイフを遠くへ投げ捨て両手を挙げながらゆっくり近づく。

 

 

「それ以上近づくな!」

 

 

「せんぱ──「まぁ待て」っ、何で!?」

 

 

一歩……二歩……三歩。距離的にあと5mくらいか。

 

 

「このっ──!」

ハサミを振り上げ、佐倉先生へ振り上げた瞬間──。

 

 

「シッ─!」

予め袖に忍ばせておいた投げナイフを腕を振り抜く勢いを利用し、手元まで下ろす。狙いはハサミを持つ腕。5m程度の距離、外すハズがない。

 

 

こういった状況を想定して何度も何度も練習した甲斐があった。放たれたナイフは勢いよく校長の手首へと吸い込まれ、深々と突き刺さる。

 

 

「ギャッ」

悲鳴を上げ、痛みのあまり拘束が緩む。その隙に足へ力を込めて一気に距離を縮め痩せこけてなおだらしなく膨らんでいる腹へ蹴りを叩き込む。

 

 

「大丈夫ッスか」

横目に佐倉先生へ安否を確認する。恐怖と困惑で表情は曇っている。

 

 

「ありがとう……」

 

 

「いえ、元はと言やぁ俺が発破を掛けたのが原因なんで」

すいませんと謝り、彼女を拓三に任せる。

 

 

「さて、教えて貰えませんかね。アンタが知ってることを」

踞る校長へ、再度要求する……が、やがて背中を小刻みに震わせたかと思えば盛大に笑いだした。なんだ気でも触れたか?

 

 

「知ってどうする、お前らのような女子供がどうにかできるとでも思っているのか!?」

 

 

「さぁな、だが何も知らずに死ぬなんて御免なんでな」

 

 

「下らん、どう足掻いたってこの世界は終わりだ! 貴様らも死ぬんだ!」

よろよろと立ち上がり、手首に刺さったナイフを引き抜くと気味の悪い笑みを浮かべながら刃を自らの首に突き立てた。溢れ出る鮮血が床を紅く染め上げ、狂ったような笑みで仰向けに倒れる。まさか自害するだけの度胸が残っていたとは想定外だった。

 

 

「うっ……」

突然目の前で自ら命を経つ瞬間を目の当たりにした二人が口元を抑える。拓三に二人を部屋の外へ連れ出すように促し、俺は倒れた校長からナイフを引き抜き血を拭う。適当にポケットなどをまさぐると一冊の手帳を見つけた。中身を確認すると日記のようなものが記され、内容のほとんどは見捨ててきた人間への懺悔で埋め尽くされていた。だが日を追う毎に執筆は乱れ、やがて書きなぐるように自身の無実を訴えている。

 

 

僅かに残っていた罪悪感からの贖罪と精神の磨耗からの現実逃避。

 

 

「…………ん?」

パラリと落ちた破り取られたページが校長の血溜まりに浸されてしまう。しかも運の悪いことに一瞬見えた『何か』が描かれていた側の面が床面に落ちたせいで完全に血で塗り潰されてしまった。

 

 

広がった血を掃除し、校長の遺体はブルーシートで繰るんでおく。特に意味はないが、少しだけ手を合わせてから部屋を後にする。

 

 

 

「大丈夫か?」

部屋を出ると、すっかり意気消沈した二人が床に座り込み顔を伏せていた。

拓三は首を横に振る。

 

 

「……二人は先に上上がって休んでろ」

立てるか? と直樹へ手を指し伸ばすと、視線を持ち上げた直樹は俺を睨むように言葉を呟いた。

 

 

「どうして平気な顔してるんですか……?」

 

 

「何がだ」

言いたい事は何となく分かるが、恐らく今直樹が抱えている疑問はそれだけじゃないのだろう。たまに何かを思い詰めたような顔でこちらの様子を伺うようにしているのはここ数日で何となく感じていたが。俺達への不信感を募らせているのは彼女だけではない。

 

 

「人が目の前で自殺したんですよ!? 先生だって危なかったのに、どうしてそこまで冷静になれるんですか!?」

 

 

「おかしいか?」

 

 

「おかしいですよ! いつもいつも、どこか遠くを見てるように……まるで私達なんて見えていない、何を考えてるか分からないのが怖いんですよ!」

微かに目に涙を浮かべる直樹。

 

 

「初めて先輩と会った時、どうしようもなくて隠れることしか出来なかった私達を助けてくれた先輩には感謝してます、でも日に日に先輩の行動を見てると不安になるんです……私達に何かを隠してるんじゃないかって。『あの人』から言われて、何となく割り切ってた部分もありますけど……どうなんですか?」

直樹の主張に、いつの間にか佐倉先生の視線までもが俺に向けられていた。

 

 

さてどうしたものかと、何度目になるか。拓三へ視線を向けると面倒臭そうな顔で手をヒラヒラと振っている。つまり『面倒だから任せる』とのことだ、ハハハッこやつめ。

 

 

「はぁ……『白昼夢』って知ってるか?」

流石に「別の世界で死んで転生しました、君たちは漫画の世界のキャラクターです」なんて言えるわけがない、言ったとしてもまず信用されないであろう。故に少しニュアンスを変えて俺達の成り立ちをでっち上げる。

 

 

内容としては、小学生の頃に毎日ゾンビに襲われる白昼夢を見ていた事にする。ただそれだけではただの夢で終わってしまうので原作描写を交える。例えば俺達は傍観者としてしか直樹たちの姿を見ていることしかできなく、俺達というイレギュラーな介入者がいなかった場合の……つまり原作通りの流れを、佐倉先生や祀堂、若狭妹の事は伏せながら上手いこと話を繋ぎ会わせていく。

 

 

長ったらしく語り続け、原作第四巻までの内容を説明し終える頃には直樹も佐倉先生も大きく目を見開いていた。

 

 

「まぁ、信じる信じないは自由にしてくれ。俺も最初はただの夢だと思ってたからな、だが拓三と出会って同じように夢を見ているってことを知ってから抱いた危機感から俺達は鍛えたり知識を蓄えてきた」

 

 

小一時間ばかり話し込んでいたせいか、流石に心配になってきたのか若狭から通信が入る。「少し問題があったがもう大丈夫だ。すぐ戻る」とだけ伝え、強引に通話を切る。話してる間に拓三がまとめ上げた備蓄一覧表と医療品の中にあった感染者用の薬剤の入った瓶と注射器の箱を受け取る。

 

 

「お前や先生、他の奴等が俺達を不審に思うのは妥当だ。だが俺達も生きるためにこうしているんだ、信用できないってなら此処であった出来事を若狭たちに話して相談しろ。お前たちが望むなら俺達は学院から出ていく」

 

 

こういう言い方はズルいと思われるだろうが、今更である。

 

 

「信じる信じないは別として……。──先輩は大切な仲間ですから」

涙を拭い、キッと強い眼差しで目を見つめてくる直樹の頭をポンポンと叩きながら立ち上がらせる。

 

 

「先生もそれでいいですか?」

訪ねられた佐倉先生は小さく頷きながら立ち上が──ろうとしたが途中で膝から崩れる。咄嗟に受け止めると、どうやらさっきまでの恐怖心が今頃体に現れたらしく膝が笑っていた。

 

 

「ご、ごめんなさいっ」

足取りが生まれたての子鹿並に危なっかしくて仕方ない。流石にこれで階段を上がるのは苦だろう、そう思っていると俺の手から医療品の箱を踏んだくる直樹。

 

 

「荷物は私が持つんで、先輩は『責任』を持って先生を助けて上げてください」

何故か責任、の部分を強調してさっさと行ってしまう。拓三へ視線を向けるもニヤニヤと悪どい顔で直樹の後を追う。

 

 

「はぁ……、ちょいと失礼」

 

 

「へぇっ!? ちょっ──ひゃぁあ!」

強引に背におぶさるせると生娘のような悲鳴をあげられる。背中に感じる柔らかい感触……などはなく背中のプロテクターによって青春漫画のような展開はカットさせてもらう。

 

 




という訳で約二ヶ月弱エタっていた事を再度謝罪いたします。
本当は年末年始辺りに一気にドバーッ!と投稿するつもりだったんですけど見事に寝太郎状態でした。

だがしかし案山子。おかげで待ち望んでいた主人公二人のキャラデザをカスタムキャスト様のアプリで作成することができました!!!(苦し紛れ

木村 秀樹

【挿絵表示】


田所 拓三

【挿絵表示】


巡ヶ丘の男子制服が今一よくわからなかったので服装は適当。迷彩服とかは流石に無いので脳内補正でオナシャス


こんな感じでまた不定期になりますが連載を再開させていただきます。いつの間にかお気に入り登録が336件にもなり、17名の方にご評価を頂きましたことを誠に感謝いたします。

感想なども読ませていただき大変心の励みになっておりました。

どうぞこれからもご贔屓にしていただけるよう努力していく所存です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。