てんせいぐらし! ~キチガイ二人は地獄を往く~   作:青の細道

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そろそろ大規模な戦闘シーンを入れたい(真顔



へんか

「ア"ァ? 『戦い方を教えてほしい』だァ?」

地下探索から更に一週間。地獄の始まりから約半月ほど、オレ達は一連の日課を終えて昼飯後。限りある自由時間の中でいつも通り図書室の資料を読み漁っていたある日の事だった。

 

 

どういう訳かツインテ娘こと恵飛須沢が真剣な面持ちで話しかけてきたかと思えば「感染者との戦い方を教えてほしい」などとぬかして来やがった。

 

 

「頼む」

背もたれからガクンと後ろに頭を垂らし、逆さまに見える恵飛須沢の目が真っ直ぐとこちらを見据えていた。どういう心境か、なんだってそんなモンをオレに頼んできたんだこいつは。

 

 

「あのなぁ、前にも言ったべ。『奴ら』の処理はオレ達でやっから、つーかはっきり言って面倒くせぇ秀に頼め秀に」

 

 

「その木村からお前に教えて貰えって言われたんだよ」

あぁ? マジかよ……何かと面倒くさそうなメンタルケアはアイツに任せっきりだったが、流石にオレも働けってことか? 誰かの面倒見るとかクッソダルいんですけどぉ。

 

 

「何でェ、またそんなもん覚えたがってんだ?」

読んでいた本を畳み机へ放る。オレの問いに、恵飛須沢は視線を泳がせ頬を掻きながら「お前達ばかりに戦わせてばかりで、悪いし。アタシも戦えた方がいざって時に身を守れるだろ?」と答える。

 

 

「別に自衛だけなら今でも十分できんべよ」

定期的に見回りをしたり、孤立した感染者を相手にさせある程度の免疫を付けさせようって事で何度か相手させたはずだが。こいつの言う戦い方ってのはつまりオレや秀みてぇな1:多数での立ち回りの事を言ってるのだろうとは思うが。はっきり言って不可能だろう、今更体を鍛えて戦い方を叩き込んだところで付け焼き刃にもならねぇ、むしろ無駄な動きの癖が付いちまうかもしれねぇしな。

 

 

そもそも10年近くトレーニングと独学とはいえ馬鹿みたいな鍛え方してきたオレ達に付いてこれる筈がねぇ。ただでさえ女で餓鬼なんだ。え? お前が言うなって? 見た目が学生。頭脳はオッサン、どこぞの名探偵みたいに格好いいものじゃねぇし、そもそもオレと秀の目的はあくまで原作キャラの生存であって危険に放り込むための──いや待て、それくらいアイツも分かってるはずだろ。なのに何でオレに教われなんて言ったんだ?

 

 

何か考えがあるのか……それとも単純に戦わせる機会が来ると踏んでるのか。

 

 

とは言えなァ……。

 

 

「そもそもオメェ、本気で強くなろうって思ってねぇだろ」

ピクリと恵飛須沢の肩が跳ね、視線に熱が帯びる。

 

 

「どういう……意味だよ」

グッと握りしめた拳は震え、ひねり出した声からは微かに怒りが感じ取れる。

ああ、ダァメだこいつぁ。

 

 

「そのまんまの意味だ、オレぁ秀みてぇに優しくねぇから率直に言わせて貰うぜ──」

 

 

 

 

 

お前、死にたがってるだろ?

 

 

 

 

 

言葉と同時に顔面に拳が飛んでくる。が、当たってやるほど柔じゃない。がっつり手首を掴んで受け止める。

 

 

「見りゃわかんだよ。見回りン時も、奴らを処理すん時も周りをキョロキョロしながら何か考えてんのがな、誰かと話すときも飯食うときも心ここにあらずってツラでいやがる」

事前に秀にも相談してたことだが。少し様子を見ておこうとは言われていたが。どうにも危なっかしくていけねぇ。

 

 

原作じゃそんな心理描写は無かったはずだが……となると、まぁ十中八九原因は『アレ』だろうな。

 

 

 

 

「そんなにあのセンパイの後追いがしてぇのか?」

 

 

 

 

「っ──! このっ!」

空いているもう一方の腕で殴り掛かってくるが、難なく押さえ込み片手で両腕を固定するようにして壁際に押し付ける。端から見れば絶対案件な絵面だが、生憎とここにはオレと恵飛須沢のみ。他のメンバーは大体三階か屋上に居るだろうし、秀は直樹と祠堂を連れて地下の備蓄を一部上に運ぶ作業中なはずだ。

 

 

多少音が経っても……って、なに考えてンだオレぁ。そういう状況じゃねぇだろ。

それにしても細っちぃ腕だ。力も無いし、ほんとにただの女子高生の腕。陸上部とはいえ所詮こんなもんだ。

 

 

それがどうしてこんなクソッタレな世界で生きなきゃならねぇんだって自暴自棄になるのも解らんでもねーが。

だからって見殺しにするわけには、いかねーんだなこれが。

 

 

「テメェの弱さを嘆くのは構わねぇ、ただ弱さを言い訳に逃げンのは許さねぇぞ」

オレの言葉に恵飛須沢が顔を曇らせる。感情的ではあるが頭ではちゃんと理解できてるタイプのこいつであると思っている。

 

 

「だったら……どうすればいいんだよアタシは……肝心なときに動けなくて、守られてばっかで、もう嫌なんだよこんな気持ち……」

腕から力が抜けていくのを感じ、手を離せば重力にしたがって落ちていく。肩を震わせ嗚咽混じりの声で訴え掛けるその表情は項垂れていて身長差的にもオレからは見えないが、床にはポタポタと水滴が落ちていっている。

 

 

なぁーかしたーなーかしたー。せーんせーに言ってやろー!

脳裏に嫌味ったらしい顔でふざける相棒の顔がちらつく。

 

 

「……うっ……うぅ……」

 

 

「…………」

 

 

……ああ! クソクソクソ! クソッタレが!

 

 

「おい恵飛須沢ぁ!」

女が泣いてる姿に愉悦を感じるほど歪んだ性癖などは持ち合わせていなかったらしく、あまりにも気まずい空気が流れる。ガシガシと頭を掻きむしり恵飛須沢の名前を怒鳴るように呼ぶ。

 

 

強引に手を掴み「付いてこい」と引っ張る。向かうはオレ達がトレーニングで使うように片付けた家庭科室兼、学生食堂。飯は基本三階で作るし食うのも三階。空間としてもて余してた場所を校舎からは離れている体育館は使えない代わりに利用している。

 

 

「な、なんだよ急に!」

困惑するツインテ娘を無視し、すぐ隣にある食堂に入る。重さの違う鉄アレイや自作のサンドバッグ、人形を模した人形(人体模型の改造品)。長い木の棒や剣道部などが使う竹刀に木刀、壁にはダーツの的と投げナイフ、近接格闘用のゴムナイフなどなど。

 

 

「オラ」

突き飛ばすように部屋の中心まで恵飛須沢を誘導する。意味がわからず疑問符をあげているバカに、オレは両手を広げて「かかってこい」と告げる。

 

 

「は……?」

 

 

「何でもいい、テメェがオレに一発でも当てれたらお望み通り戦い方を教えてやるよ」

まぁ、どうせ無理だしすぐに諦めんだろ。かるーくメンタルボコボコにしてやりゃ猿でも分かるだろうよ、オレは秀みてぇに言葉だけで説き伏せるなんてメンド──もとい得意じゃねぇから実力行使だ。分からねぇ奴には力で解らせる、暴力こそ正義、暴力最高!

 

 

ガハハハ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた時期がオレにもありました……。

 

 

「はぁっ……! はぁっ……! ふぅ……げほっ……!」

肩で息を荒げ、フラフラになりながらもオレを睨み付けてくる。

 

 

なんなんこいつ。軽く10分くらいで根をあげるだろとか高を括ってたら既に1時間もがむしゃらに挑んできてるんだけど。最初はナイフで、リーチや体格差からヒラリヒラリと落ち葉のごとく攻撃を避ける。すると今度は長めの木の棒で漫画のようにくるくると手元で回しながらちょっとずつフェイントを挟みながら振り抜いてくる。得物が長けりゃリーチの差は埋まると踏んだんだろうがそう簡単に活かせるはずもなく、秀のスタイルで散々対処してきた動きだ。ただ図体がデカイだけの奴と思っていたんだろう。体の軸を回転させバク宙なども合わせて煽るようにかわして見せる。

 

 

そんなこんなで10分ほど、そろそろ諦めろと諭したりしたが、何故か時間が経つにつれて恵飛須沢の顔が闘気を……というかちょっと殺気も混じってらっしゃる。

 

 

え、怒ってる? まさか怒ってらっしゃる?

 

 

お前面倒くせ──ああ嘘です嘘です面倒臭いなんて思ってません。だから3kgダンベル投げるの止めろ! 窓や床に叩きつけないようにキャッチする身にもなりやがれ!

 

 

ほぼ一方的なキャッチボールを続け、そしてまた襲い掛かる恵飛須沢。もう大分体力も消耗してきて顔色も悪い……いい加減辞めさせた方がいいだろこれ。

 

 

「おいっ……おいアホ! お前っいい加減っ諦めろっ……て!」

突き、横凪ぎ、かち上げ、蹴りやパンチとの併用。思った以上に食いついてくる恵飛須沢に止まるよう促してみるがまったく聞く耳持たず。

 

 

額から汗をダラダラ垂れ流し、半開きになった口からは涎も滴る。見ててかなりやばい絵面だ、というかこいつさっきから回し蹴りやらハイキック使ってくるのはいいがガッツリ靡いたスカートからチラチラ見える白いものの存在に気付いてないのか?

 

 

羞恥心ってものがねぇのかテメェ! もっとオシトヤカにしろ女の子でしょ!

 

 

「くそ……なんで……当たら……ねぇ……」

もう立ってるのも限界なのか、棒を杖がわりにしている姿は痛ましい。

 

 

「ち……くしょ……」

 

 

「お、おい! っと──」

最後の力を振り絞って、一歩踏み出した瞬間バランスを崩し顔面から地面に倒れそうになった所を慌てて受け止める。汗でぐしゃぐしゃになった制服やら髪やらで悲惨なことになっている恵飛須沢。正直オレにはこいつがどうしてここまで食いついてきたのか理解できない。

 

 

本当に死にたがってるだけならもっと簡単な方法あるだろ、強くなりてぇなら普通に自力で特訓するなりすりゃ良かったんだ。……なのに何でこいつは──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシはずっと気に入らなかった。世界が変わってしまってからずっとアタシの……アタシ達の先を歩く二人の背中を見てからというもの。胸の内にあるモヤモヤしたものが日に日に増していく感覚。みんなから頼りにされて、常に危険の真っ只中に自分から飛び込んでいく姿を見てきた。

 

 

どうしてそこまでするのか、どうしてそんなに強くなれるのか、どうして前を向いていられるのか。

 

 

そんな疑念だけが沸々と沸いてくる。ほんの二週間前まではただの学生に過ぎなかったアタシ達と同じはずだった。少し……というかかなり変わり者で学院でも噂になるくらいの変人ではあったけれどアイツらだって学生に過ぎないはずなのに。

 

 

あの時だって、本当はアタシが先輩にケジメをつけて上げなきゃいけなかった……なのに恐怖と混乱で足がすくみ手が震え、泣き叫びたくなったアタシの前に立って先輩を止めたのは他でもないアイツだった。

 

 

先輩を殺した仇だ、なんて最初はやり場の無い怒りと現実を見たくないあまりに無責任な怒りばかりを抱いていたが……アタシはどこまでも自分勝手な人間だった。

 

 

頭では分かっていた。あの時あの場で先輩を止めなきゃアタシや他のみんなまで感染が広がっていただろうし、アイツはアタシらを助けるために動いた。

 

 

そしてアイツと、その相方である男子が合流した時も真っ先にアイツらは殿になってアタシ達を逃がした。二人して何人も人を救って……最後まで戦う姿は映画や漫画の世界の主人公かいってな……。

 

 

だからこそアタシはアイツらが気に入らなかった。

どうしてお前達ばかり、アタシだって……アタシだって強くなりたい。弱いままじゃいけないんだって、守られてるだけじゃ駄目なんだって。

 

 

そしてどうやったら強くなれるのか考えた先の答えが……結局あの二人に頼るしかないという惨めさに押し潰されそうになりながらも何とか教えを請うた。

 

 

最初は木村の奴に頼んだ。だってアイツの方が人に物を教えるの得意そうだし……田所のやつに頼むのは何か気が引けるっていうか……。

 

 

でも結局木村からは断られ、田所に頼めと言われてしまったので恥を忍んで頼んだ、が……やっぱりアイツは面倒臭そうにしていた。

 

 

ずぼらで適当で面倒臭がりなのに、そのくせ見透かしたようにアタシの抱えてることをピンポイントで見抜いてくるのが本当に腹立たしい。図星を突かれたのも事実だけど、アイツの口から先輩の話が出た瞬間。思わず殴り掛かってしまった。あっさりと受け止められたし。

 

 

思わず泣いてしまったアタシを慰めるような事をアイツはしなかった。むしろ突然食堂に連れ込んできたかと思えばいきなり「かかってこい」なんて言いやがる。

 

 

 

完全にナメられてる。

 

 

 

そう感じたアタシは無我夢中で田所の馬鹿野郎に襲い掛かった。何度も何度も振るった攻撃は、まるで雲を殴ってるようにフワフワと手応えもなく次々かわされ、アタシを見るアイツの表情は明らかにこちらを小馬鹿にしたような顔だった。

 

 

むっかつく! ぜってぇ一発入れてギャフンと言わせてやるんだかんな!

 

 

もはや今までの悩みよりも目の前の馬鹿を叩きのめすのが目的に変わっていた気がしないでもないが、それでも一時間粘って一発たりともアタシの攻撃がアイツに擦る事すらなかった。

 

 

悔しくて堪らない。やっぱりこいつは強いんだってわかった。アタシじゃ到底叶わないって……追いかけるどころか……これじゃ絶対……。

 

 

隣を歩くなんて──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

「お、起きたかお転婆娘」

いつの間にか気を失っていたアタシが目を覚ますと、すぐ側で田所の声がした。額に乗せられていた濡れタオルを手に取って上半身を持ち上げる。

 

 

三階の寝室に移動させられており、周囲には他に誰もいない様子だった。少し離れたところで壁に背を預けながら本を読む田所の姿。今更だがアイツのあの外見で本を読むっていう行動があたりにもミスマッチな気がするのはアタシだけだろうか。

 

 

「体力のキャパシティを大幅に超えた過労だとよ、アホめ。ちったぁ加減を考えねェか」

溜め息を吐きながらスポーツ飲料を投げ渡してくる。取りこぼしそうになりながらも何とか受け止めキャップを外し一気に飲み干す。キンキンに冷えてはいない半端な温度なのが逆に喉へ流れる快感を増しごくごくと丸々一本を一口で飲み干してしまった。

 

 

「ぷはっ……!」

 

 

「ほれ、これも」

そう言って投げ渡してきたのは塩飴。「汗掻きまくったんだから塩分取っとけ」と言われる。そんなに汗だくになったのか? と体を確認した所で思考が停止する。

 

 

あれ……なんでアタシ寝間着……制服来てたはず……?

 

 

汗掻きまくった、寝間着に着替えさせられている……。

 

 

っ────!!?

 

 

「おまっ!」

 

 

「安心しろ、拭いたのも着替えさせたのも女連中だ。オレがそこまでするわけねェだろ面倒くせぇ」

顔が火照り、一瞬あり得ない場面を想像してしまったアタシだったが空かさず田所から指摘される。くっ……アタシとしたことが。普通に考えりゃ当たり前の事なのに何でよりにもよって……!

 

 

「そもそもオレぁお前みたいな貧相な体ぁあっぶぇ!!? テメェ! なぁにしてんだよぉ!」

失礼な事を抜かした馬鹿に空のペットボトルを投げつける。悪かったな貧相な体で! どうせりーさんやめぐねえみたいにスタイル良くねぇーですよーだ。

 

 

くっそぉ、何でこいつに対してこんなにイライラするんだ。

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「……で?」

 

 

「はぁ?」

少し静寂が流れ、仰向けになって天井を眺めていたアタシに田所が不機嫌そうに声を掛けてくる。

 

 

「お前、まだ『強くなりたい』って思ってンのか?」

田所の問いに、アタシは少し考える。自分は本当に強くなりたいのだろうか、強くなってどうしたいのか……。アタシは……。……アタシは──。

 

 

「強く……なりたい」

ほぼ無意識、小さく口から漏れた呟きを聞いた田所は「あっそ」と素っ気なく言うと、少し大きめの袋を投げ渡してきた。盛大に顔面に落ちてきて「わぷ」って変な声が出る。

 

 

袋の中身は……二人が着てるような迷彩色のジャケットに膝や肘を守るパッド。指先が切り取られてるタイプのグローブに……。スパッツ。……スパッツ?

 

 

「なんだよこれ」

 

 

「あァ? なんだよこれじゃねーだろ。約束は約束だ、戦い方を教えろっつったのはオメェだろ」

 

 

「はぁ? アタシ結局一回も攻撃当てれなかったじゃん」

何を言っているんだ、という顔の田所。「お前覚えてねェのか?」と聞かれるが何のことやらさっぱりなアタシは小首を傾げる。

 

 

「オメェ倒れる寸前で受け止めてやった心優しいオレに一発パンチくれやがったんだぞ。まぁあんなもん猫パンチにも及ばない軟弱なヤツだったが一発は一発だ」

 

 

まさか無意識でやってたのか?と呆れた様子の田所。まったく身に覚えがない……。

 

 

「って、う……受け止めた!?」

なんか最後の方で誰かに抱き締められるような感覚があったような気がしたが……ま、まさか!

 

 

「あぁ? なに赤くなってんだよ。ぶっ倒れそうになったから受け止めただけだろ」

 

 

「お前! 乙女の柔肌に触れといてなんだその言い草!」

 

 

「乙女とか草。どこの世界に棍棒振り回して一時間も殴り掛かってくる乙女がいんだよ出直してこい」

 

 

こいつぅ! 言わせておけば!

 

 

「あったま来た! ぜったいぶっ飛ばす!」

掛け布団をひっぺがし、だらけている田所に飛びかかる。不意を突かれた田所だったがやはり身体能力が高いせいか簡単にかわされてしまう。だが様子がおかしい。

 

 

「あっぶね! ちょっちょ待てって! 足が痺れて──」

 

 

「問答無用じゃぁ! 覚悟しろこの野郎!」

 

 

「待て待て待て! 馬鹿お前っそんな格好──」

 

 

「あらあらあら」

ようやく捕まえた田所に覆い被さるように馬乗りになって手を掴み押し倒していると、突然第三者の声が聞こえた。ふと視線を向けると頬に手を当てながら怖い笑みを浮かべるりーさん、顔を赤くしてあわあわしているめぐねえと圭。「プロレスごっこだー」と明後日の方向に思考が飛んでる由紀に「たぶん違うと思うんですけど」と呆れた様子でツッコミを入れる美紀。

 

 

「二人とも仲良さそうだな」

珍しく……というか初めて見るレベルで悪どいニヤケ面をする木村の顔。だがしかしその両手はりーさんの妹で小学生のるーちゃんの両目をしっかりカバーしている。「前が見えない」と小さく頬を膨らませているが……そこまで来てアタシはようやく自分の姿を改めて見る。

 

 

布団で隠れていたためパッと見気付かなかったが寝間着になっていたのは上半身だけで、下半身は下着以外何も履いていなかった。つまりパンツ丸出しで田所に掴みかかって馬乗りになってるアタシは端から見れば……。

 

 

「あ……ああぁ……」

 

 

「胡桃ったら、いつからそんな大胆になったのかしら?」

 

 

 

 

「わぁあああああああああああああああぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

学院に大音量でアタシの悲鳴が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい! 戦い方を教えるっつったのはオレだが! ちょ……話を聞けェ!」

 

 

「うるさいうるさい! 死ね! 今すぐ死ねぇ!」

翌日から、拓三を殺さんとする勢いで追いかけ回す恵飛須沢の姿が頻繁に目撃されるようになったのだった。

 

 

「先輩、あれ止めなくていいんですか?」

俺の隣でナイフの研ぎ方を教わっている直樹が溜め息混じりに訪ねてくる。恵飛須沢程ではないにしろ、直樹も自信の自衛能力をもう少し向上させたいと俺に指南を申し込みに来ていたのだ。

 

 

流石に二人同時にするのはメンド──げふんげふん。面倒臭かったので恵飛須沢の方は拓三に押し付けることにした(ヤケクソ)

 

 

「まぁ大丈夫だろ、アイツが逃げてるうちはまだ遊びの範疇だ」

両手に持ったククリナイフ二本を振り回しながら追いかける姿は般若のそれ。俺はあえて見てみぬ振りを決め込んだ。

 

 

「えぇ……?」

納得行かなそうな直樹の目からハイライトが消えているような気がしたが気にしない。

 

 

今日も平和だ飯が旨いってな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰かこいつ止めろォ!!!」




はい、というわけで何だか人気のあった田所兄貴のメイン回()でした。
土曜から書き初めてクソ遅更新をする間にお気に入り登録が700件を越え、42名もの方に評価点を頂き感謝感激です……ウレシイ……ウレシイ……。

とりあえず野郎二人だけの無双プレイもなんだか味気なかったのでメインキャラの強化を挟んだ日常?パートでした。スコップオンリーで戦わせても良かったんですが、なんとなくドヤ顔ダブルククリナイフというのが頭に浮かんだので。

胡桃とククリって語呂が似てるよね(ごり押し
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