悪鬼†無双   作:市中見廻り組

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覇王との出会い

「覚悟しろ!悪党!」

「お、おい待て嬢ちゃん!俺は敵じゃねー!此奴等の仲間に見えるか!?」

「うん!」

 

 即答であった。少し凹む。

 が、突然現れ突然仲間を斬り殺し突然仲間を吹き飛ばしていた少女と争いだした男。隙だらけだ、盗賊達は一斉に切りかかる。

 

「死ねぇぇぇ!!」

「ちぃ!」

 

 仕方ないのでどちらも相手にする。未だ盗賊が残っている以上少女の得物を破壊するわけには行かないので斬れないが幸い動きは単調だ。盗賊を相手にしながらでも十分かわせる。

 後は盗賊達を──

 

「だらぁぁぁっ!」

「ぬお!?」

 

 相手にすることは出来なかった。さらに現れた黒髪の美女。身の丈はありそうな大剣を振り回し迫ってきた。

 

「無事か!勇敢な少女よ!」

「え……?あ………はいっ!」

「貴様等ぁ!子供一人によってたかって………卑怯というにも生温いわ!」

 

 その瞳は明らかに春菊に向けられていた。春菊ははぁ、とため息をつき雄叫びをあげながら剣を振る女性に対して刀を振る。

 スッと金属のぶつかる音すら響くことなく女性の持っていた大剣が薄く二枚に裂かれる。

 

「な!?」

 

 薄くなったことで根元から折れた剣を見て目を見開く女性。それを好機と見たのか盗賊達が一斉に女性に殺到する。が──

 

「懺斬り!」

 

 その者達は一瞬で細切れにされ地面に肉塊が転がった。

 

「ば、化け物だ!逃げろ!」

「ひいぃ!」

 

 その光景見て残った盗賊達が一斉に逃げ出す。春菊は追わず、女性も武器を失ったから追えず、少女は盗賊を斬り殺した春菊をポカンと見つめる。そういえば先程盗賊達の半数がいきなり斬れた。あれも彼の仕業だったのだろうか?

 

「姉者!無事か!?」

 

 と、そこへ水色の髪をした女性がやってくる。彼女は女生と女性の睨む春菊を交互に見た後ふぅ、と頭を押さえる。

 

「………もしや、姉者に勘違いで襲われたのか?」

「ん?おお、そうだな……さっきの賊どもと勘違いされたみたいでよ」

「勘違いだと!?貴様、どう見ても悪人ではないか!」

「姉者、同意だが人を見かけで判断するな」

「カカ!姉ちゃんもなかなか言ってくれるじゃねーか」

 

 子供ならともかく大人に悪人扱いされても別に気にしない。そもそも江戸の町を歩けば石が飛んでくる毎日を過ごしていたのだ。まあ、やはり子供の反応はかなり傷つくが。

 

「すまない。姉者は猪突猛進でな……」

「気にすんなよ。うちにも似たような馬鹿がいたからな」

 

 カカカと笑う春菊。馬鹿扱いされた女性が何か言おうとした時砂埃が見えてきた。見たところ、馬に乗った軍のようだ。それを見た少女が目を険しくする。

 

「秋蘭、謎の集団とやらはどうしたの?戦闘があったという報告は聞いたのだけど………」

「はっ!逃げ出した数名を追わせております。本拠地はすぐに見つかるかと」

「あ、あなた………」

 

 恐らく上司であろう金髪の少女に報告する水色の髪の女性。

 少女は部下の方向を聞いた後、俯き震える少女に気づく。

 

「お姉さん、もしかして、国の軍隊……っ!?」

「まあ、そうなるが──ぐっ!?」

 

 突如少女は鉄球を振り下ろす。得物を失った女性は咄嗟に避けるが少女は女性を睨みつけながら叫ぶ。

 

「国の軍隊なんか信用できるもんか!ボク達を守ってもくれないクセに税金ばかり持っていて!てやあああああ!」

「……くぅ!」

 

 春菊は少女の言葉を聞き軍隊を眺める。少女の言葉に怒ってはいるが後ろめたさは覚えていない。全員がだ。一人、この中で高い身分であろう少女は申し訳なさとここにはいない誰かに怒りを覚えているようだ。

 

「でええええええええいっ!」

「ぐぅ……!くそ、七星牙狼さえあれば抑えられるモノを!」

「そこまでだ。嬢ちゃん、まずは落ち着けよ」

「…………え?」

 

 女性に迫っていた鉄球は春菊が刀を地面にでもおくような動作で下ろした瞬間左右に裂け、鎖に繋がっていない方が飛んでいく。

 

「………う、嘘……?」

「……………」

 

 その場の誰もが唖然としている。当然だろう、鉄の塊をあっさり切り裂いたのだから。

 

「で、何か言いたいことがあったんじゃねーの?」

「………ええ、感謝するわ」

「……へぇ」

 

 呆けていたが直ぐに正気に戻った。自分の技を見慣れた奴ならともかく所見でここまで早く冷静になれる奴は初めてだ。それも、未だ女らしさが出ていないような年の少女が。

 

「…………何か失礼なことを考えられている気がするわね。それで、貴方の名前は?」

「き、許緒と言います」

 

 金髪の少女の威圧感に当てられたのか、許緒と名乗った少女は完全に金髪の少女が放つ空気に呑まれている。

 

「そう……許緒、ごめんなさい」

「……え?」

「曹操、様……?」

「何と……」

 

 そして金髪の少女がとった行動は、頭を下げた。身分ある者が身元も分からぬ者に、だ。

 

「あ、あの……っ!」

「名乗るのが遅れたわね。私は曹操、山向こうの陳留の街で、刺使をしている者よ」

「山向こうの……?あ……それじゃっ!?ご、ごめんなさいっ!」

 

 聞けば山向こうの刺使は立派な刺使らしく、許緒の村は彼女の管理する土地ではないらしい。故に謝罪する曹操と呼ばれた少女に謝罪する。

 曹操も国が腐敗しているのは刺使である自分が良く知っている。憤るのも当たり前だと言った。

 

(………陳留に、腐敗だぁ?)

 

 ひょっとしたらここは日の本ですら無いのだろうか?

 聞き慣れない名前に、地名、そして国が腐敗しているという事実。日の本とて良くを見たそうとする領主は多々いるだろうが市民の声を聞き蟲奉行所を立てる国だ。国そのものが腐敗しているとはいえない。

 

「だから許緒。あなたの勇気と力、この曹操に貸してくれないかしら?」

「え?ボクの…力を?」

「私はいずれこの大陸の王となる。けれど、今の私の力はあまりに少なすぎるわ。だから、村の皆を守るために振るったあなたの力と勇気。この私に貸して欲しい」

 

 どうやら本当に日の本ではなさそうだ。春菊ガリガリと頭を掻く。日の本で大陸を指す言葉と言えば異国の国が並ぶ日の本などお呼びもつかぬ広大な土地を指す、程度のことは知っている。

 

「……それで、貴方はどうするのかしら?」

「あん?」

「盗賊団の本拠地の場所が解ったの。貴方もこの付近の出身なのでしょう?それに、先程の腕……貴方も力を貸してくれないかしら?」

「悪いなクルクル嬢ちゃん。俺はこの辺の出身じゃねーよ」

「く、クルクル嬢ちゃん!?」

「あんた、曹操様になんて事を……!」

「良いわ………それより、手を貸さないということでいいのかしら?」

「カカカカ!俺の手を借りたいなんて言う奴は小鳥ちゃんと兄ちゃん以来だねぇ………ま」

「………?」

 

 春菊はゲラゲラ笑った後チラリと許緒を見る。許緒は首を傾げて春菊を見返した。

 

「こんなガキが武器を取っちまうほど追い詰めた盗賊ってのは気に入らねー。良いぜ、潰すの手伝ってやるよ。もとより俺は、市民を守るのが仕事だからな」

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