ガールズ&パンツァー~黒森峰からやってきた狼~   作:疾風海軍陸戦隊

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個性は人それぞれ

あれから翌日俺は信じられないものを見た。それは一昨日のうちに修理が終わっているのにも驚いたのだが、何より驚いたのは戦車の塗装が変わっていた。Ⅳ号の塗装は変わっていなかったのだが、八九式はバレー部募集っと書かれたスローガンが書かれていて、三突は赤だの黄色だの青だのカラフルな塗装になっていて極めつけは新選組や海援隊、そして真田六文銭や風林火山の旗が刺さっていた。あれって意味あるのか?三突の長所潰しているように見えるが・・・・そしてM3リーはピンク色。デザートピンクじゃなくて真ピンク色だった・・・・女子ってみんなピンクがいいのか?オレンジじゃダメなの?別にオレンジ色が好きなわけではないが女子っていえばオレンジと考えてしまう自分がいる。なんでだろう?

話を戻そう戦車の塗装で一番目立ったのは38tだった。なぜかというと全体が金ぴか金の金色だったからだ

 

「・・・・ガンダムの百式かよ・・・」

 

ゴージャスというかなんというか・・・・・みほも同じ心境なのか唖然としてその戦車を見ていた。

 

「…かっこいいぜよ」

 

「支配者の風格だな」

 

「ふむ」

 

「私はアフリカ軍団仕様が良かったのだが・・・・」

 

「これですぐ自分の戦車がわかるようになった!」

 

「やっぱピンクだよね~」

 

「かわいい~」

 

と、それぞれ自分の乗る戦車の塗装に満足そうに言う。角谷さんは・・・・

 

「うん。いいね~河嶋。例の件すぐに先方に伝えてくれない?」

 

「はっ。連絡してまいります」

 

そう言い河嶋さんは角谷さんにそう言われその場を後にする。おそらく練習試合の場所が決まったんでダージリンに知らせに行くんだろう。

 

「む~」

 

一方、aチームの武部はまるでフグみたいに頬を膨らませていた。

 

「私たちも色塗り変えればよかったじゃん!」

 

そう言う。まあ気持ちはわからなくはないけどやっぱりピンクはだめでしょ?

 

 

「ああ、38tが! Ⅲ突が! M3や八九式がなにか別の物に~!! あんまりですよね!西住殿!武藤殿!」

 

と、俺とみほにそう呼びかける秋山。まあ、彼女にとって戦車はかけがえのないものだからわかるが・・・

 

「まあ…個性的でいいんじゃない?大戦期もあんな感じの塗装、資料で見たことあるし・・・」

 

旧陸軍の塗装しかり、アメリカの戦闘機のシャークマウスしかり、エーデルワイス号しかり。え?最後のは違う?まあ細かいことは気にするな

 

「武藤殿~」

 

と秋山がそう言うと・・・・

 

「ふふっ、ふふふっ」

 

みほが突然笑いだした。

 

「に、西住殿?」

 

秋山が話しかけてもまだみほは笑い続けている。

 

「どうしたんだ?みほ。そんなにおかしいか?」

 

「うん。だって戦車をこんな風に使うなんて考えられないけど……なんか楽しいね。戦車で楽しいと思ったの初めて!」

 

と、笑って俺たちにそう言った。なんかみほが戦車のことで笑う姿を見たのは小学校以来だな。やっぱ、みほは笑顔が似合うよ。

 

「そう言えば武藤殿の戦車は?」

 

「ああ、パンターならあそこだよ」

 

俺が指さしたところをみほたちが見るとそこには俺たちFチームが乗るパンターGがあって篠原たちが砲弾などを積んでいた。幸いエンジンは完ぺきに直っていた。前回はどうもエンジンの部品の一つが緩んでいたため壊れてしまったそうだが今度は大丈夫そうだ。

 

「あれ?武藤の戦車の色変わってないじゃん」

 

「まあな。いちいち塗装全体塗るのは大変だからな。ただちょっとアレンジをしたがな」

 

「アレンジですか?」

 

五十鈴がそう言うと、みほは何か気づいたのか

 

「あ、パンターの砲塔側面・・・」

 

「本当だ。絵が描かれているあれって狼?」

 

そう、パンターの砲塔の横に黒い狼の絵を描いたのだその狼は今にもとびかかる寸前のポーズをしている

 

「これって・・・・・」

 

「ああ、黒森峰時代に使っていたマーク「黒狼」だよ」

 

そう、あのマークは俺が黒森峰時代につけていた黒狼のマークだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか・・・・わかりました。はい。では、その場所で日曜の10時に・・・」

 

一方その頃聖グロリアーナでは大洗からの場所の報告を聞いていた。そしてダージリンはメモを取りながらそう言い、受話器を置いた。

 

「ダージリン。何か嬉しそうだけど何かあったの?」

 

と黒い大きなリボンを付けた女性がそう言うと

 

「そう言えば日曜日は大洗女子との練習試合でしたけどそれが原因ですか?」

 

と、今度は小柄でダージリンに似た髪型をした少女が訊くとダージリンはにっこりと笑い

 

 

「ええ。そうですわよアッサム。オレンジペコ。久しぶりにリベンジマッチができるのですもの」

 

「はい?リベンジマッチですか?」

 

「大洗に誰か知り合いでもいるのダージリン」

 

「ええ、アッサム。高杉さんがいるの」

 

その言葉を聞いてアッサムは目を丸くし額には小さな汗が出ていた

 

「た、高杉・・・・・高杉ってあの高杉さんですか?」

 

「ええ、でも今は武藤と名字を変えているみたいですけど話声や口調のクセですぐにわかりましたわ」

 

「・・・・なるほどそれならダージリンが楽しみにしているのも頷けるね・・・」

 

と、ダージリンとアッサムはそう納得しあっていたのだが

 

「あ、あの・・・ダージリン様?アッサム様?私はよく知らないんですけど。その高杉さんって有名な方なんですか?」

 

と、オレンジペコがそう訊くと

 

「ペコ。ブラックウルフのことは知っていますわよね?」

 

「え?ブラックウルフ?・・・・・・ああ黒狼のことですか?はい。戦車道界最強の戦車乗りですよね?数倍いる敵を無被弾で倒したり。また強行武力偵察任務が得意なため『ビットマンの西住。カリウスの島田にバルクマンの黒狼」って呼ばれた・・・・」

 

「あら?そんな二つ名ありましたっけ?」

 

「はい。確かに「黒森峰の悪魔」とか「黒狼」とかの名が有名でしたが、私がいた学校ではそう呼ばれていました。」

 

「そうなの・・・・」

 

「はい。それでその黒狼と高杉さん。何の関係が・・・・・まさか」

 

と、ペコがそう言いうと自分でも気づいたのかダージリンの顔を見る

 

「ええ、そうよペコ。その高杉さんがあの黒狼なのよ」

 

「え!?でもその人は3年前に死んだって聞きましたが・・・」

 

「彼はぴんぴんしているわよ。死んだっていうのはただの根も葉もないただの噂。ただちょっと事情があって戦車道界から消えただけですわ」

 

「そうですか…‥‥あれ?彼?」

 

と、ペコは何か違和感を感じている中ダージリンは窓の外を見て微笑みながら紅茶を飲むのだった。

 

 

 

 

 

「今日の訓練ご苦労だった」

 

『お疲れさまでした!!』

 

戦車道の練習も終わり空も茜色の中俺たちは生徒会三人組の前に立ち練習の終わりの挨拶をした。それにしても俺ぼチームとみほ以外のみんな初めての練習のためか疲れた顔をしていた。すると

 

「え~、急ではあるが、今度の日曜日に練習試合を行う事になった、相手は聖グロリアーナ女学院!!」

 

河嶋さんの言葉にみんな騒ぎ出す。すると秋山は何やら難しい顔をしていた。まあ、秋山は戦車はおろか戦車道も好きだから相手の実力のことを知っているのだろう。

 

「どうしたの?」

 

「聖グロリアーナ女学院は全国大会で準優勝したことがある強豪です……」

 

「準優勝!?」

 

と、武部たちが驚いている中

 

「聖グロリアーナか・・・中学時代の試合を思い出すわね・・・・・」

 

「聖グロリアーナ・・・・中学の時、私のチハがあいつらのスチュアートに・・・・・これは絶好の機会、絶対にリベンジしてやるわ・・・」

 

と、篠原はそう言い、服部に関しては何か因縁があるのか少し怖いくらいの笑みをしていた。そう言えば服部って知波単中等部出身だって言ってたっけ・・・・

 

「場所は近日寄る港・・・・大洗町で日曜日の10時に試合開始のため朝六時に学校に集合!」

 

場所は大洗町に決まったのか。それにしても朝6時か・・・・まあ、黒森峰の時は試合開始前のウォーミングアップとかするから集合は朝の5時集合だったもんな・・・・あれに比べればまだましだ・・・・・だが、河島さんの言葉に絶望する人がいた。それは

 

 

「……やめる」

 

「はい?」

 

「やっぱり戦車道やめる」

 

「もうですか!?」

 

「麻子は朝が弱いんだよ……」

 

そう、冷泉だ。たまに朝、冷泉と会っているからわかるが、冷泉は俺と同じ朝に弱い。朝の弱い人間にとって今の言葉は死刑宣告と同じだ。すると冷泉は夕日に向かい帰ろうとしていくそれを見たみほたちが追いかける。

 

「ま、待ってください!」

 

「六時は無理だ!」

 

「モーニングコールさせていただきます!」

 

「家までお迎えに行かせてもらいますから」

 

「朝だぞ? 朝六時に……人間が起きれるか!?」

 

と、冷泉が真剣な顔でそう言う。だが

 

「いえ、六時集合ですから起きるのは五時ぐらいじゃないと……」

 

秋山それは今言わなくていいだろ?秋山のその言葉に冷泉は倒れそうになるがすぐさま体制を立てて

 

「人には出来ることと出来ないことがある! 短い間だったが世話になった!」

 

そう言い冷泉は立ち去ろうとした

 

「冷泉・・・・お前それでいいのか?」

 

「なに?」

 

俺の言葉に冷泉が振り返る。

 

「別にお前の決めたことに干渉する気はないがお前はそれで後悔しないのか?昨日マーケットでみほたちに借りを…恩を返すために入ったんだよな?恩を返さずお前は戦車道辞める気か?」

 

「うっ・・・・」

 

その言葉に冷泉が立ち止まる。その顔は気まずそうな後ろ暗そうな顔だった。律儀な人間にとって約束を破るというのは耐えがたくそして後悔の残ることだ。

 

「武藤の言う通りだよ!それに麻子がいなくなったら誰が運転するのよ! それにいいの?単位!!」

 

武部の言葉に冷泉はさらに顔を強張る。

 

「このままじゃ進級できないよ!? 私たちのこと先輩って呼ぶようになっちゃうから! 私のこと沙織先輩って言ってみ!!」

 

「うっ・・・・さ、さ・お・り・・・せん・・・」

 

と苦しそうに言う冷泉。それを見て武部は深くため息をつき

 

「それにさ、ちゃんと卒業しないとおばあちゃん物凄く怒るよ?」

 

「おばぁ!?」

 

とその言葉で冷泉の強張った顔は完全に崩れ去り、恐怖する顔に変わった。おばあって冷泉のおばあさんか・・・・冷泉が言うにはその律義さもおばあさんに口酸っぱくして教えられたためそうなったとか・・・・冷泉はしばらく考えた後・・・

 

「・・・・わかった・・・・やる」

 

と、冷泉はしぶしぶ了承するのだった。

 

「安心しろ。試合の日には武部たちと一緒に俺も起こしに行くから」

 

「・・・・・す、すまない・・・・武藤さん」

 

こうして冷泉の戦車道脱退は防げたのだった。

 

 

 

 

義弘は生存させる?

  • 生存しない
  • 生存させる
  • 生存するが長くは持たない
  • 死ぬが転生する
  • どっちでもいい

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