ガールズ&パンツァー~黒森峰からやってきた狼~   作:疾風海軍陸戦隊

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新たな門出です

あの後、みんなはショックで倒れた五十鈴さんのお母さんを自宅へと運び、いまみんなその家の客間で座って待っていた。それにしても五十鈴さんって言葉遣いもそうなんだが家もまさにお嬢様っというような豪華な家だった。俺はあまりの豪華さにあたりをきょろきょろと見ていて、みほは掛け軸とともに置いてある生け花を見ていた。

 

「すいません、私が口を滑らせたばっかりに・・・」

 

と、秋山が申し訳なさそうに言うと五十鈴さんは首を横に振り

 

「いいえ。秋山さんのせいではありません。わたくしがちゃんと母に話してなかったのがいけないんです」

 

と、秋山にそう言うと五十鈴さんは何か思いつめたような顔をする。すると襖から奉公人の新三郎さんが入って来た。

 

「お嬢、奥様が目を覚まされました。……お話があるそうです」

 

と、新三郎さんが言うが五十鈴さんは首を振って

 

「わたくし、もう戻らないと……」

 

「ですがお嬢!」

 

「お母さまには申し訳ないけれど・・・・・」 

 

「お嬢・・・・差し出がましい事を申しますが、お嬢の気持ちは…………ちゃんと奥様に伝えた方が、よろしいと思うのです!」

 

新三郎さんは真剣な目で五十鈴さんにそう言うが五十鈴さんはどうすればよいのか悩んでいた。

 

「五十鈴さん。俺も新三郎さんの言う通りだと思うぞ」

 

「武藤さん・・・・・」

 

「五十鈴さん。こういう時はお母さんとしっかり話し合うべきだよ。人って言うのは不器用な生き物だ。言いたいことを言えなければ今後もなかなか言えなくなる。そしてそれは人との関係に深い溝ができてしまう。五十鈴さん。あんたこのままお母さんと本音をぶつけないでそのまま帰って後悔しないのか?」

 

俺はじっと五十鈴さんの目を見る。すると五十鈴さんはふっと笑い

 

「そうですね・・・・確かに武藤さんの言う通りかもしれません。わかりました。わたくしお母さまのところに行って話してきます」

 

そう言い五十鈴さんは新三郎さんのところに行きお母さんと話をするべく部屋に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「いいのかな?」

 

「偵察よ、偵察!」

 

今現在俺たちは五十鈴さんのお母さんがいる部屋の襖の前にいた。理由は五十鈴さんのことが心配なのが一番の理由だ。さてさて襖の向こうでは一体、どんな会話をされているのか。俺はそっと聞き耳を立てるのであった。一方、部屋の中ではというと・・・・

 

「申し訳ありません……」

 

「どうしたの?華道が嫌になったの?」

 

「そんなことは……」

 

「じゃあ、なにか不満でも?」

 

「そうじゃないんです……」

 

「だったらどうして!?」

 

「わたくし活けても活けても……なにかが、足りない気がするんです」

 

「そんなことないわ、あなたの花は可憐で清楚、五十鈴流そのものよ」

 

「でも、わたくしはもっと、力強い花を活けたいんです……!」

 

と、その時、襖の外で聞いていた俺は五十鈴さんの本音…彼女の強い意志を聞いた。力強い花っか・・・・なるほどな・・・・するとその言葉を聞いてまたショックを受けたのか五十鈴さんのお母さんはまた倒れそうになる

 

「あぁ……」

 

「お母さま!?」

 

五十鈴さんは驚くがお母さんは何とか耐えるそして悲しい声で

 

「素直で優しいあなたはどこへ行ってしまったの? これも戦車道の所為なの? 戦車なんて・・・・ただ野蛮で不格好でうるさいだけじゃない!……戦車なんて・・・・戦車なんて全部、鉄くずになってしまえばいいんだわ!」

 

「て、鉄くず#!」

 

「落ち着け。秋山」

 

俺は戦車が鉄くずだと聞いて眉間に青筋を立てる秋山を落ち着かせた。確かに戦車好きにとってはその言葉は聞き捨てならない言葉なのだろう。だが俺にはその言葉の中に何かの感情があると感じた。なんていうか、ただ単に戦車が嫌いとかそう言うのではなく昔戦車を通じて何か辛いことがあった。そう言うような感情が入り混じった声にも聞こえた。

 

「……ごめんなさいお母様。でもわたくし……戦車道はやめません!」

 

と、五十鈴さんは強い信念を持った目でお母さんにそう言うと五十鈴さんのお母さんの目の色が変わった。そして・・・・

 

「わかりました。だったらうちの敷居を跨がないで頂戴」

 

と、彼女勘当宣言をした。

 

「奥様、それは……!」

 

「新三郎はお黙り!」

 

新三郎さんが何か言おうとしたがいす五十鈴さんのお母さんにぴしゃりと言われ黙ってしまう。襖の向こうでみほたちがいきなりのことに慌てている。

 

「(このままじゃだめだな・・・・)」

 

そう思い俺はゆっくりと立ち上がり、そして襖をあけて部屋に入る

 

「よ、義弘君?」

 

「む、武藤殿!?」

 

「ちょ!?何してるの!?」

 

みほたちは俺のいきなりの行動に驚くがそんなのを気にせず俺は歩き始める

 

「む、武藤さん!?」

 

五十鈴さんが驚く中俺はかまわず、ずんずんと五十鈴さんのお母さんの前に出る。

 

「あ、あなたは・・・・・」

 

いきなりのことに五十鈴さんのお母さんは驚く。そして俺はゆっくりと腰を下ろし正座する

 

「母娘の大事な話、いきなりの乱入して申し訳ございません。ただ今の話に納得がいかなかったのであえて首を突っ込ませていただきます。一つお聞きします。今の言葉は母親としての言葉ですか?それとも華道家元としての言葉ですか?」

 

「そ、それは・・・・」

 

「確かに家元として厳しく言わなければならない時があります。それも家元の娘が相手ならなおさらです。ですがそれは家元としての話。なら母親であるあなたの言葉はなんですか?五十鈴さんの華道は母娘の縁を切るほどそんなにいけないことなのですか?」

 

「で、ですが五十鈴流の華道は・・・・」

 

「五十鈴流華道の歴史は正直言って私にはよくわかりません。ただ、・・・五十鈴さんは・・・彼女はその歴史っという古木に新たな花を咲かせようとしているのです。今までとは違う新しい花をね・・・・・もう一度言います。今の言葉は母親としての言葉ですか?それとも華道家元としての言葉ですか?」

 

俺の言葉に五十鈴さんのお母さんはじっと俺の顔を見る。すると

 

「あなた名は?」

 

「・・・・・武藤義弘」

 

と、俺が名乗ると五十鈴さんのお母さんはしばらく黙っていたのだが、五十鈴さんの方へ顔を向けて

 

「華さん。どうやらいい殿方と出会ったようですね」

 

「え?」

 

お母さんの言葉に五十鈴さんは少し驚きそしてお母さんは体を動かしそして彼女に向き合うと

 

「華さん。さっきの言葉取り消すつもりはありません。どうしても敷居を跨ぎたいっとおっしゃるのならあなたの言う道を探し歩みなさい。そしてその道を見つけ奇麗な花を咲かせることができたら帰ってきなさい。私は貴女がそれを出来る日をずっと待っていますよ」

 

「お母さま・・・・」

 

と優しい笑みをし、そして五十鈴さんは目に涙をためていた。その後、五十鈴さんはお母さんに一礼して部屋を出る。俺の彼女を追うように部屋を出ようとすると

 

「ちょっとお待ちになってくださる?」

 

と、五十鈴さんのお母さんに呼び止められた。

 

「少しだけよろしいですか?」

 

「え?あ、はい・・・」

 

俺はそう言い、俺は五十鈴さんたちを先に玄関に行くように言いその部屋に残った。

 

「なんですか?」

 

「あなた・・・・・たしか武藤さんでしたっけ?つかぬことを訊きますがあなたのお母さんの名前ってもしかして高杉翔子ではないのですか?」

 

「っ!?」

 

俺はその名を聞いて驚く。なんで母の名を知っているんだ?

 

「・・・・・・・はい」

 

俺はただ返事をするしかできなかった

 

「そう・・・その顔。翔子さんに似ていたからもしかしたらっと思っていたのですがやはりそうでしたか・・・・で、翔子さんはお元気かしら?」

 

と、五十鈴さんのお母さんはどこか懐かしむ顔でそう訊く。しかし・・・・

 

「私の母、高杉翔子は・・・・・・・・俺を産んで3か月後に病にかかって亡くなりました・・・・・」

 

その言葉を聞いて五十鈴さんのお母さんは驚いた顔をする。

 

「そうですか・・・・翔子さんが・・・」

 

俺の言葉を聞いて五十鈴のお母さんは悲しい顔をした

 

「あ、あの・・・・母をご存じなのですか?」

 

俺がそう言うと五十鈴さんのお母さんは頷き

 

「・・・・・ええ。彼女とは私と同じ高校の同級生であり親友でした。明るく元気で…そして彼女は大の戦車好きでした・・・・・」

 

そう言うと五十鈴さんのお母さんはその時の思い出を思い出したのか、ふふっと笑っていた。

 

「そうですか・・・・・」

 

俺がそう言うと五十鈴さんのお母さんは

 

「武藤さん・・・・これも何かの縁です。少し頑固な子だと思うのですがそうか華さんをどうかよろしくお願いします」

 

そう言い頭を下げた。俺は立ち上がり

 

「無論。そのつもりです。ですから娘さんの新たな門出応援してやってください。では俺はこれで・・・・」

 

「はい。陰ながら応援していますわ」

 

そう言い俺は五十鈴さんのお母さんに一礼をし部屋を出るのであった。そして部屋を出て玄関につくと、外はもう暗くなっていた。そしてその先には人力車に乗って待っていたみほたちの姿があった。・・・・・もしかしてあれで帰るつもりなのか?そう思い俺はみほたちのほうへと向かいそして・・・・・

 

「いつまでもまっています、お嬢様~!!」

 

と、男涙を流しながら5人乗せた人力車を引っ張り走る新三郎さん。男涙はよかったのだが鼻水がなければかっこよかったのだが・・・・っというよりこの人高校生5人が乗った人力車を走って引っ張るなんてもしかして新三郎さんは見かけによらずかなりの力持ちなのかな?

 

「顔はいいんだけどな・・・・」

 

武部が小声でそう言い、俺たちの乗る人力車はそのまま学園艦が待つ港に向かうのであった。

 

 

 

 

一方、一人残された五十鈴さんのお母さんは自室の棚から一枚の写真を取り出した。その写真には若き日の自分と武藤にそっくりな女性。そして天然パーマな少女と黒髪でどこか眠たそうな目をしている少女に少し目が吊り上がって厳しそうな眼をした髪の長い少女がカーキー色のパンター戦車をバックに写っていた・・・・

 

「新しい門出ですか・・・・・」

 

五十鈴さんのお母さんはその写真を見てふふっと笑うのであった。

 

 

 

義弘は生存させる?

  • 生存しない
  • 生存させる
  • 生存するが長くは持たない
  • 死ぬが転生する
  • どっちでもいい

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