ガールズ&パンツァー~黒森峰からやってきた狼~   作:疾風海軍陸戦隊

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三年前の黒森峰その2です!

「・・・・・・・ちゃんと説明してもらうわよ義弘」

 

エリカは静かにそして力強く俺に言う。そしてその目はどこか怒りや悲しみを含めた目で俺を見ていた

 

「説明って・・・・何を説明するんだよエリカ?」

 

「とぼけないでよ!あんた黒森峰(ここ)を去ってロスマン先生と一緒にドイツに行くんだってね!」

 

「っ!?」

 

俺はエリカの言葉に目を見開く。なぜエリカがそれを知っているんだ?その話はロスマン先生や学園長しか知らないはずなのに・・・・

 

「お、おい・・・・エリカ。その話どこで聞いたんだ?」

 

「さっき学園長に書類を届けるために学園長室へ行ったら部屋の中から、ロスマン先生と学園長の声が聞こえてね。聞けばあんたが三日後にここを去るって言うじゃないのよ」

 

と、エリカがそう言う。そうか・・・・そう言うことか。エリカも盗み聞きするつもりはなかったんだろうが俺がここを去るという言葉を聞いて聞かずにいられなかったんだろう。そう思っているとエリカは

 

「義弘・・・・・なんで、ここを去るのよ・・・・・黒森峰が・・・・・戦車道が・・・・私たちのことが嫌いになったの?」

 

エリカはこぶしを握りわなわなと震わせそういう。そしてその顔は悲しみに満ちていた

 

「違う!そうじゃない!!黒森峰をいや、戦車道を嫌いになるわけないじゃないか!」

 

「じゃあ、なんでみんなに黙ってここを去ろうとするのよ!!私たちのことが信用できないの!?それに幼馴染である私やみほ。それにあんたを弟のように接してあなたを信頼する隊長に黙って!!」

 

「それは・・・・・」

 

エリカの言葉に俺は言葉が出ない。どうするべきかここで言うべきなのか、だが本当のこと言ってあいつらに心配させたくない・・・・そんな葛藤を抱えているとエリカは

 

「・・・・ねえ、義弘。どうしても理由を言ってくれないの?幼馴染である私やみほにも言えないことなの?それほどあなたは私たちのことを信用できないの?」

 

と、そう言われ、俺はエリカの顔を見るとエリカの目には一筋の涙が通ていた。俺はエリカの目を見てそしてため息をつくと

 

「・・・・はぁ・・・・できればこのことは墓場まで持っていくつもりだったんだが仕方がない。わかったよエリカ、わけを話すよ」

 

と、そう言うとエリカは俺の隣に座る

 

「・・・・で、なんで去るのよ義弘。海外留学にしてはロスマン先生も学園長も深刻な話をしていたけど?」

 

と、そう訊くと

 

「・・・・・・・エリカ。実は俺。病持ちなんだよ・・・・それもかなり質の悪い病」

 

「・・・・・え?」

 

俺の言葉にエリカは驚き目を見開く

 

「病気って・・・・・あんた何の病気にかかっているって言うのよ・・・・・あんた見た通り元気そうじゃない。どう見たって病持ちには見えないわよ」

 

と、俺が冗談を言っていると思っているのか。少しふざけて言うが俺の真剣な顔を見てエリカは・・・・

 

「・・・・・まさか、本当なの義弘」

 

と、俺がまじめに言っているのに築きそう訊くと俺は頷くと

 

「・・・・・・・・もしかして癌だとかいうんじゃないわよね?」

 

「・・・・・・・『肺血病』」

 

「肺血病?何それ聞いたことないんだけど?」

 

「ああ、病症的には肺がんや肺結核とかに似たような病で、身体がだんだんと衰弱し血反吐を吐いて死ぬって言う病気みたいなんだけど、実際詳しいことはあまりよく知られていない幻の不治の病って言われている病気みたいなんだ・・・・・」

 

「そんな病あるわけが・・・・」

 

「ある。これは先生や小さい頃祖父ちゃんから聞いた話なんだが事実、俺の母もその肺血病で命を落としたらしい・・・・・」

 

「義弘のお母さんが!?」

 

「ああ・・・・・それで俺がこの病気にかかったのは約半月前だ」

 

と、俺は遠目で空を見る。俺がその病を知ったのは今から半月前の休日。急に胸が苦しくなったと思ったら急に咳が出始めハンカチで口を押えると何かが口かラ何か生暖かいものが流れ、それを見たらそれは自分の血だった。その後、俺は当時、唯一の保護者であった祖父が亡くなり代わりに保護者になってくれていたロスマン先生に連れられ有名な病院に見てもらった結果、その病気は肺血病。そう、かつて俺が幼い頃母の命を奪ったあの病気だ。その病気に自分が母と同じ病に侵されたと聞いた時はショックを受けたのをはっきり覚えている

 

「・・・・・どうにか治すことはできないの義弘」

 

「残念だが日本中の医者を探しても肺血病を直せる医者は一人もいなかった。何せ有るか無いかの正体不明な病気な上、対抗策も見つかっていない幻の病なんだからな・・・・・・」

 

「・・・・それで、ドイツに?」

 

「ああ、なんでもドイツじゃその正体不明の病を研究している病院があるらしい。もしかしたらそこに行けば治せる方法が見つかるかもしれない。そう思って俺はロスマン先生とドイツに行くことになったのさ」

「‥…それで黒森峰を去るていうの義弘・・・・・・」

 

「ああ、俺だって黒森峰を去るのは嫌さ。できることならここにいてみんなと一緒に戦車道をしたい。だが今の体ではそうすることはできない。だから俺はその病を治すために黒森峰を・・・・戦車道を辞めなきゃいけない」

 

「・・・・・・・」

 

エリカは義弘の言葉に黙る。義弘が黒森峰を去らなければいけない理由。それは彼自身が望んだことではなかった。それがわかって少しは安心したのだが、事実を聞いてエリカは複雑な思いを抱いた。

 

「義弘。あなたの病のこと知っている人って私以外に誰がいるの?」

 

「先生と学園長。それと蝶野さんだ。エリカも知っているだろ?」

 

「ええ、幼いことよくみほの家で遊んでくれたあの人でしょ?」

 

「ああ。その蝶野さんだ」

 

「じゃあ、みほは知らないの?」

 

エリカがそう言うと義弘は黙りそして

 

「そのことなんだけどなエリカ。俺が病気にかかっていることやドイツに行くって話、みほたちには内緒にしてくれねえか?」

 

「え?・・・・どうしてよ!みほに内緒ってあんた・・・・」

 

「その方がいいんだ。今、黒森峰は国内無敗の道への軌道に乗ってきていて、今が一番大切な時期なんだ。そんな中、チームメイトの一人が病に倒れ国外へ行ってしまうって知ったら。きっとみんなは心配して集中力を失うかもしれない。だから俺はみほたちにいらない心配かけたくないんだよ・・・・・・」

 

「でも、あんたがいなくなったと知ったら。どの道、同じ結果じゃないの?」

 

「いいや。今の黒森峰は俺無しでも大丈夫だ。それに俺は男だ。戦車道はもともと女子の嗜みのスポーツ。イレギュラーで男である俺が抜けても、大して問題にはならないだろう」

 

そう、俺は男だ。戦車道は本来、女子のスポーツとして知られている。そのスポーツに男性が戦車道をすれば戦車道は女性の嗜みのためのスポーツではなくただの野蛮な戦争ごっこという世間の評判が広がり、戦車道のイメージダウンになる可能性がある。事実、俺は文部省のあのムスカみたいなあの眼鏡に何度もそう言われていたし。いい頃合いだろう

 

「義弘・・・・・本当にあんたはそれでいいの?」

 

と、エリカは静かにそう言うと俺は無言で頷く。するとエリカは

 

「・・・・・・・」また、戻ってくる義弘?」

 

「ああ。当たり前だエリカ。そのためにドイツに行くんだ。ドイツに行ってこの病気を治して、またみんなと一緒に大好きな戦車道をしたいからな・・・・・だからエリカ・・・」

 

「・・・・・・・・わかったわ義弘。その代わり、私もあなたに約束するわ。あなたがいない分、私がみほたちを支えるって・・・・・」

 

「すまないな。こんなわがまま言って・・・・」

 

「いいわ。だって私たち親友でしょ?」

 

「ああ、親友だ今も昔も・・・・・・・さて、そろそろ寮に行こうか。今日はみほと一緒にボコの映画見る約束だったもんな」

 

「ええ、そうね。確か題名は・・・・・・・」

 

「確か。「ボコ・ファイナルウォーズ」だったけ?」

 

「ええ、でも確か前に見たボコの映画の題名って『さらば、ボコよ。おいらは旅立ちます!!』じゃなかったけ?なんでそう同じようなタイトルなのかしら?」

 

「さぁ?まあ、でもいいんじゃないか?面白ければ。それに俺ボコ好きだし」

 

「はぁ~私。あんたとみほとは長い付き合いだけどいまだにボコのどこがおもしろいのかよくわからないわ・・・・・・」

 

「まあまあ、良いじゃないかよ。さて。そろそろ寮に戻るか。みほの奴きっと寮で待っていると思うから」

 

「そうね」

 

と、そう言い俺とエリカは学園を出て寮へ向かおうとするが・・・・・

 

「あ、エリカさん!義弘さん!!」

 

と、寮の近くまで来るとそこで赤星が慌てた感じで走ってやって来た。しかも少し服が汚れていた

 

「小梅?どうしたのよその格好?」

 

「それにどうしたんだそんなに慌てて?」

 

俺とエリカがそう訊くと

 

「た、大変なんです・・・・大変なんです!!」

 

「おい、落ち着けって赤星。どうしたんだ?」

 

と、俺は赤星を落ち着かせながらそう言うと赤星が・・・・

 

「みほさんが・・・・・みほさんが攫われたんです!!」

 

「「っ!?」」

 

赤星の言葉に俺とエリカは驚く。そしてエリカは

 

「みほが攫われたって・・・・・小梅どういうことよ!ちゃんと説明して!」

 

「あ、あの実は・・・・・」

 

エリカの剣幕に赤星は事情を話す。戦車道の練習後。みほは赤星と一緒に寮へ戻ろうとしたのだがその帰り道、不審な男性集団が現れ、二人を連れ去ろうと襲い掛かって来て、みほを連れ去ったのだという。赤星も連れ去られそうになったのだが、みほが庇ったため、なんとか振り切って逃げることができたという

 

「なるほど・・・だから服がボロボロだったのか・・・・」

 

「何のんきに言っているのよ!そんな場合じゃないわよ義弘!小梅、みほを攫った連中、どこに行ったか分からない?」

 

「はい・・・ごめんなさいエリカさん・・・・」

 

「と、とにかく先生・・・・いや、警察に連絡を・・・・・・て、どこに行くのよ義弘?」

 

と、エリカが携帯を取り出し中、義弘はどこかへ行こうとする

 

「ん?何って決まっているだろ?みほを助けに行くんだよ」

 

「え!?でも場所がわからないんでしょ!?」

 

「場所はこの学園艦の・・・・恐らく人目のつきにくい隅あたりだろう。広いだろうが幸い陸と違って学園艦じゃあ、遠くへは逃げられないからな」

 

「そ、それじゃあ、私も」

 

「いいや、エリカと赤星は、すぐに先生や警察を呼べ。事が大きくなったら遅いしな」

 

と、頭を掻きながら義弘がそう言うとエリカは

 

「でも、あんた・・・・・・体が」

 

「今は大丈夫だ安心しろよ。それに別にこれが今生の別れじゃないんだ・・・・・・今はな」

 

義弘は不敵の笑みでエリカにそう言うと走り出したのであった。

 

「え、エリカさん・・・・・・」

 

「と。とにかく今は義弘の言う通り先生や警察に知らせるわよ」

 

「は、はい!」

 

と、そう言う中エリカは義弘が走り去った方角を見て

 

「(無事でいなさいよ。義弘、みほ・・・・・)」

 

と、心でそう呟くのであった。一方、義弘は

 

「みほ!無事でいてくれぇ!!」

 

と叫びながら走るのであった。

 

 

 




義弘の言う肺血病はまったくのオリジナルの病気です

義弘は生存させる?

  • 生存しない
  • 生存させる
  • 生存するが長くは持たない
  • 死ぬが転生する
  • どっちでもいい

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