ガールズ&パンツァー~黒森峰からやってきた狼~ 作:疾風海軍陸戦隊
「え、それでは二回戦に向けての練習を始める!」
河嶋さんが勢いよくそう言う。そうこれから二回戦に向けての練習を始めるところだ。そして車長である俺たちは机の上に集まり、のちに対戦するアンツィオ高校の車両スペックの書かれた
「んで、向こうの装甲はどんな感じ?」
「P40の前面はカバさんチームやオオカミさんチームなら相手の有効距離の外から貫通可能です」
「心得た」
「んじゃあ、ぴよぴよの相手はカバさんチームとオオカミさんチームだね」
「ぴよぴよ?」
「P40のことですか?」
「そうそう、ぴよぴよ」
「ピヨピヨって、もっと他にいいいい方はなかったんですか角谷さん?」
「いいじゃん武藤君、P40よりピヨピヨの方が親しみやすいしそれに可愛いじゃん。んじゃあ、ちょっと敵味方にわかれて練習してみよっか。ぴよぴよ役はどれがいい?」
「P40に比較的近いのはⅣ号かパンターですね」
「じゃあ、あんこうとおおかみがぴよぴよ、アヒルさんがカルロベローチェってことで、で最後にM15/42はだれがやるの?」
すると角谷会長がみほや俺のほうへ顔を向けそう訊くと
「ああ、それなら・・・・・もうそろそろ来るかな?」
そう言い俺は腕時計を見るとどこからか履帯とエンジンの音が鳴り響く
「おっ、来たみたいだな」
そう言ったのと同時に少し丘になっているところからダークグリーンで、砲塔横に特攻服を着てサングラスをかけたキツツキの絵が描かれた快速戦車BT戦車が勢いよく飛び出してきた。そしてその戦車はこちらの方へ猛スピードでスラロームしながら向かってくる
「うわっ!?あぶなっ!?」
「こっちにつっこんでくる!?」
みんなが驚いた瞬間、Btは俺たちの目の前でドリフトをしパンターの横に急停車した
「せ、戦車がドリフトをした・・・・・」
「まったくあいつらは・・・・荒っぽい運転をして・・・・」
「何あれ暴走族!?」
みんながそう言う中BT戦車のハッチが開きそこから三人の生徒が降りてくる。その姿は車長らしき少女はきちんとした身なりだったがその他の二人はしわがあったりネクタイが寄れていたりと、まさしく不良といった感じの服装をしていて、一人は戦闘機乗りが来てそうな茶色のジャケットを着て、もう一人は暴走族が来てそうな特攻服を着ていた
「ちょっと天野、もう少し優しく運転しなよ!危うく人を撥ねるところだったじゃない!」
「うっせーよ。まあ俺も初めての運転で焦っちまったからな。次からは気を付けるよ」
と、小柄な少女二人がそう言う中、車長室からでた少女は篠原の不良集団の副官であるロシア人のエレーナさんだった
「Очень приятно。皆さんお待たせいたしました」
エレーナはにこっと笑い頭を下げるとみほが紹介する
「新しく参加してくれるキツツキさんチームの皆さんです」
「Очень приятно 。始めまして私はエレーナと言います」
「俺は天野アキラ」
「あたいは樋口清。よろしくね」
と、そう挨拶をする。そう、bt戦車に搭乗していたのは篠原の不良仲間であるエレーナさんたちであった。BTが見つかった直後、そう武部や一年生チームが遭難したあの後、エレーナが『この戦車、私が乗る』と言い、そしてエレーナ以下、篠原率いる不良集団の幹部である二人も参加し、キツツキさんチームとして大洗戦車道チームに加わったのだ。因みにキツツキという名をつけたのは紛れもなくみほで、彼女曰く『なんとなくキツツキに似ているから』だそうだ
キツツキさんチームのメンバーが自己紹介をする中、ウサギさんチームが
「なんかやばそう・・・・・」
「暴走族みたい」
「賊だ賊」
「ちょっとみんな聞こえちゃうよ」
山郷たちが小声でそう言う中、梓は注意するがアキラがうさぎさんチームの方をぎろっと睨むように見る。そして
「おい、お前ら!」
「「ひっ!?」」
アキラはぎろっと睨みずんずんとウサギさんたちに近づく、そして睨まれたうさぎさんチームは蛇に睨まれた蛙のように固まっていた。そして彼女たちの前についたアキラはジーと彼女を見るとやがてニヤッと笑い
「おめーら、前にお銀の下っ端連中に絡まれてた連中じゃんかよ~元気か~?」
「え?」
急に笑顔でそう訊かれたうさぎさんたちはきょとんとした顔をすると、樋口が
「あ、本当だ。ほら覚えてる?あたいたちのこと?」
「え?・・・・・・・あ!あの時の!?」
樋口がそう訊くと梓は思い出したのかそう言う。そうこの二人は以前船舶科の不良に絡まれたうさぎさんチームを庇ったメンバーだった
「おう、やっと思い出したか。なああの後またあいつらに絡まれたりしてねえか?」
「は、はい…大丈夫です。あ、あの子の前は助けてくれて、ありがとうございます」
「いいのよ。またあいつらに絡まれたりしたら遠慮なく言ってね。守ってあげるから。ほら、行くよアキラ。練習始まるよ」
「おう、そうだな。じゃあこれから仲間なんだしよろしくなバカヤロ!」
「バ、バカヤロウ?」
「あ、バカヤロウはアキラの口癖だから気にしないで。じゃあね」
そう言い二人はBT戦車に戻っていくと山郷たちは
「なんかいい人そうだね?」
「そうだね~」
「怖そうな顔だけど?」
と、個人個人の感想を言っていると会長が両手を叩き
「さて、挨拶も澄んだことだし、練習始めよっか」
そう言い、二回戦に向けての練習が始まったのであった。そして始まったのはP40とカルロベローチェ、そしてM15/42の役であるアンコウ、オオカミ、アヒル、そしてキツツキが逃げ、残りの車両が追撃するという形になった。アンコウとオオカミはカバこと三突が追いかけ、アヒルこと八九式を追いかけるのは生徒会の乗るカメさんチーム。そしてBTことキツツキを追いかけているのがうさぎさんチームなのだが、btが速すぎて追いつけず、逆に道に迷っていたり八九式が、蛇行運転をしながら亀さんチームに向かって機銃で攻撃しそれに煽られてカメさんチームが隊列から飛び出し、そのまま追いかけ始める。
そして俺とみほのチームは三突に遠距離での射撃方法を教えていた。まあ狙撃のテクニックのほとんどは篠原が教えていたけど、まあ彼女が遠距離射撃の指導なら別に問題とかないだろう。そして八九式を追いかけていた38tはぐるぐると旋回していた。まるで戦闘機の巴戦のようだ。そしてキツツキとウサギの方はいまだに追いかけっこをしてうさぎさんが追いつきそうになっているのだが、やはりBT戦車の方が速くまた引き離されてしまう
『へへ~ん!悔しかったら追い越してみ~』
『ちょっと速すぎですよ~』
そう言いうさぎさんがキツツキを追いかける中、ウサギさんチームの乗るM3は
『また、逃げられちゃった』
『あの戦車速すぎ・・・・』
澤と山郷がそう言うと偶然、八九式と38tが巴戦をしている場へと迷い込んでしまう
『ま~て~!』
『いやです!』
『止めたければ力づくで止めればいいじゃないですか! ……なんちゃって』
『言ったな! こいつ!』
『なにやってんですか? 先輩?』
『バターになっちゃいますよぉ~♪』
ぐるぐる回っている二両にそう言うのであった。そしてその後、練習は続き気が付けば陽が落ち始め空は赤く染まっていた。
「よし! 練習終わり! 解散!」
「「「お疲れさまでした!」」」
河嶋さんの言葉に皆がそう言い解散した。そして俺は一息つき、腰を下ろして汗をぬぐうと
「お疲れさん義弘。はいスポーツドリンク。水分補給は大切よ」
「ああ、ありがとう道子」
そこへ篠原がスポーツドリンクを手に持ち俺のほうへ行き俺にスポーツドリンクを渡すと俺はそれを手に取り礼を言う。するとそこへ服部と小波、そしてキツツキさんチームのメンバーがやってくる
「あ、車長。篠原さん。お疲れ様です」
「武藤先輩お疲れ様です」
「姐さんお疲れ様です」
「お疲れ道子、武藤さん」
小波、静、アキラと清、そしてエレーナが挨拶をすると篠原が
「義弘。今日これから新黒狼メンバーとエレーナたちキツツキさんチームと一緒に私たちのアジトで勝利祈願の食事会をするけどあなたも来る?」
「ああ、もちろんだチームの親睦も大切だしな」
「そっか。じゃあ決まりね」
そう言い、俺は篠原たちと一緒に篠原の不良集団のアジトで食事会をした。その場にいた不良たちも俺や小波たちのことを歓迎してくれて会場は最早どんちゃん騒ぎであった。その様子を見るとまるであの時、秋山と一緒に偵察で見たアンツィオ高校とどこか雰囲気が似ていた。
出た料理もとても美味しく話によるとエレーナさんが作ってくれたものらしい。
「どう?義弘楽しんでいる?」
料理を食べている俺に篠原がそう訊く
「ああ、とても楽しいよ」
「そう。よかったわ。さ、遠慮しないでじゃんじゃん食べてね」
「ああ・・・・ん?」
俺は食事を続けようとしたとき、急に携帯が鳴る。それはポケットから携帯を取り出し宛名を見る
「誰から?」
「ああ、エリカからだ。ごめんちょっと外すよ」
そう言い俺はその場を離れ、人気のないところに出て電話に出る
「もしもし、エリカか?」
『あ、やっと出たわね。元気、義弘?』
「ああ、今のところ元気だよ。それよりもエリカ一回戦突破おめでとう」
『ええ、まあ相手は知波単学園だったから苦労せずに勝てたけどね』
「まさか、あの学校またいつもの突撃か?」
『ええ、3年前と変わらないただ直進するだけの戦法しか使っていなかったわ。少しは戦術も変わって苦戦すると思っていたんだけどね』
「アハハ・・・・で、エリカ。今日電話を掛けた要件はなんだ?」
『そう言えば要件を言っていなかったわね。まあ別に大した要件じゃないけど、みほはどう?向こうの学校で馴染めてる?』
「え?ああ、大丈夫だ心配ないよさっきカフェでも見たろ?いい友人に囲まれて学生生活を楽しんでいるよ」
『そう、それならよかったわ』
「エリカ、そんなに心配なら、本人に直接確かめればいいじゃないかよ」
『うっ・・・・それはそうなんだけど、みほが黒森峰を去る前ちょっとあったから声を掛けようにもかけられなくて・・・・・』
どこか後ろめたい声でそういうエリカ。エリカの奴、さてはみほと口喧嘩でもしたのかな?そう思っているとエリカは咳ばらいをし
『それよりも義弘。次の相手はアンツィオ高校とでしょ?大丈夫?』
「え?ああ、大丈夫だ。そこはみほたちと作戦を・・・・・」
『そうじゃなくてあなたの体のことよ。あなたまだ肺血病治っていないんでしょ?』
心配そうに言う彼女に俺は
「ああ、大丈夫だよ。まあたまに咳とかは出るけどそんなに深刻な発作は起きていないよ」
『そう・・・・でも本当に無茶をするのはやめなさいよ。あなたが倒れて一番悲しむのはみほなんだから』
「ああ、わかっているよエリカ。なるべく激しい戦闘は控えるようにするよ。それじゃあそろそろ切るよ。二回戦頑張れな」
『ええ、そっちも頑張ってね義弘。決勝で会いましょうね』
そう言い俺は電話を切ると、
「さて、戻ってゆっくりと食事会を楽しむ・・・・・・・」
俺がそう言おうとした瞬間、
「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!!」
急に激しい咳が俺を襲い、俺は口を抑えてしゃがみ込む。すると・・・
ビチャッ・・・・
急に手に生暖かい感触がした。俺は抑えていた自分の手を見て
「・・・・・・・どうやらゆっくり食事会をしている暇なさそうだな」
そう小さく呟くのであった
義弘は生存させる?
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生存しない
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生存させる
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生存するが長くは持たない
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死ぬが転生する
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どっちでもいい