ガールズ&パンツァー~黒森峰からやってきた狼~   作:疾風海軍陸戦隊

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紅茶が冷めるまでに・・・・・

プラウダで昔世話になった姉弟子であるカチューシャと再会し、楽しくお茶会をしたのち、俺は今、グロリアーナの学園艦にいる。なぜここにいるかというと、単純に大洗の学園艦の迎えが遅くなるという理由だ。

そこで迎えが来るまでの間、ダージリンさんと一緒にいるのだ

 

「おかえりなさいませ、ダージリン様、お茶の用意は出来てますがいかがしますか?」

 

「いただくわ、あなたも貰うでしょう?」

 

「ええ。いただくよダージリン」

 

「では、何がいいかしら?」

 

「そうだな・・・・・じゃあ、アールグレイで」

 

「アールグレイですか・・・・・・」

 

俺の言葉にダージリンは少し思いつめた顔をする。え?もしかしてアールグレイが嫌いなのか?

 

「すまん。なんか変なこと言っちゃたか?」

 

「いいえ。実は私とアッサムが世話係をしていた方の名前もアールグレイだったのよ」

 

先輩ですか・・・・・どんな方だったんですか?」

 

「才色兼備で家も名家のお嬢様だった方よ、立ち振舞いもお淑やかで…学園内でも有名だったわ。でもその裏では映画の影響を受けて妙なコスプレしたり、時間にルーズで時間通りに来た試しがなかったり、まったく、私やアッサムがどれだけ苦労をかけさせられたか・・・・・」

 

今まで見たこともないような表情で愚痴るダージリン・…それにしてもなんかその人に聞き覚えが・・・・

 

「それにおまけに事あるごとに教育と言って私のスカートをめくって…」

 

「スカート?」

 

「あ…いいえ。なんでもありませんのよ」

 

恥ずかしそうに顔を赤く染めてダージリンさんは言う。お嬢様風で映画の影響を受けてコスプレしかもセクハラまがいなことをする人・・・・・

やっぱりどこかで聞いたことのあるような・・・・・

 

「す、すまんダージリン。失礼でを聞くようで悪いけど、そのアールグレイさんて、金髪の長髪で、そして本名が××××でしたか?」

 

「え?なんであの人の本名を知っているの?もしかして義弘さんあの人のことをご存じなのですの?」

 

ダージリンが驚いた表情で聞くと俺はやっぱりと頭を抱え

 

「ええ。聖グロ出身で、ダージリンさんの言っていた特徴を照らし合わせたらもうあの人しかいませんので。あの人うちの師匠…ロスマン先生の弟子なんですよ‥‥」

 

「え?そうなんですか?」

 

「ええ、俺も数回あったことがあって戦車道について指導されましたが・・・・しかし!それは指導という名のセクハラで、いつもメイド服着せようとしたり、あっちこっち触ったりと酷い目にあいました・・・・」

 

「ご心中お察しします・・・義弘さんのメイド服姿は見てみたいですけど」

 

「ん?何か言いました?」

 

「いいえ。なんでもないわよ義弘さん」

 

そう言い澄ました表情で紅茶を飲む、ダージリンさん。いや聞こえてはいたのだが・・・・もうあの服を着せられるのは勘弁だぞ…いや、ダージリンならやりかねないな・…まあ、拒否するけど

 

「それでどうかしら?プラウダを訪問した感想は?」

 

紅茶を飲みつつそう聞くダージリンに俺は紅茶を少し飲み

 

「久しぶりに姉弟子に会えて嬉しい…と、言いたいところですが、準決勝は苦戦しますね。あの時の表情のカチューシャ姉は本気で相手するっていう顔でしたから・・・・・で、わざわざ準決勝前に俺をプラウダに連れて何か目的でもあったんですか?俺とカチューシャ姉が姉弟弟子というのは知らないはずだったでしょ?」

 

「私はただカチューシャとの約束を守っただけよ、カチューシャにはあなたを紹介するように頼まれていたし、まあ、あなたとカチューシャが知り合いだったとは驚きましたが、しかもかなり仲がよろしいのですね?」

 

「まあ、文字通り姉弟みたいな関係だったからな・・・・・」

 

「そうなんですの・・・・・少しノンナの気持ちがわかる気がしますわね」

 

「え?」

 

「いいや何でもありませんわよ」

 

そう言いまたしても紅茶を飲むダージリン。いったい何回飲んでいるんだ?もしかして朝から晩まで飲んでいるんじゃ・・・・・

俺はそう思い紅茶を飲む

 

「それより・・・・・」

 

「ん?なんですか?」

 

「武藤さん……いま彼女とかいるのかしら?」

 

「ぶふっ!? 」

 

ダージリンさんの言葉の思わず紅茶を吹き出してしまう

 

「ちょっ!?何を言っているんですかダージリン!?」

 

「あら?あなたのことですから、もう彼女がいると思いましたが?それともまた、みほさんと?」

 

ダージリンさんがからかうように言うと俺は軽いため息をつき、紅茶を飲み

 

「いいや‥…俺には彼女はいませんよ。それ以前に俺のようなやつを好きになるようなもの好きなんていませんよ」

 

「あら?私は好きよあなたのこと?」

 

「お戯れを・・・・・それは友人としての意味ですよね?」

 

「さあ?どうでしょうね……そうですか義弘さんは今はフリーなのね‥‥だったら私にもチャンスがあるっということですわね?」

 

とダージリンがなにやらボソボソと独り言を言っている。何を言っているのだろうか?

まあ、それよりも俺は彼女を作る気はない‥‥いや、昔だったら作ろうとは思ってはいたが。今の俺にはそんなのはない。今の俺は肺血病にかかっていつ死んでもおかしくない体だ。

そんな俺が彼女を持って、死んだなら、残された女性はいったいどんな気持ちになるだろうか‥‥そんな気持ちにさせるくらいなら、恋人なんて持たないほうがいい。俺はそう思っていた

 

「それにしても・・・・・紅茶って不思議なものだな」

 

「え?」

 

俺の言葉にダージリンは不思議そうな顔をする

 

「いろんな香りに味まるで人と同じだ。どれも個性がある。そしてこの温もりも。はじめは熱いのに時が経てば冷たくなる。まるで人の人生のようだ・・・・・・・」

 

「義弘さん…あなたは何を言って・・・」

 

「いや、ただ単純にそう思っただけですよ。戦車も紅茶も人も…どれも個性があり、いろんな味を出す。そしていつかは終わりを迎える。ただそう思ってな・・・・」

 

そういう俺にダージリンさんは

 

「義弘さん‥‥まるで年寄りですわよ?」

 

「自分で言うのもあれだが、確かにそうだな。なんでだろうな?」

 

そう言い俺は静かに紅茶を飲む中ダージリンさんは疑問を浮かべた顔をしていた。俺自身もなぜこんな言葉が出たのかは正直言ってわからない。ただ‥‥いや、もうわかりきったことか。俺には時間がないことを・・・・

 

「ダージリン様。武藤さんのお迎えの船が来ました」

 

「あら?そうなんですの?」

 

オレンジペコがやってきて、迎えが来たことを知らせる

 

「それじゃあ、迎えが来たみたいだし、俺はそろそろ行くよ」

 

「あら?もうですの…もう少しお話がしたかったですのに」

 

「まあ、また気が向けば来ますよ。じゃあ、次のお茶会で」

 

少し残念そうに言うダージリンさんに俺はそういい席を立つ。

 

「ええ…またいつでもお待ちしますわ。義弘さん」

 

「ええ。その時を待ってますよ」

 

そう言い俺は、ダージリンと別れ大洗の学園艦へ行く連絡船へと向かうのであった

 

「それにしても・・・・・」

 

「どうしたんですかダージリン様?」

 

ダージリンの言葉にオレンジペコが聞くとダージリンはまた一口紅茶を飲み

 

「いえ、義弘さんがさっき言った言葉・・・・・」

 

「紅茶のことですか?」

 

「ええ・・・・最後に言った彼の言葉・・・・・まるで・・・」

 

そう言いダージリンはさっきの義弘の姿を思い出し

 

「まるで、もうすぐ自分の命が消える‥‥そういうような感じでしたわえ?まあ、私の気のせいだと思うけど・・・・」

 

「はい?」

 

ダージリンの言葉にペコは首を傾げ、ダージリンが再び紅茶を飲もうとしたとき・・・・

 

ピキッ!!

 

「っ!?」

 

その瞬間ダージリンの持っていたカップにひびが入る

 

「こ、これは・・・・・・」

 

ダージリンはカップがひび割れたことに何か不吉な予感がしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が、学園艦に付いたのは夕暮れの時だった。俺は自分の住む寮に向かおうとしたのだが・・・・・

 

「はあ・・・はあ・・・・はあ・・・」

 

息が切れ、まるで心臓が握りつぶされそうな痛みが来る。ダージリンさんやカチュ姉の前では平気なふりをしていたが、先ほどから激しい痛みがずっと続いていたのだ。

そして壁に寄り添い息を切らす俺の額から冷たい汗が流れる。

 

「まずいな・・・・・」

 

俺はそう呟く。もらった薬も効かなくなっている。もうこれはやばいのかもな・・・・・・

 

「あら?あなたは・・・・・・」

 

「え?」

 

急に誰かに声を掛けられ俺は振り向くとそこには長い銀髪を三つ編み?にし前髪は真ん中分けた女性が立っていた

 

「あなた・・・・・高杉君?高杉義弘君?」

 

昔の俺の名前を言う女性。俺にはその人を知っていた

 

「八意先生・・・・・八意永琳先生」

 

その人はかつて俺の肺血病を観てくれた医者である八意永琳先生だった。

 

 

 

 

「まさか、先生が大洗で病院を開いていたなんて驚きです」

 

「ええ。黒森峰や欧州よりもこういった静かなところのほうが落ち着くからね」

 

俺は今永琳先生が営んでいる診療所に入り、そして今先生に自分の体を見てもらっていた

そして永琳先生は俺の鼓動や熱などを測りファイルに書く

 

「先生…俺の体はどうなんですか?」

 

「う~ん・・・・脈拍360・・・血圧400・・・・体温が90近くまであるわね・・・」

 

「マジですか?」

 

え?俺そんなに体の状態が悪いの?いや、危ない状況なのは分かってたけど・・・・てか俺ってどこぞの恒点観測員だったっけ?

 

「冗談よ。そんな状態だったら死んでいるわ」

 

「先生・・・・」

 

「ごめんなさいね。場の雰囲気を和らげようとしたんだけど‥‥やっぱり診察結果を話しても意味はないわね」

 

「・・・すると?」

 

俺の言葉に少しだけ笑っていた永琳先生の顔が変わり、真剣な表情をする

 

「医者としてはっきり言うわ高杉君。あなたはもう長くは生きられない。最悪…春を迎える前にあなたの命は尽きるわ」

 

「っ!?」

 

わかっていたことだが、俺は永琳先生の言葉に衝撃を受けたのだった。

 

義弘は生存させる?

  • 生存しない
  • 生存させる
  • 生存するが長くは持たない
  • 死ぬが転生する
  • どっちでもいい

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