ガールズ&パンツァー~黒森峰からやってきた狼~ 作:疾風海軍陸戦隊
義弘は大洗の街のゲームセンターで迷子の女の子と出会い。そしてその子の親を探すべく町中を歩き回っていた
「そう言えば君の名前、なんていうの?」
「?」
「いや、いつまでも君とかお嬢ちゃんとかだとさ。名前がないと困るだろ?できればでいいんだけど教えてくれないかな?」
「・・・・・」
義弘の言葉に彼女は無言になる。それはそうだ。親を探してもらっているとはいえ、知らない男の人に名を名乗っていいのか悩んでしまうだろう。
「あ、別に無理に名乗らなくてもいいから」
義弘は少し笑って、そう言うと彼女は
「
「え?」
「……………
「島田・・・・なあ、ちょっと変なこと聞いてもいいか?君に・・・・愛里寿ちゃんにお姉さんとかいたか?」
「…ううん。お母さまとお父様だけ・・・・」
「そっか。すまない少し知り合いに似てたから。ごめんね」
そう言い謝る義弘の脳裏にはカンテレを引く流離人、気取りの女性を思い出す。その女性と今いる愛里寿は少し似ていたのだった。
「ああ、そう言えば自己紹介がまだだったな・・・俺は」
「知ってる。武藤義弘お兄ちゃん・・・・昔は高杉義弘って名前で、黒狼と呼ばれて無敵の戦車乗りって言われてた人・・・・・」
「あれ?なんで知ってんの?」
「昔の資料を読んだ・・・・・それに大洗での試合も見た」
「そうか。昔のこと知ってて光栄だ」
と義弘は少し笑うと愛里寿は
「義弘お兄ちゃん。昔も今もすごく強い。たった一両で数十台の戦車相手に撃破されずに勝っていた・・・・・特に戦術や戦法なんかも、だれにも思いつかない戦法ばかり・・・・多分、私のチームとお兄ちゃんが対決したら、たぶん私たちのチーム。一時間も経たずに負ける」
「買い被りだよ。今ではなんも力もないただの戦車乗りさ。それにあれは俺個人でなしえたんじゃない。チームと力を合わせてできたから勝てたんだ」
「チームと力を合わせて?」
「そうだよ。どんなに戦術や力が強い人だってな一人だけじゃできることが限られてしまうもんさ。それに戦車は一台で多くて5人は入る。一人の能力がすごくたってチームワークが取れていなくては強敵には勝てない物さ」
「そうなんだ・・・・・勉強になる」
「そう言えば愛里寿ちゃんはチームとか言っていたけど、愛里寿ちゃんって戦車道チームの隊長してんのか」
「うん……………センチュリオンの車長もしてる」
「ほぉ・・・・センチュリオンか…これまた強豪だな・・・・(センチュリオンって戦後の戦車だが・・・・・もしかして戦時中に作られた試作型のことかな?)」
そう思いながら義弘と愛里寿は町の中を歩くと
「こほっ・・こほっ・・・・」
「お兄ちゃん。大丈夫?苦しいの?」
急に席をし少し苦しそうな表情をする義弘に愛里寿は心配そうに背中をさすりながらそう訊くと
「大丈夫だよ。俺ちょっとせき込みやすい体質でね。愛里寿ちゃんが背中をさすってくれたおかげで少し楽になったよ。ありがと」
「う・・・うん。よかった」
義弘が微笑んでそう言うと愛里寿は少し顔を赤くし顔を下に向けてしまった。
「(ん?どうしたんだろう愛里寿ちゃん?)」
そんな表情に義弘は首をかしげる。すると愛里寿は
「ねえ、義弘お兄ちゃんは何で三年前に戦車道から姿を消したの?」
「え?」
「お兄ちゃん。すごく強い。義弘お兄ちゃんくらいの腕だったら大学選抜に抜擢されてもおかしくらい・・・・でも三年前に突然消えちゃった・・なんでなの?」
と、 そう言って、愛里寿は義弘を見上げる。暫く悩むような仕草を見せる義弘、さすがに愛里寿に自分の持つ肺血病が原因とははっきり言えない。
「ん・・・・そうだな。ちょっとだけ疲れてたのかもしれないな」
「疲れた?」
「ああ、あの時の俺は少々戦車道に打ち込みすぎたむろんそれは悪いことじゃない。でも俺はまだ10代くらいだ。もっと他に何かできるのがあるんじゃないかってね・・・・」
「それで辞めちゃったの戦車道?」
「辞めたというか、ちょっと長い休憩をしてただけかな?」
「それで義弘お兄ちゃんは戦車道以外で何か見つけたの?」
そう言うと義弘は軽く笑って、両手を後頭部に組みながら言った
「全然だめだった。何をしても戦車のことばかり考えちまってな。やっぱり俺には戦車しかないって思ったんだよ。まあ今更気づいたってところかな」
「それで、戦車道をまた始めたの?」
「まあ、そんなところかな?」
義弘が戦車道を辞めたのは肺血病を治すためドイツに行っていたためだ。むろんドイツに行った後、義弘は戦車道以外にもいろんなことを試した。茶道、チェス、芸術など・・・だが、彼はいつも戦車ばかり考えていた。ドイツの病院のベッドにいるとき窓の外に見えたドイツの戦車を見て彼は速く戦車道をしたくてたまらなかった。リハビリとして戦車道の練習に参加したことがあったがそれでも体の具合を考えて、数回程度しかさせてもらえなかった。でも義弘はもっと戦車に乗りたかった。戦車に乗って試合をしたかった
そして義弘は気が付いた。自分には戦車道しかないのだと、
だからなおさら早くこの病気を治したかった・・・・だが、肺血病は治るどころか悪化するばかりで、もしかしたら二度と戦車道をすることができずに命を落とす危険があると診断された
その診断を聞いた義弘は師であり義母であるエディータ・ロスマンに戦車道をしない代わりに日本に戻りたいと頼み、苗字もは母方の名字である高杉から、祖父の名字である武藤と名を変えて今に至るのだ
「(だけど俺は先生の約束破って、戦車道をしている・・・・・そして俺の命も・・・・これも運命ってやつなのかな?)」
「義弘お兄ちゃん?どうしたの?」
「え?いいやなんでもないよ・・・・・・あ、あそこに交番があるからおまわりさんに訊いてみよう。もしかしたら他の交番にお母さんがいて聞いているかもしれないし」
「うん・・・・でも私、大学生なのに情けない」
「え?愛里寿ちゃん。大学生なの?」
「うん。でも飛び級だから、お兄ちゃんよりかは年下」
「はぁ・・・・・まあ、日本にもアメリカと同じ飛び級制度があったんだな・・・・・」
義弘がそう言うと、交番の前で女の人が警官と話をしているのが見えた。すると愛里寿は
「お母様」
「え?」
愛里寿の言葉に義弘は少し驚くとその声が聞こえたのか、女性は、警官との話を止めて愛里寿の方を向いた。
「お母様!」
その女性の顔を視界に捉えた愛里寿は、そのまま女性に飛び込んだ。
「愛里寿!」
飛び込んできた愛里寿を、その女性は受け止め、キツく抱きしめた。
「何処行ってたのよ!心配かけて!」
そう言いつつも、その女性は愛里寿を抱き締めていた。それから警官が愛里寿の母親に話しかけ、その迷子が愛里寿なのかを確認している。
そしてその様子を見た義弘は母娘の二人の様子を見て少し羨ましそうな笑みをすると
「さて・・・・お邪魔虫はここで去るかな」
そう言い、背を向けてその場を去るのだった・・・・・
「それで愛里寿、今まで何処に居たの?」
「ゲームセンター………ボコの縫いぐるみがあったから」
義弘が交番を立ち去り、警官との話を終えた島田家の2人は、帰宅する準備をしていた。愛里寿の母親である島田 千代は椅子の後ろにかけていた上着を取り、愛里寿と話している。
「それで……………そのボコの縫いぐるみはどうしたの?」
「うん、其所に居る義弘お兄ちゃんに……あれ?」
愛里寿は後ろを向いて、千代に義弘を紹介しようとしたが、既に彼は居なくなっていた。
「義弘お兄ちゃん…………何処にいったの?」
愛里寿はそう言いながら、交番の外に出て大通りを見回すが誰もいなかった。そして千代は
「ねえ、愛里寿。義弘って、もしかして高杉義弘君のこと?三年前に黒森峰で活躍していた?」
「うん。今は武藤って名乗っていたけど・・・・・」
千代の言葉に愛里寿は頷いてそう言うと
「翔子の・・・・高杉流の子が・・・・・・立派に成長したのね」
そう言い千代は、友人であった彼女の葬式にいた小さな赤ん坊のことを思い出す。
「・・・・あの子もあの忌まわしい病にかかっていないといいんだけど」
何かを心配するようにそう言う千代に愛里寿は
「お母様?」
「え?ああ、ごめんね愛里寿。そろそろ帰りましょうか。態々ヘリまで飛ばしてきたんだから、あまり長くは待たせられないわ」
そう言われ、愛里寿は義弘にお礼が言えなく残念そうに頷くと、歩き出した千代に続いて交番を後にするのであった。
ヘリポートまで歩いている間、愛里寿は義弘から貰ったボコの縫いぐるみを大事そうに抱き締めており、千代には、義弘と会った時の事や、千代を探すのを手伝ってもらっている時の話について嬉しそうに語っていたのだった。
そして、義弘は路地裏の壁に寄りかかっていた
「くっ・・・またかよ・・・今度は視界がぼやけてきたか・・・・」
額から流れる汗をぬぐい苦しそうに心臓を掴みそう言う彼、そして彼は大洗の街の中をただ一人寂しく歩く。その時彼の背中に黒い靄が見えた。
それはさながら死神が死期が近い彼に付きまとっているかのように・・・・・・
義弘は生存させる?
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生存しない
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生存させる
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生存するが長くは持たない
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死ぬが転生する
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どっちでもいい