ガールズ&パンツァー~黒森峰からやってきた狼~   作:疾風海軍陸戦隊

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寒さに響くカンテレの音

義弘とみほが生徒会に呼ばれているのと同時刻。

熊本県のとある家。

 

『西住』と書かれた表札がある、古い流派の家を思わせる大きな家こそが、みほとまほの実家である。

 

そんな一室にて、黒森峰の制服を着たまほと、黒いスーツ姿の女性が居た。

 

鋭い目や座る姿が凛々しさを醸し出すその女性の名は、西住 しほ。みほとまほの母である。

2人が囲む机の上には、とある新聞紙が広げられていた。

その項目には、この準決勝で、大洗女子学園とプラウダ高校が対決すると言う事が書かれており、両チームの隊長名もが書かれている。

そしてその記事には他にも義弘についてのことが書かれており

その項目には、『三年前に突如消えた最強の戦車乗りが再び現れる!?今後の伝説的な活躍をまた見せるのか!?』

と、書かれていた。

そしてその記事を見たしほは

 

「まほ・・・・・あなたは知っていたの?あの子が未だ、戦車道を続けていると言う事を・・・・・そしてあの子が再び現れたことも・・・・」

 

「はい・・・・」

 

しほのなんも感情のない声に彼女は下を向き静かにそう言うと

 

「西住の看板を背負っているとはいえ、勝手なことばかりをして・・・・それにあの子も三年前にあんなことがあったのに・・・・」

 

「お母様・・・・三年前に義弘がいなくなった理由を知っているんですか?」

 

「・・・・・・」

 

まほの言葉にしほはただ黙る。そして

 

「・・・・・あの子のこと・・・・義弘について話すことはないわ。ただ、みほはこれ以上西住のことしていき恥をさらすことはできないわ。討てば必中、守りは固く、進む姿は乱れ無し。鉄の掟、鋼の心・・・・それが西住流よ。わかっているわね・・・・まほ?」

 

しほがそう言うとうつむいていたまほは顔を上げ

 

「私はお母様と同じで西住流そのものです・・・・・・ですがみほは」

 

「もうこれ以上言わなくていいわ。今度の大洗の試合。私も見に行く・・・・・あの子に西住流の師範として勘当を言い渡すために」

 

と、そう言うと、まほを残してしほは部屋を出るのであった。そして廊下を歩くしほ

 

「(みほが戦車道を再び始めたのはともかく・・・・・まさか高杉流の・・・・翔子の息子まで大洗にいるなんて、何かの運命なのかしら・・・・・)」

 

そう言い彼女は自室に入る。そしてクローゼットを開けると、そこには二着の服が合った。それはしほがかつて学生時代に来ていた黒森峰の制服・・・・そしてもう一つは大洗学園と同じ制服だった。しほはその大洗の制服をそっと撫でると、厳しい表情から少しだけ懐かしさを入り混じった表情になり、そしてしほはクローゼットにあるタンスから一枚の古びた写真を取り出す。その写真は戦車を背にしてピースサインをする5人の少女がいた。その5人のうち一人は若き頃のしほの姿であった

そしてしほは隣に移っている短い黒髪の少女の写真をそっと撫で

 

「・・・・翔子・・・・・なぜあなたは先に逝ってしまったの?」

 

悲しい顔をしてそう言うと、彼女のポケットの携帯が鳴り出す。

そして彼女は携帯を取り出し宛名を見ると少し驚いた顔をした

その宛名の人物はこう書かれていた

 

『エディータ・ロスマン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、戦車倉庫では試合会場が雪上の場所ということになり防寒対策として戦車道の面々はいろいろと準備をしている。

 

「カイロまでいるんですか?」

 

「戦車の中には暖房がないから、できるだけ準備しとかないと」

 

段ボールいっぱいのカイロを見た五十鈴さんはみほにそう言うと、みほは戦車は暖房がないためと答えた。確かにみほの言う通り戦車に空調はおろか暖房が一切ない。しかも鉄でできているためとても寒い。はっきり言って冷凍庫の中に入るようなものだ

 

「道子・・・・」

 

「はいはい」

 

「大鍋と鍋の材料。買っておくか?」

 

「長期戦になると?」

 

「相手は雪上戦の本場の戦車を使うし戦法もそうだ。用意に越したことはないよ」

 

「了解。わかったわ。私の部下に水産科と農業科の奴がいたから、そこから分けてもらうわ」

 

「すまない。頼む」

 

俺と道子が寒さ対策の話をしている中、他のみんなはというと

 

「タイツ二枚重ねにしよっか?」

 

「ネックウォーマーも、したほうがいいよね」

 

「それより、リップ色のついたやつしたほうがよくない?」

 

「準決勝って、ギャラリー多いだろうしね」

 

「チークとかいれちゃう?」

 

楽しそうに話す一年たち

 

「どうだ」

 

そういって時代劇のカツラを装着する左衛門佐。

 

「私はこれだ」

 

月桂樹の冠を被るカエサル。もうカエサルたちにいたっては防寒対策ですらない。

 

「冬の戦いなら、私たちのロシア戦車の活躍ができるわね!」

 

「そうっすねエレーナの姉貴!」

 

「あれ?姉貴、日本語流ちょうになってやしませんか。バカヤロ?」

 

「練習した。それより天野。その特攻服で大丈夫?」

 

「大丈夫だぜ!」

 

BT7の前で話すエレーナ達キツツキさんチーム

 

「あなたたち、メイクは禁止!仮装は禁止!そしてそこ!特攻服も禁止!!」

 

「いちいちうるさいぜよ・・・・」

 

風紀員としてなのかそど子がみんなを注意するとおりょうが嫌そうに言うと

 

「これは授業の一環なのよ!校則は守りなさい!」

 

と、注意するのだが、エルヴィンが彼女の肩を掴み自分の前に振り向かせると

 

「自分の人生は、自分で演出する」

 

「なに言ってるのよ!?それと!!」

 

なぜかドヤ顔でロンメル将軍の名言を言う彼女にそど子は突っ込む。するとそど子は今度は道子の方に行き

 

「あんた、ここでも面倒な騒ぎはしないでよね?」

 

と、そう言う。そど子は道子が不良グループのリーダーってことは知っている。知っているからこそ問題を起こさないように注意するのだったが道子は目を細め

 

「あら?園風紀委員長?また私の部下が面倒なこと起こしたのかしら?この頃は静かだったと思うけど?」

 

と、そう反論すると、そど子は

 

「確かに、あなたがリーダーになってからは問題がかなり減って治安も風紀もよくなったけどけど、船底では・・・・」

 

「船底は船舶不良集団の管轄よ。私が首突っ込んでいいことじゃないわ。船底に関してはお銀に言いなさい。どうしてもというのなら私が伝えておくけど?」

 

「なら、いいわ。あんた成績もいいのに何で不良のリーダーなんかやっているのよ」

 

「たまにはそう言うワルなところもいい者よ。私は予言するわ。あんたもいずれはそう言う傾向になるわ。しかもウサギ小屋の中でキュウリをかじって胡坐をかいているでしょうね」

 

「ならないわよ!!」

 

と、言い争っている間。他のチームでは

 

「今度は結構みんな見に来るみたいですよ」

 

「戦車にバレーボール部員募集って貼っておこうよ!」

 

「いいね!」

 

とバレー部はどうやら部員集めに燃えているようだ。

 

「アンツィオ校に勝ってから、みんな盛り上がってますね!」

 

「クラスのみんなも期待してるし、頑張んないと!」

 

「次は新三郎も母を連れて見に来ると言ってます」

 

と、みんな盛り上がってそう言う。それはいいことだ連戦連勝で士気が上がる。それ自体は言い。だが、それは下手をすれば奈落の底に落ちるきっかけにもなりかねない。

自分たちは勝ち続けるから次もまた勝てる。だが過去の歴史を見る限り、そう言う慢心や油断を起こしたものは決定的な致命傷を起こす。

そうミッドウェーのような・・・・

 

「(ここは言うべきか?・・・・・・いや)」

 

雁に行ったとしてもそれは今の彼女らには伝わらないだろう。この場合は自分自身で身をもって学ばなければならない。

俺の役目は共に戦うこともそうだが、彼女らに戦いのことを教えなければいけない。

それがたとえ嫌われるような結果になっても、教える側は・・・・経験者は未経験者に対しそれをやらなければならない

 

「(とにもかくにも今回の戦いは今まで通りに・・・・・・・っ!?)」

 

俺がそう思ったとき、何か締め付けられるような痛みがし、そして視界が歪んで見えるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、今日の練習を始めます!」

 

みほの言葉に皆は戦車に向かう

 

「やれやれ・・・・あのおかっぱは話が長いわ。お待たせ義弘・・・・・

義弘?」

 

道子はそど子から解放されパンターに向かうと、そこにはパンタに寄り添ってしゃがみ込み荒息を立てて自身の肺を掴む義弘の姿があった

 

「ちょっと大丈夫。義弘?」

 

「あ・・・・ああ。大丈夫だ」

 

と、義弘は道子の顔を見るが、その表情はやつれ青ざめていた

 

「顔色が悪いじゃない。どこか具合でも悪いの?」

 

「大丈夫だ。心配するな」

 

「大丈夫な者か・・・・ちょっとじっとしてろ」

 

そう言い道子は義弘の額に手を乗せる

 

「っ!?熱があるじゃないか!?今日は休め」

 

「大丈夫だ。ちょっとだるいけど・・・・」

 

「アウトだ!早く保健室に行け。みほには私が説明するから」

 

「だが・・・・車長がいないと」

 

「私たちは今回車長がいなくなった時の訓練という形でやるから。もうすぐ準決勝よ。その日にあんたが不在だと大変なのよ。だから早めに休んで体調を回復させなさい」

 

「だが・・・・」

 

「たまには仲間を頼れ。一人で抱え込むのあんたの悪い癖よ」

 

「・・・・わかった。行ってくる」

 

そう言い彼はふらつきながら保健室へと向かうのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・・はあ・・・・はあ・・・・」

 

肺を掴み苦しそうに息をする俺・・・・道子に言われたように俺は雪がかすかに降る中、校庭を歩き保健室に向かっている。だが、俺のこれは風邪なんかじゃない・・・・

俺は胸ポケットにしまってある薬の瓶を出し一錠飲む。しかしあまり効果が見られない

 

「あははは・・・・・・もう。まずいかもしれないな・・・・視界も歪んでまともに見れやしない・・・・・・」

 

呟く俺の耳に何か妙な音が・・・・弦楽器の音色が聞こえてくる。この音色はどこか懐かしい音色だ。その瞬間、俺の意識は途絶えた

 

 

 

 

 

どれくらいたったのか目を覚ますと

 

「おや…目が覚めたかい?」

 

と、女性の声が聞こえ、よく見ると俺は誰かの膝の上に寝ていた。そう誰かが膝枕をしてくれていたのだ。そして俺はその膝枕をしてくれた人物を見ると、胸元の大きな『継』の文字が目立つのでつい目がいってしまうジャージに茶髪のストレートロングヘアーにチューリップハットをかぶった女性が俺を見ていた

 

「やあ・・・・・久しぶりだね。義弘」

 

優しい笑みでそう言う彼女。俺は彼女を知っている

 

「ああ・・・・・お前に会うなんて二度とないと思ったけどな。島田ミカ・・・・」

 

彼女の笑みに俺も笑みで返す。彼女は島田ミカ・・・・・

俺に唯一、戦車道の勝負で黒星を付けた女だ

 

 

義弘は生存させる?

  • 生存しない
  • 生存させる
  • 生存するが長くは持たない
  • 死ぬが転生する
  • どっちでもいい
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