ガールズ&パンツァー~黒森峰からやってきた狼~   作:疾風海軍陸戦隊

86 / 98
新年明けましておめでとうございます!今年もまたよろしくお願いします!!


ところてん作戦です

みほが考案したところ作戦とはこうだ

先ず、偵察に出た2チームからの情報を纏めた結果、プラウダの包囲網には1ヶ所だけ、防御が緩くなっている場所が存在している事が分かったのだ。

だが、それは戦力不足などの理由ではなく、『大洗チームを嵌めるための罠』なのだ。

それからの展開を予測すると、その防御が緩くなっている場所から脱出しようとした場合、別の場所で待機していた予備戦力が駆けつけて攻撃を仕掛けてくる。そうすれば、足止めを喰らっている内に本隊が到着し、再び包囲されると言う結末を辿る。

早めに決着を着けようと、フラッグ車を叩きに向かっても、恐らく同じ結果が待っている事だろう。

そのため、防御が緩くなっているその場所には行かず、敢えて、包囲網の中では最も戦力が集まっている、敵の本隊………………つまり、カチューシャやノンナが居る本陣へと突撃し、それに戸惑っている間に強行突破するのである。

 

その後、大洗側の戦車数輌で敵の気を引いている間に主力が反転して廃村地帯へと舞い戻り、プラウダのフラッグ車を撃破すると言う作戦である。

だが、義弘達の戦車はこの場には無いため、彼等は基本的に独立行動する事になった

 

 

 

 

そして廃村の使途にある丘で待機している義弘のパンターGとエレーナのBT7はいつでも動けるようにエンジンを始動し、みほたちが動くのを待っていた

 

「にしても分厚いところからの包囲網の突破か・・・・さながら『島津の退き口』だな・・・」

 

「それで義弘。プラウダの方はどうかしらね?聞けば冷泉たちの偵察班がプラウダの連中に見つかったって聞いたけど、陣形が変わっている可能性は…」

 

「それはないだろうな・・・・」

 

「なんでかしら?」

 

「あの人の性格上、自分の作戦には絶対な自信を持つ癖があるからな。たとえ偵察されたとしても、自分の作戦が失敗するなんて思わないだろうな。きっと今頃『用意周到且つ偉大なカチューシャ作戦が失敗するはずがない!』とか言っているんだろうよ」

 

「なんか、言いそうね?」

 

「だろ?」

 

義弘と篠原はカチューシャが自身の作戦が見事成功することに自信を持って笑っている姿を想像する。実際カチューシャは自分の作戦が失敗することなんてありえないと思っていた。その自信家ぶりに彼女の指導をしたエディータ・ロスマンからも「威勢がいいのは長所だが、その自信家ぶりゆえに不注意が多い」と耳にタコができるほど注意されていた

 

「ゴホッ!!ゴホッ!!」

 

義弘が急に激しい咳をし始めそれを見た道子が

 

「ちょっと義弘。さっきより咳がひどくなっているわよ?

 

「だ・・・大丈夫だ」

 

「大丈夫なもんか!以前も様子がおかしかったし、もしかして肺をやられているんじゃないわよね?」

 

道子が、心配そうに言う。アンツィオ戦以来、どこか義弘の様子がおかしかったのを見て、道子はもしかしたら何か悪い病気にでもかかっているんじゃないかと思っていたからだ。

 

「だ、大丈夫だよ。まあこの寒さでちょっと風邪気味かな?」

 

義弘が軽く笑ってそう言うが、道子は

 

「・・・・試合終わったら、病院に行った方がいいわよ?あんたの大丈夫はなんか信用ならないわ…三年前、私たちの前から消えるときもその笑顔だったわ」

 

「・・・・・・・・」

 

三年前。義弘が黒森峰を去ったときのことだ。あの時も義弘は黒森峰を去る直前、道子たちに今とおんなじ軽く笑っていた

そのことに道子は不安を感じていたのだ

 

「…分かった。試合が終わったら行くよ」

 

「本当ね?」

 

「ああ。だから今は試合に集中しようや」

 

「・・・・わかったわ」

 

そう言い道子は試合に集中することにした。だが彼女の義弘に対する不安は消えなかったのである

 

 

 

 

 

 

 

一方、教会内ではみほたちが「ところてん作戦」を開始しようとしていた

全車両のエンジン音が響く中

 

「西住ちゃん!」

 

「え?」

 

Ⅳ号に乗る西住に角谷が話しかけた

 

「私らをここまで連れてきてくれてありがとね」

 

と、今まで見せたこともない優しい笑みでそう言う角谷すると角谷は

 

「ところで西住ちゃん。訊きたいことがあるんだけど?武藤君についてなんだけど?

 

「義君に?」

 

「うん・・・・彼って何か肺とかの病気みたいなの患ってたりする?」

 

「え?」

 

角谷はみほにそう訊く。あの血で染まったハンカチを見た角谷はもしかしたら義弘が肺を病んでいるんじゃないかと感じ、彼の幼馴染であるみほに訊いたのだ

角谷の言葉にみほは少し驚く。義弘が肺を病んでいる?確かにこの頃義弘顔色が悪いし、元気がなさそうに見えたが・・・・

だが、もし本当なら・・・・

 

「いえ・・・・会長。義君に何かあったんですか?」

 

嫌な予感を感じ、心配してみほが角谷にそう訊くと角谷は首を横に振り

 

「いいや・・・・ちょっと気になっただけ。どうやら私の勘違いみたいだね。変なこと訊いてごめんね」

 

「は・・はい」

 

そう言い、この会話はここで終わりとなった。みほは角谷の言葉に疑問を感じたが、考える時間はなくすぐに作戦開始の時間となった

 

「小山、行くぞ」

 

「はいっ!」

 

角谷が言うと、柚子はゆっくりと38tを前進させ、他の戦車も後に続き、ゆっくりと前進する。

そして、出口が目前に迫った時………………!

 

「突撃!」

 

角谷の掛け声と共に柚子はギアを入れて速度を上げ、教会から勢い良く飛び出す。

その途端、包囲していたプラウダの戦車隊からの集中攻撃が始まる。

容赦ない砲撃に晒されながらも、大洗チームは防御の薄い地点へと向かう

 

 

「フフンっ!やはり其所に向かったわね。流石は私」

 

自分の作戦が成功したと思っているカチューシャは、得意気に自画自賛するが………………

 

「………………ん?」

 

なんと、防御が緩くなっている場所へと向かっていた大洗チームは突然方向転換し、フラッグ車である八九式を隊列の真ん中に配置して守るような陣を組むと、自分達が居る場所………………つまり、一番戦力が集中している場所へと突っ込んできたのだ!

 

「此方!?馬鹿じゃないの彼奴等!?敢えて分厚いトコに向かってくるなんて!!」

 

大洗チームが自分の考えた作戦に乗らず予想外の行動に驚き、そんな事を呟きながら、カチューシャはヘルメットを被る。

その瞬間、今までの仕返しとばかりに大洗からの砲撃が始まる。

 

「このっ!返り討ちよ!」

 

そう叫ぶと、カチューシャは直ぐ様車内に引っ込み、撃ち返す

 

「河嶋、砲手代われ。私がやる」

 

「はっ!」

 

そんな中、角谷は河嶋に、砲手を代われと言い出し、河嶋は席を空けて装填手へと移る。

角谷は砲手の席に座り、スコープを覗く。

 

「やっぱ38tの37mmじゃ、まともに撃ち合っても勝ち目って殆ど無いんだよねぇ~。小山!ちょっと危ないけどギリまで近づいちゃって!」

 

「はい!」

 

角谷の指示を受けた柚子は38tの速度を上げ、向かってくるプラウダの戦車に突っ込んでいった。

 

すると、1輌のT-34/85が砲塔を38tへと向ける。

 

砲身がゆっくり下ろされ、38tへと狙いを定めた時………………ッ!

 

「来るぞ!」

 

その言葉と同時に、柚子は38tを左へ流して砲弾を避け、相手が怯んでいる内に接近すると、角谷が相手の砲塔目掛けて発砲し、行動不能にする。

その隙に、大洗の戦車が次々と向かってくると、プラウダの防衛ラインを突破する。

 

「やったな!後続、何が何でも阻止しなさい!」

 

頭に血が上り冷静さを失ったカチューシャは段々遠ざかっていく大洗の戦車を睨みながら、カチューシャはインカムに向かってそう叫ぶのであった。

 

「前方敵4輌!」

 

Ⅳ号のキューボラから前方を見ていたみほが叫ぶ。

すると、最後尾で後ろの様子を見ていたそど子から通信が入った。

 

『此方は最後尾!後方からも4輌来ています!それ以上かもしれません!』

 

「了解しました。挟まれないよう、10時の方向に転回します!」

 

みほがそう言うと、今度は角谷から通信が入った。

 

『んじゃ、正面の4輌は私等が引き受けたよ!上手くいったら、後で合流するね!西住ちゃんたちはそのまま転回して!』

 

「分かりました、気を付けて!」

 

『あいよ、ソッチもね~!』』

 

そう言いみほたちは展開するが38tは前から来ている4輌目掛けて突っ込んでいき、その様子を、みほは心配そうに見ていた。

 

「T-34/76に85、そしてスターリンか………………固そうで参っちゃうなぁ………………でもゼロ距離ならなんとか出来るかな………………良し、行くぞ!」

 

そう呟きながらも、角谷は自分の相方達に指示を飛ばした。

 

「小山!ねちっこくへばりついて!」

 

「はいっ!」

 

「河嶋!装填は早めにね!」

 

「了解です!」

 

角谷の言葉に二人は返事をし、その言葉を合図に、38tが4輌のプラウダ戦車に襲い掛かった。

1輌のT-34/76が砲撃を仕掛けてくるが、小回りの効く軽戦車ならではの特性を生かして難なく避けると、逆に至近距離からの砲撃を喰らわせて撃破する。

今度はIS-2を標的に定めて引き金を引くものの、自分も相手も動いていたためか、狙いが逸れ、後部のフェンダーに弾かれてしまう。

 

「おっと失敗………………気を取り直してもう一丁!」

 

「はいっ!」

 

すると今度は、他のT-34/76を標的とした角谷に河嶋が次の砲弾を装填し終えた直後、狙いを定めて引き金を引き、片方のマフラーを吹き飛ばす。

 

「よっしゃ、もう一丁!」

 

「はいっ!」

 

「もうイッチョ!!」

 

河嶋が素早く装填を終え、小山が巧みに操縦桿を動かし車体を回転させて相手からの砲撃を避け、そして角谷が次々と攻撃を仕掛けていく。

あるT-34は履帯と転輪を吹き飛ばされ、さらに止めとばかりに砲塔基部に喰らって撃破され、またあるT-34は、両方の履帯と転輪を吹き飛ばされ、悪足掻きとばかりに攻撃するものの、小山の操縦で避けられた後、至近距離からの砲撃を喰らって撃破される。まさに三人の息があってないとできない芸当だった

そして、カメさんチームは、敵戦車4輌中、T-34を2輌撃破したのだ。

 

「よーし、こんなモンで良いだろ、撤収ぅ~♪」

 

「お見事です!」

 

大洗チーム本隊に合流しようと、その場を離れようとした瞬間、突如として横から砲撃を受け、38tは粉々に吹き飛ばされた履帯と転輪の破片をぶちまけながら派手に吹っ飛ばされると、逆さになって動きを止める。

そして底部から、行動不能を示す白旗が飛び出した。

角谷の38tを撃破したのはノンナの乗るT-34/85だった

角谷達は彼女の狙撃により撃破されたのだ。

 

「………………動ける車両は、速やかに合流しなさい」

 

『Да!』

 

ノンナの指示に、生き残っていたプラウダ戦車の車長は返事を返し、本隊に合流しようと動き出すのであった。

だが、プラウダの包囲網を脱出する『ところてん作戦』の第一作戦は大洗チームは無事に包囲網を脱出し、さらに38tの獅子奮迅の活躍により無事に成功したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、これはなかなかね。戦車での格闘戦は義弘の十八番だと思っていたけど。あの38tの乗員いい腕をしているわね」

 

観客席で試合を見ていたロスマンはそう言う

 

「でも、それに比べて、カチューシャは・・・・いつも注意しているのに」

 

と逆にカチューシャの行動に少しため息をつく。包囲網を作るところまではよかったが、自分の作戦に自画自賛し、突破されて頭に血が上ったカチューシャをモニターで見たロスマンは

 

「これは・・・一から修業をさせた方がいいかしらね?・・・・ふふふっ・・・」

 

怖い笑みでそう言うロスマンだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううっ・・・・なんか悪寒が」

 

その時、大洗チームを追っていたカチューシャが急に寒気を感じたことはまた別の話・・・・

義弘は生存させる?

  • 生存しない
  • 生存させる
  • 生存するが長くは持たない
  • 死ぬが転生する
  • どっちでもいい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。