ロリータ・コンプレックスSS   作:茶々

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本編を始める前に、皆様にお願いがあります。
感想板にて、度々本作の感想に加え、ないしは関係なしに「○○を書いて下さい」というリクエストが投稿される事が間々見られますが、重ねて申し上げている通り感想版でのリクエストには答えかねます。また、そういった申し出は一切受け付けておりません。
以前から申し上げている通り、そういった内容は活動報告、またはメッセージ形式でお送り頂く事が望ましく、他の読者の方にもご迷惑にならない形となっていますので、何卒ご了承頂きたく存じます。

今後もこういった行為が続く場合、「感想受付けの制限」や「感想そのものの削除」等の手段に踏み切る事も視野に検討させて頂きます。
皆様におかれましては、「少しの心遣いで」「誰もが楽しく」作品を読めるようにご配慮頂ければ幸いです。

今後とも、私の拙作をご覧頂ければ幸いです。
冒頭から長々と失礼致しました。


それでは、本編をどうぞ。


第十七話 泣いて逃げるかと *前書きにてご報告有り

 

『明日の試合さ、途中から五年生チームのコーチをやってくれない?』

 

ハワイから一時的に帰国した銀河は、息子からそんな事を頼まれた。

聞けば、自分がハワイでバスケを仕込んだミミ率いる五年生チームと、昂が監督を務める六年生チームが試合を行うのだという。

 

帰宅直後のミニゲームでその実力を垣間見せた少女、湊智花とミミの勝負を見てみたいと零した所で、昂が切り出したのがそれである。

 

『別に構わんが……途中から?』

 

そう返すと、昂は強かに笑みを浮かべる。何か考えあっての事なのだろう。

銀河自身、興味をかられた事もあって、一も二もなく了承した。

 

それから試合当日まで、ミミは五年生チームでの猛特訓に励んでいた。

聞けば、男子バスケットボール部のキャプテンとエースが指導に付き、しかもエースの方はミミとの1 on 1で勝った“モノノフ”だという。

 

随分と古風な小学生がいるのだな、と銀河は見当違いな思考を巡らせた。

 

最も、特訓というのは殆どが実際の試合における局面を想定したものらしく、具体的なチームワーク等の部分についてはやっていないのであろう事は、自主練に励むミミの様子から何となく察しがついた。

恐らくは個々人の実力に任せたマンツーマンのプレイスタイルを中心としつつ、攻守の要としてミミを使うのだろう。

 

チームプレーというものが、一朝一夕で身に付くものでない事を肌身と経験でよく知っている銀河の推測は、概ね正しかった。

 

但し、

 

「……これは、なんとまぁ…………」

 

体育館の入り口で試合を眺める銀河は、半笑いのまま頭を掻いた。

 

第一Qの残り時間は2分。

六年生チームと五年生チームの得点は、18‐14。

 

「ノーガードの殴り合いってモンじゃないぞ、これ……」

 

―――オールコート・マンツーマン。

運動量豊富な男子高校生の試合でも中々見られない大激戦が、其処にあった。

 

 

 

 

 

 

「随分と思い切った事を考えたな」

「そうですか?」

 

コート上を駆けまわる女の子達を眺めながら、感慨深そうに昂は呟いた。

不思議そうな声をあげ、しかし視線をコートから離さずに進が疑問符を浮かべると、昂の目は分析する様にコート上の女の子達へと向けられる。

 

「運動量で云えば、女子の方が男子より差は小さい。とはいっても、前半からこれだけ飛ばしたら、後半がきつくなるとは思わなかったのか?」

「気持ちの面で負けているとは全く思いませんでしたから」

 

確かに、と納得しつつ、昂の目は五年生チームへと向けられる。

ボールを持ったかげつと、後ろにゴールを背負った愛莉とが一瞬対峙し、しかし次の瞬間にはかげつがぐんと速度をあげて愛莉を抜きにかかった。

 

「その負けん気を途切れさせない事……その為には、少しでも点差を詰めておく必要がある、か」

「ええ」

「―――けど、それだけじゃないんだろ?」

 

昂が視線を向けながら問うと、進と夏陽は一瞬キョトンとして、しかし間もなく悪戯に成功した子供の様にニヤリと笑みを浮かべた。

その表情を見て、昂の中の予想は確信へと変わった。

 

「クールダウンさせなくていいんですか? 一応、タイムアウトは取れる筈ですけど」

「今日のゲームメイクはみんなに任せてあるからな。俺が特別指示を出す事はないよ」

 

言いつつ、昂の背中を嫌な汗が伝う。

視線を戻せば、コースを塞がれた真帆が苛立たしそうに声を荒げながらコート上を駆けている。

そのコースへと再び立ちはだかる竹中姉妹――パッと見ただけではどっちがどっちだか分からない――に、いよいよ真帆の顔に憎々しげな表情が浮かんだ。

 

「ああん、もうっ!!」

「真帆、ボールこっち!」

 

紗季の声のした方へ我武者羅にボールを放るが、其処には既に雅美が詰めて動きを封じている。

一瞬マークの外れたひなたには、既に椿がカバーに入り、真帆には柊がついて離さない。

 

紗季が素早く視線を巡らせるが、智花にはミミ、愛莉にはかげつがそれぞれマークについており、ボールを奪われる可能性が高い。

 

―――ならば!

 

「ッ!」

「なっ!?」

 

フェイントにつられた雅美を抜いて、自力でシュートレンジまで駆けあがり、ボールを放る。

綺麗な曲線を描いたボールはそのままゴールへと吸い込まれ、これで20‐14。

 

「はぁ……ふぅ…………はぁ……」

 

顔から伝う汗を拭い、乱れた呼吸を整える。

常になく、体力の消耗が激しい。ふと時計を見れば、まだ第一Qは1分近く残っているではないか。

 

「けど……っ!」

 

立ち止まっている暇はない。

相手は全員が全員、全力で攻撃を仕掛け、ボールを奪いにかかっている。少しでも気を抜けば、忽ち点差を詰められてしまう。

 

それだけは、避けなければ……!

 

 

 

 

 

「―――っていう風にあいつは考えるだろうからな。この作戦がそんなに外れるとは思わなかったって訳」

「三沢は元々だけど、ああ見えて永塚も結構短気だし。二人がハイペースになれば、その分ひなたも香椎も動かなくちゃいけなくなる」

「智花は元々、ミミちゃんと全力でぶつかる必要があったから尚の事、っていう事か」

 

二人の考えた“ボールを取らせて点を取る”作戦は、言ってしまえばなんという事はない。自分達よりも相手をより多く動かして、さっさとバテさせてしまおうというものだ。

一見すれば無謀とも思えるオールコート・マンツーマンは、その実一人一人が決めた守備範囲を徹底して守りつつ、誰かが抜かれてもすかさずフォローに立ち回れる様にポジショニングをとるというものだった。

その為に、六年生はパスコースを潰され、狭いコースを自力で駆けあがるしかなくなる。

 

体力の消耗は、実は六年生の方が多いのだ。

 

「マークのフォローとコースカットの徹底……まさかこの短期間で、此処まで仕上げてくるとは思わなかったよ」

「正直、ミミ以外は途中で泣いて逃げるかと思ってたんですけどね」

 

しれっと酷い事を言いながら、進はコート上を駆けまわる五年生達を見た。

六年生程ではないとはいえ、彼女達も相当な量の汗を滴らせ、飛び散らしている。にも関わらず、未だに闘志は聊かも衰える事無く、果敢にボールを奪いにかかっている。

 

その姿勢に、進は羨望を禁じ得なかった。

あんな風に、ただ我武者羅にバスケに打ち込める少女達の姿が――――――“来年も一緒に”バスケが出来る彼女達が、羨ましかった。

 

「進……?」

 

ふと、夏陽は隣に立つ進が、コートではない、何処か遠くを見つめている様に感じて声をかけた。

だがその声に進が反応するより早く、第一Q終了を告げるブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

「あーっ、もうっ! 疲れるなーっ!」

「おー、ひなもへろへろ」

 

給水を取りながら、真帆とひなたが声をあげた。

愛莉は声をあげる余裕もなく、ひたすらに汗を拭い、水を呷る様に飲んでいる。

 

「五年生チーム、思ったよりも手強いわね……」

「うん。でもまだリードしているから、第二Qはこのまま行こう」

 

紗季と智花は給水を取りつつ、大まかな打ち合わせを行っている。

 

それらを見つめながら、昂は宣言した通り特別な指示は出さないまま、しかし脳内では幾つかの作戦をシミュレートしていた。

少なくとも銀河が来るまでは大丈夫だろうとたかをくくっていたのだが、これは予想以上の追い上げである。下手をすれば、第二Qで追いつかれる事も充分に考えられた。

 

しかし、だ。

だからと言って此処で自分が指示を出し、甘やかす事が正しいかと言えばそんな事はない。

 

久しぶりの、こんなにも熱中できる試合が行われているのだ。

この天使達の成長を妨げる事は、お天道様だって許しはしないだろう。

 

だから、昂が口に出来る言葉はただ一つ。

 

「みんな……頑張れ!」

 

昂の言葉に、五人の少女は力強く頷いた。

 

 

 

「うー、アホ真帆が思ったよりもやるなー……」

「ボク達だって頑張ってるのに……」

 

消耗しているのは、五年生も同じだった。

否、元々の実力差を鑑みれば、その差を埋めている集中力の分、疲れを感じるのは彼女達の方が上なのかもしれない。

 

「ごめんなさい……さっきのリバウンドを取っていれば」

「かげつの所為じゃないわよ。次は私がきっちり決めるから」

 

それでも給水の合間にも、ゲーム中の反省と振り返りを行っている。

こうして集中を途切れさせない事の重要性は、夏陽も充分に理解していた。

 

「ススム」

 

と、ミミが何かを決意した様な瞳で進を見やる。

声をかけられた進は暫く考える様な仕草を見せた後、ミミに視線を返した。

 

「―――うん。少し早いけど、仕掛けようか」

Oui(はい)

 

進の言葉に、ミミは力強く頷く。

 

―――と、その進の肩を誰かがポンと叩いた。

 

「なんだなんだ? ひょっとしてもう“アレ”を使うのか?」

「はい?」

 

くるん、と進が顔を向けると、其処には昂を五年ほど成長させて日焼けさせた様な面貌の男性が、何故か室内でも眩しく光る歯を見せながら悪童の様な笑みを浮かべていた。

 

「……どなたですか?」

「ギンガ!」

 

若干警戒気味の進の問い掛けの答えは、ミミの口から喜色と共に齎された。

それと共に、唐突に現れた銀河に誰もが興味を惹かれ、あっという間に試合どころではなくなってしまった。

 

智花の口から「昂さんのお父さん!?」という言葉が出れば六年生が驚いた様に声をあげ、進の隣では夏陽が「あの変態コーチの親父、だと……っ!?」と、少年漫画風に眼を見開いて驚きを露わにしていた。

 

結局、一度ゲームを中断して昂が銀河を紹介する事になり、ずらりと居並ぶ女子小学生達をぐるりと見回して、銀河は快活そうな笑顔と共に口を開いた。

 

「この度、君達五年生の一日監督をやらせて貰う事になりました。よろしく!」

 

―――なにそれ聞いてない。

 

進が胸中で思った事は、図らずも、昂を除くその場の小学生全員の意見を代弁する格好となっていた。

 

 

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