「ねぇ、離れ離れになってもまた満開桜の下で____」
昔幼なじみの女の子に言われたこの言葉は、桜が咲くこの季節になると僕の脳裏にいつも浮かぶ。彼女は、僕にとって初めての友達で、初めての恋人だったんだ。1歳の時、互いの上の兄弟の関係で付き合い始め、仲を深めていった。物心ついた時には、ほぼ毎日のように傍にいた。この子とずっと一緒にいたいと、まだ幼い僕は心の底から強く願った。しかし…
「いきなり…過ぎるよ…」
唐突になんの前触れもなく引っ越す事を申告された、当時5歳だった僕は何も言葉を出せなかった。この場所から、生まれ育った場所から離れるのはたしかに悲しい。けど違う、そんな事で僕は悲しんでいるんじゃない…あの子と、僕の大親友の初恋相手と離れるのが嫌なんだ…その日は月を見ながら部屋で大きなベッドに横になり、ひたすら泣き叫んだ。
次の日、僕は彼女の元へと向かった。両親も、僕の姉も、僕を引き止めずに見送ってくれた。引越しまであと1時間…荷造りも終わって、トラックがそろそろ来るであろう。早く僕は伝えなければならない、彼女に伝えなきゃ__
「…そっか。寂しくなるな〜」
いきなりの事なのに、彼女はなんの動揺もせずあっさりと話を流した。僕は驚いた、後に聞いたのだが彼女は既にこの事を彼女の両親から聞いていたらしい。
「桜、綺麗だね。」
「うん。僕…寂しいよ…」
「あはは、男の子なのにほんと情けないよね。君」
「君と離れ離れなんて僕は…!」
「ねぇ」
僕は絶対に嫌だ、君と一緒にここに残りたいと涙をポロポロ流しながら彼女に伝えようとした時だった。彼女は下を向いて、少し照れた顔をしながら僕の言葉を遮った
「__満開の桜って見たことないよね?」
「そうだね、ここら辺は桜の木が少ないから」
「いつもちょいちょい抜けてる桜の木ばっかり」
「それがどうかしたの…?」
「はい。」
彼女の顔は一変していた。凄い泣き顔で、今にも泣き崩れてしまいそうな顔で、僕に桜のネックレスをくれた。小さい子向けとは思えない、結構高そうなネックレスだった。
「私、君と離れてもこれから桜を見る度君のことを思い出す。」
「僕も…そうするよ」
さっきまでの寂しさや不安が全て温かい何かに包まれた気がした。自然と僕は彼女との別れを惜しまなくなっていた。いや、彼女とまた会う時の事を凄く楽しみにしていただけかもしれない。
「またいつか会おうね」
「うん、そう遠くはないけど会えたら沢山あっちの事お話するね!」
「期待してる」
泣き崩れそうだった彼女も、いつもの優しく柔らかな笑顔に戻っていた。僕はこの笑顔が好きなんだなぁ…とかそんなことを思いながらいると、彼女はいきなり立ち上がり僕の目の前に立った。
「ねぇ!離れ離れになってもまた満開桜の下で___」
その瞬間強い風と共に沢山の花びらが散った、彼女の笑顔と一緒に…この時、後半何を聞こえているか全く僕には聞き取れなかった。でも僕はこの日確かに決めた、彼女とまた会った時は絶対彼女の理想の男になって彼女を惚れ直してあげるんだと。
こうして僕は生まれたこの場所を彼女の笑顔を思い浮かべながら後にした___
このような趣味で書いたガバガバラブコメ小説を読んでくださりありがとうございます。今回は主人公の柊翔の回想シーンから入りましたが、いかがだったでしょうか?至って普通のラブコメにある、幼なじみとキャッキャッウフフな展開から始まったこのラブコメですが、これからどんどん話を拗らせていくつもりですのでちょっとでも期待してくれるととても嬉しいです。次は気分で更新すると思いますが、うpされた際には少しでも興味を向けてくださると幸いです。どうぞ今後とも「満開桜の下で」を、よろしくお願いします!