魔法科高校の魔術使い   作:快晴

21 / 22
最近エミヤ登場の作品の新規が増えてて嬉しい。
もっと増えてくれ!
そう願いを込めて続きを書きました。

そんなことより
「やっと九校戦終わったのかよ。どんだけ時間かかってんだよ。カスが」

そう思ってる読者の皆様、本当に申し訳ありませんでした。


第21話

九校戦最終日。

行われる競技はモノリス・コードの一種類。

九時から決勝トーナメントの第一試合が開始され十時から第二試合。その後午後の一時より三位決定戦。二時に決勝戦が行われる。

 

試合が終わった後は三時半から表彰式と閉会式。

五時には競技場における九校戦が全て終了し、七時からパーティが開かれる。

 

つまりどういうことかというと。

 

達也の最後の働きで今回の騒動がひとまず終わったことを風間からの連絡で知った士郎に、大量の自由時間ができたということだった。

 

(ちょうど一高の試合が始まる頃か。たしか相手は九校。新人戦と同じ組み合わせとはまた奇妙なこともあるものだ)

 

しかしそんな中、士郎がいるのは試合会場ではなく風間に手配してもらったホテルの一室。

 

もちろん、ここからでもエリカたちと合流して一高の応援をしてもよかったのだが、それ以上に今回の騒動で得た情報を落ち着いて整理したかった。

 

手頃な椅子に腰をおろした士郎はにスラスラと分かっている情報を投影した紙とペンで書き出していく。

 

1:なぜ自分がこの世界に受肉しやって来たのか?

 

A:この世界で行われた聖杯戦争。

それの勝者であるこの世界の言峰綺礼が託した『正義の味方として成長した衛宮士郎ともう一度戦いたい』という願いを聖杯が叶えたため。

受肉はその際にこの世界の衛宮士郎が依代として使用された結果。初めてこの世界に来た時、空中に召喚されていたのは上書きによる弊害。

体内のアヴァロンはこの世界の衛宮士郎が宿していたもの。

 

2:この世界に自分が来たことで起きた影響

 

A:世界の一部が塗り替えられた。

塗り替えられる前の世界の情報を知らないため詳細は不明。ただ少なくとも聖杯戦争が起こった事実が消え、言峰綺礼と衛宮士郎の二人の人間が元とは違うもの替わっている。

 

3:聖杯戦争について

 

A:ほぼ間違いなく行われている。

詳しいルールなどに多少改変はあるだろうが、サーヴァントが確認できている以上、行われていない可能性は低い。現在確認が取れているサーヴァントの傾向を考えると第五次聖杯戦争時のサーヴァントがそのまま召喚されていると思われる。

自身に聖杯からのバックアップがないのは自分の特殊すぎる状態のせい。ランサーやアサシンの言葉から自身のクラスはアーチャーと推測。

ギルガメッシュと被ることになるが色々と規格外のあの男のこと、宝具、または別の方法で現界していると思われる。

 

4:言峰綺礼の目的

 

ここで士郎の手が止まる。

 

『大したことではない。少しばかり動かすだけだよ』

 

(動かす…)

 

言峰が身を置いていた組織のレベルを考えれば、規模としては国単位のなにか。

だがそうすると『少しばかり』の範囲では到底収まらない。

 

(言葉や組織はフェイク?いや、あれは真実に嘘を混ぜるタイプの人間だ。範囲の大きさはそこまで大きくないのは確かだろう……、そうすると組織の方。なぜやつはわざわざ無頭竜なんて国際犯罪のシンジゲートを選んだ?この日本で身を潜めるだけならあれほどの規模に入る必要などない。無頭竜の特徴……国際レベルの組織…あとは…魔法…)

 

無頭竜は魔法を悪用する国際犯罪組織。

この世界で幅を効かせる組織となると魔法が関わってくるのは当然なのだろうが、それ以上に

士郎自身が今、魔法師の世界に身を置いているという事実が引っかかった。

 

(魔法と私で関係が深く、言峰の言う範囲に収まりそうなものか…)

 

答えが浮かび、ため息が出るのを抑え、目を閉じ黙って天井を仰ぐ。

 

確定ではないにしろ可能性は高い。

 

(学校は辞めるつもりだったのだがな)

 

言峰の情報を掴むことは士郎にとって最優先事項。そのためこの九校戦の後はすぐに退学届を出し、店のほうも申し訳ないが閉めて全力で情報収集にあたるつもりだった。だがどうにも予想を大きく超えて自分の問題に巻き込んでしまっていたらしい。

 

(続ける以上、下手に周りに心配をかけるわけにはいかない。店も今まで通りに続けて表面上は何も問題がないようにする必要がある)

 

「……皆には本当に迷惑をかけるな」

 

良くしてくれた友人や先輩、その恩を仇で返すような形になってしまう自分に嫌気がさしながら投影した紙を破棄する。

 

「ひとまず、今回のお詫びとお祝いの品を用意するとしよう」

 

とは言え今日は第一高校にとってはおめでたい日。活躍した友人や先輩に自分なりの心からの賞賛の気持ち用意するために士郎は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

二週間前とはうって変わって、和やかな空気に包まれたホール内。ノーサイドの精神は口で言うほど簡単に実践できるものでなく、若い彼らの心に勝ち負けの拘りがないと言えば嘘になる。

 

だが今は十日間にわたる激闘から解放されたばかり。短くない期間緊張に曝され続けた反動から生徒たちの多くはフレンドリーな精神状態になっていた。

 

ただし、そんな空間の中にも例外というのは存在する。

 

「………」

「………」

 

自分一人いなくても大丈夫。

その軽率な考えと低すぎる自己評価が、今このいたたまれない空気を生み出していた。

 

「士郎のやつ律儀だよな。まだ間に合うからって寺の用事終わらせて戻って来るなんて」

「まあ士郎くんだし。私としてはありがたいんだけどね〜」

「なんか問題あんのか?」

「ありがたいんだけど、あれを見ちゃうとね〜」

 

初日同様に給仕服を見事に着こなす士郎。

そして、その姿に正面からなんとも言えないどこか湿り気のある視線と圧を無言で向ける雫。

 

「蛇に睨まれたカエルってか?」

「士郎くんの場合、カエルというよりかは鷹って感じだけど、まあその通りね。というか、あんたの持ち場は厨房でしょ。サボってないでさっさと戻りなさいよ」

 

エリカとレオのやりとりの一方、その視線と圧を受ける士郎はと言うと、自身が試合を見なかったことが起因となっていることはなんとなく察したものの、本当にそれが理由なのか確信が持てず内心で少し焦っていた。

 

「こほん、雫、ひとまず優勝おめでとう」

 

わざとらしく咳を一つ入れた士郎がお祝いの言葉を雫に送る。

 

「うん」

 

だが返ってきたのは無情にも短い返事。士郎は内心でどうしたものかと悩みながらも活路を見出すために言葉を紡ぐ。

 

「個人戦の結果も聞いたよ。惜しい結果だったが深雪相手にかなりの接戦をしたそうじゃないか」

 

この言葉に少しではあるが雫が反応を見せる。

そしてそれを見逃す士郎ではない。

 

負けた試合の話しを掘り返すのもどうかと思うが、現状を乗り切るための糸口はこれしかないと割り切って話しを続けた。

 

「悪いが私は丁度その時中継を確認できていなくてね。今は無理だが、よければ今度その時の話しを聞かせてくれないか?深雪から話しを聞くのもいいが、いかんせん彼女と私ではあまりにも魔法に対する感覚が違いすぎる。二科生(ウィード)である私に近いというのは失礼ではあるが、魔法を行使する時の感覚について私は雫の方が近いと感じている。こう言った話しは共通点を持つ人間から話を聞いた方が既視感や没入感を得やすい」

 

これを聞いた雫の雰囲気が軽くなる。

 

「うん。分かった。じゃあ都合がいい時にまた連絡する」

 

雫自身、自分が相手に対して理不尽なことをしているという自覚があっただろう。仕事中の士郎を邪魔しないためにも、そう言ってやわらかな微笑みを浮かべた雫は手を振りながら離れて行った。

 

「なんとか一発で修羅場を乗り切ったね。士郎くん」

「見ていたのか。友人なら助け舟の一つでも出して欲しかったんだがな」

「いつもならそうして良かったんだけど…今回はね。雫、士郎くんにも試合を観て欲しかったって残念がってたから」

「そんなにか……」

「相変わらず自己評価が低いね。一科生とかニ科生とか、男とか女とかそういったのを抜きにしても、自分が認めてる人に自分の晴れ姿を観ていて欲しいと思うのは普通のことじゃない?」

 

晴れ姿。

その言葉が今の自分に当てはまるものではないと思う士郎ではあったが、剣の師匠(セイバー)魔術の師匠(遠坂)、そして原点(切嗣)に、こうした自身の認めてる人たちに自分が何かを成そうとしている姿を観て欲しいという、その思いだけは理解できた。

 

「…ああ。確かにそうかもしれないな」

「でしょ?」

 

それだけ言うとエリカは「さて、お仕事お仕事」と言いながら士郎から離れて行く。士郎もそんなエリカを見送った後に自分の仕事に戻る。

 

いつも通りハイレベルに仕事をこなす中、頭の中では雫の話しを聞く時はどういったもてなしをするべきかと考えていた。

 

「そこの給仕さん。飲み物をもらえるかしら」

 

そのまま三十分ほど仕事に勤しんでいると後ろから声をかけられる。

 

「かしこまりました。七草お嬢様」

 

数日前、九校戦前の開会式に言われた同じセリフをしっかり覚えていた士郎は、その時とまったく同じ対応をした。

 

「優勝おめでとうございます」

 

振り返り、グラスを手渡し一息置いたところで祝いの言葉を送ると真由美は笑顔でそれを受け取った。

 

「ありがとう。今は素直にその言葉がとっても嬉しいわ」

 

社交的ではない高校生らしさを交えたその笑顔からは、今言った言葉が嘘偽りのない真実であることが感じられた。

 

「七草会長にとっては三連覇をかけた大事な試合でしたからね」

「それもあるけど、今年はいろいろとトラブルもあったでしょ?だからより一層って感じね。

それと士郎君、前の開会式の時みたいに敬語は使わなくていいわ。今はもっとフランンクにお話ししたい気分だから。」

 

開会式の時と今では注目度も一段と違うだろうにと思いながらも本人の申し出に士郎も素直に従う。

あまり目立たない様ゆっくりと人数が少ない隅の方に移動し、仕事をしている風に装いながら抑えた声で会話を続けた。

 

「そういうことなら素直に従おう。それで、また私を使って休憩かな?」

「ふふっ。お気に召さないかしら?」

「いや、今の会長の話題の事欠かなさは理解している。似たような話しを何度もしていればいくら慣れがあっても疲れは出るだろう。止まり木になるのもやぶさかではない。ただ、どうしてわざわざ私を選んだのか気になってね」

 

当然、士郎はここで「まさか自分のことが⁉︎」などと考えていない。というか、そんな考え出てこない。

 

「聞いたわよ士郎くん。途中でご実家の都合で帰ったのにまた戻ってきたんでしょ?大丈夫だったの?」

「まさか会長の耳にまで入っているとは。気遣い感謝する。確かに私が呼び戻されるくらいの問題ではあったが、本人がいればすぐに解決するものだったのでね。そう心配されるほど大したものではなかったさ」

「そう?それならよかった」

 

この状況で後輩の心配をできる人間性に、流石は十師族にして現生徒会長かと感心していた士郎だが、すぐに考えを改めてさせられる。

 

「ところで、士郎くんが私のことを生徒会長らしくないと思ってるって達也くんから聞いたんだけど、どうしてそう思ってるのかしら?」

「………」

 

笑顔。だが背景が黒い。

 

(絶対こっちが本命だったろ)

 

そう思わずにはいられないくらいには黒かった。

 

「会長、確かに過去、私がそういったことを達也に言ったのは事実だが、それは悪意をもって一部分を切り取っただけに過ぎない」

「へぇ〜」

「私の中で生徒会長とは真面目というイメージが強い。その点で会長より市原先輩の方がしっくりくると思ったんだ。だかららしくない。そう達也に言ったんだ」

「へぇ〜。なら士郎くんには私が真面目じゃないように見えてるんだ〜」

 

(どうして今日はこうも嫌な絡まれ方をする⁉︎)

 

そらあなたが女難EXだからです。

 

「そんなことはない。間違いなく真面目と言われる分類の人間だと私も思う。ただ会長の場合はそれ以上に親しみやすさがある。だからわたしの中で真面目な先輩というより親しみやすい先輩というイメージが強いんだ」

「あら、そんな風に思ってくれてたの?それは嬉しいわね」

「私がいったいどういう風に思っていると考えていたんだ…」

 

想像以上に驚いた表情を見せる真由美に、自分が彼女の中でいったいどういった後輩だと思われているのかと、流石に士郎も不安にならずにはいられなかった。

 

「頼りない先輩?」

「何故疑問符をつける。それにそんな風には思っていない。逆に会長は私のことをいったいなんだと思っているんだ」

「もちろん頼りになる後輩に決まってるじゃない」

 

にっこりとしたいい笑顔で言ってくる真由美。本心なのだろうが割とどうでもいいことまで頼られている気がした士郎は素直に喜ぶことはできなかった。

 

「それは光栄なことだ」

 

パーティに参加する他の生徒からのグラスを受け取りながら、相手にもわかる様に表面上の取り繕った言葉を言うとクスリと七草は笑った。

 

「ところで会長、パーティ後に出場したメンバーを少し集めることは可能か?」

「いったいどうして?」

「勝利の栄光を掴んだ映えあるメンバーに、店の店主からささやかな贈り物を。そう思ってね」

「あら!そういうことなら任せて。元々この後は祝賀会の予定だから。期待してるわ」

「承知した」

 

その後も少しばかり会話を挟んで真由美が人混みに戻っていく頃には、会場内に管弦の音が流れ始めた。

 

ホールの中央でダンスを始める生徒達。

 

(深雪は大変なことになってそうだな)

 

それを見て内心で弟子のことを心配していると、案の定、光に集まる虫の如く、少年たちに群がられる深雪の姿を見つけた。

 

助けるべきか否か。囲んでいる側の少年たちが強引に話しを進めようとしている訳でも深雪本人が特段迷惑そうにしている訳でもなかったため、どうしたものか悩んでいると、壁際にいた達也が深雪の元に歩いていくのが見えた。

 

(あれなら心配ないだろう)

 

そう思っていたのだが、しばらくするとその方向から猛烈に視線を感じる。

 

どういうことかと見てみれば、もじもじと上目遣いで達也を見るほのかを前に、面倒臭いの(エリカ)に絡まれている男の姿があった。

 

(……助けが必要なのは君の方か)

 

真由美の一件もあり無視しても良かったが、あまりにも不毛すぎるやりとりなので士郎は達也の救援要請を受け取った。

 

「何をしてるんだエリカ。もてなす側が今日という日の主役を困らせてどうする」

「いやいや、困らせてなんかないよ士郎くん。

お客様に適切なアドバイスをするのもホール係の仕事だよ?」

「確かにそうだがそういうのはもっとスマートにするものだ。こんな状況でするものじゃない」

「あっ⁉︎ちょっと⁉︎」

 

エリカの背中を押して二人から引き離して遠ざける。

 

「一曲いかがですか。そう言って手を差し出せ。それで十分だ」

 

同時に達也とすれ違いざまに小さな声でアドバイスするのも忘れない。後は本人次第だ。

 

「せっかくいいところだったのに」

「それは悪かったな。たがあの状況を面白がるのはあまりいい趣味とは言えないぞ」

「でもあんな達也くんの姿はなかなか見れないじゃん」

「だとしてもだ。こういうのはそっと見守っておいてやるものだ」

「なんかじじ臭い」

「構わないさ」

 

ぶーたれるエリカを受け流し、仕事に戻るように促していると、残された二人が手を取りホールの中央に移動し始めた。

 

その後、達也は雫に英美に真由美と続けてダンスを強いられることになっていたが士郎には関係ないことだ。

 

さて、そんなこんな、色々と騒がしいパーティも終了間際。

 

バイトをしていた士郎たちも優勝校の生徒で、レオと幹比古に至っては実際に試合に出場した選手でもあるということで少し早めに解放された。

 

レオと幹比古は少し小腹が空いていた様で料理が置いてあるエリアへ。エリカと美月はほのかと雫を見つけてそちらへ行った。

 

士郎はというと、祝賀会の贈り物を取りに一度部屋に戻った帰り。月と星が照らす夜空の下を車輪付きの大きめのクーラーボックスをキャリーバックの様に転がしながら歩いている。

 

さっきまでホール内を動き回っていたということもあり肌に触れる夜風が心地よい。会場に戻る前に少し休憩しようと庭に寄ると、見知った二人がクルクルと優雅に踊っていた。

 

完全に二人だけの世界に入った二人。

 

関係を知らぬ者が見ればきっと恋人同士と勘違いしただろう。

 

そんな二人の姿を見て柔らかな笑みを浮かべた士郎はホールに戻る。

 

こうして波乱の九校戦は幕を閉じた。

 

 




夏が終わるまでに夏休み編書ければいいかな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。