日常を取り戻したい主人公たちがおくる。一つの世界。   作:空色 輝羅李

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第12話

第二十三話

 

 

私は今日、とてつもない勘違いをした。龍に誘われたので、てっきり二人で出かけるものだと...いや、別に好きとか期待してたとかじゃない!こんな唐変木に期待しても無駄だって、昔から知ってるし。

...その勘違いは、朝の出来事から始まる。

 

――――――――――――

 

 

「切亜。図書館へ行こう。」

 

今日は休日で、暇だ。それに那斗にこの間、

 

「僕に、魔法を教えてほしい」

 

なんて言われてしまった。

教えるのは簡単である。それに、エレクトリックさえあれば、だれでも魔法を扱うことができる。

 

ただし、術式をきちんと理解し、魔力の流れを読めなければならない。那斗が俺に教えを請うたのは、そういう部分についてだろう。

 

ならば本を、読めばいい。本以上に知識をくれるものは、知識の叡智はないのだ。

...それに、俺の魔法の知識も整理しておきたい。

 

「いいぜ、服着替えるから、待ってくれ。」

 

今だパジャマだということに、驚くのだが?

 

―――――――――――

 

 

「聞いてない。」

 

切亜が言う。そうだったろうか。俺は別に、誰と行くとか伝えてはないが、それは聞かれなかったからだ。隠す気もないし。

なぜふてくされるのかが、わからない。

 

那斗にはとりあえず、魔法の基礎から学んでもらう。それでもわからないところがあれば、俺に聞くように伝えた。

 

本を探し、十冊ほど渡すと、

 

「え、こんなに?」

 

と言われたので、一冊だけもとの場所に戻す。

 

まだ不服そうにしていたが、今の那斗にはこれくらい知識をつける必要性があると思う。

自分の魔力の質も見抜けていなかったくらいだ、相手の魔力の流れや、属性を見ることも難しいと思う。

どんなに嫌がられても、俺に頼んだんだ、文句は聞くが、やめるとは言わせない。

 

隣にはまだふてくされた切亜がいるが、放っておく。向かいには真剣に本を読む那斗がいて、その隣に千里がいた。

...ここにくる道中で、声を掛けたらついてくるというので、こうなっている。

千里もまた、真剣に本を読んでいた。タイトルは...他者の心、だった。

何か、悩みでもあるのか...?

 

さておいて。俺は禁忌魔法に関する本を探す。だが、

 

どこにもない。

 

歴史書に神との戦争に関する本はあったが、その中にも禁忌魔法に関する叙述もない。

原始にかかわるものも、そうである。

 

本棚を注意深く探して、気づいたことがある。元の本がなくなったかのように、不自然に隙間がある。あとから違う本で埋めたのか、小さな隙間が、いくつかの本棚にあった。

 

ならば、やはりもともとはその本があったのだろう。

職員の方に尋ねるか...

 

「すみません、少しいいですか。」

 

カウンターに座っている、眼鏡をかけた、エルフの方だった。めっちゃ様になってる...

 

なんですか?とおしとやかに返事をされて、少しどぎまぎしてしまう。

が、目的を忘れては図書館に来た意味がなくなってしまうので、我に戻る。

 

原始魔法について、それから原始についての本がないかを尋ねると、様子がおかしい。引き攣った顔で、じっとこちらの顔を覗く。魔眼でも向けてるのか...?

 

「お客様、なぜそのような本を?」

 

なぜ?その質問の意図がわからない。だが、答えは簡単である。

 

「知識欲に勝てる生物が、この世にいますか?」

 

そういい放つと、彼女が覚悟を決めたように微笑む。そして、カウンターから出て

 

「お客様、こちらへどうぞ。私も、好奇心には勝てませんので。」

 

おもしろいものをみたいと言わんばかりに、その目は輝いていた。若干の恐怖を孕みながら。

 

―――――――

 

奥へと案内される。人の姿はない。図書館にこんな場所があるとは、なんてテンプレート染みたセリフを思い浮かべる。

ある程度進み、立ち止まる。行き止まりに見えるのだが、どういうことだろうか。

少々おまちを、彼女がそういうと、なにか魔力の流れが変わる。どうやら壁に術式が組み込まれているようだ。

縦長な長方形の壁一面に魔力がこもり、変化が起こる。目の前に確かにあった壁は、姿をなくす。そして代わりに、ありえないほどの本が並んでいた。一年かけても読み切ることはできないだろう。

 

「どうぞ気の行くまま、知識を満たしてください。」

「ありがとうございます。」

 

...こんなたいそうな仕掛けの裏に隠すなんて、凝ってるな。

そこまでして隠したいものが、ここにあるってことかもな。

 

「...ラストワールド」

 

魔法のようで魔法ではない、不思議なものだ。だが、これで時間は止まる。この中で何年たとうが、外では一秒すら経たない。すべての本を読み切ってくれる。

...とまではいかないが、せめて五十は越えたいな。

 

――――――――――

 

「...お帰り。」

 

切亜は少し、怒りながらも嬉しそうにいう。読んでる本がおもしろいこと。恋愛のいろは、だと。

 

「切亜...好きな奴いたのか。よかったな。」

 

というと、ものすごく顔が赤くなる。そしてなぜか肩を殴られた。痛い...

 

余計にふてくされてしまったが、まあいいか。

 

那斗に目をやる。一冊は読んだようだ。まあ、あまり時間はたっていないしな。

 

「那斗。理解して読んでるか?」

 

と聞くと、明らかに目が動揺している。マグロでも飼ってるのか...

 

「えっとね...暗記しかできてない。」

 

...暗記か。

那斗が読んだ本を読む。一応一通り読んだので、那斗に暗記の内容を言わせることにした。

 

「えっと、出だしは「魔法とはそもそも、頭の中にあるイメージを具現化し、事象として表現したものである。つまり、虫でも細胞でも、想像さえできるのなら扱うことができるものだ。」だったと思うよ。」

 

なるほど。一言一句間違っていない。そこまで覚えることができるのか...

これが種族による能力ではないことはわかる。亜人は人とほとんど同じだ。だから異常な記憶力は、種族ではなく、本人由来の物だろう。

その先の分章も言わせてみる。やはりそうだ。すべてがあっている。ここまでの記憶力は...リザードマンや龍種、神なんかとも匹敵するかもしれない。

ハイパーサイメシア、だろうか?それならば納得もいくし、とても興味深いし、教え甲斐もある。

 

「那斗、三歳のとき...十年前の今日、何があったか覚えているか?」

「ニュースのこと?そうだな...隣の国で、魔猪の被害が増えてたらしいね。」

 

...そうか。やはりそうだ。一応新聞を確認するが、そのことが掲載されている。

 

「決めた。本を全部覚えろ。意味なんかまだ必要ない。文字だけでも覚えろ。」

 

それでいいの?といいながら首をかしげる。

それでいい。意味なんて所詮後付けだ。この記憶力を使うには、そうするしかない。

 

――――――――――

 

夕方、図書館を出る。夕立でもくるかという黒い空模様。早く帰りたいがそういうわけにもいかない。

 

この近くに、広場がある。そこには結界が張られているので周りに被害が出ることはないだろうが、念のため俺も結界を張っておく。

 

「構えろ。文字の後は実戦だ。」

 

ぽかんとした表情を浮かべる那斗は、急いでエレクトリックを手に取る。

 

最低限の詠唱はできるだろう。でなければ最初から詰め込むだけだが。

覚えるのは魔法だけだろう。剣やらなんやらで戦闘をしたいと望むなら別だが、そうとも思わない。実践と言っても、魔法使いの典型的な、魔法のぶつけ合いでいい。

 

魔法といえば、ルーンだよな。原初の魔法だし、扱いはたやすい。

 

火のルーンを描き、魔法陣につける。

 

「炎弾」

 

那斗に向かって火の弾を撃つ。一つだけなら避けれるが、避けるなんて選択肢が思い浮かばないほど、大量に撃ち込む。これならば何かしらの魔法を放つだろう。

 

「えっと...魔法陣を展開して...魔力を流して...」

 

俺の真似をしようとしてるのか?まずい、とめなければ。

魔力の量が少ない奴が、エレクトリックを使わず詠唱をすると、魔力切れで気を失ってしまう。急がなければ...

 

「よし、これで。「炎弾」!」

 

...予想外である。まったくもっての予想外である。

まさか、身近の切亜以外で、魔力を保有する量が多い奴がいるとは。

 

「...痛くないか、ケガしてないか?」

 

大丈夫だよ、と言われて安堵する。魔法を撃って打ち消そうとしたのはいいが、まさか半分も消せないなんて...

だが、エレクトリックを使用したのは魔法陣を展開するときだけだったので、納得もできる。質は悪くない。量も十分だ。だが、扱いこなせていない。

 

なんとかなるな。

 

「いいか、那斗。エレクトリックを使うことを忘れるな。多分お前なら、なくても魔法を使えるかもしれない。でもな、流れがつかめるまでは、それを使え。それから、さっきの本の出だしだ。それを実際にしてみるんだ。」

 

わかった、と、力強く頷く。

 

慣れるまでは、イメージが大事だ。どんな魔法を使うか、どんなものを作りたいか。

そういうものがうまく想像できれば、魔法はすぐ使える。

だから基礎の魔法として、火は選ばれやすい。誰もが一度は見たことがあるものだ。見たことのあるものは、イメージが湧く。強く思い描けば、しっかりとした火を生むこと間違いなし。

 

「イメージ...炎...魔力...」

「いくぞ。「炎弾」」

 

先程と同じように放つ。きっと那斗ならできるだろう。

 

「エレクトリックに魔力を流して...「炎弾」!」

 

 

―――――――――――――

 

「よかったぞ、那斗。その調子だ。」

「ありがとう。柊君のおかげだよ。」

 

...礼を言われるのは、悪くないな。

 

エレクトリックは、事前にいくつかの術式が組み込まれる。ものによって容量が決まっているから、内蔵される術式も違ってくる。自分の魔力の質にあった属性にすれば、魔法の威力や効果もよくなってくる。だから、魔力の流れや術式を理解しておかなければならない。

が、それ以前に、イメージをはっきり持つ。これも大事だ。まあ、俺には必要ないが。

 

でも、ルーンなんて久しぶりに書いたな...

威力の弱いものでないと、那斗を燃やすかもしれないから、ルーンでないといけなかった。ルーンであれば出力は全て弱くすむ。自分で調整すれば、間違って最大火力を出しかねない。

 

「...なぁ、龍。ルーンなんて使わなくていいだろ?」

「なんでさ。俺に人殺しになれっていうのか?」

 

それは違うけどさ~...なんて、少し残念そうに小石をける動作をする。かわいらしい。

 

だが、俺は今、異様な気配を感じている。ついこの間であったことのある、いかにも下っ端な魔力だ。

 

「...千里、結界張っとけ。ちょっと危なくなるかも。」

「わかった。那斗君、切亜、近くによって。」

 

千里の結界は、俺の結界より防御に優れる。だが、範囲が狭い。使い勝手は悪いが、少人数なら頼りになる盾だ。

 

とりあえず...こいつらを守ることが優先だな。

 

「出て来いよ、Bクラス。どうせいるんだろう?」

 

まただ。優れた認識阻害の魔法でも使えるのか、俺が呼んだ瞬間に前に現れる。

まったく。正々堂々と尾行しろよな...尾行に正々堂々はないか。

 

「よくわかったな。なんだ、この程度の芸、動作もないとでもいうのか?」

「そういうわけじゃない、そもそも、何かしていたのか?」

 

こいつ、とにらまれてもな...

しつこく付きまとってこられるのが初めてだから、どうすればいいのかわからない。それに今回は、人数が多そうだ。

 

「他に何人いる。まさか、子供一人に大人数人で挑むとは思わなかったが。」

「子供がそこまで強大な魔力を有するのが間違っているのだ。」

 

出て来い、その一言で、ざっと二十はいた。

...大人気ないな。

 

「で?一人でもAクラス、あるいはSクラスでもいるのか?」

「俺以外全員、Aだ。」

 

聞き間違いであることを祈るが、どうやら本当だ。魔力の流れが、集中しないとわからない。それだけ隠すのがうまいってことだ。

...時間を止めて、三人を安全な場所へ運ぶのもいいが、その余裕はなさそうだ。全員、俺を狙ってると思ったが、何人かは後ろを注視している。

 

やるしかないか。つい昨日、完成したばかりの()()を。

 

 

「刻印「心眼」真実の眼。」

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